□ scene2 □


「・・・なんだよ・・・これ?」

迎えに来たマネージャの黒いワンボックス車に乗り、神矢とユキは事務所へ向かった。
事務所にはミヅキとヒサトはすでにおり、ミヅキはめずらしく難しい表情を浮かべながら
一冊の雑誌を神矢へ渡した。

「今日発売の週刊誌。電話もネットもレコード会社へ問い合わせが集中していて
 パンク状態みたい」

雑誌には大きくユキの写真と踊るように文字が書かれていた。

「・・・人気バンド「snow jewel」のボーカル、ユキの秘密・・・俺の記事?」

ユキは神矢が持っている雑誌を隣から覗き込む。
しかし、神矢は見せないように雑誌を閉じ、雑誌をテーブルへ置く。

「・・・ユキ。ユキは母親の事をどこまで知っている? エドワードさんから何か
 聞いているか?」

その言葉にユキの赤い瞳が少しだけ曇る。
「・・・何も。エドは何も話さなかった。ただ、とても優しく少しだけ弱いヒトだったって。
 俺は母親の事は何も知らない」
「そう・・・か」
「その雑誌に母親の事が書かれているの? だったら俺にも読ませて」
「ダメだ。・・・こんな記事、事実じゃなくても読めばお前が傷つく」

ユキは神矢の言葉を無視するようにテーブルの上に置かれた雑誌を手に取り、記事にゆっくりと
目を通した。
そして、ある一文を呟いた。

「・・・母親はユキを自分の子供として認める事が出来ず、次第に精神的に病んでいった。
 彼女は息を引き取る最期までユキをけして自分の子と認めなかった・・・」

ユキは雑誌を神矢へ渡す。
そして、辛そうに微笑んだ。

「エドが俺に何も話さなかった理由がわかったよ」
「・・・ユキ」
「・・・帰る。松本さん車出して」

ユキは持っていたサングラスをかけて事務所から出て行った。

「ユキさん!」
「お、おいユキっ」

マネージャの松本はユキを追うように事務所を出て行く。
二人を追いかけようとする神矢をミヅキが止めた。

「悪いけど、神矢は話があるからここにいて」

「・・・ミヅキ」

 

-scene3-

-scene1-

-back-