□ カラツ5 □


「綺羅っ!!」

部屋の中にある物が閃光で輪郭を失う。
綺羅は右腕で瞳に当たる光を遮る。
そして、強い閃光が消えた後には何も無かったかの様に、佇む海斗と肩に停まる圭、そして、綺羅の前で「冴威」を盾の様にかざしている伏見がいた。
「これで、さっき勝手に扉を開けたのは無かった事にしてくれるよな」
伏見は冴威を鞘に収めながら、にっこりと青い瞳で微笑んだ。
綺羅はその言葉に笑みを浮かべる。
「助かりました。伏見」
「大丈夫ですか?」
海斗が心配そうに見つめる。
「えぇ、すみません。失敗してしまいました。しかし、暗号(パスワード)が使用されておりますと、 その術を解除するには詠唱の一行(1フレーム)づつ解読していくか、術を唱えた本人に直接暗号の内容を聞く以外方法がありません」

「解読は無理だ」

螺夜は腕を組んだままの状態で静かに話を続けた。
「解読には時間がかかる。魔族が唱えた魔術を人族が解読する事は不可能に近い」
「・・・彼は魔族です。それも高位の魔族だと思います。魔術を唱える時、彼の黒髪は紅に変わり、氷の様な冷たい瞳は血の色に変わっていました。 そして、頬には紅い紋章が見えたのです」
「頬に紋章がある魔族は位の中で妖族以上の地位を持つ者。もし暗号が解読出来たとしても、それまでに村の人々が朝夕の変身に耐えられるとは思えない」
綺羅は螺夜の話を静かに聞いていたが、海斗に向かって呟いた。
「・・・彼の名前を教えて下さい。高等魔族ですと自分の身を束縛してしまう唯一の真実の名を教えているとは思えませんが、・・・彼がここにいた時、呼ばれていた名を・・・」
海斗は少しためらったが、静かに彼の名前を口にした。

「黒栖(クロス)」と。

 

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