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北原こどもクリニック  



  おとうさんが読む「絵本」


  ●おとうさん「が」読む絵本(その4) 平成15年9月〜12月に取り上げた絵本 


(その1)の「おすすめ」絵本 は?●  

(その2)の「おすすめ」絵本 は?●  

(その3)の「おすすめ」絵本 は?●  

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『聖なる夜に』 ピーター・コリントン/作・絵

(BL出版)¥1300 (税別) 2000年11月01日発行、2003年10月10日第3刷発行


●これはイギリス版「かさじぞう」のおはなしです。「字のない絵本」ですが、文章はなくても、ちゃんと読み聞かせはできますよ。子どもといっしょに絵を見ながら、あれやこれや親子の会話を楽しめばよいのです。

■クリスマス・イヴの寒い朝です。村はずれのトレーラーハウスで一人目覚めた、しわだらけのジプシーのおばあさん。ストーブの薪も切れ、食料もパン一切れ残っていませんでした。財布代わりの鍵付きの木箱を開けても、お金は一銭もありません。しかたなくおばあさんは、アコーディオンを担いで、街まで営業にでかけるのでした。さて、それから……

東方から星を頼りにやって来た3人の学者がいい味だしているんだ。生まれたばかりのイエスさまに捧げるはずの「宝の箱」と「乳香」と「没薬」の3つの贈り物を、質屋に売っちゃうのです(^^;) 羊飼いは、財布代わりの木箱を取り返し、ヨセフさまは、樅の木を切ってきて、クリスマスツリーにし、穴の開いたトレーラーハウスの木の床を修繕するのでした。

最後のページで、クリスマスの星が輝いています。
しずかなしずかな夜でした。

▼渋い色合いと、細密なタッチがじつに味わい深い絵本です。この本は、作者ピーター・コリントン自身の母親に捧げられています。なるほど、そういうワケだったんだ。

みなさまも、どうぞよきクリスマスをおむかえください。 メリー・クリスマス!

(2003年 12月23日 記)

     
『聖なる夜に』
 ピーター・コリントン/作・絵
 (BL出版)





『地面の下のいきもの』 松岡達英・絵 大野正男・文

(福音館書店)¥1300 (税別) 1988年6月30日発行、2000年6月5日第19刷


●「絵本」を、大人が子どもに読み聞かせすべき本であると考えると、大きく欠落する「絵本の一大分野」があります。それは何かと言えば、「図鑑」ですね。この分野は一般的に、おかあさん方は興味がないから、ぜひ、おとうさんが、子どもをナビゲートしてあげて下さいね(^^)

図鑑には、ストーリーがないからつまらない、そう思っていたら大間違いですぞ。長年そのことに苦心してきた絵本作家が、松岡達英さんです。特に、福音館から出ている『海辺のずかん』『森のずかん』の2冊は、父と息子のストーリーが、図鑑でありながら同時にきちんと語られていて、ビックリしてしまいます。

最近は、小学館からの『恐竜物語・シリーズ』に力を入れている松岡さんですが、ぼくが個人的に一番好きな絵本は『地面の下のいきもの』なんです。子どもたちもね、大好きですよ、この絵本(^^) だって、毎日スコップで土を掘り返しては、蟻の巣を破壊したり、冬眠に入った黄金虫の幼虫を見つけることが生き甲斐なんだから。でも、気持ち悪い生き物がいっぱい登場するから、おかあさんには受けないだろうな、きっと(^^;;

この『地面の下のいきもの』の凄いところは、日本古来の「絵巻物」の伝統を踏襲していることです。この絵本は「ほぼ実寸大」で書かれていて、地下20cm の深さの地面の断面図が、ページをめくる毎に、画面右側にどんどん平行移動してゆくのです。そこにはちゃんとストーリーが用意されているんだ。これは実際に体験してみてください。

●平行方向ではなくて、垂直方向の移動を絵本にしたのが『ジャングル』。中米「コスタリカ」という国は、世界で2つしかない「軍隊を持たない国」として有名ですが、もっと有名なのは、海抜0mから高い山まで、ここでしか見ることのできない多彩な動植物が群居しているジャングルなのです。TBSテレビ、日曜日よる8時『どうぶつ奇想天外』でも取り上げられたことはありますが、不思議とテレビで見るよりも、この絵本を眺めていたほうが、コスタリカのジャングルを豊にイメージできるんだ。

これこそが「絵本のちから」なのかもしれません。

(2003年 12月14日 記)

     
    『地面の下のいきもの』
 松岡達英・絵
 大野正男・文
 (福音館書店)

    
  『ジャングル』
  松岡達英/作・絵
  (岩崎書店)

    
  『海辺のずかん』
  松岡達英/作・絵
  (福音館書店)






■企業のPR誌『三井グラフ』で、今年のはじめに「絵本特集」を組んだのですが、その「ウェブ版」を見つけました。

『三井グラフ』Volume130 JANUARY-MARCH 2003「絵本の楽しみ」
             (2003年 11月18日 記)




『うみのむにゃむにゃ』 内田麟太郎/作 伊藤秀男/絵

(佼成出版社)¥1300 (税別) 2003年 10月30日 初版 第1刷


伊藤秀男さんは、本当に絵がうまい! 特に魚の絵。『たべもの』(福音館書店)p18,19 の「鯛」の美味しそうなことといったら、ありませんぜ、旦那(^^;) それから「鯉」『海の夏』で、おとうさんが釣り上げた鯉、『子どもザイレン』で、オヤブンが提灯に書いた鯉。そうして『さかなつり』の池の中のリアルな鯉。

だから、伊藤秀男さんにさかなの絵を書かせた、内田麟太郎さんは偉い!!

でも、心配になっちゃいました。だって、釣りの絵本は、すでに『つれたつれた』『ありがとうともだち』があるでしょ。いったい何を釣るのでしょうか?  で、もにもに もにもに な訳ですよ(^^;) これは一本取られましたなぁ(^^)  伊藤秀男さんも、絵にするのに、どんなにか悩んだことでしょう(^^;;

個人的には、タヌキとイタチの「チンピラ2人組」が好きです。ふたりのおとぼけ顔が、じつにいいんだ。けっこうオシャレだしね、この2人。タヌキは赤フンドシだけど、イタチはウクレレ 持ってるもの。

ぼくは、息子にこの絵本を読むにあたって、ひとつ失敗してしまいました。なんなのよ なんなのよ のリフを、テツ&トモ の「なんでだろう」のフレーズで読んでしまったことです。どうも、それじゃぁいけないみたい。

でも、この本を読んだあと、うちの息子たちは、二人して「お風呂」に入りながら、手ぬぐいを餌にして、釣りごっこ(弟が釣人、兄は潜って魚の役です)で遊んでいましたよ。

来週水曜日、保育園の内科健診のあと、年長さんのクラスで「この絵本」の読み聞かせに挑戦しようと考えているのですが、こういう「起・承・転・転」の絵本って、はたして受けるかなぁ? ちょっと心配(^^;)
(2003年 11月08日 記)



■先日、ぼくが園医をしている高遠第一保育園の秋の内科健診があって行ってきたのですが、健診のあと白衣を着たまま、ぼくが絵本の読み聞かせをするのがこのところの恒例となっておりまして、子どもたちも楽しみにしてくれています。

年長さんのクラスでは、3冊読みました。
保育園の先生のように「手遊び」での導入がまだできないので、『マジック絵本』(岩崎書店)で、まずは子どもたちをビックリさせてから読み始めました。

1)『へんしんトンネル』 あきやまただし(金の星社)
2)『こんにちワニ』 中川ひろたか・村上康成(PHP)
3)『うみのむにゃむにゃ』 内田麟太郎・伊籐秀男(佼成出版社)

さて、「むにゃむにゃ」ですが、子どもたちは「タコだ!」「わぁ、クジラだよ!」と大きな声で、すごく反応 がいい。で、例のクラゲのオバケのような「なんなのよ」が登場したら、一瞬、わけわかんない感じで黙ってしまったのですが、女の子が「きゃーッ、気持ち悪い!」ですって(^^)

「なんなのよ なんなのよ」 は、やっぱり読み方がむずかしくて(一瞬、恥ずかしいと思っちゃうんだな。男として(^^;;)理性やテレを消し去って、もっと開き直って読んであげれば、きっと子どもたちも乗ってくるんじゃないかなぁ、という感じがしました。

3冊読み終わって、先生が「みんな、どの本が一番面白かったぁ?」 って訊いたら、『うみのむにゃむにゃ』 で手を挙げた子の数が、一番多かったです。これホント(^^)

(2003年 11月14日 追記)
      
『うみのむにゃむにゃ』
 内田麟太郎/作
 伊藤秀男 /絵
 (佼成出版社)





































『ザスーラ』 クリス・バン・オールスバーグ/作・絵 金原瑞人/訳

(ほるぷ出版)¥1500 (税別) 2003年 9月30日 初版 第1刷


オールスバーグの魅力は「非アメリカ的」な雰囲気にあると、ぼくは思ってきました。だから、彼の絵本を好きな順に言うと、『ジュマンジ』『魔術師ガザージ氏の庭』『急行北極号』『ハリス・バーディックの謎』『西風号の遭難』となります。

今回、あの傑作『ジュマンジ』の続編が出版されたと聞いて、ものすごく期待したんですね。『ジュマンジ』のラストシーンは、意地悪兄弟が、木の下に置かれたボードゲームを持ち帰るところで終わっていました。彼らはいったい、どうなってしまったんだろう? と、ずっと気になっていたのです(^^;)

だから、この絵本は図書館に入荷する前に、本屋さんで予約して購入しました。一読、たしかに面白い。兄弟愛が泣かせる感動作であることは、ぼくも認めます。だけど、なんだかスピルバーグしてるんですよ。健全すぎるんだなぁ(^^;) オールスバーグって、スピルバーグじゃないでしょ。あの「バットマン」を撮ったティム・バートンの雰囲気なんじゃなかったっけ。もっと呪術的で、不気味で、怪しげな感じ。

■そう愚痴ってはみても、やはりオールスバーグって凄いなぁ。黒ペンで点描しただけの、白黒の単調な絵にすぎないはずなのに、なんでこうもリアルなんだろう? 何の違和感もなく、いとも簡単に読者(大人を含めた)をマジカルワールドへと誘う、その不思議さ。やっぱ、天才だね。

来年映画化されるそうですが、映画になったら、たしかにこれは面白そうだぞ(^^;;

(2003年 11月08日 記 11月09日改訂)

    
『ザスーラ』
 クリス・バン・オールスバーグ/作・絵
 金原瑞人/訳
 (ほるぷ出版)











『はっぴぃさん』 荒井良二/作・絵

(偕成社)¥1300 (税別) 2003年 9月 初版 第1刷


傑作です。  絵本という表現方法の、底知れぬ可能性を垣間見る思いがしました。荒井良二/作・絵の絵本は、たしか『そのつもり』以来久しく出版されなかったのですが、『はっぴぃさん』 が、いま・ここで出版されたことの意義はすごく深く、とてつもなく重い。

「カタロニアの小鳥たちは、青い空に飛び上がると ピース、ピースといって鳴くのです。」

そう言ったのは、スペインが生んだ偉大なる天才チェリスト、パブロ・カザルスでした。しかし、スペイン内戦が独裁者フランコの勝利で終わった 1939年以降、96歳で亡くなるまで、カザルスはついぞ生まれ故郷スペインの地を踏むことはなかったのです。

●先週の土曜日に松本で小児科医会の会合があって、その帰りに「パルコ・ブックセンター」でこの絵本を見つけて買ってきたのですが、同時に買って帰ったCDが、じつは『鳥の歌 -- ホワイトハウス・コンサート』 パブロ・カザルス(Sony Records/SRCR2613) だったのです。1961年11月、ケネディ大統領の招聘に応じて、ホワイトハウスでチェロを弾いたカザルスは、アメリカを訪れる前にケネディにこう手紙を書きました。

「人間性が、今日ほど重大な状況に直面したことは、いまだかつてありません。いまや世界の平和ということが、全人類の祈願ともなっています。すべてのひとは、この最終目標達成のために最善をつくすというくわだてに参加する義務があります。それゆえに私は、閣下と個人的に親しくお会いできるこの機会を心待ちしております。」

でも、それから半年もしないうちに、ケネディはベトナム戦争を始めたのでした。

●イスラム原理主義者とアメリカの新保守派の指導者は、絶対に理解し合えないし、パレスチナに暮らす人々とイスラエルに暮らす人々も絶対に理解し合えない。たぶん…… だって、「バカの壁」があるから。

でも、男の子女の子の関係は違う。たしかに、両者の間には深くて暗い河が横たわっているのだけれど、お互いに理解し合おうという努力を続けるのです。そして、自分にない相手の「いいところ」を素直に認めてあげることができる。こういう関係って、素敵だな(^^)

『はっぴぃさん』は、ぜひ声にだして読んでみることをオススメいたします。それにしてもはっぴぃさんというネーミングが素晴らしいな。「神さま」じゃダメなんです。『ゴドーを待ちながら』ゴドーみたいなもんですから。

ぼくは、息子にせがまれて「3回」この絵本を読み聞かせしました。でも、3回とも最終ページのひとつ前のページを読みながら、涙があふれてきて、ちゃんと読めなかった。

はっぴぃさん はっぴぃさん
ぼくのねがいを きいてください はっぴぃさん

はっぴぃさん はっぴぃさん
わたしの ねがいを きいてください はっぴぃさん


これって、「ねがい」というよりも、ほとんど「祈り」ですよね。

最終ページには、こう書かれています。

はっぴぃさん はっぴぃさん
ぼくらのねがいを きいてください はっぴぃさん

はっぴぃさん はっぴぃさん
どうぞ どうぞ
はっぴぃさん………

あ!「ぼくら」になってる。よかったな(^^)

(2003年 10月03日 記)

  
『はっぴぃさん』
 荒井良二/作・絵
 (偕成社)

















































『みなみのしまのプトゥ』 むらまつ たみこ/作絵             

(アリス館)¥1300 (税別) 2003年07月17日 初版発行     


●じつはこの絵本、吉村小児科・内海裕美先生のご紹介で、アリス館の編集長、後路好章さんが、ぼくの所へわざわざ送ってくださった絵本なのです。後路編集長ご自身の熱き文章を読んでいただければ、この絵本に託す意気込みがじんじん伝わってくると思います。

この太めの黒い線は、切り絵なんですね。インドネシアには、沼地で演じられる「影絵」があるじゃないですか。あれを思い出しました。ところで、この絵本の主人公プトゥって、主人公のくせに、みずから自主的にはなにも行動しないんですね。まるでクロネコヤマトの宅急便みたいに、人から人へと手渡されてゆく大切な荷物のかんじ(^^;) それがとても面白い。これといって何も事件は起こらないんですが。

わが日本でも、昭和30年代前半(東京オリンピック以前)くらいまでは同じような風景が各地で見られたはずです。当時はまだ高度経済成長前の時代で、専業主婦はあまりいず、母親も当たり前にフルタイムで働いていました。赤ちゃんのめんどうは、兄弟姉妹、ジジババ、同居している叔父叔母がみてくれました。

さて、時代は変わって平成の世。長引く不況に父親のリストラ。こうなると母親は否応なくフルタイムで働きに出ることを余儀なくされます。子どもは、未満児保育に出すか、別居のジジババにみてもらうしかありません。

都会ではどうかしらないけれど、幸いにして田舎では父母ともに、たいてい元気なジジババが近所に住んでいるので、孫を預けることができます。ところが、田舎の元気なジジババはみな、なんだか毎日忙しいんですね(^^;) 早朝ゲートボールに、読み聞かせのボランティア、公民館の絵画教室に、無尽の寄り合いなどなど。もちろん、現役でまだバリバリ働いているジジババも多い。

赤ん坊を押しつけられたジジババは、正直みな迷惑しているのです。ところが、若い父親・母親はその事実に気づいていない。半年に一度、一泊二日で温泉にでも連れていけば「チャラになる」そう、思っているんじゃないかな(^^;;

今の日本は、お父さんもおかあさんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、自分のことだけを考えるのに精一杯で、「あぁ、忙しい忙しい」そう呟きながら、あくせく・イライラ・ギスギスした気持ちで毎日を過ごしています。そんな親の背中を見て育つ子どもたちも、その気分が伝染して、いつでもイライラしている。子どもは敏感ですからね。

『みなみのしまのプトゥ』はいいなぁ。絵をながめているだけで、ゆったりした気分になれる。絵本の落ち着いた色合い がまた心に和みます。「トッケー、トッケー、チ、チ、チ、チ、チ」というヤモリの鳴き声まで、なんだかのんびりしてよいなぁ。

■南の島ということで、絵本の雰囲気はぜんぜん違うのだけれど、土方久功さんの絵本を思い出しました(^^) 土方さんは、29歳の時に南洋パラオ島に渡り、原住民とともに暮らしながら原始彫刻の製作と、ミクロネシアの神話や民話の収集を7年間も続けました。なんと、太平洋戦争が始まる前の話です。
 ぼく(土方先生ご自身)のところには子どもはないのですが、実は終戦後何年間か、家内の弟夫婦と同居していたことがあって、義妹が小さな女の子(邦子)を残してなくなってしまったので、その子が小学校に上がるまでも、ごはんの世話から、おふろに入れ、寝かしつけるまで、遊んでいたぼくが世話をした経験はあるのです。(中略)

その子はまだ、童話というほどの、筋のある話を理解するところまで、なっていませんでしたので、動物のなき声とか動作とか、それを多少擬人化するというと大げさですが、お友だち扱いして、ナンセンス童話とでも言ったらいい、出まかせ話をしてやったものでした。このぶたぶた君は、そのとき、子どもが最も喜んで、何度でもせがまれたものなのです。

『絵本・物語るよろこび』松居直(福武文庫)p103,104より

長谷川義史さんに絵本を書かせた編集者の松田素子さんもスゴイけど、65歳の得体の知れない変なジイさんに、大傑作『ゆかいなさんぽ』を書かせた松居直さんは、もっと凄いぞ!

ぜんぶ単調な白黒の絵で、遠近感のない妙ちきりん(縄文土器の紋様みたい)な 風景の中を、ぶたあひるとらうさぎ が出会って散歩します。
あるひ、いっぴきの こぶたが ね、 さんぽに でかけました。
その こぶたは ね、  まるまると ふとっていて、
そして、すこし こっけいだったので、
ぶたぶた ぶたぶた ぶたぶた ぶたぶたって、
あるいて いきました。

いくと いくと、
こんどは とらが きたんですって。
とらって しってるでしょ。 どうぶつえんに いるじゃない。
おおきくって、しましまが あって、
きれいだけど すこし こわい。
この「とら」がね、変な顔してるんだ(^^;;
それから、子どもたちに受けるのは「おなが」が「じぇええ」と鳴くところ。
(もうすこし続く予定)


(2003年 9月14日 追記)

  
『みなみのしまのプトゥ』
 むらまつたみこ/作絵
 (アリス館)


  
『ゆかいなさんぽ』
 土方久功/作絵
 こどものとも・年中向き
  2001年/6月号
 (福音館書店)


  
『ぶたぶたくんのおかいもの』
 土方久功/作絵
 (福音館書店)
































『おまたせクッキー』 パット・ハッチンス/作、 乾 侑美子/訳             

(偕成社)¥1200 (税別) 1987年08月01日 第1刷、1992/07/07 第7刷発行


●パット・ハッチンスの絵本の中で、特に有名な『ロージーのおさんぽ』『ティッチ』は持っていたのですが、この『おまたせクッキー』 は知らなかったな。

この本のことを、ぼくに教えてくれたのは、飯田市立中央図書館司書の滝本慈宗さん。

夏休み前の土曜の午後(7月12日)に、上伊那図書館講堂で「PTA親子文庫」主催の「大人のための絵本入門・ブックトーク」があったので、診療終了後に聴きに行ってきたのですが、その時の講師が滝本さんでした。地元では、絵本に造詣が深い図書館司書さんとして、かねてから有名で、しかもおはなしが上手い! 聴衆をみるみる引きつけて離さない語り口の魅力は、誰にもまねできません。

その中で「絵本の読み聞かせ」をしようとする大人が、絶対に避けては通れない絵本として、滝本さんが紹介してくれたのが、この『おまたせクッキー』なのです。

●最近では、小学校や保育園、児童館などでボランティアとして「絵本の読み聞かせ」をすることが盛んですが、20人〜30人もの子どもたちに向かって一度に絵本の読み聞かせをして、はたして、いったいどれくらい「その絵本」の魅力を子どもたちに伝えることができるのだろうか? という疑問が、ぼくにはずっとあったんですね。絵本は、本来、親と子が「1対1」で読んで初めて、面白いと感じるメディアだと思っていたからです。

だって、絵本は「絵を読めないと面白くない」でしょ。特にパット・ハッチンスの絵本はみな、そうです。テキストだけ読んでても、ハッチンスの絵本の魅力は、1/3 も伝えられない。一番面白いところは、テキストにはわざと書かれていないからです。こういう絵本は、いったいどうやって読み聞かせすればいいのでしょうか? そのあたり「絵本の読み聞かせ」を熱心に続けていらっしゃるみなさんは、どうクリアしているんだろうか? 

●滝本さんは問題提起だけで、解決方法は話してくれませんでしたが「この本 を保育園で子どもたちに読み聞かせすると、面白いんですよ。みなストーリーなんてどうでもよくて、猫に気が付いた子は最後まで猫だけ見てるし、やかんを発見した子は、それだけを追って行く。」そう言っていました。

まるで「固定カメラ」で経時的にシャッターが切られたような感じの「この絵本」は、構図は同じだけれど、その中に描かれているものが次々と変化してゆくのを、子どもたちが自分の目で発見すること、それが面白い絵本なのです。

猫はどこ行った? 戸棚のお皿の数がだんだん減ってゆくよ。 ガスレンジの上では、次第にお湯が沸いてくる。おかあさんが床掃除をしたばかりのフロア・タイルはピカピカなのに、子どもが入ってくるたびに、足跡で汚れてしまう。おかあさんの右手には、次々と子どもたちの上着が掛けられてゆく。こういうことは、テキストには全く書かれておりません(^^;;

そういう「絵本」なのです。どうです? 面白そうでしょ(^^) それから『おまたせクッキー』という邦題が、じつにいいですね。原題は、The Doorbell Rang  なのですから。もちろん、ストーリーそのものもよくできていて、12個のクッキーを子どもの頭数で割って計算してると、ドアベルが鳴って子どもが増えて、また割り算のやり直し。ベルが鳴るたびに、こちらもドキドキしちゃうのです。

それにしても、滝本さんみたいな「図書館司書」さんが常駐している飯田市民が、ほんと羨ましいなぁ(^^;)

(2003年 9月04日 記)

  
『おまたせクッキー』
 ハッチンス/作
 乾 侑美子/訳
 (偕成社)



































●前回の「おすすめ」絵本 は……

『はくちょう』『視覚ミステリー絵本』『ダーナ』『コッコさんとあめふり』『こどもザイレン』『さるのせんせいとへびのかんごふさん』『中川ひろたかグラフィティ』ほか

●前々回の「おすすめ」絵本 は……

『狂人の太鼓』『ウエスト・ウイング』『スモウマン』『かようびのよる』『アフリカの森の日々』『はつてんじん』『世界昆虫記』『やまあらしぼうやのクリスマス』『絵本の作家たち(1)』『絵本を読んでみる』ほか

●前々々回の「おすすめ」絵本 は……

『冥途』『クレーン男』『とうだいのひまわり』『ナヌークの贈り物』『ねぎぼうずのあさたろう』『かちかちやま』ほか



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