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綺羅達がカラツの村で宴に招待されている頃、螺夜と黒栖は人間界とは異なる空間の狭間を漂っていた。
どこまでも続く空間は一定間隔に点々と微かな光が灯り、螺夜の流れる銀の髪を、黒栖の真紅の髪を照らしていた。
黒栖はその紅い髪を掻き上げ軽く左手の指を鳴らす。
すると、いつの間にか黒栖の手には足の長い2つのグラスと黒栖の髪の様な紅い酒の入った首の長い硝子のビンを手にしていた。
「・・・螺夜、飲むだろ?」
黒栖はそう呟き硝子のビンのフタを口で空ける。
コルク栓を抜くような軽い音が空間に響き、酒をグラスに注ぐ音が静かに聞こえる。
黒栖は1つのグラスを螺夜に渡しながら、にっこりと紅の瞳を細めた。
「紅の高貴なる貴族、黒栖。その血の様な髪に似合う紅い酒。黄金の貴族様からの贈り物だ。白銀の貴族殿」
螺夜は鋭い視線を黒栖に向けながら、グラスを黒栖から受け取る。
「その名で呼ぶな。黒栖」
螺夜の言葉に黒栖はその紅い妖眼を細めながら、グラスを口に付ける。
「魔界の王、その座を狙い幾つもの渦が発生している。現王と弟王、そして、黄金の---。
その上、新たに渦が出来上がりつつあるらしい。現王と弟王はそれほど執着は無いようだが、黄金の他、現王、弟王を囲む人々で渦は広がっている」
黒栖は螺夜に向かってにっこりと微笑み話を続けた。
「まぁ、オレは螺夜がその渦の1つだったら、全力を注ぐけどね。それ以外の渦では興味は感じないね」
螺夜はグラスに注がれた紅い酒をゆっくりと飲んだ。
「他の貴族達もお前と同じ考えであれば良いのだが・・・」
「オレが知っている限り、魔界の行く末を観察している奴はいないね」
黒栖はそう言いながら、グラスの縁を舐めた。
「まぁ、貴族達が力を加えても、黄金のやつが実権を握るのは時間の問題だ」
螺夜は少しの間だけ何かを考えていたが、闇の中でも美しく輝く銀の髪を掻き上げる。
「・・・魔界へ行く」
螺夜はその短い言葉と同時に空間から突然姿を消した。
「ちょっと待てよ、オレも行くっ」
そう慌てる黒栖も空間を移動するかのように別の空間へと消えていった。
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