□ scene6 □


傭兵達は斧や剣、弓矢などの武器とランタンを手に、霧の山脈へ近づいていた。
ヴィンセントとリチャードは光が射し込むことのない針葉樹を先頭に立ち歩いていく。
その手には、香炉を持ち、その中から霧のような煙が立ち登っていた。
その煙は全てを覆い尽くそうとする霧を少しずつ消して行く。
晴れていく霧の合間から、針葉樹の木々の先にある切り立った崖の建つ古城が姿を現した。

「・・・・っ」
「どうかしたの?」
グレイの小さな言葉にマリアは不思議そうに首を傾げた。
「・・・」
グレイとマリアは沢山ある部屋の一室で、変わる事もない霧に被われた外を見つめていた。
「・・・・・マリア、あなたに迎えが来たようです」
グレイはマリアの大きな青い瞳をジッと見つめていたが、やがて目を伏せながら静かに呟いた。
「・・・下へと続く階段を下っていけば、この城から外へ出ることが出来ます。あなた今までの生活へ戻ることが出来る」
「・・・・グレイ?」
グレイはゆっくりと窓際に歩き、灰色の雲に包まれた空を見上げた。
「人間達が霧の結界を解いた様です。城の結界も解き、城内へ進入するのも時間の問題でしょう」
マリアはグレイの方へ近づく。グレイは窓の外を見つめ続け話を続けた。
「・・・以前、城の案内を行った時のあの階段です。結界が解かれれば・・・あの先へ進み、光を見ることが出来る」
「・・・嫌・・嫌よ。私はここへ残るわ」
グレイはマリアの方へ振り向く。
「・・・・マリア」
「嫌よ!私はあなたと離れたくない」
マリアはグレイの胸に飛び込んだ。
「・・・無理なのは分かっている・・・分かっているの・・・」
グレイは再び目を伏せる。そして呟いた。
「・・・城の最上階へ行きましょう」


その頃、傭兵達は行く手を遮る蔦を斧や剣で切りながら、城の崖の元へ到着した。
そこには草木も生えてない乾いた土の道が城へと続いている。
「あれが吸血鬼の居城・・・」
リチャードは息を飲むように呟く。
「この香炉を城の周りに幾つか置いておくよう指示をした」
ヴィンセントはそう呟きながら、霧の中から見え隠れする青い空を見つめた。
「そのうち全ての霧が晴れ、太陽の光を苦手とする吸血鬼は逃げ場を失う事になる」

男達は城の扉を斧で叩き壊し、城内へと進入していった。

 

-scene7-

-scene5-

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