『「保育園入園にあたって、集団生活の不安」』

                    北原こどもクリニック

                          北原文徳

●『はっぴいママ』に依頼されて書いた原稿です。ボツ原稿も含みます。



●Q1)こどもが保育園に入園するにあたって、注意することはありますか?


「集団保育は感染症にかかりやすい」という のは本当です。特に、長男・長女の場合は、 それまでほとんど熱も出さなかったのに、保 育園に通い始めた途端、カゼばかりひいて、 保育園をしょっちゅう休む事態に陥ることが よくあります。ゼロ歳児、1歳児の小さな子 供を保育園に預ける場合には、さらにその傾 向は強くなります。

育休からやる気満々で職 場復帰したのに、子供の病気で月の半分しか 出社できず、こんなはずじゃなかったと、悔 し涙を流すおかあさんも多いです。連合が母 親社員たちを対象に実施した調査で、1年間 に保育園に預けられなかった日数をたずねた ところ、全年齢平均で約16日でした。これを 入園当初1年間の日数ということで訊くと、 約27日間、ゼロ歳児では約30日間にもなりま した(「子ども看護休暇に関する調査報告書」 1999年)。

 でもそれは仕方のないことなのです。子供 は熱を出すことが仕事のようなものです。カ ゼの原因になるウイルスは400種類以上もあっ て、1〜2歳児は年に平均8回カゼをひくの だそうです。1つカゼをひく毎に免疫ができ、 入園後半年〜1年も経てばずいぶん丈夫になっ てきます。そうして小学生になる頃には、も うあまり病気をしなくなるのです。

 保育園に通うにあたって一番大切なことは、 必要な予防接種を確実に済ませておくことだ と思います。麻疹、風疹、三種混合、ポリオ などの「定期接種」はもちろん、水痘やおた ふくかぜ、インフルエンザなどの「任意接種」 に関しても、かかりつけの先生とよく相談し て接種を検討して下さい。例えば水痘の場合、 命に関わるような合併症はありませんが、子 供は元気がいいのに1週間は保育園をお休み しなければならないからです。

 次に大切なことは、保育園で流行する感染 症の「感染様式」の違いを理解することです。 【別表】をご覧下さい。ご注意いただきたい のは「空気感染」「飛沫感染」とでは意味 が違うということです。飛沫は水分が多く重 いので、患者から半径2m以上先には飛び散 りません。これに対して空気感染の場合は、 水分が蒸発して軽く小さい飛沫核で感染する ので、室内の空気中に長時間漂いながら感染 のチャンスをうかがいます。麻疹と水痘の伝 染力が他の感染症と比べてずば抜けて強力な のは、このような理由によるのです。

 便や、便で汚染された物を触った手で口を 触ることで感染する(糞口感染)疾患で注目 していただきたいのは、初冬に流行するノロ ウイルスの嘔吐下痢症です。ノロウイルスの 伝染力もすごいです。患児の便1g中には、 数億〜数百億個のウイルスが存在し、嘔吐物 1g中にも、数万〜数十万個のウイルスが存 在しています。感染に必要なウイルス数は、 数十個でよいので、ちょっと手に着いた、も しくはちょっと吸い込んだウイルスだけで、 充分に感染発症させることができるのです。

 手足口病やヘルパンギーナ、溶連菌感染症 などのように感染経路が1つでないものもあ ります。

それから、伝染力が強く症状が重い 感染症の場合は、伝染予防のため学校保健法 によって登園禁止措置がとられます。この場 合、登園するには医師の登園許可証が必要と なります。

 こうして見てきますと、子供の「手」を介 して感染する病気が案外多いことに気が付き ます。つまり、保育園での感染予防対策とし て簡単で最も効果的な方法は、保育者と子供 たちがしっかり「手洗い」をすることなので す。ご家庭でも、子供たちに正しい手の洗い 方をきちんと教えてあげることが何よりも大 切です。


【別表】 保育園で流行する感染症の「感染様式」
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空気感染 :空気を介して鼻、喉、肺からうつる   麻疹、水痘、結核
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飛沫感染 :くしゃみ、咳で飛んだ飛沫を吸い込んでうつる 
 
  インフルエンザ、SARS、百日咳、アデノウイルス、おたふくかぜ、風疹、
  手足口病、伝染性紅斑(りんご病)
  ヘルパンギーナ、マイコプラズマ肺炎、溶連菌感染症
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接触感染(直接):肌が直接触れることで感染する 
 
  とびひ、みずいぼ、帯状疱疹、口唇ヘルペス、ウイルス性結膜炎、あた
  まじらみ、白癬
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接触感染(間接):微生物に汚染されたものを触れた手を介して口から感染する

呼吸器に感染するもの: ライノウイルス(鼻かぜ)、パラインフルエンザ、
             RSウイルス、溶連菌感染症 
 
消化管に感染するもの(糞口感染): ロタウイルス、ノロウイルス、
                   カンピロバクター、サルモネラ、
                   病原性大腸菌0157、A型肝炎、赤痢、
                   ポリオ、蟯虫、エンテロウイルス、
                   手足口病、ヘルパンギーナ
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Q2)「子どもがかかりやすい病気やケガの対処法」

 申し訳ありませんが、この限られたスペー スでお答えできる質問ではありません。ネッ ト上には、開業小児科医が展開する優れたサ イトが多数あります。以下に、ぼくが個人的 にファンで頻回にチェックするサイトをご紹 介しますので、すみませんが、そちらをご参 照ください。


・東京都こども医療ガイド
  http://www.guide.metro.tokyo.jp/

・かたおか小児科クリニック
 http://www.kataoka-cl.com/

・塚田こども医院
 http://www.kodomo-iin.com/

・加藤小児科医院
 http://www.nsknet.or.jp/~katoh/

・耳鼻科50音辞典
 http://homepage1.nifty.com/jibiaka50/

・かわむらこどもクリニック
 http://www.kodomo-clinic.or.jp/

・くば小児科クリニック
 http://www.kuba.gr.jp/

・片山こどもクリニック
 http://www.medicos.jp/

・だい医院小児科
 http://homepage1.nifty.com/daiiin/

・はしもと小児科
 http://www.mynet.ne.jp/hasimoto/

(2004年 10/02 記)



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