□ カラツ3 □


「彼がこのカラツへ来たのは、今から三ヶ月前・・・旅人の様にふと村へ現れました」

綺羅達は絨毯の上に大きなクッションが置いてある部屋へ座っている。
女性m同じに絨毯の上へ座り、側にはライオンがすりよる様に座っていた。
「白い肌と黒い髪が印象的な長身の男性でした。親しく話す彼は男性とは思えない程の美しい笑みを浮かべていました。 村の若い娘達も彼の噂を立てる程に、惹きつける何かがあったのでしょう」
女性は側にいるライオンのたてがみをそっと撫でる。
「・・・でも、どこかで・・・人離れした顔立ち・・・美しい顔、優しく浮かべる笑み・・・その笑みの中に冷たく冴える氷の瞳・・・。そう、あなたの様な氷色した瞳」
そう言いながら女性は螺夜をそっと指差した。
綺羅が何かを言おうとした時、女性は再び話を続けた。

「・・・気が付けば良かった・・あの氷の瞳に・・・魔性が潜んでいる事を・・・」

側に座るライオンが心配そうに青い瞳で女性の顔を見つめる。
「彼が来てから七日がたったある日、彼は村中の人々を広場へ集めました・・・」
瞳を閉じた女性の脳裏に「彼」の姿が浮かび上がる。
その男は陶器の様な白い肌、漆黒の髪を耳元で揺らし、その鋭い氷の瞳で微笑む。

-カラツの皆さんにはとても感謝しています。旅人として来た私にとても親しく接してくれて・・・人を疑う事すら知らないお前達に私は贈り物を捧げたい-
男は不敵な笑みを浮かべる。
その笑みをざわめく村人達。

-かのモノ、己としての器を脱ぎ、異者として変わり給え。我は変化させん者なり・・・-

一人の村人が後ずさりながら震えた声で叫ぶ。
-・・・この詠唱は・・・他者変身(ポリモルフ・アザー)の呪文だ!!・・・逃げろっ!!-
村人達は蜘蛛の子を散らすように広場から逃げ出す。

-・・・男は月に女は陽に真実の姿を現さん ポリモルフ・アザー-

男は村人達の慌てて逃げる姿に楽しそうに声を上げて笑っていた。
漆黒の髪は少しずつ色が変わり、鮮やかな紅色へ変わる。
その頬には魔族の紋章が紅色に浮かび上がり、冷たい氷の瞳は紋章と同じ紅色へ変わっていた。
その姿を信じる事が出来ず立ちつくす男女が男を見つめている。
-海斗と圭か・・・。一番私と親しくしてくれたお前達には敬意を表し、美しい獣へ変えてやろう-

瞳を閉じた女性から涙がこぼれ落ちる。
側で見つめていたライオンも心配そうにのどを鳴らす。
「・・・あの、・・・大丈夫ですか?」
綺羅の声に女性はふと我に返り、青い瞳で笑みを浮かべた。
「・・・あぁ、・・・私、まだ名前を申し上げておりませんでしたね、・・・私は圭(ケイ)と申します・・・」
伏見は心配そうに圭を見つめていたが、ゆっくりと問いかけた。
「村人達を集めた男はどうしたのですか?」
その言葉に圭の瞳は曇る。
「・・・魔術を・・・魔術を村人達全てに唱えました。・・・逃げる村人に笑いながら・・・」
圭は窓ガラスから海へ沈む太陽を見つめた。

「あぁ、もうすぐ陽が沈む。・・・お見せします、彼が私達にどんな魔術を唱えたのか」

 

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