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城内に進入していく傭兵達の声を遠くで聞きながら、グレイはマリアの手を引きながら逃げるように城の階段を登って行く。
遠くから近づく傭兵達の声。
階段を走り登ってくる勇ましい足音。
グレイは最上階の木で出来た扉を開いた。
そして、扉を閉め鉄の硬く重い鍵を掛ける。
その薄暗い部屋の奥にはもう一つの扉があり、その扉からは淡い光が微かに漏れていた。
「・・・あの扉は?」
マリアは同じように木で出来たもう一つの扉を指差した。
「テラスへと続く扉です・・・霧の結界は完全に解かれてしまったようですね」
グレイはジッとその扉を見つめる。
「私はこの部屋から先に進むことが出来ません。あの淡い光の先にある閃光は吸血鬼である私の躰を容赦なく焼き殺す」
グレイは淡い光を見つめいたが、闇色の瞳を嬉しそうに細めた。
「グレイ・・・?」
グレイはマリアへゆっくりと振り向いた。
「人間の言葉で言うとこれが「ウンメイ」というモノなのでしょうか?」
「・・・運命?」
グレイは優しく微笑む。
「私はあなたに感謝しています。あなたと私があの暗闇で出逢った事も、数日間共にいた事も、こうなると感じていた時も・・・」
その直後グレイの言葉を掻き消すかのように、傭兵達の怒鳴り声が聞こえる。
「この扉の中だ!」
「扉を斧で叩き破れ!!」
グレイは怯えているマリアを抱き寄せながら、大きな音を起てながら壊れていく扉をじっと見つめた。
薄暗く寂しい部屋の中で、グレイの闇色の瞳の奥に深い紅色が見え隠れする。
その時、一段と大きな音が響き、斧の刃が木の扉に大きな穴を開けた。
「父上・・・・。」
木の隙間から見える傭兵達の中に、マリアは父親の姿を見つけ小さく呟く。
リチャードも開いて行く穴からグレイの影に隠れるようにいるマリアの姿を見つけた。
「マリアっっ!もう安全だ。こちらへ来なさい」
「・・・・父上」
マリアはグレイのスーツをグッと握る。
「父上。私はここに居たい」
「何・・・?!」
「私は・・・帰りません」
その言葉に傭兵達は口々に叫び始めた。
「吸血鬼に魅入られた」
「魔物に魅入られた」
「悪魔に魅入られた」
「悪魔に魅入られた娘には・・・死の制裁を」
傭兵達は斧や剣を振りかざし、リチャード達が止める間もなく木の扉を破り2人に襲いかかった。
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