□ 封印1 □


黒栖は腕を組み、鋭い視線で空間を割った魔物達の一人を見つめた。
「・・・無理矢理に空間を歪め、俺の領域に入るなんて礼儀知らずなんじゃねぇか?」
黒栖は紅い瞳を細める。

「・・・黄金の貴族様よ」

魔族達がすっと二手に分かれ、一人の若者が姿を現した。
「確かに無礼な行いでした。お詫びいたします。紅の---。」
この闇の空間が一瞬色づいたのかと思うほどの美しい若者が黒栖の問いに答えた。
腰ほどもある豊かな波のある黄金の髪。象牙色の白い肌。
そして、全てを吸い込んでしまう様な深い深い青色の瞳。
その瞳でやさしく微笑む。
「我々の眷属が強大な力で滅ぼされました。その気配を追って来てみたのですが・・・」
若者は空間を見渡す。
そして、黒栖から少し離れた場所で視線が止まる。
「・・・紅と白銀。貴族達の密会に人族が二人」
踞ったままの綺羅を伏見が必死に支える。
螺夜も綺羅の近くでじっと若者を見つめている。
「白銀の---。姿を見せぬと思ったら人族などと共に居たのですか」
若者は足音も立てずにすっと螺夜へ近づいた。
螺夜は自分より10cmは低い若者を冷たい瞳で見下す。
若者は深い青い瞳で笑みを浮かべながら、螺夜の耳元でそっと呟いた。

「・・・封印はまだ解けぬようだ」

そして、若者は二人の人族を見つめ、にっこりと微笑んだ。
「今回は帰らせて頂きます。また、逢える時を楽しみにしています」
若者は黄金の髪を掻き上げながら、ゆっくりと踵を返す。
そして、魔族達がいる場所へ戻り、螺夜達の方へ振り向いた。
「・・・白銀の---。邪気に飲み込まれた人族は早めに処置を施さないと手遅れになりますよ」
その言葉を最後に魔族達は現れた亀裂に解けるように去っていった。
「二度と俺の空間に入って来るんじゃねぇ」
黒栖は消えていった魔族達にそう呟きながら、螺夜達の方へ近づいた。
綺羅は魔族が来た時のまま、額を押さえ俯きじっと何かに耐えている。
「螺夜、何とかならないか?」
伏見は綺羅を支えながら心配そうに呟いた。
螺夜は流れる銀の髪をゆっくりと掻き上げる。
「伏見、少し離れていてくれ。綺羅に呪文をかける」
螺夜はそう言いながら、踞る綺羅に近づいた。
そして、綺羅が自分の右手で押さえていた額の手を少しずつ動かす。
そこには三角形だった紅い印は無く、少しの残骸だけが残っていた。

「・・・綺羅・・・!?」


 

-封印2-

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