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綺羅はその光景を見ながら螺夜に呟いた。
「・・・あのアイスドラゴン、いつ契約を?」
「法の塔で強制的にゲートへ引きずり込んでしまったからな、契約には手間取った」
螺夜は銀の髪をゆっくりと掻き上げながら話を続ける。
「それに・・・吹雪に吸収される可能性があった」
綺羅は螺夜の言葉を耳にしながら、ふと伏見を目で追った。そしてある一点で紫の視線が止まる。
敵を失って意味を持たなくなり消え始めたカウンターマジックの外で貴沙紀をじっと見つめる伏見がそこにいた。
「癒せし白き女神よ。その白き吐息(ブレス)白き御手(ハンド)を我に・・・。忍び寄る死の黒き女神を死の底へ退き給え」
呟くように詠唱を唱える貴沙紀の両手が純白の白へと色を変えていく。
「白き女神の名の下、血は骨、骨は肉へ、真実の姿へ戻し給え。我は白き吐息(ブレス)、御手(ハンド)を持つ者なり・・・ヒーリング!!」
白へと変わった両手が眩しいほどに白く輝く。
そして、血を流し横たわっている兵に両手をかざした。
溢れ出ていた血が吸収される様に元の場所へ戻って行く。
腰に激しい傷を負った兵士も、足をもぎ取られそうなほど深く斬られた兵士も、服だけが破れかかった後だけを残し、完全に傷は癒えて行った。
そして、腕さえもぎ取られた兵士も腕が再生されるかのように、少しずつ元へと戻って行く。
その姿を見ながら貴沙紀は安心した様にゆっくりと息を吐いた。
傷が癒え少しずつ動き出す兵士達の奥に何体か姿を留めていない兵士達の亡骸がある。
貴沙紀は魔力で消耗した体をゆっくりと持ち上げ亡骸の元へ向かった。
「・・・ごめんなさい・・・私にはあなた達を救う手だてが無いの。宙(ソラ)へ還ってしまった体は魂を持っている者ではないと元の体へ戻すことが出来ない・・・」
貴沙紀はその場へ崩れるように座り込む。
そして、両手で顔を覆った。
「・・・あなた達をこんな姿にしてしまったのは・・・私の性・・・。私があなた達を殺してしまった」
「・・・それは違うよ、貴沙紀」
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