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目が覚めた時には海斗の家へと戻っていた。
「村人を全て集めさせろ」
螺夜の言葉に伏見は揺れる黄金の髪を掻き上げながら頷き、部屋から出ていった。
「暗号が分かったのですね」
綺羅の問いに螺夜は夜が明け始めた空を窓ガラス越しに見つめた。
「あいつは待っていたのだ。私達がここへ来るように仕向け、あいつと接触するように待っていた。・・・私と黒栖しか知ることが無い言葉だ」
「彼に言われました。「螺夜が傷つくような事があれば殺す」と、彼の様な強力な力を持った方に言われれば安心です」
その言葉に螺夜は綺羅を見つめる。
「・・・綺羅」
綺羅は紫の優しい瞳を細めた。
螺夜が何かを言おうとした時、部屋の扉が開いた。
「螺夜、綺羅。広場に皆を集めたぞ」
伏見は村中を走り回ったと見え、少し息が切れている。
そして、大きく深呼吸をし、話を続けた。
「綺羅、体調が悪い様なら休んでいろ。私と螺夜で何とかするから。・・・それにあいつの言う事なんて気にするなよ」
「・・・大丈夫ですよ、伏見」
伏見はその綺羅の言葉に安心して青色の瞳を細める。
「じゃあ、下で待っているよ」
近くの広場に集められた村中の男達は、疑いながらも女性が着るべく服を手にしながら集まった。
その肩には様々な色、大きさの鳥が羽根を休めている。
中には肩に大きな白い鳥を乗せた海斗も来ていた。
男達は広場の中心の高台に登っている螺夜を見つめる。
螺夜の人離れした美しい白い肌、海風に揺れる銀の髪、そして自分たちに魔術をかけた魔者とあまりにも似すぎた氷色の瞳にざわめきが広がる。
「その男、信用出来るのか?」
ある村人の言葉でざわめきは罵倒に変わる。
螺夜は風に髪をなびかせながら冷たく村人を見つめる。
「彼にしかあなた方にかけられている魔術を解除する事は出来ません」
綺羅の優しく落ち着いた言葉に男達の罵声が止まる。
「この魔術を唱えた者は村人全てに他者変身の呪文を一度に唱えました。それは魔術師の力が強大である事を意味します。
そして、魔術師はその呪文に暗号を組み込んでいました。暗号が分からなければあなた方の呪文は解除する事が出来ません。
・・・暗号を知るのは彼だけです。・・・私が保証しましょう。あなた方を傷つける事はけして致しません」
綺羅は服の中からゆっくりと法の塔の首飾りを出し村人達に向けた。
「この印にかけて」
その紅い印に村人の一人が呟く。
「あれは・・・法の塔の賢者の印だ」
村人達が再びざわめく。
「その印はあまり外に出すな」
螺夜は小さく綺羅に呟く。
その言葉に綺羅は優しく微笑んだ。
「螺夜や伏見の盾になるのでしたら良いのです」
螺夜は綺羅の優しい紫の瞳に瞳を伏せ、海風に揺れる銀の髪を掻き上げた。
「呪文を唱えて下さい」
海斗の言葉に村人はざわめきを止め、じっと高台に登っている二人を見つめた。
そして、その言葉に応えるように螺夜は静かに詠唱にを口にする。
「空中に舞う偉大なる魔詩よ。無に帰せよ、幻の詩よ真実の風となれ・・・」
村人達の周りに白い光の帯が生まれる。
螺夜は瞳を閉じ、小さく何かを呟く。
すると白い光の帯は少しずつ光を失い始め、白い帯も解けるように消えていく。
「暗号が解け始めている」
綺羅の近くに高台へ登ってきた伏見が呟く。
綺羅はゆっくりと頷いた。
「・・・ディスペル・マジック!」
最後の詠唱に村人達の周りに小さな風の渦が生まれ、消えていった最後の白い帯も風に乗って空へ登っていく。
肩に乗せていた鳥たちも少しずつ翼が腕になり、手になり、人へと戻っていく。
人々の喜びと歓声が明け方の澄んだ空へ響き渡った。
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