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「申し訳ございませんっ、ブロリランス様!全ては私の失態です。」
マリアが消えてから一日が経とうとしていた。
ブロリランス家の令嬢が姿を消したという事は一日で広い街中に広がり、
精鋭の男達がマリアを捜すべく館へ集まってきていた。
館の中では訃報を聞いた父親が他の街から戻ってきており、
涙を浮かべ謝り続けているルイズの言葉を聞き続けていた。
「あの時無理にでもお止めしていれば、この様な事は・・・・申し訳ございません」
「君だけの責任ではない、ルイズ」
マリアの父親はルイズの肩に両手を置いた。
「マリアはあの様な性格だ。ルイズが制止しても興味のある事を諦める様な子では無いよ」
茶色に近い金髪に青い瞳をした優しい表情の父親は、ゆっくりと話を続けた。
「それに・・・・あの事件に巻き込まれている場合、まだ、死人は出ていないからね」
「ブロリランス様・・・・」
父親は館の窓から外に集まる男達を見つめた。
「・・・・マリア・・・どうか無事で居てくれ」
マリアは黒ずくめの古城の城主、グレイの後をに付いて城の中を歩いていた。
古城には多くの部屋があり、半数を使われずに誇りの被った部屋、
半数を単色の色を基調とした落ち着いた雰囲気の部屋が並んでいた。
城の中は薄暗く点々とある蝋燭の光だけが行き先を示し、マリアの足音だけが響いていた。
階段を下り始めたグレイの後を付いて行こうとしたその時、マリアは足を滑らせた。
「大丈夫ですか・・・?マリア」
マリアの体は階段を滑り落ちる事もなく、グレイに抱かれるように受け止められていた。
「あ、ありがとう」
マリアは体を起こす。その瞬間グレイの手に自分の手が触れた。
そのグレイの手袋越しの体温に驚いて手を離した。
「氷の様に冷たいですか?」
「・・・・・・えぇ」
「手袋をしていても、あなた達には気づかれてしまうのですね」
グレイは少し寂しそうに呟いた。
マリアが何かを言いかけた時、グレイは話を続けた。
「この階段は、その先に見える部屋で行き止まりになります。
部屋はあなたが眠っていた部屋と同じ位の青を基調とした部屋です。
今は使われていませんがご覧になりますか?」
「いいえ。・・・でも、この階段はまだ続いている様に見えるわ・・・・」
「確かに階段は続いていますが、その先は行き止まりです。
私の知らない以前の住人が城の改造を行おうとしたのでしょう。挫折してしまった様ですが・・・」
グレイは階段をゆっくりと登り始めた。
「部屋へ戻ってお茶でも飲みましょう」
登り始めたグレイを横目で見ながら、マリアは蝋燭さえも途切れている先の暗闇を見つめていた。
「この城の部屋は青色や緑色ばかりなのね」
マリアは部屋に入ってきたグレイに向かって呟いた。
グレイはトレーにティーポット、二つのティーカップを乗せ歩いて来る。
「空の青色と木々の緑色ですよ」
グレイが優しく返事をする。
「この城から見える景色は毎日霧の灰色ばかり。
・・・憧れてしまうのですよ、空の青や木々の緑に・・・・」
グレイはテーブルにトレーをそっと置いた。
「マリア、あなたの瞳の様な吸い込まれる様な空の青を見ることが出来たらどんなに素晴らしい事か・・・・
その黄金の髪が太陽の光に反射して輝く様を見ることが出来ら・・・・」
「・・・・グレイ・・・」
グレイは寂しそうに少し微笑んだ。
「・・・・・・・叶わぬ夢ですが・・・」
モノトーンに包まれた城を静かに時間が過ぎ去っていった。
マリアクリス・レチェント・ブロリランスの突然の失踪から、二週間が過ぎようとしていた。
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