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その日、カラツの夜は月も星も隠れた闇の支配する夜だった。
遠くの方から海の波音が静かに聞こえる。
綺羅達は海斗の家の二階の一部屋を借り、ゆっくりとした時を刻む。
伏見は剣を鞘から抜き、息を吹きかけながら白い布で磨いている。
螺夜はベットに足を組みながら座り、何かをじっと見つめている。
そして、綺羅は静かな闇の海を窓からガラス越しに見つめていた。
「・・・闇に住まう種族は、この様な闇の中で生きているのでしょうか?・・・この暗く寂しい闇の中で」
綺羅はガラスに写る螺夜を紫の瞳で見つめる。
螺夜は瞳を伏せながら銀の髪を掻き上げながら呟いた。
「辛く・・・苦しい闇の中だ」
そう呟いた瞬間、異様な雰囲気を感じ三人に緊張が走る。
そして、次の瞬間には防ぐ間も無いまま、海斗の家から三人とも姿を消し、違う空間へ引きずり込まれていた。
「綺羅・・・」
螺夜の呼ぶ声に、綺羅は瞳をゆっくりと開く。
「・・・無事です・・・しかし、ここはどこでしょう?」
そう呟きながらゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡した。
モノクロの空間には綺羅達以外何も見えない。
自分の立っている場所ですら何もない空間に見えた。
伏見は手に持つ二本の剣「吹雪」と「冴威」を腰に携えた。
「引きずり込まれたのは私達だけの様だ・・・」
その直後、何もない空間にある映像が現れた。
映像はクルクルと変わり、それはある一人の人物を中心に映し出されていた。
「・・・・・・これは・・・」
綺羅がゆっくりと呟く。
聖都ラ・フールティア 聖水宮での暮らし
一人の旅立ち
伏見との出逢い
そして、螺夜との出逢い
綺羅はじっとその流れる映像を見つめている。
「聖国 ラ・フールティアの第一王子 綺羅」
闇の空間から静かな男の声が響く。
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