□ 珠砂1 □


法の塔の西側にある法術師の塔の最上階にある扉の前に五人は佇んでいた。
当事者:遊佐、伏見、砂夜
関係者:綺羅、螺夜
である。

遊佐は、目の前にある少し大きめの扉を叩いた。
「連れて来たぞ、珠砂」
「・・・シュ・サ・・?」
伏見が扉の向こうの人物の名を小さな声で繰り返す。
その間に扉の向こうから落ち着いた男性の声が帰ってきた。
「どうぞ、開いている」
「・・・では、失礼」
そう言いながら、遊佐は目の前の扉をゆっくりと開けた。

扉の先には男性が椅子に座ってこちらを見つめていた。
絹のように白く長い髪に、白い瞳。そして、象牙のような肌。 石像の様に美しく白い男はにっこりと笑みを浮かべる。
「初めから、ゆっくりと話して貰おうか」
笑みを浮かべ続ける珠砂に、遊佐はゆっくりと話し始めた。
遊佐が今までの経緯を話している最中、伏見はその青い瞳でじっと珠砂を見続けている。
それに気付いた綺羅が、伏見にそっと耳打ちした。
「伏見、珠砂の事をご存じなのですか?熱心に見つめられている様ですが・・・」
「私の知っている珠砂は薬師の珠砂だった。賢者の証を持つ珠砂は知らない」
その言葉が部屋の中に響く。
静まり返った部屋の中、珠砂はすっと立ち上がり伏見の前で片膝をついた。
そして、白い瞳を優しく細めた。
「覚えていらっしゃらないと思っていた。十数年も前の些細な事などは・・・伏見様」
珠砂の突然の行動に、部屋の中にいる全員が言葉を失う。
その中で伏見は嬉しそうににっこりと微笑んだ。
「忘れるはずがない。珠砂が教えてくれた薬学で日々を生き残ってきたのだから」

 

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