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二人は深い森の中、ゆっくりと舞い降りた。
ミカエルは暗い雲が覆い今にも雨が降り出しそうな空を見つめる。
そして、遠くに佇む大きな屋敷を見つめた。
「どうやら、ヨーロッパの様ですね」
「・・・嫌な時代に降りたな・・・死の匂いが充満している」
澱んだ空。
豊かな緑の森に生気を感じない。
ミカエルは静かに呟いた。
「・・・えぇ」
そして白い翼をゆっくりと羽ばたかせる。
千切れた羽根が大地に落ちる。
不安定な空間を移動してきた二人の翼は幾つもの羽根が千切れ、飛び立つ事も出来なくなっていた。
「・・・サタン・・腕に怪我が・・・」
サタンの右腕には木々の枝で傷つけた大きな傷が出来ていた。
そこからは、赤い血が滲み、指先を伝って大地へ滴っていた。
「大した傷ではない。ミカエル怪我は?」
その時、遠くの方から馬の駆ける音が聞こえる。
二人は咄嗟に翼を隠し、人間と同じ姿に変えた。
「誰? 誰かいるのか?」
その言葉にサタンはミカエルを守るようにミカエルの前に立ちふさがる。
その手にはいつの間にか剣が握られ、馬に乗っている人物を見つめる。
サタンの見つめる先には、赤茶色の髪を一つに束ね宝石の様なエメラルド色の美しい瞳で見つめる男装の女性。
「ここは父上、グラハム・ローゼンリッヒの土地だ。この地へ許可なく進入した理由を伺いたい」
「すまない。旅の途中、賊に襲われてしまい身を隠したのだが、知らぬ間に迷い込んでしまったようだ」
「・・・怪我をしているのか?」
女性はサタンの腕から指先に伝う赤い血を見つめた。
「屋敷へ案内する。・・・父上に傷の手当を」
女性は馬の踵を返しながら、優しく微笑んだ。
「案ずるな、父上は医者だ。・・・それに、もうすぐ雨が降る」
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