□ 伏見1 □


静まり返った砂の海「デストラ砂漠」

その砂漠の中央にオアシスとも言える砂漠の都があった。

名は、ディル・ウォーグ

武器に、商業にそして、武人や人々に栄えた都は、砂漠に浮かぶ蜃気楼の様に見える事から幻都と呼ばれていた。
しかし、魔族の攻撃に合い、武に栄えた都は人々と共に幻のように砂に消えた。
今は砂に埋もれた街の瓦礫だけが残る。
星月夜の凍りような静けさの中、瓦礫の側に座る一人の若者がいた。
白いマントに長く緩やかに波打つ黄金の髪を持つ若者はうずくまる様に一振りの剣を抱えていた。
見事な白銀の剣である。
その剣の柄の先には、砂漠の空のような深い青の宝石が埋め込まれていた。
若者は眠っているかのように瞳を閉じている。
しかし、若者の頭にはある会話が浮かんでいた。
-父上、この宮殿、氷樹殿(ヒョウジュデン)にも魔族が現れるようになっています。 聖国にも協力を求めて下さい。このままでは都の人々も危険にさらされてしまう-
ディル・ウォーグの王の住まう宮殿、氷樹殿に一国を守る王と、その前に片膝を立て王を見つめる王子の姿があった。
-すでに使者を送っているが、魔族の進行には間に合わない・・・聖国や都、法の塔に使者が無事に到着している保証もない-
王はスッと椅子から立ち上がり、片膝を立てる王子の前まで進み出た。
-・・・・・・ついて来なさい-
王は一言だけ呟くと、地下の宝物庫へ下りて行く。
王子も黙ったまま、王の後に続いた。
宝物庫の中には代々継がれ伝えられた王家の品々が所狭しと置かれていた。
王はその中の刃渡り1mほどの見事な細工がある鞘に収まった剣を手に取った。
-父上・・・これは・・・?-
剣の柄の先には深い青色の宝石が剣を持つ使い手を守るように埋め込まれている。
-魔剣、「吹雪」だ-
王子はゆっくりと剣を鞘から抜く。
剣の刃は水のように透き通り、氷のように冷たく鋭かった。
王は剣を見つめる王子に哀しく呟いた。
-その剣は代々王家に伝わる魔剣。一振りするだけで剣を受けた者達は凍り付く。担い手が力を持った者では氷龍を生み出すという-
王は言葉を選ぶように言葉を続けた。
-その剣を持ち、そして、今すぐこの宝物庫の奥から外へ続く道を使い旅立ちなさい-
-・・・・父上?-
王は王子の両肩へ手を置き、抱きしめるように王子を寄せた。
-私は都の者達の最期を・・・このディル・ウォーグの最期を見守らなければならない。 しかし、王子。お前はこの都を立て直さなければならない。それが王子の使命だ。王子は生き残らなければ・・・ならない-
王は呆然と見つめる王子へ何も言わずに硬貨の入った袋を手に持たせた。
その時、血だらけの兵士が今にも倒れそうな姿で宝物庫へ入ってきた。
-王!氷樹殿へ魔族が進入しました。都は・・・壊滅状態です。・・・速くお逃げ下さい・・・」
その兵は、その言葉だけを残し、その場に崩れ落ちた。
-・・・父上!・・・私も、私も皆と戦います。私一人だけが逃げることは出来ません!-
王子は王へ抱きついた。
しかし、王はそっと手を離す。
-早く行きなさい。それに、今王子をここへ残したら、私はお前の母親に申し訳が立たない-
王は哀しそうに瞳を細めると、宝物庫から出ていった。


 

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