『当世「辛いもの」行脚』

                    北原こどもクリニック

                          北原文徳



 辛いものが好きなんです。むかしから。
だから、カレーと言えば「ハウスジャワカレー辛口 」ひとすじ。ところが最近では、子どもに合わせて「バーモンドカレー甘口」しか食べさせてもらえません。仕方ないのでマコーミックガラムマサラソース と、八幡屋磯五郎の「七味唐辛子」を子ども用カレーにたっぷり振りかけて食べる日々。でも、ちょっと哀しいものがある。

 しかし小さな子ども連れでは、変なインド人が経営している諏訪の『ナマステ 』とか、タイ式カレーが癖になる松本の『メイヤウ 』とか、海外青年協力隊帰りのマスターが本格的なナンを焼いてくれる駒ヶ根の『アンシャンテ 』(少し前に、写真家の藤原新也さんが『週刊文春』のおしまいに載っているグラビアページ「私の取り寄せ便 」で、ここのカレーを紹介していました)とか、R153沿いにある宮田村の本格スリランカ料理店『アルッガマゲ』には、行きたくても行けないんです。そんな欲求不満がぼくの中でいつも渦巻いているのでした。

 じゃぁ焼肉屋ならどうだろう? 焼肉なら、家族みんなが満足できる。例えば、舌にとろける「塩カルビ 」がイチ押しの伊那市日 影の『木曽の権兵衛』。仕上げのご飯物はというと、子どもたちのお気に入りは、ふんわり溶きたまごたっぷりの「甘口 クッパ」、そしてぼくは「カルビクッパの辛口 」を注文するのが我が家の定番。

 よくクッパのことを「韓国風ぞうすい」と思っている人がいるけれど、あれはご飯にスープをかけてあるだけなんで本当は「韓国風お茶漬け」 ですね。カルビクッパのスープは唐辛子をたっぷり効かせたオレンジ色をしていて、これがまた何とも食欲をそそるのです。

 ただ辛ければそれでよい訳ではありません。『木曽の権兵衛』の劉チーフが作るカルビクッパは、辛さの奥にコクと旨味が丁寧にブレンドされていて、じつに美味しい。溶き卵で不思議と辛みがマイルドになっているので、はふはふ言いながら一気に食うのがこれまた 快感です。食べ始めて3分もしないうちに、首より上の汗腺から一斉に汗が噴き出してき ます。胃の中はカーッと熱くなって、汗がひいた頭はスーっと涼しい。ちょうど雪の日の露天風呂に浸かっているような心地よさとで も申しましょうか。これは一度味わったら癖になります。しかも、翌朝トイレでお尻が辛いのも、ちょっと怖い楽しみの一つです。

 人間の欲望には限りがありません。もっともっと強い刺激を求めて、天竜町『宝船』 へと移動しましょう。ここのご飯物は、キムチ 雑炊かキムチチャーハンがお薦めなんですが、個人的には「ユッケジャンクッパ」が絶品であると確信しています。なみの辛さではありません。とにかくスープの色からして違う。もう真っ赤。この色を初めて見た時には、さすがのぼくもビビリましたよ。でも、ゴマ油がほどよく効いた味わい深いスープには心底ホレてしまいました。これは旨いです。ただ万人にお薦めではありません。それなりの覚悟の上でご注文下さい。

 最後はラーメンといきましょうか。こってり系ラーメンで以前から有名なのは南箕輪の『ラーメン大将』ですが、最近人気急上昇中なのが、伊那合同庁舎と伊那市駅の中間位に先頃できた『原点ラーメン』 。こてこての豚骨スープに極太のちぢれ麺がしっかり絡んで、ちょっと他では味わえない独特のラーメンが売りの店です。メニューではあまり目立たないのだけれど、さりげなく「激辛らーめん」という項目があるんですが、ラーメンに激辛は邪道だと、ぼくははなから無視してきました。ところが、伊那市医師会の席で、百瀬先生から「おいしいよ! 激辛らーめん」 とお聞きして、俄然挑戦してみたくなったのです。

 先日、とうとうその日がやってきました。女房子どもが留守だった昼休み、ぼくは満を持してママチャリにまたがり、天竜川を渡っ たのです。さて激辛らーめん。スープの色はそれほどでもないのに、これが意外と辛かった。ラーメンのスープは全部飲み干すことを信条にしているこのぼくも、さすがにちょっと辛(つら)かったです。まだまだ修行が足らないな。

 それにしても、真っ昼間から汗だらだら流して決死の形相でラーメンすする様は、端から見たらかなり異様だったかもしれません。

なお、野沢医院近くにあった『印度屋』の場所にできた、あっさり系ラーメン店『らーめん・ひより』にも「地獄ラーメン」なるメニューがあるとの噂ですが、ぼくはまだチャレンジしていません。

●みなさまオススメの「辛いもの」情報 、お待ちしております(^^;;

(2000年11月05日 記、2003/01/03 追記)



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