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「・・・っ」
その言葉にユキの脳裏に再び昔の記憶が蘇る。
風に舞う白い布。
見え隠れするグランドピアノ。
白い世界に白いシーツのベッド。
ベッドへ横たわるユキによく似た男性。
『エドのうそつき。・・・・俺を一人にして』
眠るように亡くなった父親の姿。
氷の様に冷たくなった頬。
立ちつくすユキの姿。
「神矢、神矢は知っている? 亡くなった人間の肌の冷たさを」
「・・・・ユキ・・・」
「眠ったまま冷たくなって・・・俺を残して・・・だからっ」
その瞬間、神矢はユキをしっかりと抱き寄せた。
『トクン、トクン』
ユキには神矢の体温と鼓動が伝わってくる。
ユキは静かに瞳を閉じた。
「・・・毎晩部屋に来ていたのも・・・そのせいか」
「・・・神矢の呼吸を見ると安心した。でも、不安は消えない・・・」
ユキの閉じた瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。
「・・・いつか、俺はまた一人になる」
その消えそうな程の震える声に神矢はユキを強く抱きしめた。
「ユキは一人にならない。今までだって一人じゃなかった。
エドワードの体温を感じる事は出来なくなったけど、
彼はユキのすぐ近くでずっと見守っていてくれた。
・・・エドワードが残した欠片がユキの中で輝いている限り、
きっとこれからもずっと」
「・・・・・エドワードの・・・残した欠片?」
「奇蹟の宝石だよ。知ってたか?ユキ。
お前の宝石の欠片は、今沢山の人の中で輝いているんだぜ?
俺の中にもユキの欠片はちゃんとある。聞こえない?俺の中で輝いている欠片の音色」
「・・・俺の・・・奇蹟の宝石」
ユキは神矢の胸元で体温と鼓動を感じている。
神矢はユキの耳元でそっと囁いた。
「良く聞けよ。ユキ。
俺はお前を一人になんかしない。ユキを一人残して逝くなんて出来ない。
一緒にいよう。溶けるほど体温を感じられる距離に・・・ずっと」
「・・・神矢」
神矢はユキの涙を拭う様に頬へ口づけ、
そして、
ユキの唇へ何度も何度も口づけを繰り返した。
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