□ scene20 □


「・・・っ」

その言葉にユキの脳裏に再び昔の記憶が蘇る。



風に舞う白い布。
見え隠れするグランドピアノ。

白い世界に白いシーツのベッド。
ベッドへ横たわるユキによく似た男性。


『エドのうそつき。・・・・俺を一人にして』


眠るように亡くなった父親の姿。
氷の様に冷たくなった頬。

立ちつくすユキの姿。



「神矢、神矢は知っている? 亡くなった人間の肌の冷たさを」

「・・・・ユキ・・・」

「眠ったまま冷たくなって・・・俺を残して・・・だからっ」

その瞬間、神矢はユキをしっかりと抱き寄せた。

『トクン、トクン』

ユキには神矢の体温と鼓動が伝わってくる。
ユキは静かに瞳を閉じた。

「・・・毎晩部屋に来ていたのも・・・そのせいか」
「・・・神矢の呼吸を見ると安心した。でも、不安は消えない・・・」

ユキの閉じた瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。


「・・・いつか、俺はまた一人になる」


その消えそうな程の震える声に神矢はユキを強く抱きしめた。

「ユキは一人にならない。今までだって一人じゃなかった。
 エドワードの体温を感じる事は出来なくなったけど、
 彼はユキのすぐ近くでずっと見守っていてくれた。
 ・・・エドワードが残した欠片がユキの中で輝いている限り、
 きっとこれからもずっと」

「・・・・・エドワードの・・・残した欠片?」

「奇蹟の宝石だよ。知ってたか?ユキ。 
 お前の宝石の欠片は、今沢山の人の中で輝いているんだぜ? 
 俺の中にもユキの欠片はちゃんとある。聞こえない?俺の中で輝いている欠片の音色」

「・・・俺の・・・奇蹟の宝石」

ユキは神矢の胸元で体温と鼓動を感じている。
神矢はユキの耳元でそっと囁いた。

「良く聞けよ。ユキ。
 俺はお前を一人になんかしない。ユキを一人残して逝くなんて出来ない。
 一緒にいよう。溶けるほど体温を感じられる距離に・・・ずっと」

「・・・神矢」

神矢はユキの涙を拭う様に頬へ口づけ、
そして、
ユキの唇へ何度も何度も口づけを繰り返した。

 

-scene21-

-scene19-

-back-