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グレイはマリアを右手で庇いながらも傭兵達の襲いかかる斧や剣に耐えていた。
傭兵達の振り上げる斧や剣は容赦なくグレイの体を傷つけ、体からは血が滲んでいる。
その血は腕を通り、指先から床へ届く前に灰の様に空気へ消えていった。
「父上!お願いです彼を助けて!グレイを助けて!父上!!」
悲鳴に近いマリアの叫び声が部屋中に響く。
「お前が助けようとしているのは魔物だぞ!分かっているのか?マリア!!」
その時、傭兵達の一人が射った矢がマリアの肩をかすめた。
「・・・マリア!」
肩を押さえたマリアの指の間から真紅の血液が溢れ出す。
グレイは時が止まったかの様にマリアの肩から流れる鮮血を見つめていた。
その見つめる瞳は、優しい闇色の瞳からマリアの鮮血の様な血色へ変わる。
「私だけで十分であろう・・・動かぬ魔物を傷つける事など容易いはずだ」
そう小さく呟いた瞬間、グレイの左手から生き物の様な霧が生まれ、傭兵達に襲いかかった。
「マリアを狙う必要など無いはずだ」
強力な生きた霧に締め付けられ、人形の様に崩れていく傭兵達。
それを見つめていたヴィンセントが右手に香炉を持ち、リチャードの前へ立ちはだかった。
「傭兵達はこれ以上持たない。私が制裁を・・・」
「・・・待て、待ってくれないか?」
リチャードはマリアを庇いながら傭兵達と闘うグレイを見つめる。
「・・・あの、魔物は・・・」
グレイはマリアを背後に隠しながら、少しずつ奥へと後ずさっていた。
グレイの体からは傭兵に傷つけられ、傷口からは止まることが無い血が滲んでいる。
「グレイ、あなたの傷を・・・」
「私の傷など、すぐに元に戻ります。・・・魔物の傷などすぐに戻ります」
マリアの背後には光が漏れるテラスへ続く扉が近づく。
その時、グレイの動きが止まった。
「マリア。あなたは後ろにある扉から外へ逃げ延びなさい。テラスからは地上へ通じる階段があります。
外へ逃げ延びれば魔物に・・・吸血鬼に魅入られた者として人間達から危害を与える事は無いでしょう。あなたの父上が全力で守ってくれます」
「グレイ・・・?グレイあなたは?」
グレイは振り返り、優しく微笑んだ。
その微笑む瞳は再び優しい夜色の瞳へ戻っていた。
「私もすぐに・・・」
その瞬間、グレイの体を銀色に輝く刃が貫いた。
傭兵はグレイの体から血のついた剣を引き抜く。
そして、剣を抜いた傷口からは大量な真紅色の血液が流れ出した。
しかし、グレイの血液は残す事すら許されないかの様に灰になり風に舞うように空中へと消えていく。
「・・・グレイ・・・!!」
グレイはマリアを光に解き放つかのように、マリアと共に光が射すテラスへと足を踏み出した。
淡く優しい光は狂気となりグレイへ襲いかかる。
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