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北原こどもクリニック  



林明子さんの「絵本」の秘密


  ●林明子さんの「絵本」に隠された秘密の楽しみ
林明子さんのファンなら誰でも知っている、絵本のストーリーとは直接関係のない「隠し絵」に関しては、いろんな所で語られているものの、まとまって整理されているサイトは、何故か不思議とありません。そこで、ぼくが知る限りの「隠し絵」をこのページで列挙してみようというのが今回の試みであります。 ●<ネタバレ>●になりますので、その点はどうかご容赦ください。

とは言うものの、まだまだ気がつかないことがたくさんあるはずです。ぜひ「新たな情報」をお寄せください。よろしくお願いいたします。
●メールはこちらまで●
kita@clio.ne.jp

「お父さんと読む絵本・最新版」 へもどる>




■■3人の方から、林明子さんの絵本に関して「新たな発見」のご報告がありました (2006/03/08 記)■■



杉本さん(南箕輪村)
林明子さんのページを覗いて、改めて『いってらっしゃーい、いってきまーす』
を隅々まで読みました。

先生が気づかれていてHPには載せていらっしゃらないのかもしれませんが、
ふたつ、発見したことを書いておきます。

p5で自動販売機の前にいる親子、p6では左端に、p14では
保育園から帰るシーンの中央に再び出てきます。

それからp13のお昼寝のシーン、奥の子の葉っぱ柄を除くと
タオルケットがみんなお天気(空)柄(晴れ、月と星、雨、雪、雷、曇り)。
五十嵐さん(東京)
こんにちは、東京からまいりました五十嵐ともうします(^_^)
hpの林明子さんの絵本の秘密拝見しました。
たくさんあるのですねぇぇ。

林明子さんの絵本は「あさえとちいさいいもうと」と「はじめてのおつかい」と他少
しありますが、この2冊にたくさん共通点があるの今日気づきました!!
なんだか妙に嬉しくていろいろ見ていたら他にもしかしてって思うところがあったの
でメールしてみました。(もうご存知だったらすみません)

「あさえとちいさいいもうと」の28pになんとブランコにのった「はじめてのおつ
かい」のみいちゃん本人だと思われる少女がタチコギしてます。
それと
「あさえとちいさいいもうと」の16pの犬を散歩させているおじさんは「はじめて
のおつかい」31pのコックのおじさんでは?

なんだかいろいろ見るところがあってほんと林さんの絵本って素敵ですよね。
林さん(宇都宮)
初めまして.林さんの大ファンの林と申します。同姓ですが親戚ではありません.宇都宮市の二児の母です。小3の娘と年中の息子とよく林明子さんの絵本の秘密探し楽しんでおります.北原先生の発見の中に知らないこともあり嬉しかったです。私たちも見つけましたのでお知らせします。

「とんことり」21ペ−ジ

右側木を背にする青の水玉スカ-トの女の子は、「はっぱのおうち」のさちちゃんと洋服が同じです。


「いってらっしゃい いってきます」14ペ−ジ

黄色い服の先生の右に一人たつ黄色のシャツの男の子は、「ぼくのぱん わたしのぱん」の小さいほうの男の子


「あさえとちいさいいもうと」28,29ぺ-ジ

「はじめてのおつかい」みいちゃんのとなりのブランコ「ぼくのぱん」の大きい方の男の子 髪服がにてます
 あやちゃんのとなり黄色いシャツの男の子は「ぼくのぱん」の小さいほうの男の子。二人で遊びにきたのでしょうか。
滑り台の女の子は「ぼくのぱん」の女の子に服装が似ていますが、髪の長さがちがいます。「もりのかくれんぼう」偕成社1987のけいこちゃんと同じ服ですし髪も同じくらいです。たぶんけいこちゃんです。

 以上が私たち親子でみつけたものです。もしかしたら無理やり当てはめているかも知れませんが、うちではこのように考えました。また新たな発見したいです。これからもホ−ムペ-ジ楽しく拝見したいとおもいます。それではまた。



●福音館書店のサイトでの「林明子」特集(2005年06月05日)

●林明子さんの最新 Q & A を見つけました。(2003年11月08日・記)

http://www.ehonnavi.net/akikohayashi_QA.asp

「何かが始まった場所」 林明子 ■(季刊教育かながわ 8月25日号)







『いってらっしゃーい いってきまーす』
  神沢利子・作、 林明子・絵(福音館書店)¥800(税別)

  1983年07月01日 こどものとも発行 1985年04月01日 特製版 第1刷
  2005年03月25日 特製版 第3刷


●今年の3月に限定復刊されたこの絵本。やっぱり、いろんな「仕掛け」があちこち仕込まれているのですが、いきなり「ネタばらし」ではヒンシュクを買うと思い、今日まで書くのをガマンしておりました。

●<30 〜 31ページ>
最後から「ひとつ前」の場面。「ビューティーサロン 青い鳥」と、「コーヒー 猫」の看板にご注目。「コーヒー 猫」の前に、白黒のブチの猫がいて、何かを見上げています。その視線の先には、2階のベランダに女の子と、青い鳥

●<表紙>
屋根の上に、青い鳥。ブロック塀の上には、ブチの猫

●<2 〜 3ページ>
たばこ屋の2階で新聞を読むおじいさん。17ページ横断歩道のシーンで再び登場します。雰囲気が、例のタワシ頭のサングラスおじさんによく似ていますが、同一人物なのでしょうか? 3ページには、例の猫と青い鳥。道路のずっと向こうに、犬の散歩をするおばさん。

●<4 〜 5ページ>
4ページ。犬の散歩をするおばさん、再び。
5ページの商店街。お店の名前がみんなダジャレになっています。「酒能見商店」(酒飲み)、「大森屋」(蕎麦の大盛り)、福音館ならぬ「ふくいんぱん」

●<6 〜 7ページ>
6ページの左端。「ふくいんぱん」のお店を覗く姉と弟。この2人は、同じく神沢利子・作、林明子・絵『ぼくのぱん わたしのぱん』かがくのとも傑作集(福音館書店)に登場する姉弟。『ぼくのぱん わたしのぱん』の、3ページとほぼ同じ構図になっています。

「葦野履物店」(足の履き物)、「亜井肉店」とは、ごあいにく。「理髪チャーリー」にはチャップリンの絵。「談話室かんざわ」と「キャンドルアート利子の店」は神沢利子さん。空には、青い鳥。ここの横断歩道は、帰りの時に道路の反対側が登場します。

●<8ページ>
左上に、青い鳥。

●<11ページ>
右端に、猫と青い鳥。天然パーマやらいろんな髪型の子供たちが、みなそれぞれに個性的に描かれています。

●<15ページ>
青い鳥と、しつこく追いかけ回す猫。

●<19ページ>
ほら、青い鳥。猫は探してる。

●<20ページ>
ネズミがいるよ。

●<22 〜 23ページ>
「亜井肉店」の店先。のぞき込んでいるオバサンのスカートに、牛・豚・鶏の図柄。「カレーの日」のポスターは『ぼくのぱん わたしのぱん』の表紙のパロディ。左端のおばさんの左足の靴下、ゴムが緩んでるよ。

●<27ページ>
自動販売機の「おつり」の口に10円玉発見! 大きな声でおかあさんに報告するなおちゃん。でもお巡りさんが通りかかったので、困って自分の娘じゃないようなふりをしている、おかあさん。この場面すきだな。

●<28 〜 29ページ>
ブロック塀に隠されたネックレスは何?

●<31ページ>
道のずっと向こうに、自転車に乗ったおとうさん。

●<裏表紙>
青い鳥をあきらめた猫。
(2005年 6月05日 記)

 
『いってらっしゃーい
いってきまーす』
神沢利子・作、林明子・絵
(福音館書店)


 
『ぼくのぱん わたしのぱん』
神沢利子・作、林明子・絵
(福音館書店)




































『はじめてのおつかい』 筒井頼子・作、 林明子・絵(福音館書店)¥800(税別)   1976年03月01日発行 1977年04月01日 こどものとも傑作集 第1刷
 2003年 第 刷


●マッチ盗ったの誰よ?(2003年8月13日・追記)

先日、八ヶ岳小さな絵本美術館林明子絵本原画展 を見に行ってきました。
たしかに、『とんことり』の原画は褪色が明らかでしたが、『きょうはなんのひ?』の原画のすばらしさといったら、ホント凄いですよ! 細密に描かれたレースのカーテン、アップライト・ピアノへの光の当たり具合と、掃除機が反射して写って見えるリアルさ。この「質感」は、原画でないと絶対に味わえません。

それから『はじめてのおつかい』。こちらの原画も素晴らしかった。で、原画を見ていて初めて気がついたのですが、あの「筒井商店」 のタバコケースの上には、当初、赤いマッチが「9個」並んでいたのですが、タワシ頭のサングラスおじさんが店先に現れた時には、なぜか「7個」しかないのです。もしかして、おじさんが2個、マッチをポケットに忍ばせたのかな? (^^;;


●『はじめてのおつかい』に関しては、絵本の『絵』を読む (香曽我部秀幸)講座レポートで、かなり詳しく解説されているので、ここでは、その場で取り上げられなかった問題にだけ触れたいと思います。

●なぜ「牛乳」か?

これは、全国小児科医のメーリングリスト「外来小児科FTML」の中で、昨年5月に秋田の水野先生から出された疑問です。3ページに「あかちゃんの ぎゅうにゅうが ほしいんだけど、まま ちょっと いそがしいの。ひとりで かってこられる?」 そう書かれているので、赤ちゃんのための牛乳な訳ですが、現在の小児科の考えでは、牛乳は、母乳やミルクに比べて高タンパクで、赤ちゃんの腎臓に負担がかかってしまうことと、鉄分が不足していることから、1歳前の乳児には、直接牛乳は与えないというのが常識 だからです。

もちろん、離乳食の材料として牛乳を使用することは、まったく問題ありません。2ページを見ると、確かに哺乳びんも空っぽだけれど、おかあさんはどうもホットケーキを作ろうとしているみたいで、そのために牛乳が必要なのではないか? というのが他の先生からの解答でした。

ただ、裏表紙を見ると、赤ちゃんと「みいちゃん」は仲良く牛乳を飲んでいるんですね。でもまぁ、27年前に作られた絵本ですので、あまり目くじらたてて、うるさく指摘する必要もないかな、ってところでしょうか(^^;)

●道路の左側通行は危険だ?

『幼児が喜ぶ絵本』 宮崎清・著には、p113 に、こう書かれています。
しかし、残念なのは、主人公のみいちゃんがお使いの行き帰りに「左側歩き」をしていることです。それは、長野県のある保育園の読み聞かせで五歳児が見つけたことでした。
確かにそうなんですね。「みいちゃん」は左側通行をしている。だから何となく危険で怖い印象が、この絵本にはあるのではないでしょうか?  ただ、出典は忘れましたが、ぼくが以前読んだ中に、こんなことが書いてありました。この絵本は、はじめ「右開き」の絵本としてダミーが製作されたのですが、福音館の方針として「左開き」で、物語が左から右へ次々と展開してゆくように書き改められたのです。だから、その結果「左側通行」になってしまったのではないでしょうか?。左→右の方向で主人公を動かすには、どうしても「左側歩き」でないと、絵がおさまらないからです。

(もう少し続く。 2003年 5月16日 記)

『ユリイカ2月臨時増刊号 総特集・絵本の世界』(青土社)¥1800 に、林明子さんのロングインタヴューが載っているのですが、これがなかなかに読ませます。
見ないでは描けないので、たいていはモデルがあるんです。『はじめてのおつかい』 は自由が丘、田園調布界隈。今もあのタバコ屋さんがあるんですけど、スーパーみたいになっちゃって、全然違う雰囲気なの。でも、「はやしあきこのえのきょうしつ」とか貼り紙のある掲示板は、そのままなんです。あんなふうに、看板や表札に作家の名前を入れたりする遊びは、編集の方のアドバイス。私があんまりかたくなってるもんで、「もっと遊んでくださいよ」っていろいろ考えてくださって。そしたら、次の絵本でもまたやらなくちゃいけないんじゃないかと思って、(笑)次々と。……まじめなんです、自分でも困っちゃうぐらい。

『とん ことり』 では山の見える町が必要だったので、筒井さんと伊豆のほうに行きました。普通の町に、山を描いちゃえばいいのにね(中略) 『きょうはなんのひ』は、姉の家と瀬田貞二先生の家にうかがいました。一戸建ての家という設定だったので、上がって取材できるところはそこしかなくて。(中略)

子どもを描くときは、たいてい姪か甥にモデルになってもらいます。「仕事なのよ」って、ちゃんとポーズをとってもらったりして、お礼におもちゃを買ってあげるの。『こんとあき』『はっぱのおうち』 は、同じ子なんです。見るとわかるんじゃないかな? (中略)

内気とか引っ込み思案だって言われてました。ひとりでいることが多くて、あれこれ見ながら、考えてた。人とうまく口がきけなくて。(中略)

大人になるにつれて、だんだんとひらきなおって、昔よりは楽になりました。でも、人間は、ほんとうの芯のところでは子どもの頃のままなんじゃないかと思うんです。あのときがほんものの私で、あとはくっついてるだけって感じがする。(p76〜83)
●『ユリイカ』でのインタビューにも登場する「p15, P27」の掲示板 のはなし。

  「このねこをみつけたひとは 292-3401 へ おでんわください ひらたより」 この電話番号は、当時の福音館「こどものとも」編集部の本当の電話番号だったのだそうです。で、実際に「ねこ 見つけました!」という、子どもからの電話が、よくかかってきたんですって(^^) それから、当時「こどものとも」編集部にいた「平田さん」は、現在も福音館にいて、「かがくのとも」? だかの編集長をされているそうです。「しばたしんご」さんも、当時の編集の人で、ギターが上手かったのだそうです(^^)
(2003年 5月18日 記)


『はじめてのおつかい』
筒井頼子・作、林明子・絵
(福音館書店)























『あさえとちいさいいもうと』 筒井頼子・作、 林明子・絵(福音館書店)¥800(税別)   1979年05月01日発行 1982年04月20日 こどものとも傑作集 第1刷
 1994年09/05 第32刷



『いもうとのにゅういん』 筒井頼子・作、 林明子・絵(福音館書店)¥800(税別)   1983年02月01日発行 1987年02月25日 こどものとも傑作集 第1刷 2001/09/15 第31刷
 


●この2冊は、主人公の姉妹が共通しているので、いっしょに取り上げることにします。

『あさえとちいさいいもうと』

●<表紙・4ページ>
あさえが妹に靴をはかせている表紙の絵は、4ページの泣いて起きてきた妹が裸足で玄関に立っているシーンの次にくる場面ですね。

●<12ページ>
あさえが「キキーッ!」という音にビックリして、右手からチョークを落とすシーンです。フェリックス・ホフマンの『おおかみと七ひきのこやぎ』(福音館)第10場面を見ると、自宅の惨状に驚愕した母ヤギが、両手を前にあげて持っていた「かさ」を床に落としてしまうシーンが出てきますが、人間(ヤギも)ビックリすると、手に持っているものを落としてしまうんでしょうね、きっと。

●<16〜17ページ>
16ページ左端の電信柱には「筒井商店」の電柱広告。言わずと知れた『はじめてのおつかい』で「みいちゃん」が牛乳を買うお店が「筒井商店」です。通りの向こうの「シバタ電気」の店先に出てきた黄色い洋服のオバサンにも、見覚えがあるでしょう?   その右手には、藤色の風呂敷を左手に、例のタワシ頭のサングラスおじさんが歩いて来ます。空には飛行機が飛んでいますね。『はじめてのおつかい』と『あさえとちいさいいもうと』は自由が丘、田園調布界隈にロケハンされていて、じつは同じ町内のはなしだったんです。

●<18〜19ページ>
同じ町内の話である証拠をもう一つお見せしましょう。このページは『はじめてのおつかい』の8〜9ページの空からの俯瞰場面と同じ構図のページです。あさえの自宅は場面左下にあって、「キキーッ!」の音にビックリしたあさえは、左上まで走って右折し、大通りの手前で立ち止まります。その後、自宅前までもどって、今度は場面右上にある公園に向かって行くワケですが、18ページ右上の、2階ベランダに洗濯物が干してある家の右下をご覧下さい。「あのネコ」が、飼い主の元に戻らないまま、まだうろちょろしてるではありませんか!

●<28ページ>
『はじめてのおつかい』の「みいちゃん」が、ブランコに立ち乗りしています。この木漏れ日の感じは、何時ころなんでしょうか? お母さんはあやちゃんをお昼寝させてから銀行へ行ったわけだから、銀行が閉まる午後3時前ごろではないかと、ぼくは推理します(^^;)

●<32ページ・裏表紙>
宮崎駿監督は、このシーンが大好きなのだそうです。妹の「脱力感」がホンモノである、ト。遠くに迎えに来たおかあさんが描かれていて、裏表紙で3人仲良く手をつないで家へ帰るシーンで終わっています。あぁ、よかったよかった(^^)

もう少し続く (2003年 2月26日 記)

●松居直さんは『絵本・物語るよろこび』(福武文庫)1990/09/10発行、の中で、このように書かれています。
 またこの作品の特徴の一つは、主人公をはじめおもな人物の描き方です。あさえ、妹のあやちゃん、お母さん、よその男の人などの顔に注意してください。ほとんどの顔の表情がみえないか、後姿です。これは偶然ではありますまい。あさえは十七場面のすべてに登場していますが、はっきり顔を正面に向けているのは第一場面だけです。

これは物語絵本の主人公の表現の仕方としては異例です。しかしどこかへ姿を消した小さい妹を探す主人公の不安や心配や恐れといった心の動きを、読者に想像させ感じさせるための一つの表現の仕方でしょう。(p164)


『いもうとのにゅういん』

●<2ページ>
『とんことり』のところでも書きましたが、あさえの友だちの「ひろちゃん」は、『とんことり』の「おともだち」と同じ髪型・顔立ち、同じような服装をしています。

●<13ページ>
これは子ども部屋 にベッドが2つ並べてあるのでしょう。それにしても、妹のあやちゃんの「まくら」何だか変な形をしていますが、これは何なんでしょうか? <19ページ>では、お父さんが子ども部屋へ来て、あやちゃんのベッドで寝ていますが、でもまくらは「お父さんのまくら」を持ってきたみたいですね(^^;)

●<21ページ>
ここは有名なので、みなさんご存知でしょう。例のタワシ頭のサングラスおじさんが、松葉杖つきながら看護婦さんの説明を真面目に聞いています。その奥の「牛乳の自動販売機」の前には『はじめてのおつかい』のみいちゃんと、だいぶ大きくなった妹を抱っこしたおかあさんがいて、牛乳を買おうとしています。
(2003年 4月11日 記)

●同じページで、母親のコートの後ろを左手でつかんでついて行く男の子は、『おふろだいすき』の主人公、まこちゃん。(岩田杏菜さん:9歳より情報提供していただきました)
(2003年 5月16日 追記)


 
『あさえとちいさいいもうと』
筒井頼子・作、林明子・絵
(福音館書店)


 
『いもうとのにゅういん』
筒井頼子・作、林明子・絵
(福音館書店)























『とん ことり』 筒井頼子・作、 林明子・絵(福音館書店)¥728(税別)   1986年04月01日発行 1989年02月10日 こどものとも傑作集 第1刷
 2002年 第 刷


●次に取り上げる一冊は、個人的にも大好きで、たいへん完成度の高い絵本『とん ことり』。この絵本は「本格推理小説」だと思うのです。「とん ことり」というタイトルからして謎めいているし、新しい土地に引っ越してきたばかりで、父母以外にはまだ誰も知り合いがいない一人の少女の不安と緊張が、まるで自分のことのように読者にもビンビン伝わってくる幕開け。お父さんは仕事、お母さんも片づけに忙しくてちっとも相手をしてくれないので、少女は仕方なく部屋で一人遊びするしかありません。と、そこへ「とん ことり」と謎の人物から次々に贈り物が届けられるのです。

<p20〜21>
幼稚園のシーン。いったい誰なんだろう? と、少女は知らない子どもたちの顔を一人一人見ています。この時点では読者もまだ「おともだち」 が誰なのかわかりません。でも、犯人はちゃんとこのシーンにいて、左端の洗い場の影から、そっと少女を見つめています。

<p29>
おともだち とのご対面シーン。この絵本の中では「おともだち」には名前がありません。しかし『いもうとのにゅういん』筒井頼子・作、林明子・絵(福音館書店)の<2ページ>に登場する、あさえの友達ひろちゃんが、同じ髪型・顔立ち、同じような服装をしています。こちらは自由が丘付近が舞台、『とん ことり』は伊豆にロケハンした話ですので、この二人が同一人物であるかどうかは不明です。

<p15>
山の見える町の商店街のシーン。主人公は道路の左側手前に母親といて、その道路の反対側の右手ずっと前方をよーく見ると、やはり母親と手をつないだ「おともだち」が、こちらを振り返って見ています。

・山の上の空を見上げると、雲が「おさかな」のかたちをしています

・道路の左側前方の「看板」には、朝日新聞ならぬ「朝絵新聞」、その手前に「毛糸・綾子」の文字。これは前述の『いもうとのにゅういん』と『あさえとちいさいいもうと』に登場する姉と妹の名前です。

・主人公の「かなえ」の左横を見ると、「信頼堂」という雑貨屋さんの店の中に、例のタワシ頭でサングラスかけたおじさんがいます。

<3ページ>
最初のシーンです。画面中央をよーく見ると、なんと!「おともだち」が黄色い自転車に乗ってこちらを見ているではありませんか! 犯人は最初から登場していたのです。本格推理小説の鉄則が、ちゃんと守られているんですね。すごいな(^^)

(2003年 1月18日 記)




『とん ことり』
筒井頼子・作、林明子・絵
(福音館書店)























『こん と あき』  林明子(福音館書店)¥1300(税別)   1989年06月30日 初版第1刷発行 2001年03月05日 第44刷


●最初に取り上げる一冊は、林明子さんの絵本の中で最も人気の高い『こんとあき』です。

●<表紙>
・こんとあきが立つホームの後ろで微笑んでいる老夫婦は、林明子さんのご両親。この二人は『ズボンのクリスマス』林明子(福音館)に登場する、おじいちゃん、おばあちゃんと同一人物のようです。また『サンタクロースとれいちゃん』林明子(福音館)27ページのサンタの右手は、おとうさんの手を林さんが写真に撮らせてもらった手なのだそうです。
小さい時ね、私しょっちゅう具合が悪くなる子だったの。それで寝てると、「ただいま」って父が帰ってきて、母が「あこちゃんがね…」って言ってるのが聞こえて。すると、ふすまがすっと開いて、「どうしたの」って、父が必ずおでこに手を当てて熱を計ってくれるんですね。その手なの。そうして、絵の中に残しておいたなあって思いますね。(『MOE /2002年10月号』p79 より引用)
・線路の向こう側のホームでは、なぜかチャップリン不思議の国のアリスにあいさつしていて、その左隣で白い手さげ袋さげて急いでいる黄色い服のおばさんは、もしかして(少しダイエットした)シバタ電気のおばさん か?

さらに左に視線を移すと、エルジェ『タンタンの冒険旅行』(福音館)の主人公が茶色いズボンのポケットに両手を突っ込んで立っていて、その左横には『はじめてのキャンプ』林明子(福音館)2ページに登場するなほちゃんが同じ服装で立っています。

・ホームの上の空を見上げると、雲が犬のかたちをしています(ちょっと苦しいか(^^;;)

●<9ページ>
・二人が乗り込んだ列車の右側の座席には、『さむがりやのサンタ』ブリッグズ(福音館)が腕組みしていて、20ページでもう一度登場します。左側の座席の若い女性は林明子さんご本人がモデルとの噂。彼女は「NAHO」と書かれた腕輪をしています。

●<12ページ>
・「あき」がのぞく窓の次の窓には「さむがりやのサンタ」、その次の窓を見ると『ピーターラビットのおはなし』ビクトリクス・ポター(福音館)p20に登場するマグレガーさんが乗っています。その向かい側の席には『不思議の国のアリス』にでてくる帽子屋がいて、さらに5番目の窓には同じく「アリス」に登場する公爵夫人(講談社文庫版 p137)の横顔が見えます。

●< 36ページ>
・林明子さんの今は亡き鳥取のおばあちゃんと、そのお家。このおばあちゃんは『ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ』(ペンギン社)の最後で登場するおばあちゃんと、同じ人がモデルですね、きっと。

「こん」のぬいぐるみ

お話には出てこないけど、こんの布地は死んだおじいちゃんの古いコートなの(『MOE /2002年10月号』p78)
・林明子さんの軽井沢のお宅には本物の「こん」がいます。(『ユリイカ臨時増刊・総特集=絵本の世界』p81)
・「こん」のぬいぐるみの作り方は、月刊誌『母の友/1997年4月号』(福音館書店)に載っているそうです(ぼくは未見)

(2003年 1月03日 記)

【参考文献】

1)『絵本はともだち』 中村柾子(福音館)p223
2)『好き!絵本とおもちゃの日々』 相沢康夫(エイデル研究所)p30
3)『MOE /2002年10月号』 林明子・優しい少女の物語 p69〜80(白泉社)
4)『ユリイカ臨時増刊・総特集=絵本の世界/2002/2月』(青土社)
          作家を訪ねて・林明子・大きな目が写し取った世界p76〜83
5)『絵本・物語るよろこび』 松居直(福武文庫)「林明子の語りの魅力」p158〜171
6)『母の友/587号(2002/4月号)』(福音館書店)p94
7)『母の友/1997年4月号』(福音館書店)
8)絵本の『絵』を読む (香曽我部秀幸)講座レポート

9)林明子さん・自身を語る・ 岩本和博さん



『こんとあき』
林明子・作絵
(福音館書店)























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