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グランドピアノが置いてある部屋からすぐの部屋のベッドで神矢は深い眠りについていた。
夜だけに活動をしている「snow jewel」が活動を終了する頃には、深夜を回っていた。
そして、ユキの家に帰り、活動の打ち合わせ等が終わる頃には、3時を回っているもある。
初めのうちは気付かなかったが、この数日、神矢はある事に気付き始めていた。
神矢がベッドに入り、深い眠りにつくころ、それから1時間後、そして、夜が明ける前。
神矢の寝ている部屋に毎日数回、誰かの気配を感じる。
気配は部屋の扉を開き、少しだけベッドに近づき、暫くすると部屋の外へ帰っていく。
毎日、毎回同じ事の繰り返し。
今もベッドの近くに気配を感じる。
神矢は微睡みの中、そっと人物の名前を呼んだ。
「・・・・・ユキ?」
その言葉に影に小さな動揺が走る。
神矢は重たい瞼を開き、気配の方へ視線を移した。
そこには、ぼんやりと白く浮かび上がるユキの姿がある。
「・・・んっ・・・どうした? ユキ」
神矢の言葉にユキはゆっくりと部屋の扉へ下がっていく。
「・・・ごめん。何でもない」
消えそうな声を残してユキは部屋の外へ出ていった。
夢の中のような曖昧な出来事。
消えそうに切なく呟くユキ。
目が覚めた時には何事も無かったかのように接するユキに、現実か夢か分からなくなる。
そして、神矢は何も聞くことが出来なかった。
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