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洞窟の中からは冷たい風が吹き抜け、綺羅達の髪を揺らす。
ゆっくりと中へ入っていくと、途中で洞窟の内部が開け視界が広がった。
「・・・何も・・・いない・・・」
伏見はラグジーから離れ、綺羅へ近づこうとしたとき、伏見の影が急に広がり巨大な人の形をした影に変化していった。
「これが魔者の正体なのか?」
主人は二、三歩後ずさりながら話を続ける。
「人の影が魔物になるなんて・・・」
影は再び変形を始める。
人から四つん這いになり、尾が生え、口が裂け、華が出る。
それはまるで巨大な狼の様である。
「こいつは精霊の仲間だ。ただし性質は魔者レイスに近い、生者を見つければ襲い掛かってくる。」
「レイスですが・・・少々厄介ですね。冷気を好み、銀か魔法の武器に弱い。下手な魔法では倒せない」
影は綺羅達を見つけると雄叫びを上げ、綺羅達へ近づいてきた。
影の持つ冷気のためか、洞窟に充満した冷気は氷の塔を造る。
近づく影に伏見は吹雪を抜き構えた。
「駄目です!伏見、あなたのその剣では通用しません!」
綺羅は一本の剣を伏見へ投げる。
伏見は柄に紫色の丸い宝石が埋め込まれた剣を鞘から抜いた。
洞窟の薄暗い中で、青白い光を放つ。
武器屋の主人は伏見の持つ剣を指差し呟いた。
「あの剣は月水華・・・では、彼は」
綺羅は紫の瞳を閉じ、伏見に向かって呟く。
「勇者に宿る鋼の者達よ。勇者の意志に従い、本来なる力を示せ・・・・エンチャンテッド・ウェポン・・・」
「魔法であなたをサポートします。思うとおりに行って下さい」
伏見はにっこりと笑み、月水華を握りしめ影に向かって進む。
そして、影めがけ飛び上がった。
切り離された影の一部は空中で空気に紛れるように消えていく。
「炎の結晶よ。集まりて玉となせ、ファイヤ・ボール!!」
綺羅の周りに熱い大気が集まり出す。
そして、綺羅のかざす両手の上に、小さな炎ができ、それは少しづつ大きくなって行った。
「伏見っっ」
綺羅の声に伏見は影の前から横へ飛ぶ。
綺羅の掲げた両手の上には、直径1m程の炎の玉に変化していた。
浮かび上がった炎の球体は、熱い大気を発散させながら綺羅の示す手の方へ勢い良く進み出した。
表情の無いはずの影が一瞬ひるんだ様に見え、次の瞬間、影は炎に包まれた。
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