□ 貴沙紀2 □


大地には赤い血の海が広がる。
先ほど王女の前に立ちふさがった兵士は右肩から腕をもぎ取られうずくまる様にしていたが、王女の無事な姿を見て安心するかのように微笑む。
「王女は・・・生き残り・・・メーロスへカラツの事実を・・・伝えねば・・なりません・・・」
兵士は苦しそうに咳を数回する。

「貴沙紀、その兵士に法術を。生命(いのち)が消えてしまうぞっ」

貴沙紀と呼ばれた王女は、その夢にまで無事を祈った若者の声に驚き、その緑色の瞳を向けた。
「・・・・伏・・見・・・様?」
伏見の美しく流れる金の髪が見える。
「・・・伏見様・・」
伏見は貴沙紀と大鎌をかかげる魔性の女の間に四振りの剣「吹雪」を抜き構える。
貴沙紀の緑の大きな瞳に大粒な涙が浮かぶ。

「王女、あなたには今あなたが出来る事を」

貴沙紀の両肩に優しく手が触れる。
その言葉に振り向くと、そこには綺羅と螺夜が佇んでいた。
「伏見には伏見の出来ることを。私達には私達の出来ることを」
綺羅はその紫の瞳で優しく微笑むと、すぐ後ろに立つ螺夜へ呟く。
「螺夜、伏見の補助を」
綺羅は再び貴沙紀を見つめ瞳を細める。
「私達の出来ることは兵士達への回復呪文です。法の塔、法術師の最高ランクの印を持つあなたであれば出来ますね」
貴沙紀の頭の中に一瞬、法の塔で優しく微笑んでいた紫の瞳を思い出す。
「・・・賢者・・・綺羅?・・・」
綺羅は緑の瞳を優しく見つめる。
そして、ゆっくりと瞳を閉じ、傷ついた兵士達に向かった詠唱を響かせた。

 

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