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「聖炎宮には行かない・・・?」
宿屋の主人は大きなガラスのコップに、微かに赤く色の付いた酒をつぎながら問いかけた。
「えぇ・・・」
綺羅はゆっくりと頷き話を続けた。
「あの魔物達は、時間がたてば再び戻り、闇夜に行進を始めます。
あの魔物の中心人物はディル・ウォーグの幻影を創り、このメル・ブライクに魔物達を放つ。
ディル・ウォーグの幻を消さない限り、また魔物達は溢れ出します」
主人は並々注がれた酒を一気にのどに流し込んだ。
「あんたは、そのディル・ウォーグへ行くつもりなんだろう?」
綺羅はにっこりと笑みを浮かべた。
「私は、あなたが言うような英雄でも勇者でもありません。ただ、自分勝手に我が儘に旅をしているのです。
それに、ディル・ウォーグは元々行く予定ですから・・・」
主人はにっこり笑みを浮かべる綺羅を見つめ、人なつこい顔で笑い声を響かせた。
「あんた、名前は?」
「・・・綺羅と言います」
「ラ・フールティアから来た綺羅。気に入ったよ、あんたの事が・・・俺は宿屋の主人、城実-シロミ-だ。
俺はあんたの旅の共をしてやる事は出来ないが、旅の手伝いをすることは出来る。・・・街の外に砂漠用移動船がある。
そいつを持っていくといい。風さえ掴んでしまえば、移動用動物よりは何十倍も速く移動することが出来る。
ディル・ウォーグなら三日もあれば着いちまうよ。仲間が出来ても乗せられるし、必要なくなりゃあ、売ればいい。
移動用動物のベアスを何頭か買える。ラクジーよりは速いやつだ」
宿屋の主人城実は、付け足すように綺羅の耳に小声で話した。
「俺の手に入らない物はない。なんだったら戦いの道具もあるぜ。好きな物を持っていくかい?」
綺羅は慌てたように否定した。
「いえ、いいえ。私には砂船だけで十分です。それ以上はとても頂けません」
城実は綺羅の態度にあきれ、頭を掻いた。
「欲のない男だな。あんたは」
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