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「夜に蠢く闇の眷属よ。その漆黒の空に歌え、暗く哀しき闇の歌を」
「・・・・・ダークネス」
伊里座の呟く様な魔術は瞬時にして広い空間を闇に包み込んだ。
それとほぼ同時に剣を弾く音が聞こえ、剣士達の勝負が付いたことを知った。
徐々に暗闇野中に光が線を作る。
そこには、氷の剣を光に反射させ構える剣士と、炎の威力を無くし床に落ちた剣を拾う二人の剣士の姿があった。
「これでは練習が練習では無くなってしまう」
伊里座はその声ににっこりと微笑んだ。
「練習の邪魔をしてしまいましたか、遊佐」
遊佐(ユサ)と呼ばれた男は、剣士達の奥、綺羅達と対する場所から姿を現した。
剣士達がすっと遊佐の後ろへ下がる。
「・・・気配を感じなかった・・・」
伏見がその男に釘付けになりながら呟く。
後ろ一つに束ねた太陽の様に強い光を放つ金の髪、褐色の肌、そして燃えるような赤い瞳。
その強い印象に比べ、細身の躰に落ち着いた低い声。
両腰に差した細身のロングソード。
見るからに鍛錬された二本の剣が歩くごとに揺れる。
「伊里座の知り合いだったのか。余りに強い不思議な気配に、魔法剣士の塔を下りここまで来てしまったよ」
遊佐はその赤い瞳で優しく微笑む。
「彼は魔法剣士の遊佐。魔法剣士の塔の剣士を全て束ねるソードマスターでもあります」
伏見は伊里座の言葉が終わるか終わらない内に伊里座の横へスッと出た。
「私は伏見、見た目通りの剣士です。魔法は使えないが、あなた達魔法剣士と手合わせをしたい」
伏見は綺羅の方へ向き話を続ける。
「・・・綺羅、いいよな」
綺羅はその言葉に応えるように、にっこりと微笑み頷く。
「螺夜はどうしますか?」
螺夜は壁に寄り掛かった姿のままで銀の髪を掻き上げる。
「剣術には興味がない」
そう一言呟くと、風に紛れるようにその場から消えていった。
その螺夜の行動を見ながら、遊佐は黄金の髪を掻き上げる。
「魔術師は時に不可解な行動をとる。それは我々にとって驚異とも憧れともなる・・・伊里座、初めて君に出逢った時を思い出すよ」
そう言いながら遊佐は伏見を見つめ優しく微笑んだ。
「・・・剣士伏見、君が言わなければ私が言おうと思っていた。是非、我々魔法剣士との手合わせを願いたい。
先ほど剣士達の練習の間に見せたあの戦う者の瞳を見せて欲しい」
伏見は嬉しそうに濃青の瞳を細めた。
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