□ 貴沙紀7 □


その言葉に貴沙紀はゆっくりと振り向いた。
涙を浮かべたままの緑色の大きな瞳に映った者は、黄金の長い髪をなびかせ宙の青い瞳で貴沙紀を見つめる伏見その人だった。
貴沙紀の緑の瞳から大粒の涙が溢れ出す。
「いいえ、私が殺してしまったようなものです。私を守るために皆は己の身を盾に闘いました。私がいなければ皆は己の身を守り助かったかも知れない」

「・・・貴沙紀がここにいなければ傷ついた兵士は助からなかったかも知れない。貴沙紀がここにいなければ綺羅が攻撃へ転じる事が出来なかったかも知れない」

貴沙紀は驚いた表情を浮かべ伏見を見つめる。
伏見はゆっくりと優しく微笑んだ。
「貴沙紀がいてくれて助かったよ」
「・・・伏見・・・様・・・」
貴沙紀の言葉に伏見は照れるようにうつむいた。
「・・・・・」
「・・・伏見様?」
「・・・賢者綺羅も、魔術師螺夜もそう思っている。・・・そうだろ?」
伏見は貴沙紀と眼を合わせないように綺羅の方へ瞳を向ける。
突然の伏見の言葉にも綺羅は優しく紫の瞳を細めた。
「王女がおられたお陰で傷付いた兵士を委ねる事が出来ました。法術、しかも高等法術を使いこなせる方ではないと助からなかった兵士もいたかも知れません。 そして、王女がおられたお陰で私は攻撃に加勢する事が出来ました。・・・お礼を申し上げます・・・」
貴沙紀は頭を振りながら綺羅の言葉を否定する。
「いいえ、・・・いいえ」
螺夜は綺羅達の会話と退屈そうに聞いていたが、銀の髪をゆっくりと掻き上げながら綺羅の方に右手を置いた。
「・・・行くぞ」
そう、綺羅へ微かに呟き歩き出す。

 

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