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「ありがとうございました」
綺羅は武器屋の主人にそう言うと、話を続けた。
「剣は雷を浴びて溶けてしまいました。その分は弁償します」
武器屋は驚いたように話す。
「いやっっ、良いのです。それよりも・・・綺羅王子とは気付かず数々の無礼をお許し下さい」
「月水華で分かったのですね。葉柴」
葉柴と呼ばれた武器屋の主人は、眼鏡の中のその緑の瞳を細めにっこりと笑みを浮かべた。
「妖剣「月水華」は世に一本しかない名剣です。
その所有者は聖国ラ・フールティアの王族の一人、私の所へ剣の調整を行いによく来られていました。
ラ・フールティア聖国の第一王子、綺羅様が現在の所有者ですからね。
それにしても、月水華はよく整備されている。刃こぼれ一つしていない。安心しました」
「葉柴が私に剣の扱い方を丁寧に教えてくれたお陰です」
綺羅と武器屋の主人、葉柴が話をする中、螺夜が綺羅の耳元でそっと呟いた。
「綺羅・・・あれを・・・」
螺夜の指差す方向へ綺羅達は瞳を動かす。
そこには洞窟の少ない光の中でも反射し輝く小さな物が落ちていた。
「・・・金属のかけら・・・ですか?」
綺羅の言葉に伏見はすっと歩き出し、光る金属の近くで立ち止まった。
「綺羅、これは指輪(リング)だ」
伏見の言葉に綺羅達も近づき、その中で螺夜がそっと拾い上げた。
螺夜は銀の髪を掻き上げながら、氷の瞳を細める。
「・・・このリングは精霊の指輪・・・フェアリーリングだ」
綺羅は銀色の金属で出来たリングを見つめる。
リングには大きな淡白い宝石が埋め込まれており、宝石には細かな細工がされている。
「フェアリーリングは、術者達が好んで付けるマジックリングだ。このリングを指にはめると、術を奏でるとき、リングが反応し、精霊の助力を受けることが出来る」
伏見が不思議増に青い瞳で見つめる。
「綺羅や螺夜がそれをはめると、精霊の力が働いて呪術を唱えるとき、その力が大きくなるのか」
螺夜は指でリングを弾くように綺羅へ投げた。
「私には必要のない代物だ」
綺羅は螺夜を見つめにっこりと微笑みリングを握る。
「行きましょう。イオスはもうすぐですから」
綺羅達一行は、無事イオスへ到着し、武器屋の主人は何事もなかったかの様にイオスの武器商人達との取引を終えた。
そして、夕日も沈み掛けた頃、綺羅達は風の聖国キャラル・スルーへ帰還を果たした。
その夜、一夜にしてクルノ洞窟の魔物を倒した話は広まった。
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