□ 封印5 □


その声に綺羅達、三人が振り向く。

そこには宙に浮いたまま器用に足を組む黒栖が座っていた。
血色のような真紅の紙を掻き上げながら、髪と同じほどの紅の瞳でにっこりと微笑む。
微笑みを浮かべる頬にはくっきりと紅い魔族の紋章が浮かぶ。
「・・・黒栖っ!!」
伏見は叫びながら条件反射の様に魔封じの剣「冴威」を黒栖の首筋み突き付ける。
「皆のご機嫌をお伺いに来たっていうのにずいぶんな挨拶だな。幻都ディルウォーグの王子様。聖国ラ・フールディアの王子様。そして・・・魔族の螺夜。ご機嫌麗しゅう」
そう言いながら黒栖は円満な笑みを浮かべる。
伏見は冴威をゆっくりと鞘に収める。
それを見ていた黒栖は音も無く床へ足を下ろした。
「・・・あまり、以前の様な気を感じないのですが・・・」
綺羅は黒栖を見ながらそっと呟く。
「魔族の高位の者は、その自ら持つ気でさえ自分で変化させる事が出来る。気をそのまま出していたら、人間にだって気が付く。人間以外の禍々しい気だからな」
黒栖は左手を顎に添えた。
「お三方ご迷惑のをお掛け致さないように。あなた方のお役に立ちたい」
妖眼の紅い瞳をクルクル変えながら黒栖は人なつこい笑みを浮かべる。
「お役に立ちたいってお前の世話になんてなりたくないっ」
伏見が怒鳴るように声を立てる。
「それは残念だ。俺がいれば便利だぞ。力の弱い魔物は近づく事すらも出来ない。それに・・・指を鳴らすだけで世界の情報を知ることが出来る。 例えば・・・この部屋の扉をノックする女性がいるとかな」

----------トントン----------。

黒栖の言葉通り部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「綺羅様、螺夜様、伏見様。宴の準備が整いました」
三人が扉を見つめる。
「あ、綺羅、この情報を誰かに見られるのはちょっとマズいよな」
伏見の呟く声に綺羅は小さく頷く。
「話して納得して頂ける状態ではありませんしね」
「・・・皆様? 眠っていられるのですか?」
扉の向こうで女がノブを回す音がする。
「・・・黒栖、お前の空間へ行く」
螺夜は黒栖を連れ、亜空間へと去っていった。
伏見は唖然としながら呟く。

「・・・逃げられた」

 

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