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北原こどもクリニック  



しろくま  Now & Then


  ●過去に書き貯めた「文章」と、現在進行形の「不定期日記」など



  ●「不定期日記」●  <先月までの日記>
  
  ●「長野医報」 上伊那医師会報」などへ投稿した文章●
   <伊那谷の老子>
   <小児科医だからできること>
   <父親の育児参加について考える>
   <当世「辛いもの」行脚>
   <子どもの発熱について> (2003/05/31)
   『はっぴいママ』に依頼されて書いた原稿。 (2004/10/02)
  ● 月刊かみいな「健康カレンダー」のために書いた原稿 (2006/03/19)

  ● 「伊那のパパズ・絵本ライヴ」活動の歩み ●(2009/04/26)

   

●「不定期日記」●

 新規ブログ「しろくま通信」への移行のお知らせ       2009/12/05

■ずっと悩んできたのですが、このサイトの「しろくま不定期日記」を、ブログ『しろくま通信』としてリニューアルすることにいたしました。

今後、新たな発信はすべてブログのほうで行います。こちらのサイトはそのまま残しますが、dcn のウェブサーバーにファイルを再構築する予定です。

■すみませんが、『しろくま通信』 をブックマークし直してください。よろしくお願いいたします。

 正しい「青春群像+片思い映画」について       2009/11/28

■明日というか、実はもう今日なのだが、午前7時14分JR伊那市駅発の「快速みすず」に乗って長野まで出かける予定でいた。長野着、9時57分。10時20分から、長野駅横の第一ホテルで「長野県小児科医会」の秋の総会と研修会が開催されるからだ。今回の総会は協議事項満載。新型インフルエンザのワクチン接種を、長野県下各地の開業小児科医は「いったいどうやって」こなそうとしているのか? ぼくには全く想像がつかないので、ぜひとも直接訊いてみたかったのだ。

今日の夕方、いなっせ横の「美華」で「渡り蟹のチリソース和え」と「麻婆豆腐&ライス」と、ラーメン&ワンタン麺とを息子たちと分け合いながら食べている時にはまだ「明日は早起きして長野に行かなきゃ」そう思っていた。同行した妻は、麻婆飯を一人お先に注文して食べ終わり、今宵6時半から境区公民館で開かれる伊那東小の次期 PTA会長選出会議(地区PTA協議会)に出席するため、一人だけ先に出向いていった。もうそんな時期なのか、よろしくな。

■午後7時過ぎ「美華」から帰宅。息子たちは「嵐」の相葉クンがレギュラーの「天才!志村動物園」(日テレ)を見始める。わが家の次男(小5)が熱烈な「嵐ファン」なのだ。ぼくは一人で再び外出し車で「テルメ」へ。土曜日のテルメ3階ジムは夜8時閉店だから急がなくてはならない。最近ちっとも走れないから焦っていた。今週はそれでも頑張って今日で3日目のラン。時間がないから時速 11kmで6キロ走った。苦しかった。息があがった。これではフルマラソンはとても走りきれないな。明日の日曜日も走れればいいのに。ふと、そう思った。でも、明日は長野だ。しかも、帰ってきて夜7時から伊那中央病院の小児一次救急当番に当たっている。じゃぁ、走れないじゃん。

そう言えば、信州高遠美術館での熊谷守一展もまだ見に行っていない。硬直した思考回路をリセットしたら、長野行きを中止すれば全てが上手く行くことが判明した。そうか、長野行きをキャンセルすればいいんだ、なんだ簡単じゃん。というワケで、早朝起きなければならないのでよる10時過ぎに早々寝たのだけれど、午前1時に目が覚めてしまい未だに起きている。ふとテレビを付けると、BS2で映画『ハチミツとクローバー』をやっていた。思わず見入ってしまう。うんうん、これは傑作だ。まさに、正しい青春映画だな。そう思った。

■青春映画のデフォルト・フォーマットは「片思い」だ。そうに違いない。基本設定は普通「男2人+女1人+海!」これが鉄板だ。ぼくが大好きなフランス映画『冒険者たち』が、まさにそうだった。それから、日本映画でいえば『八月の濡れた砂』かな。藤田敏八監督の大傑作。ところが、『ハチミツとクローバー』は「男3人+女2人+海!」なのだ。そこが新しい。でも、基本片思いは同じだ。そこがスバラしい。カメラがいい。脚本がいい。そして、役者がいい。でも櫻井翔クンだけが下手! 

好きなシーンがいっぱいある。まずは、加瀬亮が関めぐみを「おんぶ」して、夜の堤防沿いを歩くシーンが一番好きだ。スクリーンからは想像もできなかった関めぐみの「大きなおしり」がそこにあった。あと、宮大工の師匠・中村師童が、自転車で走る櫻井翔クンに「若者はいいね!」って言うシーン。ここもいいな。

 今日の昼休みは、竜東保育園・年少組で秋の内科健診       2009/11/26

■例年に比べて、いわゆる「ゲボかぜ」(ノロウイルス感染症)の患者さんが今年はまだ少ない。RSウイルス感染症の乳児もいない。さらに、新型インフルエンザを伝染されることを恐れる親御さんが小児科受診を控えているために、新型インフルエンザ流行中とはいえ、案外当院の外来は空いているのだった。今日も昼12時過ぎには午前の診療は終了。「笑っていいとも!」を見ながら昼食。2階に上がって50分間昼寝の後、午後2時からは竜東保育園へ自転車で出向いて年少組(3クラス)の内科健診。30分強で終了。そのあと健診が終わった年少組の子供たちに絵本を読む。

1)『COLOR ZOO』 Lois Ehlert(Harper Festival)今回、最後のページから逆に読んでみる。この方が面白いかも。
2)『のりものいろいろかくれんぼ』 いしかわこうじ(ポプラ社・読み聞かせ大型えほん)
3)『ねこガム』 きむらよしお・作(こどものとも年少版/ 2005年1月号)
4)『しましま みつけた』 平野恵理子・作(こどものとも年少版/ 2009年9月号)
5)『七ひきのねずみ』 エド・ヤング作、藤本朝巳・訳(古今社)
6)『こんにちワニ』 中川ひろたか・文、村上康成・絵(PHP)

■竜東保育園では、新型インフルエンザは未だ流行していない。今は2人のみ罹患中とのこと。年少組の子供たちはみなとっても元気がよかった。『ねこガム』が大受け。「もっかいよんで!」って何度も言われ結局2回読んだ。『七ひきのねずみ』は「今ひとつ」だったようだ。当初は、エッツの『もりのなか』を読んでみようかと思っていたのだが、黒白の地味な絵本を読む勇気がなくて『七ひきのねずみ』にしたのだった。次回は勇気をだして『もりのなか』を読んでみよう。どんな反応があるかな?

■午後は午前中よりも混んで18:45過ぎまで診療はかかった。他医院が午後休診にしている木曜日だからね、仕方ないのだ。

 伊那のパパズ「絵本ライヴ」(その57)(その58)(その59)       2009/11/23

■昨日の11月22日(日)は朝9時から午後3時前まで、ひたすら新型インフルエンザのワクチン接種。最優先の子供たち72人に接種した。ただしこれは1回目。2回目分のワクチンが、いつ配布されるのかもまだ分からない。困ったものだ。


■先週、11月14日の土曜日の午前中、伊那のパパズ「絵本ライヴ」(その57)が、南箕輪村立「南部小学校」体育館で、全校生徒+先生方+親御さん方の前で行われた。ぼくは参加できなかったので詳細は不明だったが、子供が南部小に通っているお母さんが「すっごく楽しかった!」と報告してくれた。そしたら、倉科さんが当日のメニューを教えてくれた。

1)『はじめまして』
2)『あらまっ!』 ケイト・ラム文、エイドリアン・ジョンソン絵(小学館) → 伊東
3)『むかしむかしとらとねこは』  大島英太郎・作(福音館書店) → 坂本
4)『いっきょくいきまーす』 長谷川義史・作(PHP) → 宮脇
5)『まめうしあいうえお』 あきやまただし・作(PHP) → 倉科

6)『いっぽんばしにほんばし』 中川ひろたか・作(アリス館)
7)『かいじゅうのこんだて』 中川ひろたか・作(PHP)
8)『かごからとびだした』 (アリス館)
9)『うちのおばけ』 (世界文化社)
10) 『いろいろおんせん』
11) 『ねこのおいしゃさん』
12) 『ぶきゃぶきゃぶー』 内田麟太郎・作

13) 『ふうせん』 中川ひろたか・作(アリス館)
14) 『せかいじゅうのこどもたちが』


■さて、今日の勤労感謝の日は、午前中に大町市で、午後は北安曇郡松川村で僕らの「絵本ライヴ」があった。朝8時に自宅を出発し、ガソリンを満タンにしてから、坂本さん、宮脇さん、倉科さんと拾って、伊那インターから中央道→長野道・豊科インターを経て午前9時半過ぎに会場の「大町商工会議所多目的ホール」に到着。晩秋の小春日和でドライブには気持ちいい一日でした。この日、本当は「大町市児童センター」が会場だったのだが、新型インフルエンザ流行拡大のため、同センター主催の11月・12月の行事が全て中止されることとなってしまい、急きょ、僕らを呼んで下さった大町市児童センター家庭児童相談員の市川雅江さんがお仲間の有志と共に場所を別に設定して自主開催してくれたのだ。ほんとうに有り難いことです。

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1)『はじめまして』
2)『どうぶつ しりとりえほん』 薮内正幸・作(岩崎書店) → 北原
3)『もっとおおきなたいほうを』 二見正直・作 (福音館書店) → 坂本
4)『かごからとびだした』
5)『まくらのせんにん さんぽみちの巻』 かがくいひろし( 佼成出版社) → 宮脇

6)『うちのおばけ』(世界文化社)
7)『いろいろおんせん』 増田裕子・作
8)『大阪うまいもんのうた』 長谷川義史・作絵( 佼成出版社) → 倉科

9)『ふうせん』
10)『世界じゅうのこどもたちが』


■大町終了後、松川村図書館長・棟田聖子さんの先導で「安曇野ちひろ美術館」へ。松川村図書館長さんの顔パスで入場し、ここの喫茶室で昼食をゴチになる。「きのこのおこわ」美味しかったデス。ごちそうさまでした。その後、新しく出来たばかりの「松川村図書館」が入る松川村「すずの音ホール」へ移動。松川村役場の南側にできたこの施設は、じつに気持ちいいねぇ。日当たりがいいし、図書館も2階の公民館施設もよく考えられて作られている。ここで午前中仕事で参加できなかった伊東パパ一家が合流。メンバー5人揃い踏みと相成った。

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伊那のパパズ絵本ライブ(その59) 松川村図書館■  2009/11/23(月)午後2時〜3時

1)『はじめまして』
2)『ぶたのたね』 佐々木マキ・作(絵本館) → 伊東
3)『COLOR ZOO』 Lois Ehlert(Harper Festival) → 北原
4)『のりものいろいろかくれんぼ』 いしかわこうじ(ポプラ社・読み聞かせ大型えほん) → 北原
5)『どうぶつサーカス はじまるよ』 西村敏雄(福音館書店) → 坂本
6)『かごからとびだした』

7)『もりもりくまさん』 長野ヒデ子・作、スズキ・コージ・絵(すずき出版)
8)『にんげんごっこ』 木村 裕一・作、長新太・絵(講談社) → 宮脇
9)『ねこのおいしゃさん』 増田裕子・作、あべ弘士・絵
10)『大阪うまいもんのうた』 長谷川義史・作絵( 佼成出版社) → 倉科

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「大阪うまいもん・おやじダンサーズ」

11)『ふうせん』
12)『世界じゅうのこどもたちが』

楽しんでもらえたかな? ぼくらを呼んでくださった、市川さん、棟田さん、ほんとうにありがとうございました。午後6時過ぎに帰宅。中学1年生の長男は、昨日の夜から発熱し、迅速検査でインフルエンザA型(=新型インフルエンザ):陽性。昨夜からリレンザ吸入を始めたのだが、今日は一日39度の発熱が続いていたそうだ。息子がうんうん苦しんでいる時に、父さん留守してごめんよ! 勘弁してな。


 『粘膜人間』 飴村 行・著(角川ホラー文庫)読了           2009/11/21

■「粘膜」はクセになる。『粘膜蜥蜴』のあとは、密林熱帯秘境小説しかないかと『闇の奥』コンラッド(光文社文庫)を取りだしてきたのだが、粘膜の誘惑には勝てなかった。ということで『粘膜人間』。一晩で読了。これは濃いな。すっごく「グッチャネ度」が濃厚。あ、そう言えば「ぐっちょね」は間違いで「ぐっちゃね」が正しいのだ。あはは。

主人公の溝口祐二、利一、雷太の三兄弟は、それぞれにすっごく嫌な奴で、ぜんぜん感情移入できないので、読者としては仕方なく脇役で登場する河童三兄弟のモモ太、ジッ太、ズッ太や、兄が入隊前夜に逃亡したために「非国民」の烙印を押された女子中学生、成瀬清美に感情移入してしまうから、とんでもなく変な気分に陥ってしまうのだな。だって、童貞のエロガッパだぜ。彼の期待と不安と悶々がよく分かるのだなぁ。河童だから知能は低いが、正直者で嘘はつかない。だから、他人を疑うことを知らないのだ。モモ太が一番怖いのは、鉄砲だ。

「おっかねぇっ! 鉄砲はおっかねえっ! クソ漏れるぐれぇおっかねぇっ!」「やべぇっ! こりゃやべぇっ!」「うめぇ。おめぇの目ん玉うめぇなぁ。こりこりしてて銀ブナのはらわたよりうめぇ。もし右の目ん玉も潰れたらまた俺に喰わせてくれよ」「女の股ぐら泉にマラボウを入れてソクソクすることだ」「……痛ぇ、テッケンはものすごく痛ぇ、ベカやんの鉄砲で撃たれるより痛ぇ……もう嫌だ……家に帰って銀ブナ喰いてぇ」 モモ太が発するこれらの言葉はみな、読んでいて何故かほのぼのと癒されてしまうのだなぁ。

■それから成瀬清美。第弐章「虐殺幻視」は凄い。特殊開発された拷問薬『髑髏』の威力は想像以上だった。ぼくが今までに読んだ本の中で、一番痛そうで耐えられない拷問は『マラソンマン』の主人公が体験する歯医者の拷問なのだが、成瀬清美が受ける『髑髏』の拷問は「それ」以上だった。『粘膜蜥蜴』の解説で杉江松恋氏もこう書いている。「肌が粟立つ。虫唾が走る。なのに、ページを繰る手を止めることはできないのだ。最初に覚えた嫌悪は、いつの間にか快感に転じてしまっている。見に覚えはないけれど、マゾヒストとして目覚める瞬間ってこういう感じなのかも。なんだか新しい自分に生まれ変わった気持にさえさせられる。それほどまでに心を揺すぶられるのが、飴村行の作品世界というものなのであります」と。まったくもって本当にそのとおり。

■『粘膜人間』は、『粘膜蜥蜴』と比べてすごくシュールだ。納得のいく合理的説明が皆無。読者はいきなり不条理の世界に落とされる。ちょうど、つげ義春の『ねじ式』と同じ感じだ。どちらも「作者が見た夢」が元になっているのだからね。さらには、青林堂「ガロ」でも連載していた花輪和一の平安時代の漫画か、山田風太郎「忍法帳シリーズ」(角川文庫・旧版)の表紙イラストや、三上寛のLPジャケットを飾った佐伯俊男が描く「美少女イラスト」を思い浮かべてしまうのだ。ぼくはけっこう好きだな、この作家さん。

■飴村 行氏へのインタビュー記事がネット上に2つあった。どちらもスッゴく面白い。「東雅夫・幻妖ブックブログ」と、「杉江松恋氏による著者インタビュー」だ。ここを読むと、いろいろと面白いことが分かる。東京歯科大を何故か中退して漫画を書き続けた日々。家族との縁を切って派遣社員(パート社員)として、台所のシンクをダンボールで梱包する日々が10年間。これって、もしかして秋葉原無差別殺人の「加藤容疑者」とよく似た経歴じゃん。

かなりヤバかったんじゃないか? でも作家デビューできて、ほんとよかったね。インタビューを読むと、飴村氏は映画好きだ。特にサム・ペキンパー監督作品が大好きとのこと。なるほどなぁ。どうりで、初期の花村萬月作品(「ブルース」「なで肩の狐」「笑う山崎」)を彷彿とさせる唐突で過剰な暴力がそこにある。飴村氏は、もしかするとホラーよりも「こっちの路線」のほうが向いているのかもしれない。彼なら、あの『ミノタウロス』佐藤亜紀(講談社)を越える作品が書けるのではないか? ぼくはそう期待してしまうのだった。

 ヘネシー・澄子さん の講演会             2009/11/20

■いま見ている NHK『トップ・ランナー』で「次長課長」が出ているのだが、面白いなぁ、この二人。ていうか、面白いなぁ、井上聡。河本が面白いことは、みんなが知ってるけど、本当に面白いのは井上の方だったんだ。実は、河本は「そのゲーム」の主要キャラクターで、コントローラーでキャラクターを自在に動かしていたのは井上だったんだね。そーか気が付かなかったな。

彼らのコントを生で初めて見たのは、4年くらい前の新宿「ルミネ THE よしもと」でだっだ。例の有名な、高校の化学の先生(河本)と生徒(井上)のコントだったと思う。ものすごくテンポが速くて、観客のほとんどはついていけなかった。彼らは光速で20年先をもう走っていたのだな。この時の出演者でわが家の子供たちに一番受けてたのは、次長課長ではなくて「COWCOW」の二人だった。スケッチブックを使った「北の国から」のコント。蛍が「る〜るるる」って言うと、キタキツネがやって来るパターンを「ハズして」繰り返すのだが、「北の国から」を一度も見たことがない息子たちが大笑いしていた。もちろん、田中邦衛なんて知らない。不思議だった。

■さて、今週水曜日の午後1時から、伊那市役所1階多目的ホールで「ヘネシー澄子・講演会」が開催された。今週の日曜日、同じ会場であった杉本登志郎先生の講演会へは行けなかったので、同じテーマ「児童虐待→愛着障害」の基礎の話が聞ける、ヘネシー澄子さんの講演は絶対に外せなかった。で、毎年この時期の水曜日の午後(普段は休診にしている)は、季節性インフルエンザ・ワクチンの「まとめ接種」に当てていて空いてないのだけれど、当院スタッフに無理言って「まとめ接種」を今週土曜日の午後に回し、水曜日の午後をフリーにしてもらった。

というワケで、ヘネシー澄子さんの講演会に参加することができた。会場は200人近くの人でいっぱい。天使幼稚園の高橋園長先生も来ていたし、箕輪町の保健師さんや各地の保育士さんなど、ぼくが知った顔も散見されたが、多くは知らない人ばかりだった。主催者の北原さんは、新山で里親を引き受けている人で、ぼくも以前に数回お会いしているが、本当に真面目で一生懸命な方で、以前から一目置いていた人だ。北原さんは、ヘネシーさんの講演を過去に何度も聴いていて、是非とも伊那へ「ヘネシーさん」を呼んで講演会を開きたい、そう長年願っていたのだそうだ。被虐待児を引き受ける「里親」がまず最初に直面するのが愛着障害なのだから。

この日、3時間半近く講演は続いた。ぼくは、講師の先生のすっごいパワーに圧倒された。アメリカ人の夫と、コロラド州・オーロラ市に住むヘネシーさんは、想像以上に見かけは「おばあちゃん」なのだが、タフなんだ。すっごいぞ。ヘネシー澄子さんは、年に2度来日し滞在期間のほとんどを全国講演行脚に当てている。だから、ググると「ヘネシー澄子・講演会レポート」が各地でアップされている。

たとえば、今年の5月に長野県諏訪市であった講演会の様子は、「茶っと倶楽部 母の輪」の優れたレポートを読んでいただけば、かなり具体的に想像できると思う。さらに、「オレンジ・リボン」のサイトにも、講演抄録が載っているので、興味のある方はぜひ読んでみて欲しい。

■今回のヘネシーさんの講演で、ぼくが特に興味を持ったのは2点ある。1つは、生後3〜4カ月の赤ちゃんの「泣き」をどうやって鎮めたらよいかを具体的にアドバイスした、アメリカの小児科医ハーヴィー・カープ先生のDVD「5つのS」の紹介だ。これは、すぐにでも使えるな。ヘネシー・澄子さん自身も、「こちらのサイト」で紹介しているので、ぜひ読んでみてください。以前から言葉としては知っていた「スウォドリング」の実際のやり方を初めて目にした。なんだ、風呂敷で赤ちゃんを包めばいいんだな。かんたんじゃん。ハーヴィー先生によると、この「5つのS」は母親よりも父親がやったほうが上手とのこと。

ここいらへんは「パクッて」もいいかな? なんてちょっと思ってしまいました(^^;; でも、ちゃんとヘネシーさんにメールで許可してもらわないと使えないよね。

2つ目に「なるほど」と思ったことは、先天的な脳の異常で生じる「自閉症」または「ADHD」の症状と、後天的な育児環境の問題で生じる「愛着障害」の結果生じる症状が、実は見た目には「ほとんど」区別がつかないといった事態を、どう合理的に説明するのか? という、ぼくの長年の疑問に対して、解決の糸口を与えてくれたことだ。ヘネシーさんは、脳細胞がお互いに繋がりあってネットワークを広げていく(シナプス結合)様を、「演習」として実体験させてくれたのだ。フロアーから8人の雄志を募り、彼らにそれぞれ脳細胞になってもらうのだ。それは「体感」「聴覚」「言語」「嗅覚」「視覚」「味覚」「触覚」「情感」として表現され、2つの異なる環境に置かれた赤ちゃんの脳神経のネットワークの発展が「如何に違うか!」を、ヘネシーさんは鮮やかに実証してみせてくれた。

一人の赤ちゃんは、母親と父親の愛に育まれて、五感を通じて愛着に満たされた赤ちゃん。もう一人は、チャウチェスク政権が崩壊した後のルーマーニアで、孤児院の中で育てられた赤ん坊。彼ら2人の「ある一日」の違いを、彼らの神経細胞のネットワークの違い(演習では、赤い毛糸玉と青い毛糸玉を、お互いの神経細胞役の人がやり取りするのだ)で表現した。そしたら、赤い毛糸と、青い毛糸の集まる点に差が見つかったのだ。その顕著な差は、ルーマニアの孤児の脳で、「言語」と「情感」の脳神経細胞に集まる毛糸が「極端に少ない」ことで、実証されたのだ。これは面白かったな。なるほど、そういうことだったんだ。

 『粘膜蜥蜴』 飴村 行・著(角川ホラー文庫)読了    2009/11/17

■これはタマげた驚いた。噂に違わぬ超面白本! エロでグロくてグッチョネなので、万人向きではない。特に、女子や中学生は読まないほうがよいな。うちの中学1年生の長男が「おとうさん、なに夢中になって読んでるの? 文庫にカバーなんか掛けて、珍しいじゃん」と言った。ヤバイぞバレたか(^^;; でも、ホラーなのに何故か笑えて、読者の予想を次々と裏切るストーリー展開に眩暈はしてくるし、途中で読むのを中断できなくなる中毒性も高くて大変危険な文庫本だ。しかし、物語の各所に散りばめられた全ての謎が「あっ!」と驚くラストで一気に収束する鮮やかな著者の手腕に、上質の本格ミステリーを読み終わった時のような満足感に満たされるのだった。あの大森望氏が「裏ベスト1」に挙げたのも納得の傑作。詳細な内容紹介は、杉江松恋氏による「こちら」をご参照ください。

昨日の月曜日は伊那中央病院の小児夜間一次救急の当番だったのだが、最近にしては珍しくヒマで、患者さんが2人しか来なかった。でも2人とも(1人は4カ月女児)インフルエンザ。なので、持っていった『粘膜蜥蜴』の「第弐章」をぐんぐん読み進み、200ページまで読了。個人的には、この「第弐章:蜥蜴地獄」が一番ハマった。ナムールの密林奥地へと行軍していく、その行く手を阻む抗日ゲリラに、得体の知れない巨大人食いミミズや巨大昆虫。凄いぞ!

今日はテルメに走りに行くのも止めて、「第参章」を一気にラストまで読み終わった。ヘルビノ(蜥蜴人)富蔵。ガンバレ!! 思わず「フレー、フレーッ! と、み、ぞ、う、」って応援したくなってしまうのだった。

 新型インフルエンザ・ワクチン 接種計画(その2)    2009/11/16

■今日は、朝7時前から夕方6時過ぎまで医院の電話は鳴りっぱなしだった。今日が基礎疾患のない幼児(1歳〜就学前の6歳児)の、新型インフルエンザ・ワクチンの予約受付日だったからだ。長野県衛生部からの文書によると、当院へは、12/7 に22ml、12/21 に32ml のワクチンが配布されることが決まった。喘息および喘息性気管支炎の優先順位の子供が32人まだ積み残しされていたので、12/13(日)に、彼ら(12ml が必要)と残りの10ml 分で「1歳〜就学前の6歳児」に接種し、天皇誕生日の祭日12/23( 水)に、32ml のワクチンを「1歳〜就学前の6歳児」にまとめて接種する計画を立てた。そうなると、基礎疾患のない1歳〜就学前の6歳児の予約可能人数は、約160人という計算になる。

夕方5時過ぎには、すでに予定人数がいっぱいになってしまった。キャンセルがでない限り、これ以上の予約を受け付けることはできない。ごめんなさい。当院では、どう頑張ってもこれ以上の接種は無理です。平日は、季節性インフルエンザのワクチンで全て埋まっていて、休日返上で新型インフルエンザの予防接種をするより他に仕方ないのです。しかも、県からはこれ以上のワクチン配給はないので、どうしようもないのだ。予約できなかった皆さん、ごめんなさい。誠に申し訳ありませんが、12月中の接種をご希望ならば他の医療機関をあたってみて下さい。


■あぁ、今日も『オレンジ党と黒い釜』の話には行き着けず。ごめんなさい。

 「皇居1周ランニング・ツアー」    2009/11/15

■今日15日(日)は、実はいろんなイベントがあった。まずは、テルメリゾートの特別企画「ランナーの聖地、皇居を走ろう! 日帰りバスツアー」。30名以上がエントリーし、日ごろ伊那市医師会で大変お世話になっている某先生も支配人から誘われて参加すると仰っていた。今回ぼくは参加できなかったが、「皇居1周ランニング」は、ものすごく魅力的な企画だ。1周約5キロのコース。ガンバレば1時間で2周できるぞ。

この年末年始の休みを使って東京へ行き、家族4人で皇居1周をいっしょに「早朝ランニング」できたら、すっごく気持ちいいんじゃないか? 皇居前のホテルと言えば「パレスホテル」だ。過去に3〜4回は泊まったことがある。実は去年の年末も家族4人で泊まった。ホテルの玄関を出て横断歩道を渡れば、そこはもう皇居1周ジョギングコース。これはすでに実証済みというワケ。ところが、歴史ある「パレスホテル」は残念ながら既に解体され、現在改築工事が進行中。従って、今は宿泊できない。

仕方なく調べてみると「千代田区観光協会のサイト」に、ランナーズ宿泊プランのある「皇居周辺ホテル一覧」があった。けっこうあるじゃん、皇居周辺のホテル。できれば、ジョギング・ウエアー&シューズでホテル玄関からタクシーに乗って、皇居周遊コースまで運んでもらうカッコ悪さは勘弁願いたい。ホテルフロント職員に「朝食前に、ちょっと走ってくるから」と言って、格好良くすぐ走りだしたいではないか! となると、帝国ホテルはボツだな。まぁ、もともとそんな高級ホテルは泊まれないのだけれどね(^^;;

■今日15日(日)は、息子たちが通う「大崎静子スズキ・メソード・ピアノ教室」が2年に1度開催している発表会の日だった。会場は南箕輪村民センターホール。ところが、伊那東小学校5年生の次男が、金曜日に「新型インフルエンザ」と診断され(あ、ぼくが診断したのです)。土曜日の午後には解熱したのだが、さすがに日曜日の発表会には出場できないため自宅待機しなければならず、仕方なく長男と妻だけが「ピアノ発表会」会場に出向き、留守番として、僕と次男とが自宅に残ったのだった。

■じつはこの日、もう一つのイベントがあった。児童精神科医・杉山登志郎先生の講演会だ。午後2時から伊那市役所1階多目的ホールで開かれた「臨床現場からみる発達障害と虐待への現実的課題」と題されたこの講演会を、ぼくは是非とも聴きたかった。でも、できなかった。フル罹患の次男を自宅にいて見張る役目があったからね。無理だった。残念無念。

■というワケで、思いがけずヒマな日曜日となってしまったので、高遠町図書館から借りてきたものの、ずっと読めずにいた『オレンジ党と黒い釜』天沢退二郎・著(筑摩書房)を、ようやく読了した。(つづく)

 今年の上伊那医師会付属准看護学院1年生は、ホントみな優秀で、びっくり!    2009/11/11

■母の四十九日法要も終わり、上伊那医師会付属准看護学院1年生への小児科の講義も何とか終了した。ほっ、やれやれ。今日は小児科の試験日。先ほど採点が終わったところだが、それにしてもビックリ。100点満点が3人もいたのだ。ぼくが小児看護の講師になって、試験問題も過去にさんざん作ってきたけれど、この9年間で100点満点を取った学生さんは一人もいなかった。だのに今年は「3人」もいた。たしかに、試験問題が去年・一昨年に出題した問題を、ちょこちょこっと変更しただけだったので、過去問題をチェックしておいた学生さんには簡単すぎたのかもしれない。

そうは言っても、授業中にちゃんと聞いていないと正解できない問題をいくつも新たに入れたし、「ここがポイント!」と試験の山印を付けた所はほとんど出題したつもりだ。つまり、ちゃんと授業に出席して、寝ずにノートを板書した学生さんだけが高得点が取れる試験問題だったのだ。26人の学生さんの平均点を出したら、なんと!90.9 点! これは、過去最高得点じゃないか? しかも、毎年必ずいる「勉強しない試験できないこまったちゃん」が一人もいない。60点未満の赤点を取った学生さんはゼロ!(つまり、追試を受ける学生さんがゼロ!っていうことだ)これはちょっと、凄いことかもしれない。

毎年、試験問題の最後の出題に「小児看護」の講義に対する感想・意見・希望を自由に記述してもらう「アンケート」に当てているのだが、採点しながら読むのが本当に楽しい。毎年、点数の足りない子は「授業の感想」を読んで、合格点にするか、赤点にするか最終的な判断を行っていたからだ。読んでみると、総じて好意的な感想が多くて安心した。でも、中には「あの、手書きのまとめノートは、ワープロで打った方が見やすいと思います」なんて意見があって、「そっかー、字汚いからなぁ」と反省してしまうのだった。

 当院における「新型インフルエンザワクチン」の接種計画について    2009/11/06

■当院では、先週1週間に受診した新型インフルエンザの患者さんが65人(先々週は64人)と頭打ち状態で、第1波の流行のピークは過ぎたように思われます。実際、今週に入ってからは1日に数人くらいしか発生していない。しかも今シーズンは新型インフルエンザが一気に蔓延したため他のウイルスが流行する余地がなくなり、例年なら、RSウイルス感染症やマイコプラズマ、それにヒトメタニューモウイルス感染症やノロウイルス胃腸炎が流行するこの時期に、それらの感染症があまり出ていないのだ。ちょうど、庭の芝生の手入れを怠ったら、芝が弱ったところへクローバーが侵入し、あれよあれよと領地を拡げて瞬く間に庭を占領してしまったようなものだから、他の雑草が根を生やし領土を拡大していく余地がないのと同じだ。

さらに、この時期「小児科医院」を受診すると新型インフルエンザを伝染される危険性が高いから、咳や鼻水くらいだったら受診を差し控える親御さんも多いので、今週の外来は、ちょうど台風の目の中に入ったみたいな、突然の閑散・閑古鳥状態に陥ってしまったのだった。ぼくもスタッフも気合いを入れて頑張っているのに、この「いきなり暇状態」には参ってしまうのだった。でも、そのうち必ず第2波の流行が押し寄せてくるから油断は禁物!

■さて、長野県衛生部のHPをチェックして、「新型インフルエンザワクチン」を接種する医療機関に、北原こどもクリニックが載っていなくて焦った方も多いと思いますが、どうぞご安心ください。当院では、「当院をかかりつけにしている患者さんだけ」にワクチン接種をする、というところに「まる」したので、HPには載らなかったのです。だから、当院を受診してくださっている患者さんは、ご希望があれば、できるだけ頑張れる範囲で「新型インフルエンザワクチン」の接種を行いたいと考えています。

■ただ問題があって、伊那保健福祉事務所に当院の希望接種人数をFAX しても、ワクチンはその約半分以下しか配給されてこないのです。今回「最優先」の患者さん60人分を希望したら、実際に配給されるのは30人分(成人量換算で)のみ。その次の接種対象となる1歳〜6歳、小1〜小3年生は、それぞれ200人分発註しましたが、はたして何人分配給されるのか皆目見当が付かない状態なのです。さらに大きな問題が持ち上がってきています。それは、配給されるワクチンが、厚労省の話によると一人でも多くの人が接種できるように「1バイアル・10ml」の集団接種用のワクチンがメインで配給されるとのこと。このバイアルだと、開封後24時間以内に無駄なく接種する必要があり、診療の合間に数人ずつワクチンを接種する、なんてことができないのです。

となると、日曜日や土曜日の午後、休診にしている水曜日の午後を潰して「まとめて接種」するより他に方法がない。とはいえ、毎年「季節性インフルエンザ」の予防接種を水曜日の午後を4回潰して接種しているので水曜日の午後は使えない。しかも、12月中旬までは連日「季節性インフルエンザ」の予防接種の予定が満杯で、新型ワクチンに回すワクがないのです。という訳で、当院では「新型インフルエンザワクチン」最優先枠の患者さんに対して、11月22日(日)にまとめて第1回の接種をする計画を立てました。その患者さんの第2回目接種は、12月27日(日)の予定です(接種間隔が4週以上あいてしまいますが、ワクチンの配給が間に合わないので仕方ありません)

■最優先枠に洩れてしまった喘息の患者さんと、1歳〜就学前6歳のお子さんの第1回の接種は、12月13日(日)にまとめて行う予定です。既に喘息の患者さんは予約が入っていますが、1歳〜就学前6歳のお子さんに関しては、県の資料にあるように、11月16日が予約開始日になりますので、よろしくお願いいたします。なお、1月以降の接種予定は、まだ配給されるワクチンの分量が分からないので予定がまったく立たらないのが現状です。でも、この冬を何とか無事にみなさまが乗り切ることができるよう、スタッフ一同、滅私奉公の精神で最善を尽くす覚悟でおります。どうぞご安心下さい。

■最後に蛇足ではありますが、「新型インフルエンザワクチン」に関していくつか、ぼくから「忠告」があります。

1)今シーズン、すでに「A型インフルエンザ」に罹患している人は、新型インフルエンザの予防接種を受ける必要はありません。今シーズン流行している「A型インフルエンザ」は、ほとんど全て「新型インフルエンザ」だからです。

2)「新型インフルエンザワクチン」を接種しておけば、新型インフルエンザに罹患しないで済むという訳にはいきません。これは、毎年律儀に「季節性インフルエンザ」の予防接種をしているのに、何故か毎年インフルエンザに罹ってしまう子供たちを目にしている親御さんなら、判っていただけるでしょう。今回のワクチン接種の一番の目的は、感染防御ではなく、重症化の防御にあるからなのです。ここんところを勘違いしないで下さい。

3)実際の臨床の現場で毎日診ていると、新聞やテレビの報道は「単なる過激派のアジテーション」にすぎません。新型インフルエンザに罹患した子供は、みんな死んでしまうかのような報道が連日なされていますが、それは「うそ」です。ほとんどの患者さんは、例年の季節性インフルエンザに比べてもすっごく症状が軽い。しかも、タミフルもリレンザもすっごくよく効く。診断した翌日か翌々日にはほぼ全例解熱しています。

ぼくは今シーズン既に200人以上の新型患者さんを診ていますが、入院してもらったのは1例のみです。だから、喘息のような基礎疾患がない子供は、焦って予防接種をしなくても、罹っても軽く済む可能性が高い。でも、中には頻度は低いけれども、基礎疾患がなくても重症化している例もあるので困ってしまうのです。

4)新しいワクチンなので、臨床試験が充分ではありません。副作用の頻度もまだよくわかりません。そうは言っても、今までの国産「季節性インフルエンザワクチン」の安全性と副作用頻度の低さは定評があるので、同様に作られた「新型ワクチン」の安全性は信用してもよいレベルだとぼくは思います。でも、やってみないことには判らない。だから、ワクチンに対して、副作用のことがものすごく気になる親御さんは無理して受けない方がいいかもしれないと、ぼくは思っています。


 最近の「パパズ」の活動と、今後の予定について    2009/11/05

■今週日曜日の「飯野和好講演会」で、久々に全員勢揃いした我々「伊那のパパズ」だったが、ここ最近2回の活動は、ぼくが不参加だったりして、ちゃんと報告していなかった。でも、記録としてはきちんと残しておきたいので、誰が何の絵本を読んだかを、メンバーに訊いて書いておきます。


伊那のパパズ絵本ライブ(その55) 上伊那教育研究会■    2009/10/10(土)午前9時〜12時 伊那中学校・視聴覚室

上伊那郡内の小中学校の先生方が参加する研修会の中で、分科会の一つとして企画されたもの。土曜日の午前中だったので、ぼくは診療途中に抜け出して50分間だけ参加した。会場に子供たちは一人もいず、大人のみ(しかも先生!)に読み聞かせ。こういうのは初めてだな。

1)『はじめまして』 新沢としひこ(すずき出版)
2)『パンツのはきかた』 岸田今日子・さく、佐野洋子・え(こどものとも年少版・福音館書店)
3)『パイルドライバー』 長谷川集平(ブッキング) → 伊東
4)『いいからいいから2』 長谷川義史(絵本館) → 宮脇
5)『れいぞうこのなつやすみ』 村上しい子・作、長谷川義史・絵(PHP研究所) → 倉科

6)『かあさんになったあーちゃん』 ねじめ正一・作、長野ヒデ子・絵(偕成社) → 北原
7)「林明子さんの絵本に隠されたヒミツ」 → 北原

8)『だから』 ウイリアム・ビー作、田中尚人・訳(セーラー出版) → 伊東
9)『かあちゃんのせんたくキック』 平田昌広・作、井上洋介・絵(文化出版局) → 伊東
10)『かさぶたって どんなぶた(あそぶ ことば)』 小池昌代・編(あかね書房)より「おきょう」 → 宮脇
11)『さかさのおおもりくんとこもりくん』 あきやまただし・作(教育画劇) → 宮脇
12)『おんぶはこりごり』 アンソニー・ブラウン作(平凡社) → 倉科

13)『かごからとびだした』 → 倉科、宮脇、伊東



伊那のパパズ絵本ライブ(その56) 青木村図書館■  2009/10/18(日)午後1時〜2時

1)『はじめまして』
2)『ちゃんとたべなさい』 ケス・グレイ作、ニック・シャラット絵(小峰書房) → 伊東
3)『うみやまがっせん』 長谷川摂子・再話(福音館書店) → 坂本
4)『パンツのはきかた』
5)『かごからとびだした』

6)『にんげんごっこ』 木村 裕一・作、長新太・絵(講談社) → 宮脇
7)『いろいろおんせん』 増田裕子・作
8)『うちのおばけ』(世界文化社)
9)『山んばあさんとむじな』 いとう じゅんいち・作絵(徳間書店) → 倉科

10)『ふうせん』
11)『世界じゅうのこどもたちが』

この日は順延になった伊那東小学校の運動会だったので、ぼくは欠席。代わりに、信州大学教育学部の学生さんがボランティアで参加してくれて、『かごからとびだした』と『ふうせん』をいっしょにやってくれたという。思いがけないコラボレーションで、とっても楽しかったとのこと。ただ、信大の学生さん。肺活量があまりに小さくて、ビオフェルミンの風船をちゃんと膨らますことができなかったんだそうだ。をいをい、大丈夫かぁ? (^^;;


伊那のパパズ絵本ライブ 「これからの予定」

●11月14日(土)午前10時半〜12時 「南箕輪村・南部小学校PTA」(南部小の児童+保護者のみ)
●11月23日(月)午前10時20分〜11時半「大町商工会議所多目的ホール」(★当初の児童センターから場所が変更になりました)
●11月23日(月)午後 2時 〜 3時 「すずの音ホール・2F研修室」 松川村図書館 TEL: 0261-62-0450
●12月13日(日)           「伊那市美篶公民館」美篶小学校親子文庫
●12月20日(日)午前11時〜12時半 「諏訪市図書館」親子文庫

● 1月16日(土)午後3時 〜     「伊那市役所1F多目的ホール」 上伊那郡PTA父親母親部会・主催
● 1月24日(日)           「下伊那郡・松川町保育園」
● 2月11日(木)           「山梨県韮崎市・韮崎英和幼稚園」
● 2月21日(日)           「飯島保健センター」

● 3月 6日(土)午後3時 〜 4時  「長野こどもの城」わくわくドキドキこども広場(今のところ北原のみ単独出演の予定)
● 3月 7日(日)           「駒ヶ根図書館」
<以降未定>


 剣劇「ねぎぼうずのあさたろう/伊那の勘太郎 情の月」 作・飯野和好    2009/11/01

■昨日、中央本線「あずさ」の車中で飯野和好さんが書き上げた「このお芝居の台本」が、伊那図書館司書さんの手でコピーされて我々「伊那のパパズ」に配られたのは今日の午前11時半過ぎだった。A4用紙5枚にわたってビッシリ書かれている力作だ。今日の午後、伊那図書館で催される「飯野和好講演会」の巻頭をかざる芝居の本番は午後1時半開始だというのに、これから配役を決めてセリフ合わせから立ち回りの稽古までしなくてはならい。もちろん、各自のセリフを暗記することも必要だ。

で、まずは配役が決められた。

   ねぎぼうずのあさたろう 飯野和好
   伊那の勘太郎      倉科
   おさよ(女形)     伊東
   やくざ(1)      宮脇
   やくざ(2)      坂本
   やくざ(3)      北原

衣装は宮脇さんが一式揃えてくれた。ぼくらの刀は、飯野さんが鎌倉の自宅から3本宅急便で届けてくれて、足りないもう1本と女形のカツラは、坂本さんが西春近のレンタル・ショップから調達してきた。舞台監督(座付き作家、兼、座長)の飯野さんは、演技指導もなかなか厳しい。「おさよ」の立ち位置からセリフの間の取り方まで、細かいチェックが入る。そうは言っても時間がないから通し稽古は1回だけで終了。え〜、これで本番? 自分のセリフはぜんぜん頭に入らないし、お芝居の流れも掴めない。おいおい、大丈夫かぁ。さて、開演の拍子木が鳴っている。いよいよ本番だ。

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ぼくはセリフを忘れちゃってヒヤヒヤだったが、倉科、伊東ペアの熱演で「やんややんや」の喝采を浴びてお芝居は無事終了。やれやれよかった(^^;;

 『水曜日の神さま』 角田光代(幻戯書房)   2009/10/30

■『ミレニアム3』は、上巻 1/3で止まったまま。公安警察にいた謎の人物が登場して、本格スパイ小説のような感じになってきたぞ。これから冷徹なインテリジェンス戦が始まる予感。下巻は「法廷もの」になるのかな? ホント何でもありのごちゃ混ぜ小説だな。でも、リスベット・サランデルはちょっと休憩中。アピタ3Fの本屋さんで、例の『粘膜蜥蜴』飴村行(角川ホラー文庫)を発見し即購入したためだ。第壱章「屍体童子」読了。これまた、第弐章以降の展開がまったく読めない。小説の雰囲気は、『魍魎の匣』をとことん下品で下世話な感じに貶めた、めちゃくちゃ「グッチョネ」な小説で一気読みする気になれず、やはり一休みが必要。

■こういう場合は、気軽に読めてそれでいて「ひねり」と辛めのスパイスが効いた小粋なエッセイ集を読みたくなるのだな。高遠町図書館の新刊コーナーで手にしたこの本『水曜日の神さま』角田光代(幻戯書房)は、まさに「その通り」のエッセイ集だった。この8月末に「高遠ブックフェスティバル」のシンポジウムで実物を拝んでいたから、よけいにファンになって「この本」を読んだのだが、さらに好感度上昇だ。角田光代さんは本当にエッセイが上手い。特に短いエッセイ。

角田さんが「旅好きだ」ということは高遠で知ったのだが、「この本」には、彼女が一人旅で体験し味わった出来事がいっぱい記載されている。ぼくも学生のころは旅好きで、リュックサックを担いで日本中を旅して廻ったし、台湾以外のアジアは行ったことないが、ヨーロッパは「ひと月半」かけて一人で廻った。大学3年生の夏休みのことだ。父親から50万円借金した。でも、その時借りたお金は未だに返していない(^^;;

「この本」を読んでいると、ぼくがあのころ感じていたことと「同じ気持ち」が文章になっていて、ページをめくるその度に「うんうん、そうそう」と共感してしまうのが可笑しかった。「こういう文章」を書ける人は、ぼくと「同じ側」にいて、若い頃はずっともんもんと生きてきた人に違いない。特に巻頭のエッセイ「書くこと、旅すること」が素晴らしい。なんか、すっごくよくわかる。「旅」に対する彼女の過度な期待が。例えばチャーリー・パーカーや、アート・ペッパー、スタン・ゲッツのような天才ジャズメンが「麻薬」の力を借りてイマジネイティブなアドリブ・ソロが取れると信じたように、もしくは、中島らもがアルコールや様々なドラッグの力を借りて傑作『ガラダの豚』をしたためたと錯覚したのと「同じ危険な感覚」に角田さんはいたんだな。その気持がよーく分かった。それは、ぼくにも「運命的な旅」に出会った経験があるからだと思う。

第1部の「旅エッセイ」はみんないい。特に「旅トイレ」「三年前の注文」「コークの一ヵ月」「タイすきナンパ作戦」「神様の茶目っ気」「運命の旅」。なんだ、ほとんど全部いいんじゃん。第2部では、ニュージーランドと中国ウイグル自治区のルポが出色だ。読んで直ちに行ってみたくなったぞ。こういう文章が書けるのは、一種の才能だね。「才能」と言えば、第3部には「才能って」というエッセイがあって、これまた唸るようなエッセイなのだった。彼女は開高健のルポルタージュに惚れている。何故なら、彼の文章から「その街」の匂いがリアルに感じられるからだ。嗅覚というのは、人間でも最も古い根元的な感覚だ。その匂いを文章に残せるのは、ぼくは菊地成孔氏しかいないんじゃないかと思っていたが。

この本の中で一番好きなエッセイを挙げるとするなら、「バー以前・以降」かな。こういう男女の機微って、男には絶対わからない。あと、「温泉卵を語る男と女の寓話」が面白い。そうか、男の「こだわり」って、女にとっては鬱陶しいだけなんだね。勉強になります。笑ったのは「挙動不審になりがちな」。作家と書店て、案外敵対関係だったとは知らなかった。それから、エッセイ集の終わりで語られる彼女の父親と母親のはなし。これがまた、しみじみしてしまうのだよ。明日「この本」返却します。よかったら借りてみて下さい。

 上伊那医師会准看護学院での講義は、今週が最終ではなかった   2009/10/29

■今年も9月2日から、毎週水曜日の午後3時半〜5時まで上伊那医師会准看護学院1年生への小児看護の講義が始まった。今年で9年目だ。講義は8回+試験。この不況で、年々学生さんの質が飛躍的に向上しているというのに、誠に申し訳ないのだが教える側のぼくはどんどんマンネリ化が進行している。今年は母のことがあったので、集中力を欠き授業のテンションが上がらなかった。信じられないことにほとんど欠席者がいなかった超真面目な今年の1年生の学生さん達に、本当に申し訳なかったと思う。ごめんなさい。

まあ、もともと「8コマ」で小児科学を全て教えるのは不可能なので、毎年お終いの方は時間切れで尻切れトンボになってしまうのだが、今年は特にテンポが上がらなかったこともあり、7コマ目の最後で「川崎病」までしか話せず、最後の講義で「起立性調節障害」から「血液疾患」「腎疾患」「代謝・内分泌疾患」「小児悪性腫瘍」「神経疾患」を網羅しなければならない。これには正直困った。

ぼくの講義は、黒板にポイントを板書しながら進むので、案外眠くなる学生さんがいないところが彼女らに評価される要因なのだが、板書してると兎に角時間がかかる。そこで、チョークで黒板に書くのを止めて、前もって鉛筆書きでレポート用紙に「まとめ」を書いてコピーし配ったのだ。そしたら、やっぱダメだね。寝る子がいる。緊張感がなくなるからね。

でも、板書してたら追いつかないので、最後の講義で話す内容を、今週月曜日から寝る時間をけずって手書きでレポート用紙にまとめる作業を続け、水曜日の最終講義に臨んだのだ。今回はコピー資料が多いので、普段より10分早く医師会館に着いた。でも駐車場は満杯。こんなことって今までなかったよ。おかしいなぁ? 普段見ない学生さんの親御さんの姿が多い。あれ? もしかして…… 無理して車を駐車し医師会館に入ると、はたして准看護学院1年生の「載帽式」が今日だったのだ。例の、ナイチンゲール精神の神聖なる式だ。ということは、もしかして今日は講義はお休み? なんだ、そうだったんだ。せっかく資料を寝ずに準備したのにね。最終講義は来週だったのだ。

気は抜けちゃったのだけれども、試験問題は作らなければならない。来週の水曜日までに、50問の「○×問題」を新たに作製するのだ! 学生諸君、難しいぞ。覚悟しておけ(^^;)

 伊那市子育て支援課主催の 10/24(土)「伊那のパパ's 絵本ライブ」は開催中止   2009/10/25

■10/24(土)午後2時から伊那市役所1F多目的ホールで開催予定だった「伊那のパパ's 絵本ライブ」は、インフルエンザ流行拡大のため開催中止になってしまった。この1週間で診断されたインフルエンザは、小中学生を中心に当院だけで65人にのぼる。その前の週が35人だから約倍増だ。伊那市主催のイベントはずいぶんと中止になった模様。これは致し方ないな。

すっかり落胆したかのような「われわれ伊那のパパズ」ではあったが、じつはそうでもなかった。土曜日の夜は久々に宴会があったからだ。この日の午後、下伊那郡喬木村の「椋鳩十記念館」主催で「長谷川義史講演会」が行われた。大盛況だったという。最新絵本『大阪うまいもんのうた』をもじって「下伊那うまいもん」を募集して歌ったところ大受けだったそうだ。超売れっ子・絵本作家である長谷川義史氏は、この日、中央西線・中津川駅で下車して「南信こどものとも社」の坂本さんの車に乗り、中央道を恵那山トンネルを抜けて飯田から喬木村入りした。長谷川さんは「丁寧なサイン」をすることで有名だから、講演会終了後も1時間半近くサイン会が続くことは目に見えていた。実際そうだったらしい。

サイン会を終えた長谷川さんを乗せ、坂本さんの車は一路宿泊先の伊那市を目指した。本当は、この日の長谷川さんは高遠町「竹松旅館」に泊まるはずであった。この時期の竹松旅館名物「松茸づくし」を、ぜひ長谷川さんに味わって頂こうという坂本さんの粋な計らいだったのだ。ところが、今年は稀にみるマツタケ不作年で、竹松旅館の「松茸づくし」は旅館側からキャンセル。で仕方なく「パークホテル」に部屋を確保し直し、われわれパパズの定点飲み屋であるところの「いたや」へ長谷川さんをお連れした。午後6時半だった。そこで僕ら伊那のパパズ残り4人も合流したというワケだ。女気が全くなくてごめんなさい(あ、訂正:箕輪町公民館の白鳥さんが、長谷川さんのために駆けつけてくれました)

われわれ伊那のパパズの5人も、夏以来ひさびさの宴会だったから本当に楽しかったな。馬刺に馬肉のすき焼き、焼酎の一升瓶も1本空けて、2次会へ。長野県下で最もスクリーンが大きい映画館「伊那旭座」の前を通り、ローメンを食べるために入舟動物横町の「萬里」へ。長谷川義史さんは、はたして「ローメン」というものを認めて下さったのだろうか? う〜む、微妙だ。

 『ウィンターズ・ナイト』 スティング (SHM-CD/ユニバーサル/UCCH9008)      2009/10/23

■この10月半ばぐらいだったか、夜一人で車を運転中にFMラジオから印象的な曲が流れてきた。じつに久々に「おっ!?」って引っかかってきた「オンエア要チェック曲」だった。むかし何度も聴いた懐かしいトラディショナル・フォークソングのようでいて、モダンでアップテンポなシブイ歌声。でもこれ、どっかで聞いたことある声だぞ。曲がかかっている間は判らなかったが、終わった後のDJの曲説明によると、10月下旬に発売される、スティングのCDからの新曲とのこと。スティングは「ポリス」の頃から好きで、ソロになってからのLPやCDも結構持っているが、最近はとんとご無沙汰だった。そういえば「再結成ポリス」の来日公演ライヴも未チェックのままだ。

早速グーグルでチェックすると、輸入盤『IF ON A WINTER'S NIGHT... / STING 』がこの10/27に発売されるとある。グラモフォン・レコードって、ドイツのクラシック・レーベルじゃん。ぼくが中学1年生の時に初めて買ったLP盤が、グラモフォンの『新世界より』カラヤン指揮・ベルリン・フィルだったなあ。でも、よく見ると、日本版の初回限定盤はSHM-CD仕様で、DVDがオマケで付いてくるらしい。しかも世界に先駆け日本で先行発売されるのだ。というワケで、しばらく待ってそろそろ発売になったかな? そう思って今晩 TSUTAYA へ行ったら、既に10月21日に発売済みのCDがいっぱい並んでいた。 TSUTAYA のポイントが300円強たまっていたので、それを使って即購入。先ほどから聴きはじめたのだが、慣れ親しんだスティングのサウンドを期待した身には「あれ?」っていう感じのクラシック声法の歌声がいきなり聞こえてきて、ちょっと戸惑ったのだが、2曲目の「ソウル・ケーキ」が例のラジオから流れてきた曲だ。途中からクリスマス聖歌の「善き者よ、神が汝らを安ぜんことを」が挿入されている。ケルト・ミュージックっぽくて、やっぱこの曲いいなぁ。明日から年末まで、ヘビー・ローテーションで診察中に聴こう。

3曲目は中世イギリスの聖歌だが、バッキングに打楽器のタブラが入って中近東音楽風になり、ヌスラット・ラリ・ハーンが参加した、ティム・ロビンズの映画『デッドマン・ウォーキング』の挿入歌か、八重山あたりの沖縄民謡のようなアジアな響きもしてきて、不思議な曲に仕上がっていてじつに面白い。付属のDVDも見たが、イギリス北部の冬景色が厳しく美しい。「あっ!」これって、もろアリステア・マクラウドの短編集『冬の犬』の世界じゃん。スコットランドはハイランド地方、カナダのニューファンドランド島にケープ・ブレトン島の厳冬の風景がふと思い浮かんできた。

ポリスが好きで、ジャズが好きなぼくは、クラシックに接近しすぎたスティングはあまり好みではない。だから、このCDの中では「2曲目」とか、女性バックコーラスが呪術的な「5曲目」、そして一番ジャズっぽい「8曲目」、それにシンプルな「13曲目」(名曲「フラジャイル」を彷彿とさせる印象的な曲だ)、あとオリジナルCDラストの「15曲目」が、初回聴いてみて僕のココロが深く動かされた楽曲だ。でも、明日から繰り返し繰り返し聴いていくうちに、好みの曲が変わって行くかもしれないよ。ただひとつ言えることは、このCDが「今年のベストワン」になることは、ほぼ間違いない。

と、調子よくここまで書いてきたが、先ほど「アマゾン」のサイトをチェックしたらDVD付きCDは割引率が高いので、スティングの新譜も TSUTAYA で買うより Amazon で購入した方がずっと安かったことが判明して、すっごくショックだったりする。ホントしまったなぁ。とほほ。

■同時に TSUTAYA で、児童精神科医の杉山登志郎先生の新作『講座・子どもの心療科』(講談社)を見つけて、こちらも即購入。これはすっごくいい本だぞ! 明日からアンダーラインを引きつつ一生懸命「この本」読んで勉強しよう。杉山先生の新刊は「日本評論社」からも出ているが、こちらは季刊誌『そだちの科学』に載った文章を集めたものなので既に読了済みだ。なら買う必要はないな。あ、それから『支援から共生への道』田中康雄・著(慶應義塾大学出版会)も9月末に出たはずなので、忘れずに Amazon へ注文しなきゃ。

 伊那でも新型インフルエンザがブレイクした模様        2009/10/21

■当院での新型インフルエンザ(A型陽性という意味です。でも、現在流行している A型インフルエンザは、新型インフルエンザと考えていいようです)の発生状況は、先々週が24人、先週が35人、今週は今日の水曜日午前中までで既に29人発生している。伊那東小では、6年、3年に加え2年生へ流行が拡大している。高遠小6年生、長谷小5年生、伊那小、伊那北小、美篶小、南箕輪小、伊那東部中、西箕輪中、高遠中、手良保育園、竜東保育園などでも患者さんが発生している。広範囲に一気に広がった感じだ。

よく言われていることだが、発熱後2〜3時間で受診した場合には迅速診断はほとんど陰性だが、6〜12時間以上経っている場合には陽性になることが多い。普通のインフルエンザでは、発症5日目くらいから咳が目立つようになるが、新型インフルエンザでは発症初期から咳が酷いケースもよく見る。それから嘔心・嘔吐といった消化器症状が初期に見られるケースもよくある。しかし、タミフルもリレンザもよく効いて、たいてい高熱は2日くらいでおさまり、季節性インフルエンザではよく経験する「5日目の再発熱」はほとんど経験しない。総じて例年の季節性インフルエンザより軽症の印象だ。入院が必要になった新型インフルエンザの患者さんは、当院では一人きり。小学1年生の気管支喘息(最近は発作なし)男子で、発症時から咳が酷く、呼吸困難(SpO2 89% )を認めた例だ。

それから同じ家族内でも、兄弟姉妹は次々と感染するケースはよくあるが、母親・父親は案外伝染していない(今日、母親が伝染った例があった)。1〜3歳の小さな幼児の患者さんは今のところ少ない。家族内の兄姉(小学生)から伝染った例ばかりだ。家族内発生例では「熱は37度台だけれども心配だから検査してくれ」と言われて迅速検査をしてみたら、しっかり陽性だったというケースもけっこうあるから、不顕性感染やすっごく症状の軽い感染例も多いのかもしれない。

■季節性インフルエンザのワクチン接種が当院でも始まったが、新型インフルエンザのワクチン接種がどう進んでいくのか、今日この時点に至っても皆目見当がつかない。困ったものだ。昨日、当院にも医療従事者用の「新型インフルエンザワクチン」が届いた。申請は事務スタッフを含めて8人分お願いしたのだが、届いたワクチンは4人分のみ。仕方ないので「ぼくは2回目の配布の分で接種するから、今回は看護師さん4人が打ってよ」と言って、ぼくは接種しなかった。そしたら何と! 医療従事者は「1回のみの接種」に決定されたとの報道。てことは、2回目の配布はないのか? じゃぁ、ぼくは接種できないの?? さて、困ったぞ。

当院では、かかりつけの気管支喘息や喘息性気管支炎の子供たちに「新型インフルエンザワクチン」の予約を既に入れてもらっていて、もう35人近く予約が入っているのだが、この分だと、希望接種者数の半分もワクチンは配給されないのではないか? さて、困ったぞ。

『ジュールさんとの白い一日』ダイアナ・ブロックホーベッン著(赤ちゃんとママ社)読了。高遠町図書館から借りてきた本。自閉症の少年ダビットの描写が出色だ。作者の身近に、実際に自閉症の少年がいるに違いない。ものすごくリアルなのだ。自閉症の基本症状のひとつに「常同」がある。彼の毎日の生活は、決められた通り全く同じに過ごさないと、彼は不安で居ても経ってもいられなくなってしまう。だから、ダビット少年は冬休み中は決まって午前10時から10時半までの30分間を、同じマンションのちょうど2階上の部屋に住む老人ジュールさんとチェスをする。

典型的な自閉症の子は、ダビット少年と同じように、常に手のひらを「キラキラ星」のお遊戯のように「ひらひら」させている。彼が慣れないはずのジュールさんとアリスさんの家で不思議とくつろげるのは何故かというと、マンションの間取りがダビット少年の家とまったく同じだからだ。だから彼は、勝手知ったる台所でホットケーキミックスの粉を見つけ、いつものように器用にホットケーキを焼いてみせるのだった。ぼくはこの場面が一番好きだ。

 天才・加藤和彦の自死はあまりに悲しい        2009/10/20

加藤和彦「自殺」のニュースは、本当に切なかった。わが家の納戸には、中学生時代から集めてきたフォークやジャズのLPとSPレコードが今でも大切に保存されているのだが、加藤和彦のシングル盤『あの、素晴らしい愛をもう一度』と『悲しくてやりきれない』と『イムジン河』は、何度も何度も聴いた愛聴盤だった。作詞:北山修、作曲:加藤和彦。鉄板のコンビだったと思う。

■北山修氏は、共同通信の取材に対して「こんな文章」を寄せている。
 死んだ加藤和彦には、二人の加藤がいたと思う。一人はミュージシャンであり、舞台の前面で演奏するアーティスト。もう一人は、その演奏を厳しく見つめて批評する加藤である。

 舞台では実に優しい音楽家だったが、楽屋で怒るとこわかった。ある時など、私の代わりに、スタッフに対しカンカンになって怒ってくれたこともあった。
 稀代の天才は表面的には遊んでいるように見えて、それを厳しく見つめる批評家のような分身を自らの内に抱え込んでいる。厳しい加藤は、もちろんn自分自身にも、そして共作者の私にも厳しかったし、私が何回書き直してもダメ出しが続いたものだ。(後略) 


ニュースの第一報を聞いてぼくはまず、伊丹十三が自殺した時のことをを思い出していた。享年64。加藤和彦は62歳。60歳を過ぎると、男も更年期障害に陥るのだ。その時の典型的な症状は「うつ症状」なのだった。クリエイティブな業種の人たちは、常に最前線を走ることを己の宿命としているから大変なのだなぁ。男の更年期と言えば、はらたいら氏だが、「はらたいらに1万点!」って言っても、ぼくらより20年以上前に生まれた世代は、たぶん「クイズ・ダービー」も、大橋巨泉も、はらたいらも知らないのだ。

そんな彼らは、ぼくらとは趣味も嗜好もまったっく異なるに違いない。加藤和彦さんは懐かしのフォークソングだけを歌ってもらいたがる昔のファンよりも、今の10代20代の若い人たちに自分の音楽を聴いて欲しかったんじゃないかなあ。「さとなおさんの昨日の文章」を読むと、ほんとしんみりしてしまう。そのとおりだと思う。ガンバレ! 還暦過ぎの吉田拓郎、南こうせつ。それから、松任谷由実と中島みゆき。

 『粘膜人間』、『粘膜蜥蜴』って、なんだ?        2009/10/17

■よく見に行く、吉野仁さんのサイト(09/10/13/) を読んでたら、

ミステリ以外だと、それこそ個人的には上田早夕里『魚舟・獣舟』が衝撃的だったり、昨年の飴村行『粘膜人間』と今年の『粘膜蜥蜴』がグッチョネだったりするのだが……。

と、あった。「粘膜」? 「グッチョネ」? いったい何なんだ?? 謎だった。そしたら、先週の文化放送「大竹まこと紳士交友録(木曜日・大森望)」を聴いて判ったのだ。ラジオで大森さんは言った。「今年の僕の日本ミステリーベスト1は、何と言っても『粘膜蜥蜴』ですね」と。「ネンマクトカゲ」? 何なんだ!? 大森さんの話を聞くと、この本の前に『粘膜人間』という文庫本が角川ホラー文庫から去年の10月に出ていて、平成20年、第15回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作なんだそうだ。

ぼくはぜんぜん知らなかったのだが、玄人筋ではずいぶん話題になった作品みたいだ。B級ハリウッド・ホラー映画に日本昔話の「のほほん」感と、柳田国男を団鬼六に変換したみたいな、スプラッター・ホラー小説の傑作との評価。杉江松恋さんなんて、「前作」「最新作」も絶賛じゃん! これは読まなきゃ。じつは、ぼくは日野日出志諸星大二郎のマンガが大好きなので、これは「ぼくの好み」に違いないと直感した。で、今日の夕方 TSUTAYA へ行って「角川文庫」のコーナーを探したのだが『粘膜蜥蜴』はなかった。残念。もしかすると? そう思ってブック・オフに行くと、『粘膜人間』を300円で入手できた。しめしめ(^^;; さぁ、読むか。

 最近購入した未読本など        2009/10/15 

■翻訳ミステリーファンとしては、最近開設されたサイト「翻訳ミステリー大賞シンジケート」が、近年にない充実ぶりで楽しくなってしまう。連日更新されているし、今年読むべき翻訳本の大方を既に入手済み(でも未読)であることが確認できて、うれしかったりするのだ。

■という訳でもないが、ぼくが近頃本屋さんで購入した本を忘れないように列挙しておく。ちなみに、そのほとんどが未読本。新規購入本の順です(注:雑誌は除く)。それにしれも、こんなにたくさん買って、いったい何時読むんだ?

1)『枝元なほみの料理がピッとうまくなる』 枝元なほみ・著(ちくま文庫)
2)『人生を好転させる「新・陽転思考」』 和田裕美・著(ポプラ社)
3)『絵本の本』 中村征子・著(福音館)
4)『海竜めざめる』 ジョン・ウィンダム・著、星新一・訳(福音館)
5)『つばくろ越え』 志水辰夫・著(新潮社)
6)『おもいで』 内田麟太郎・作、中野真典・絵(イースト・プレス)
7)『はじまるよ』 ぱくきょんみ・文、熊谷守一・絵(こどものとも 0.1.2.)
8)『くまおじさん』こさかまさみ・作、池谷陽子・絵(こどものとも11月号)
9)『犬の力・上、下』ドン・ウィンズロウ(角川文庫)
10) 『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 上・下』(早川書房)
11) 『約束の地』 樋口明雄・著(光文社)
12) 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子・著(朝日出版社)
13) 『孕むことば』 鴻巣友季子(マガジンハウス)
14) 『魚舟・獣舟』上田早夕里・著(光文社文庫)
15) 『はじまりの歌をさがす旅』 川端裕人・著(角川文庫)
16) 『越境』 コーマック・マッカーシー著、黒原敏行・訳(ハヤカワ文庫)
17) 『父の遺産』 フィリップ・ロス著、柴田元幸・訳(集英社文庫)
18) 『闇の奥』 コンラット・作、黒原敏行・訳(光文社・古典新訳文庫)
19) 『静かなる天使の叫び 上・下』R・J・エロリー著、佐々田雅子・訳(集英社文庫)
20) 『川は静かに流れ』 ジョン・ハート著、東野さやか・訳(ハヤカワ文庫)
21) 『ブルー・ヘブン』 C・J・ボックス著、真崎義博・訳(ハヤカワ文庫)


注目は、(7)『はじまるよ』だ。本を手に取り「あっ!どっかで見た絵だ」と思った。「ヘタウマ」画家の元祖(教祖)のような熊谷守一の実物の絵を見たことがあった。原田コレクションが基盤となる「信州高遠美術館」の収蔵品の中でも、熊谷守一の絵は目玉作品だ。彼の「板に直接ベタッと描かれた絵」は何度も目にしているのだ。だから、『はじまるよ』を手にして「あっ!」と思ったんだね。で、「信州高遠美術館」のサイトを見に行くと、10月17日から熊谷守一親子展が企画されているではありませんか! 何というタイミングの良さ。やったぁ、見に行こう。

 甲斐大泉「ん路湖」と、甲斐小泉「グローブ・カフェ」        2009/10/14 

■昨日の「柳家喬太郎・駒ヶ根独演会」には、結局行けず終いだった。連休明けの小児科外来は大変な混雑で、午前中だけで新型インフルエンザの患者さんが11人。午後は2時から伊那市役所で就学指導委員会があったので、外来診療は午後4時からになってしまい、結局終わったのが夜の7時半。それから30分かけて駒ヶ根へ向かっても、落語会はもう終盤だ。泣く泣くあきらめたという次第。今日、 「越百のブログ」 で確認すると、喬太郎さんの題目は「小言幸兵衛」と「井戸の茶碗」だったようだ。おぉ、やっぱり新作は封印して古典2題だったか。安楽寺には400人の聴衆がつめかけたのだそうだ。すっげぇな。喬太郎さんもメジャーになったんだね、うれしいなあ。

■体育の日は久々に遠出をした。9月の初めに1回だけ松本までは行ったが、それより遠くは4カ月ぶりか。とは言え、子供が中学生になると長期の予定が全く立たない。中1の長男が2学期中間試験を終え、陸上部の安曇野遠征は10日(土)で、11日、12日は部活がないようだと確認できたので、困った時の八ヶ岳頼みで、甲斐大泉の 「ん路湖」 さんに妻が電話し11日(日)の宿泊予約を入れた。電話で「何かお料理のリクエストありますか?」と、いつも訊かれるのだが、今回は都会の寿司屋みたいに「おまかせ」でお願いした。ちょっとドキドキだ。何を食べさせてくれるのかなぁ? 妻も僕も子供たちも期待でワクワク。

小淵沢リゾナーレに寄ってから大泉へ。「ん路湖」到着後、いつものように「パノラマの湯」へ行って、ものすごい混雑の中露天風呂に浸かり帰宿。食卓にはどんどんと料理が並び始めていた。詳細は忘れてしまったが、女将の特製餃子、和風タルタルソース添え海老フライ&帆立フライ、長崎皿うどん、ワンタンスープ、白菜と肉団子の汁もの、ほうれん草のお浸し、ウリの酢の物、岩魚の塩焼、柿のデザート、その他。美味しかったなぁ。ダイエットして胃が小さくなったわりには、けっこう食べた。ほぼ完食。

「ん路湖」宿泊の楽しみは、よる9時からの「お茶の時間」だ。台湾から定期的に送られてくる厳選された烏龍茶がとにかく美味しい。この日は、台湾特製スイカのタネ、スルメイカと、焼き芋、それに抹茶ゼリー練乳添えが出た。ぼくは調子にのって奄美大島の「黒糖焼酎」を3杯も飲んでしまった。美味しかったな。

■翌朝はやくに起き出して、清里有料道路にかかっていた黄色い橋まで家族でジョギング。満足の朝食の後は「吐竜の滝」までハイキング。こんなにいところがあったんだね。何度も来ているのに知らなかったのだ。その後 「えほんミュージアム清里」 「清里フォトアートミュージアム」 を訪れ、帰路途中にある 「グローブ・カフェ」 で昼食。近隣の地元の人か別荘族しか知らない「森の隠れ家」のような店だが、ここの石釜ピザは絶品だ。チーズが美味しい。そして もっちり した生地が何とも言えない食感で(今まで一度も食べたことのない不思議なピザ生地なのデス!)それでいて腹持ちはなぜか軽いので何枚でも食べられそうだ。パスタもシーザーサラダも旨かった。前に来た時には「オカヒジキのサラダ」を食べたけど、あれも美味しかった。裏庭にはツリーハウスが出来上がっていたぞ。また来よう。

 『おもいで』 内田麟太郎・作、中野真典・絵(イースト・プレス)   2009/10/12 

■これは傑作だ。本を手に取るなり即座に直感した。松本パルコB1F「リブロ」絵本売場でのことだ。10月10日(土)は父の命日だったのだが、午後3時から松本市医師会館で長野県小児科医会の役員会があったので、午後2時に診察終了後あわてて着替えて車に乗り中央道へ。しかし、最近土日の中央道は首都高並みの混雑で事故も絶えない。この日も事故だったのかどうかは判らないけれど、伊北インターを過ぎたあたりで自然渋滞。追い越し車線もぜんぜん進まない。そんなかんなで、結局会議には30分遅刻した。でも、今週伊那では新型インフルエンザがブレイクして、当院でも今週1週間で24人の新患がでたのだが、どうも長野県の他の地区ではまだぜんぜん流行ってないみたいで「伊那だけ何でそんなに多いの?」って言われてしまった。え〜っ、確かに迅速診断キットではA型陽性で出るんですけど……

会議は夕方5時半に終わった。街中も混雑している。せっかく松本まで来たんだから寄り道して帰ることにする。いつものことではあるのだが(^^;;)

「ほんやらどお」で中古CDを物色した後、松本パルコB1F「リブロ」の書籍売場へ移動する。まずはB1Fのトイレで身だしなみを整え(何せ松本まで来たんだからね)絵本売場へ。ここの売場は保守的でありながら、売れ線路線まっしぐらなところもあって個人的には好きではないのだが、新刊がぶっきらぼうに本棚に詰め込まれているから要注意なのだ。今回も注意深く本棚を横に見て行くと、気になる「背表紙」が見つかった。目を引いたのが 内田麟太郎・作 の文字だ。おっ! もしかして新刊? と、手に取った絵本が、この 『おもいで』内田麟太郎・作、中野真典・絵(イースト・プレス) なのだった。

■人は、夢見る場合2つに分かれるらしい。モノクロの夢を見る人と、総天然色のカラーの夢を見る人と。内田麟太郎さんは、モノクロの夢を見る人なんだな。ぼくは何時だってカラーの夢を見るよ。と、「おやっ、あれっ?」この絵本、途中から突如「カラー」になるのだ。ビックリする。あ、内田麟太郎さんも総天然色の夢を見るのか。ピンクのバスがいいなぁ。おじさん、おばさんが登場して、そうして詩人のお父さん。戦前の大牟田に暮らした詩人、内田博。そうか、彼は煙突なんだ。

本の構成上仕方なくじゃなくて、意識的にパート・カラーにした絵本というのは、この絵本が初めてなのではないか?(わが家の本棚を調べたら『いろいろへんないろのはじまり』アーノルド・ローベルがあった)映画にはいっぱいあるよ。1970年代のピンク映画はみんなそうさ。ストーリーに関係したシーンはモノクロで、男女の営みの場面だけ突如カラーになる。でも、中には骨太の「パート・カラー作品」があった。日活ロマンポルノの傑作 『まる秘色情めす市場』 田中登監督作品だ。主演は芹明香。その母親役を花柳幻舟。宮下順子も出ていたな。大阪通天閣からジャンジャン横町を南に下って「飛田遊郭」でオールロケを敢行した。天王寺動物園から「あいりん地区」に隣接するこの地域は、大阪在住の地元民は昼間でも決して足を踏み入れない超危険地帯なのだそうだ。

カメラはモノクロで舐めるように「飛田遊郭」をリアルに描写する。売春婦の母から生まれた「てておや」知らずの娘、芹明香と、その白痴の弟。弟はオスの鶏を飼っていて、実の姉と近親相姦で結ばれたその翌朝、愛鶏に縄をつけて引きずりながら通天閣に登ってゆく。それまでずっとモノクロ映画だったのだが、このシーンから突如カラーとなるのだ。弟は通天閣の外階段を鶏を引きずりながら2F、3Fへと登ってゆく。BGMは村田英夫の「王将」だ。延々と流れ続ける王将の歌詞の3番が終わった時、弟は通天閣の頂上に立つ。その時、朝日が昇るのだ。そのカラー映像の美しいことと言ったらなかったな。ぼくはこの映画を何処の映画館で観たのか? 忘れちゃったなぁ。


『おもいで』 内田麟太郎・作、中野真典・絵(イースト・プレス)は、とにかく絵がいい。雑で幼稚なようでいて、妙に心の奥底に訴えかけてくる力がある。内田麟太郎さんが、何十年も前の子供時代に封印した意識下の記憶が、夢の形となって繰り返し表れるのだが、この中野真典氏の絵が実にマッチしているのだ。 『絵本があってよかったな』 内田麟太郎(架空社)と月刊『こどもの本』に載った内田麟太郎さんの自伝エッセイを読んでいたから、内田さんが6歳の時に亡くなった実母のこと、その後に家へやってきた継母との確執は知っていた。だから、余計に「この絵」が心にじんと沁みる。

夢・内省的な風景・望郷・母親・狐のお面、と言えば、つげ義春の 『ねじ式』 だ。 「ポキン、はい金太郎」「では、ごきげんよう」「たっしゃでなぁ」。目医者と郷愁に満ちたこの漫画は、母親との出会いと決別の漫画だった。50歳を過ぎても、ぼくは母親の息子だ。それは、ぼくが60歳になっても70歳になっても決して変わることはない厳然たる事実。母がぼくを産んでくれたから、ぼくはこうして今も生きているのだ。

あぁ、おかあさん。 切ないなあ。


 『世界は分けてもわからない』福岡伸一(講談社現代新書/2000)   2009/10/06 

■椅子のデザインなどで世界的に有名な イームズ夫妻 が製作した科学映画 「POWERS OF TEN」 が YouTube にあった。

http://www.youtube.com/watch?v=wTwvkGjsNEY&feature=PlayList&p=D00A680DDDCB9457&playnext=1&playnext_from=PL&index=54

このフィルムは何度見ても飽きないなあ。じつに面白い。ぼくはその存在を全く知らなかったのだが、 『世界は分けてもわからない』 福岡伸一(講談社現代新書)の p36 に 「POWERS OF TEN」 のことが書かれていて興味を持ったのだ。この短編映画は本にもなっている。 『パワーズ オブ テン』 フィリップ・モリソン著(日経サイエンス社)だ。そしたら、9月24日付の長野日報 「私の推薦図書」 のコーナーで、伊那図書館・平賀研也館長が「まさに、この本」を紹介していたのでビックリした。そうか、伊那図書館にはあるんだ。今度借りてこよう。たぶん、伊那図書館長も福岡ハカセの 『世界は分けてもわからない』 を読んだんだね、きっとそうに違いない。

■福岡ハカセは、ぼくと同い年だとばかり思っていたのだが、1959年9月29日生まれだから一年後輩だった。それにしても文章が上手いなあ。あらためてそう思った。しかも、文章を書き始める前から、本の書き出しから巻末の決め言葉まで全て構成が完成されているのではないかと思ってしまうほど、一見、関係がないようなエピソードの積み重ねが、実は巧妙に緻密に計算された堅牢な建造物のように完璧に構築されている。そういった印象を持った。福岡ハカセは、実はずる賢いエセ科学者かも? という疑問も拭えなかったのではあるが、文筆家としては読者を煙に巻く稀代の嘘つき(ミステリー作家)には違いないのだが、科学者としては虚飾のない正直な、自分の限界をよく理解している、実に謙虚な研究者だと僕は思う。

彼は正直だ。この本を読んでそう思った。ぼくもある時期、実験室で日がな一日 DNA や RNA の抽出に明け暮れていたことがあった。研究者は「こうなるに違いない」という仮説を立ててから実験計画を組み立てて実施するワケだが、その多くが仮説通りにはいかない。うまくいかないのだ。場合によっては、仮説と正反対な結果がでることもある。そのことをどう評価するかが、誠実な研究者とそうでない研究者の分かれ目なのかもしれない。そこから新たな新発見が見つかることがままあるからだ。

そんなことなどを、この本を読みながら思い出していた。

それにしても、福岡センセイは「文系読書家」を自分のフィールドに取り込むのが巧い。だって、あの 須賀敦子 だぜ! これはコロッとくるよな。ATP にもトリプトファンにも興味はなくたって。

しかし、須賀敦子大好き「文系読書家」に、あのストレスフルで忍耐の限界を強いる「研究室の日々」が理解できるのであろうか? ぼくはできないと思う。でも、あのベストセラー『生物と無生物のあいだ』にあったワトソン&クリックのDNA二重らせん構造発見の影に泣いたある女性研究者の話とか、本書の後半を盛り上げた、コーネル大学生化学研究室教授エフレイム・ラッカーと新人研究員マーク・スペクターの神業的研究成果が続々と繰り出されるくだりを読むと、文系読書家の皆さんも「研究生活」の片鱗をヴァーチャルに体感できるのではないか。そのあたりが福岡センセイの筆が一番冴えるところだと思う。ぼく自身はもしかすると前作以上にドキドキしながら、すっごく楽しんで「この本」を読了した。福岡センセイが研究テーマにしている必須アミノ酸「トリプトファン」は、あの セロトニン メラトニン の原料だしね。

『世界は分けてもわからない』と福岡センセイは言うが、科学とは、マップラバーな研究者たちの絶え間ない探究心と実験の成果であるわけで、福岡センセイ自身もマップラバーのはずだ。彼は言う。「分けてもわからないと知りつつ、今日もなお私は世界を分けようとしている。それは世界を認識することの契機がその往還にしかないからである」と、諦観とも取れる一言で本書を終わりにしているのだ。こうした矛盾を抱えつつ研究生活を続ける福岡センセイに、ぼくはさらに好感を持った。

 柳家喬太郎 駒ヶ根独演会 at the 安楽寺 は、10月13日(火)   2009/10/05 

■せんだって、久しぶりに伊那のTSUTAYA へ行ったら驚いた。レンタルCDコーナーに、でっかく「落語」ってあって、以前から置いてあった桂米朝全集、桂枝雀全集と、若い頃の立川談志のCDが下の目立たない段に押しやられて、代わりに 春風亭昇太 と、 立川談春 と、それから、 柳家喬太郎 さんのCDがなんと、3枚ずつ(談春師は、2枚組が2本)展示されていたのだ。そうか、ようやく「そういう時代」になったのだなぁ。しみじみ。

ぼくのオススメは「夜の慣用句 / すみれ荘201号室」だ。正統派の落語家は、普通「声色」を使わない。男も女も、小僧さんも番頭さんも同じ声のトーンで語る。立川志の輔がそうだ。決して声が良いとは言えない志の輔さんは、逆に意識して全ての配役を「同じ声色」で演じるようにしている。それでいて、登場人物のキャラクターが見事に描き分けられているのだから凄い。落語とは、本来そういう芸能なのだ。名人、古今亭志ん朝の落語を聴くと、特にそう思う。志ん朝師の 「真田小僧」 を聴いてごらん。子供の声と、父親の声のトーンは、意識的に同じ音程にある。

ところが、昭和の名人の一人である、先代の 三遊亭金馬 は違う。熊さんとその女房、薮入りで久々に帰ってくる息子。ぜんぶ声色を変えているのだ。だから判りやすい。でも、これを下手な落語家がやると、堀井憲一郎氏が 『落語論』 (講談社新書)で書いているように、幼稚園の先生の「紙芝居」になってしまうのだ。

柳家喬太郎師はふだんは正統派だ。古典落語をやる時はそうだ。でも、新作をかける時には意識して登場人物の声色を変える。例えば、女子大生。それから、市会議員と会社の上司。それが、聴いていて全く違和感がない。これは演者の技量なんだろうなぁ。

■さて、今年も 柳家喬太郎 さんが伊那谷にやって来る! 師がまだ「二つ目」だった頃から独演会を開いていた、駒ヶ根に喬太郎師を呼ぶ会(略して「駒喬会」)の、記念すべき第10回が、10月13日(火)よる18時30分開場、19時開演で、駒ヶ根市「安楽寺」で開催される。木戸銭は1500円。露払いに、駒ヶ根市出身、伊那北高校卒業の芸協所属、昔々亭健太郎も出演する。連休後の火曜日だから、たぶん診察が終了時間前には終わらない。でも、家族全員で行くぞ! 絶対に。

安楽寺 には駐車場がないので、車は駒ヶ根文化会館に停める必要がある。そこからJR駒ヶ根駅方面に下って少し行った右手に「安楽寺」はある。5分で着ける。 何をやってくれるかなぁ。個人的には「新作」を是非やって欲しい。「ハワイの雪」か「ほんとうのことを言うと」。それとも「寿司屋水滸伝」か「諜報員メアリー」。ダメかなぁ(^^;;

 『みさき』 内田麟太郎・文、沢田としき・絵(佼成出版社)      2009/10/02 

■これは、最近の内田麟太郎さんの絵本の中でも出色のデキなのではないか。いいなぁ、すっごくいい。 『みさき』 (佼成出版社)のことだ。

さとなお さんに薦められて鳩山首相もあわてて見に行ったという映画 『サマーウォーズ』 を、浜松 「弁いち」の親方 が(さとなおさんよりも先に)絶賛していたし、山下達郎の奥さんが日曜午後2時からのFMでベタ褒めしていて、ぼくも「これは必見!」ってずっと思っていたから、遅ればせながら松本まで見に行ってきた。9月7日、当番医の翌日月曜日のことだ。確かに、さとなおさんが言うように、この映画は 真夏に、映画館の大スクリーンで観なければ、その魅力が半減してしまう 映画だ。信州上田が舞台なのがいい。夏の高校野球、長野県大会の決勝戦が映画に出てくるのだけれど、上田高校 対 松商学園(準決勝は、上田 対 佐久長聖だった)てところが長野県民には芸がこまかくてうれしい。それに、映画の展開がぜんぜん読めなくて、次々と予想を覆されたことも意外だった。細部までじつによくできた映画で、とても感心したしラストでは感動した。ただ、ああいうヴァーチャル・コミュニティーに慣れてなかったから、ぼく自身はいまひとつ、全人類の存亡に関わる危機感を納得できるリアリティが感じられなかったことも事実。

そういう意味では「この絵本」も 『サマーウォーズ』 以上に季節限定、夏専門商品なのかもしれない。でも、ぼくは「この絵本」を9月末に初めて手にしたのだが、まったく違和感がなかった。たぶん、画家の 沢田としき さんが、アフリカの絵本をいっぱい描いていたから亜熱帯の風景が自然と入ってきたのだろう。ぼくは、この絵本 『みさき』 の舞台は 小笠原諸島 だと勝手に決めつけた。いや、小笠原の離島にバスが走っているとは思えないよ。でも、未だに飛行機が飛ばない小笠原は、週に一度、東京・浜松町下車徒歩10分の竹芝桟橋から出航する 「汽船」 が唯一の交通手段なのだった。この雑草、この灌木、この青空。絵本に描かれた絵は、亜熱帯の小笠原諸島に違いない。

主人公の島の少年の日焼けした姿を見よ。不思議と醒めた少年の目を見よ。

少年は、いつの日か「あの汽船」に乗って「この島」を出て行きたいと思っている。でも、自閉症の弟と、百貫デブで寝たきりの母親がいるから、絶対に自分が生まれ育ったこの島を捨てて出てゆくことはできない、そう思っている。あれっ? もしかして映画 『ギルバート・グレイプ』 と混同しちゃったか? 主人公の少年は、ジョニー・デップ。かいじゅうの縫いぐるみは、自閉症役を熱演したデカプリオではないか? なんて、勝手にサイドストーリーを想像してみるのも楽しい。

この絵本のポイントは「3つ」ある。極端に省略された少なすぎるテキスト(少年の独白のみなのだ)と、白抜きされて眩しく照り返す真夏の道。そうして突如降り出す土砂降りのスコール。沢田としき氏はじつに見事に視覚化してくれました。これは力作だ。オススメの絵本です。



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