□ 聖風宮2 □


聖風宮・・・キャラル・スルーの北方に位置する風の王宮。
その微かに風が流れる中を綺羅達は門守に案内され歩いていた。
「王宮・・・というよりも要塞だな」
伏見が辺りを見回しながら呟いた。
「この地域では、今は優しい風でも季節が変わると突風の舞う「風嵐」が起こります。その風から守るためには要塞のような建物が必然となってしまうのでしょう」
綺羅は伏見にそう呟くと、にっこりと微笑んだ。
その時、先を歩く門守がふと足を止め、後ろに振り返った。
「こちらが謁見の間です。どうぞ、お入り下さい」
門守が青と金の模様で飾られた大きな扉を開く。
「ようこそ参られた。冒険者達よ」
扉の中から落ち着いた男の声が聞こえる。
綺羅達はゆっくりと扉の中へ入っていった。
部屋の奥には王の座る王座があり、そこ茶色の髪をした先ほどの声の男が座っている。
そして、そのすぐ横には床に片膝を着いている男が居た。
「・・・武器屋の葉柴」
葉柴は三人を見つめにっこりとその緑の瞳で微笑む。
綺羅達はゆっくりと進み、王座の前で片膝を立てた。
「国王陛下、お呼び出しに従い参上致しました」
「そんな堅苦しい挨拶は良いよ。綺羅王子」

キャラル・スルーの国王はすっと玉座から立ち上がり綺羅達へ近づいた。
そしてキャラル・スルーの特徴でもある青い瞳を細めた。
「久しいな綺羅王子。王子が法の塔で魔術を学んでいた時以来だ。 ラ・フールティアの王子が旅に出たいという噂は耳にしていたが、冒険者として旅をしていたとは思わなかった。 あのクルノ洞窟に住まう魔物を倒したと葉柴に聞いた。感謝する。旅する者達が安心してクルノ洞窟を渡る事が出来る」
綺羅は国王を見つめ紫の瞳で微笑む。
「私達はただ葉柴と交換条件として洞窟へ向かったのです。感謝されるような行いは何一つしていません」
「その事も葉柴に聞いておる。葉柴、剣をここへ」
葉柴は国王の声に一本の剣を持ち、国王へ手渡した。
手渡された剣は、武器屋で埃を被り眠っていた剣から変わり銀色に光り輝いていた。
「約束の剣だ。大切に扱うが良い」
「その剣は伏見の物です。彼へ渡して下さい」
国王は綺羅のその言葉に、一瞬哀しそうに眉を寄せるが、何もなかったように綺羅の後ろに片膝を立てる二人を見つめた。
「・・・伏見よ、前へ・・・。この剣を授けよう」
伏見はその言葉に従い立ち上がり、そして国王の前へ歩み出た。
国王は、目の前に立つ伏見の黄金の髪、青い瞳を驚いた表情で見つめる。
そして、震える声で伏見へ訪ねた。
「そなた・・・そなたの出身は・・・」
伏見はその深い青い瞳で国王を見つめる。
「私は・・・今は亡き都、幻都ディルウォーグの生き残りです」
「・・・では、ではディル・ウォーグの王子・・・」
「昔、そう呼ばれていました」
その言葉に国王は何も言わず伏見を抱きしめた。
「・・・感謝する。親友の形見に逢えた事を。あおの豊かなる都の民に逢えた事を・・・」
「・・・国王・・・陛下・・・?」
国王はしばらくの間、伏見を優しく抱きしめていたが、すっと躰を引き離し剣を両手で胸まで持ち上げる。
「幻都ディル・ウォーグの王子、伏見。この剣を捧げるこの剣は名剣「冴威(サイ)」。小人族の力で鍛えられた剣は魔法をも跳ね返す力を持つ」
国王は剣を伏見にそっと手渡した。
「大切に扱うが良い」
伏見はゆっくりと頭を下げる。
「ありがとうございます」
伏見は冴威を受け取り綺羅の後ろへ下がった。
そして、国王も玉座へ腰を下ろす。
「時に綺羅王子、これからそなた達はどうするのだ?」
「・・・私達はこれから法の塔へ行き、師(グル)へ逢いに行くつもりです。まだ、何一つ旅の目的は果たしていませんからね」
国王は玉座へゆっくりと肩肘を付いた。
「・・・旅の・・・目的・・・?」
綺羅は国王の問いににっこりと笑みを浮かべながら答える。
「・・・父上・・・弟に逢い、話を・・・私は誰なのか・・・を。 私はラ・フールティアの王子として育てられた事以外、何一つ自分の事を知らない。消えた幼い記憶を含め、自分で自分を捜し出そうと思っています」
国王は少し眉をひそめるが、その青い瞳で優しく微笑んだ。
「・・・つらい旅になるやもしれんぞ」
「えぇ、承知しています」
「旅の間、何か困ることがあれば、いつでも相談に来なさい。出来るだけのことをしよう」
国王は再び立ち上がり、綺羅達を見つめた。
「伏見・・・螺夜、前へ」
国王の言葉に従い、二人は前へ出る。
「二人とも、綺羅を頼むぞ。伏見、そなたも怪我無きように。・・・螺夜、そなたも・・・怪我無きよう綺羅を、そして伏見を支えてくれ。皆、私の大切な親友の息子達だからな」
国王は螺夜を優しく見つめていたが、ふと、その氷の様な淡い瞳を見つめる。
「・・・そなた、そなたのその瞳。・・・どこか見覚えが・・・ある・・・どこかで逢った事があるか?」
「いいえ、国王。私は初めてお逢いした」
「・・・そうか・・・すまぬな。・・・昔、そんな瞳を見た気がした。螺夜、皆を支えてくれ・・・」

 

-聖風宮3-

-聖風宮1-

-back-