□ 伏見4 □


「綺羅っっ、これがあなたの力か・・・」
綺羅は驚く伏見を見つめ、紫の瞳でにっこりと微笑んだ。
「次はあなたの番です」
そう言いながら綺羅は右手の人差し指と中指を伏見にかざした。

「勇まん戦士達に祝福を・・・闇を裂く聖なる光を与え給え・・・ブレス」

伏見の体が一瞬輝く、そして次の瞬間、伏見は王座に座る魔性の女に魔剣を向けていた。
女は紅い唇に笑みを浮かべながら王座から立ち上がった。
「お主の吹雪の力は最大に発揮することは出来ぬ。一種の道具が足りぬからな。それではこの私を傷つける事、ましてや滅ぼす事など出来ぬ」
「それは・・・どうかな」
伏見の影に立っていた螺夜が伏見の前へ歩き出る。
そして、話を始めた。
「魔法石「氷月」は魔剣「吹雪」にひとつ、右手のゴートンレットに一つ、両耳の飾りに一つずつ、合わせて四つ。 伏見が持っているのは二つ。確かに氷月の力は最大には発揮できない。しかし、相応の冷気を吹雪に流し込めば良いだけの事」
螺夜の言葉に女がクツクツ笑い出す。
「不可能だよ。氷月の力と同じ冷気など出せるものか」
螺夜は瞳を閉じ、詠唱を始める。

「サモン・エレメンタル・・・我は命ずる。北方に住まいし眷属よ。北の門(ゲート)より出よ。ウィンディーネ」

瞳を開く。
すると、螺夜の周りに北方に白亜の空間が開き、中から半透明な女性が姿をあわらした。
「ウィンディーネ、氷月の加護を」
ウィンディーネはその姿を氷の結晶に変え、魔剣の柄にある氷月へ入っていった。
魔族の女は驚いた表情を見せたまま立ちすくんでいる。
「・・・召喚術が使える魔術師などいるはずが・・・・」
女は螺夜の銀の髪を掻き上げる姿を見て叫んだ。
「片眼が妖眼の魔族、混血魔族(ハーフ)そのハーフに召喚術を使いこなせる魔族など・・・まさか、貴様! いや、あなたは・・・!」
伏見は吹雪を再び構える。
その吹雪には冷気が纏い、氷の様透明な刃は冷気のためか、青みがかっている。
「なぜ・・・あなたが・・・我ら魔族を裏切るような行為を」
螺夜はその言葉に氷の瞳と妖眼を細め、冷たい笑みを浮かべる。
「裏切る?裏切ってなどいない。初めから同胞などと思っていないからな」
銀色の長い髪を掻き上げる。
「伏見、滅ぼせ女を」
「そんな事、言われなくても!」
伏見は女に向かって走り出した。
そして紅い妖眼を見開いたまま立ち止まっている魔族の女を斬りかかった。
「何故・・・何故です・・・」
魔剣吹雪はその冷気で氷の竜(スターダスト)を生み出し女に向かって襲い掛かった。
氷の竜は女をその半透明な体で縛り上げる。
そして、氷の像へと変えていく。
「・・・何故ですか・・・・あなたは・・・・・魔族の・・・・」
女の体は全て凍り付き氷の結晶へと姿を変えていった。
そして、女の体が全て崩れるのと同じく、氷樹殿も溶けるように消えていった。
全てが消えたときには、魔族によって滅ぼされたディル・ウォーグの街の瓦礫と、 どこまでも続くデストラ砂漠の砂、そして、儚げに輝く一面の星々だけが残っていた。
伏見の右手にある吹雪は、精霊はつのまにか去り元の透明な剣に戻っていた。

 

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