□ 黒栖3 □


「誰だっ!!」

伏見が鋭い瞳を光らせながら叫ぶ。

「初めましてと言うべきか、幻都ディル・ウォーグの王子 伏見」

その声は三人がいる空間よりもすこし先の暗闇から聞こえてくる。
綺羅は映像が映る場所よりも奥の空間を見つめた。
見つめた暗闇の空間から、足音も立てず静かに近づく人影が微かに見える。
そして、映像の裏に一人の若者の姿が見えた。

「ようこそ、闇の空間へ」

男はにっこりと微笑む。
闇の中でも白く浮かぶ肌、艶のある短めの紅いの髪。
人族よりも少し延びた耳、そして、鋭く見つめる紅の妖眼。
魔族の紅い紋章。
普通の人間では直視出来ないほどの禍々しい魔族の気配。
伏見は驚きを隠せないまま呟いた。
「何て気配だ。ディル・ウォーグを滅ぼした妖族なんて比じゃない」
「・・・そう・・・ですね。魔族の中でも高等魔族に属する方なのでしょう・・・」
綺羅は最後の言葉は言わずに飲み込んだ。
人界には姿を見せる事もなく、知られているだけで数名程しか確認されていない高等魔族。
人族とは接する事の無い、魔族界の高貴な貴族達。
その貴族が姿を見せたとは信じる事は出来なかった。
しかし、それを認めざろう得ない魔族の強い気が辺りを包んでいる。
「あれほど簡単に門の女をうち破るとは思わなかったよ」
男は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「力を注いだ門の女をたった三人で滅ぼされるとはね・・・まぁ、そのうち一人はその魔族の一員だけど。・・・そうだろ? 螺夜」
男は螺夜をじっと見つめた。
螺夜は何も言わずに男を見つめ返す。
その瞳はいつの間にか水色の瞳から紅の妖眼へ変わっている。
螺夜は銀色の髪を掻き上げた。

「・・・黒栖(クロス)」

 

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