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村の中は人の影も気配すら感じる事が出来ない。
ましてや強力な魔力を持つ魔族の気配も感じる事が出来なかった。
小さな泉を中央に囲む様に建ち並ぶ建築物は扉を閉ざし窓も固く閉ざされていた。
「村の人々全てが失踪してしまったみたいだ」
伏見は冴威を鞘に収めながら呟いた。
「急に消えてしまったのならば少しは生活の残り香があるはず。ここの村には残り香すらもしない」
そう言いながら、ふとある家の扉を開いた。
その瞬間、綺羅と螺夜が伏見の開いた扉を見つめた。
「伏見、その扉の中は危険です!!何かの気配がします!!」
その言葉が終わるか終わらない内に扉の中で何かが輝いたかと思うと、家の中から大きなライオンが姿を現し、伏見めがけて襲いかかった。
伏見は一瞬にして吹雪を抜き、鋭い爪の一撃からは避ける事が出来たが、襲われた拍子にそのまま仰向けにされ
その上に通常の1.5倍ほどの大きさもあるライオンが覆う。
ライオンの鋭い瞳は綺羅と螺夜に向けられ、低いうなり声をあげている。
「自分で蒔いた種だ。自分で何とかするんだな」
螺夜は落ち着いた様に銀の髪を掻き上げる。
「家の中で気配すらも殺し、何を怯えている?」
鋭い氷の様な瞳で家の中の暗闇を見つめる。
すると、家の中から白い服を着た女性が姿を現した。
手には大きな白い布を持っている。
「海斗・・・」
その言葉にライオンは覆い被さっていた伏見から離れ女性の足下へゆっくりと移動した。
栗色の髪の女性は手に持っていた白い布をライオンにそっとかける。
「あの門を守る魔族の女を倒しカラツの村へ足を踏み入れた人々はあなた方が初めてです」
海へ沈む太陽が海をオレンジ色へ変え、女性の白い服もオレンジ色へと染めていく。
女性はその沈む夕日を青い瞳で見つめた。
「・・・時間がありません。とにかく家の中へお入り下さい。・・・お話致します。カラツ村がどの様な道を辿ったのかを・・・」
女性はゆっくりと左手を挙げ、綺羅達を家の中へ招き入れた。
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