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北原こどもクリニック  



しろくま 不定期日記


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●「不定期日記」●

  おとうさん達よ、立ち上がれ!(その2)          2003/07/31

家庭教育の重要性は重々承知しているのだけれど、わが家の父親 (つまり自分のことです)は、あまりに無知・無力で息子たちに何も伝授できず、情けなくなってしまいます。今日もそのことで、ずいぶんと落ち込んでしまいました(^^;)。

今日は久々に暑くて、湿度も高く蒸し暑い夕暮れだったので、カブト虫とクワガタ虫に夢中な次男(4歳)にせがまれて、夕食後カブト虫採りに出かけました。場所は、一昨年、樹液に群がるカブト虫を何匹も捕った、三峰川河川敷の公園です。2週間前来たときには、カブト虫はいなかったけれど、大きなカミキリ虫が2匹採れた場所です。

夜の公園では、夏休みの中学生・高校生たちが連んで、花火に興じていました。でも、懐中電灯で注意深く木を照らしても、カブト虫は1匹も見つかりませんでした。お父さんの面目は、丸つぶれでした。じつは、ぼくが子どもの頃は「カブト虫採り」に出かけたことなど一度もなかったんです。田舎なので、わざわざ雑木林へ夜出かけなくても、小学校のナイター照明のライトや、街の外灯の光に誘われて、甲虫たちがたくさん集まってきたので、翌朝早くに目覚めれば、家の前にただそこにいたのです、カブトとクワガタが。

自分に経験がないことを、子どもに教えることはできないのです。悲しいかな……

●子どもたちが夏休みに入るちょっと前、次男の友だち「だいちゃん」のお父さん、有賀さんが、うちの子どもたちも連れて、秘密の場所へカブト虫採りに行ったのです。目的地に着いた時、有賀さんは子どもたちを集めて、こう言ったんだそうです。「いいか、懐中電灯は自分の足下を照らせ。すぐに木は照らすな。もし、カブトがいても、同じ場所にスズメバチがいたら、残念だけど、その木はあきらめろ。わかったか?」

そう言ってから、有賀さんが自ら「その木」にライトを照らすと、そこには、交尾中のカブト虫のつがいと、ノコギリクワガタがいたのでした。子どもたちは一斉に「わぁ〜!」と歓声をあげました。その夜のことは、何度も何度も子どもたちから聞かされました。「大ちゃんのお父さんって、ほんとスゴイんだよ! 尊敬しちゃうな!」

カブト虫採り名人の有賀さんには、ぼくは到底かないません。それから、自転車の乗り方を教える名人の上柳さん のお父さんの足下にも、ぼくは及ばない。クロールの腕のかき方は、クロールで泳げないぼくには教えられないし、アウトドアが得意な中村クリニックの中村先生親子のように、黒部渓谷で大自然の驚異とサバイバルの基本を、息子たちに伝授することもできない。

ほんと、悲しくなってしまいました。でも、ふと発想を転換してみたのです。そうか、自分で教えられないのなら、その分野が得意な他のお父さんたちに、息子たちが教えてもらえば、それでもいいんじゃないかと。(もう少し つづく)

  おとうさん達よ、立ち上がれ!(その1)          2003/07/30

●信濃毎日新聞・朝刊(2003/07/28 月曜日)の1面に載っていた、ノーベル化学賞受賞者の名古屋大学教授・野依良治先生へのインタヴュー記事に、こんなことが書いてありました。

Q:日本をよくするにはどうすればいいか?

野依: 文化度を上げるために国全体で考えないと駄目だ。言葉が乱れているのは誰の責任か。お父さん、お母さんは、子どもが文章を書くのをしっかりみてやるべきだ。家庭教育が大事だ。私の父は仕事もできたが必ず六時に帰ってきた。子どもをきちんと教育するのが任務だと思っていた。働きたければ、夜また働きに行ったらいい。

アメリカもドイツもイギリスも、私の友だちは皆六時にいったん帰り、家族で食事をする。そこで子どもに、しかるべきことはしかり、褒めることは褒める。そして七時半か八時に大学に戻り、夜の十二時まで仕事をする。

Q:各人がしようと思えばできることがあるわけですね。

野依: 日本は家庭教育を放棄している。特に父親がしっかりやっていない。日本の住宅事情が悪いから帰れないと言うけれど、言い訳。もしそうであれば、皆で街を造り替えればいい。皆、他人ごとにしている。責任をとらない。すぐ社会が悪い、会社が悪い、何かが悪いとなる。六時に家に帰って家族一緒に食事をすることが家庭教育の根源であると思えば、そのようにすればいい。本来あるべきことを、きちんとしなければいけない。

本来あるべきこととは、さっき述べた四つの文化(サイエンス・論理・情緒・言語)に集約される。ところが、(現代の日本は)会社の論理とか、まさに瑣末な論理によって律せられている。
●この記事を読みながら思い出したのが、長崎県の峰野裕二郎 さんのサイト『峰野宅』です。ここにはどっこい! 熱いおとうさんがいるのです(^^)

 

 ディズニー映画『トレジャー・プラネット』          2003/07/27

●今日の午前中は、医院裏側の草むしり。お昼過ぎまでかかってようやく終了。午後は、小1の長男に見に連れて行くと約束していた、ディズニー映画『トレジャー・プラネット』。と思ったら、岡谷スカラ座では午前中1回のみの上映で、午後は『My Big Fat Wedding』の入れ替え。

仕方ないので、夕方松本まで行って「東宝セントラル2」(あの映画『さよなら、クロ』に何度も登場する映画館ですね)の17:15 からの最終回を見てきました。きょうび、家族4人で映画を見に行くということはけっこうな出費を覚悟しなければなりません。大人 \1800、小学生 \1000、幼児 \1000 、さらに駐車場代 \1000 を加えれば、6,600円! 前売り券か割引券を確保しておかないとキビシイものがあります。今回はマクドナルドのハッピーセットに付いていた割引券を持って行ったのですが、割引はたったの100円(4人あわせてですよ)

おっと、ここの「公式ホームページ」 には、一人200円の「劇場割引券」が載っているではありませんか! しまった、今さら遅い(^^;;

映画館は他にお客さんがひとりもいず、われわれ家族の貸し切り状態。「2」のほうは、スクリーンが小さいので最前列にスタンバイ。上映が始まると、この冬公開予定の『Finding NEMO』 予告編で、これがメチャクチャ期待できそうな映画なんですよ。あの「ピクサー・スタジオ」の『モンスターズ・インク』に続く新作なのでした。

ところで『トレジャー・プラネット』ですが、これ、けっこう面白かった(^^) とにかく、アニメーションの最新技術が惜しげもなく投入されていて、その映像の美しさ、迫力たるやもの凄いです。『千と千尋の神隠し』は、2002年度アカデミー賞を「この映画」と争ったワケですが、技術的には完全に負けているのに、よく勝てたなぁ。

『トレジャー・プラネット』の敗因は、やっぱりオリジナリティの欠如でしょうかね。スティーヴンソン『宝島』の原作を『天空の城ラピュタ』『スター・ウォーズ』とを足して2で割ったイメージで、舞台を未来に置き換えたという映画なのですから。

でも、6歳の息子は、映画のエンド・ロールが流れる中、オイオイ泣きながら「おとうさん! ぼくメチャクチャ感動したよ、最高だね! あの太った海賊のシルバーって、ほんとはいい人だったんだね いい映画だったなぁ」そう言ったんです、感動して泣きながら(^^;;

そうかそうか、息子よ、今度とうさんが原作の『宝島』を寝る前に読んでやるからね。原作は、もっとおもしろいぞ!

 絵本の樹美術館の『さるかに合戦』             2003/07/26

●前回の『ふたご』のつづき。「泣き男」がプラネタリウムの解説をする語り口ですが、いしいしんじ氏の日記5月18日を読むと、「泣き男」のイメージは、先日閉館した渋谷東急文化会館の五島プラネタリウム「村松解説員」のナレーションなのだそうです。ふーん。結局ぼくは一度も行かなかったので知らないのです、村松さん。

●月曜日、中村農場直販所で「本物の親子丼」を食べたあと、ぼくらは「絵本の樹美術館」へ向かいました。ここでは今「来館者参加型シリーズ・さわってさわってハンズオン:第5回」ガシャガシャドンドン “さるかに合戦”を開催中です。

昨年夏の『赤ずきんちゃん』 では、うちの子どもたちが物語世界に夢中になって入り込んでいくのを身をもって体験したので、今年も是非にと、やってまいりました(^^) 今年の『さるかに合戦』もじつによく出来ていましたよ。この野口光世さん製作の、フエルトで丹念に作られた小道具がとにかくすばらしい。おにぎりも柿のタネもあって、蟹が柿のタネを蒔いて、いっしょうけんめい水をやると、ちゃんと芽が出てスクスク成長してゆく仕掛けになっているのです。

それから、真っ赤に熟した柿の実や、オレンジ色の柿、まだ青い柿の実。壁に描かれた柿木の枝は「マジックテープ」になっていて、そこに柿の実が貼り付けてあるので、猿役は実際にもぎ取って、蟹に投げつけることができます。柿の実で「玉入れ」をして遊んでいる家族もいましたよ(^^;)

まず次男が蟹になって、長男が蜂と栗の役。お父さんは牛の糞と「うす」を兼ねます。そうして憎くき猿役はおかあさん(^^;) 猿にまたがって「どうだまいったか!」と言ううす役のお父さんは、とっても気分がよかったでした(^^;;

午後の美術館は空いていたので、結局1時間半近く、次々と役を代わって、何回も『さるかに合戦』を楽しむことができました(^^)

これは絶対のオススメ企画です。ぜひ一度、夏休みに訪れてみてください。

 『プラネタリウムのふたご』 いしいしんじ(講談社)      2003/07/24

『プラネタリウムのふたご』いしいしんじ(講談社)2003年4月8日第1刷発行(¥1,900)

2段組ではないのだけれど、全452ページはけっこう長大で「一気読み」とまではいきませんでしたが、今までにないタイプの小説で、最初の数ページを読んだだけで、完全にハマッてしまいました。こういう作者独自の物語世界が、細部まできちんと構築された小説が、ぼくは大好きなのです。

いしいしんじ氏の名前は、以前からずっと気になっていたのですが、読んだのはこれが初めて。児童小説? 寓話? 現代の宮沢賢治? 世間ではいろんな評価がなされているみたいですが、ぼくが感じたのは、この人は日本のライナー・チムニクを目指しているんじゃないかな? ってことです。小説のベースラインに深い哀しみと諦観があって、でも見上げれば、暗闇の向こうに、かすかに希望の光が射し込んできている。そんな小説。

この本を読みながら、ぼくは以前読んだいくつかの「お気に入り本」を思い出しました。それは、村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』それから、椎名誠『武装島田倉庫』そうして、チムニク『クレーン男』と、絵本『オレゴンの旅』ラスカル文・ルイ・ジョス絵(セーラー出版)です。

ふたごの養父、プラネタリウムの解説員「泣き男」の静かな気品ある語り口が、ぼくは一番すきです。彼が語る星座をめぐるギリシャ神話は、けっこう理不尽で「え〜、なんでそうなるの?」という結末の話ばかりなのだけれど、ジェット・ストリームの城達也 氏の声色を想像してしまう「泣き男」のナレーションを聴いていると、なんだか強引に納得させられてしまうのですね。

この小説を読み終わった直後の感想が、まさにそんな感じでした。「プラネタリウム」「ふたご」「くま」「奇術団」という4つのキーワードが、一体全体どういうふうに絡みあって「このお話」が終結を向かえるのか? という興味だけで最後までぐいぐい引きずられて読まされてきたのですが、なんだか強引な結末で、なんとなく解ってはいたのだけれど、そこまで小さくつじつま を合わせなくてもいいじゃん、もっと大きなものを感じさせてよ! っていう不満が残ったんですね。

だいたい、小説というのはフィクションであって現実ではないから、読者であるわれわれは、気持ちよくだまされたいそう思って、お気に入りの小説家の本を読み始めるワケですよ、いつでも。それをわざわざ「だまされる」ことが特別みたいなキーワードにする必要って、ないんじゃない? そんなこと、判りきってるじゃん。

それよりも、この小説で大切な言葉は、氷山がだんだん溶けていっって水になること、なんじゃないかな。人間って、「光のかけら」の中から生まれて、死ぬときにはまた、「光のかけら」に戻ってゆくのです。

不満は残ったけれど(特にクマの「パイプ」の扱いに関して。『オレゴンの旅』に登場する熊のオレゴンが、ぼくは好きなのです)久々に、何度も読み返したくなる、いい小説を読んだな(^^) さて、『トリツカレオトコ』『麦ふみクーツェ』も読んでみなきゃいけない(^^;)

なお、この本に関して、他の人はどんな読後感を持っているかといいますと……

1)ウェブ本の雑誌
2)小太郎さん

を読んでみてください。

 中村農場の「本物の親子丼」                  2003/07/22

●昨日はまた、甲斐大泉へ行ってきました。今回の一番の目的は、中村農場直販所本物の親子丼を食べることです。「清里高原有料道路」大泉側入り口の料金所の直前、左側に中村農場直販所はあるのですが「軽食・土産」と看板に大きく書かれた「その佇まい」は、観光地によくある農家の直販所そのものでありまして、ふつう、なにも知らなきゃ、まず絶対に立ち寄らないタイプの店です(^^;;

じつは、原村第一ペンションビレッジ「岩田ペンション」 さんから、極秘情報として「ここの小さい食堂で食べさせてくれる親子丼が、びっくりするほどおいしい!」と、1カ月ほど前に教えてもらったばかりなのです。せっかくの極秘情報をここでバラしちゃって、ごめんなさいね >「岩田ペンション」さま (^^;;

食堂の営業は、お昼のみ(11:30〜14:00)で、火曜・水曜日は定休日です。店のメニューは、「本物の親子丼」\800、焼き鳥一串 \150、あと手羽焼き (値段忘れた)があります。中村農場のHPを見ると、親子丼には焼き鳥が1本サービスで付いてくるみたいに書いてありますが、どうも今はやめちゃったみたいで、ぼくらは「小肉」と「ぼんぼり」を別途注文しました。隣のテーブルでは、常連さんらしき親子連れが「手羽焼き」を食べていましたが、すっごく美味そうでしたよ。次回はこっちも挑戦してみよう(^^)

さて、親子丼です。どこが「ほんもの」かと申しますと、鶏肉も卵も、中村農場で飼育された甲州地鶏の親子が使用されているからなんですって。「ハイ!お待たせしました!」と運ばれてきた親子丼。一目見て、まず驚くのは卵の黄味が「黄色」じゃなくて「オレンジ色」をしていることです。これがまた、なんとも濃厚な味わいで、生卵のぶっかけご飯で食ったら、めちゃくちゃ旨そうな卵なんです。それから甲州地鶏の鶏肉が、これまた深い味わいと歯ごたえで、見た目はパッとしないのだけれど、ものすごく旨い。塩味の焼き鳥がまた、クセになりそうな味わいなのでありますよ。

最初は「親子丼よりも、セブンイレブンのおにぎりが食べたいよう」と文句を言っていた子どもたちでしたが、夢中で親子丼をむさぼり食べて、2つしか注文しなかった親子丼は、あれよあれよとなくなって、親がありつけたのは、残り半分のみでした(^^;)  卵の美味さにに感動したわれわれは、帰りに直販所で生卵を買って帰ることにしました。でも、なんと卵一個が100円!  おいしいことで有名な伊那市「大原農園」のたまご でさえ、1個30円なのに、1個なんと100円ですよ! スゴイたまごだぞ、これは(^^;)

 『行儀よくしろ。』清水義範・著(ちくま新書)         2003/07/20

●いまどき、まっとうなことを言ってくれる大人は、なかなかいないのですが、清水義範さんは、あえてそのことに挑戦しています。いまの子どもたちの教育を、いったいどうしたらよいのか? という大問題に関して。

『行儀よくしろ。』 清水義範・著(ちくま新書)。今日は詳しく書く時間がないんで、また次回に内容をご紹介しますね。スミマセン(^^;;

 『NHKスペシャル・こども輝けいのち(第6集)』       2003/07/16

●NHK総合テレビで、7月13日夜に放送された『NHKスペシャル・こども輝けいのち』「(第6集)こころの二人三脚 〜自閉症児と級友たち〜」 を見のがしたので、昨日の24時からの再放送を見ました。いやぁ、いい番組だったな。また泣いちゃいました(^^;;

東京の武蔵野市にある、私立の高等専修学校「武蔵野東技能高等専修学校」 では、自閉症児と健常児が共に学んでいます。健常児と言えども、みな小学校・中学校時代は不登校児で、心を閉ざしてしまった子どもたちです。入学すると、自閉症児と健常児はそれぞれ一人ずつ「バディ」と呼ばれるペア になって、健常児がそのペアになった自閉症児を責任を持って世話するのが役目となります。

当初、二人の関係は絶対的に健常児優位なワケですが、3年間共に過ごすうちに、力関係が変わってくるんですね。番組で印象的だったのは、小学校の時「おまえの声はヒデーなぁ!」と男の子にいじめられた、ある女の子です。彼女は小学5年生以降、学校では一切口をきかなくなって、中学の3年間寡黙症をずっと通しきたのです。この高等専修学校入学後も、まったく喋らなかったのですが、1年間の学園生活を経て、少しづつ話せるようになったんですね。番組の最後は、その彼女へのインタビューでした。

「わたしは、いままでずっと、自分のことが嫌いでした。」
「彼女とバディを組んでから、頼られてるな、って感じるようになったんです。」
「頼られるって、なんかちょっと、うれしい。」

彼女は、ちょっとはにかむように笑って、そう言いました。認め認められ、頼り頼られること、が人間として生きてゆく上で、絶対的に必要なのですね。人間は決して一人では生きてゆけないのです。

この番組を見逃してしまった不幸な方。どうぞご安心ください(^^) 7月末に「こども 輝けいのち」をシリーズ連続して再々放送されることになったのです。詳細は以下をご参照ください。このシリーズのすばらしいところは、日本の社会や大人たちは、どんどんどんどんダメになってゆくけれど、どっこい、子どもたちはメゲずに頑張ってるぞ!という、祈りにも似た「未来への希望」が語られていることです。ぜひ、ご覧ください。

NHKスペシャル「こども 輝けいのち」再々放送予定

※【総合テレビ】での放送となります。

「第1集 父ちゃん母ちゃん、生きるんや 〜大阪・西成こどもの里〜」
 ==>7月25日(金)午前0:15〜 (24日(木)深夜の放送です。)

「第2集 15歳・拓(ひらく)の旅立ち」
 ==>7月26日(土)午前0:15〜 (25日(金)深夜の放送です。)

「第3集 涙と笑いのハッピークラス 〜4年1組 命の授業〜」
 ==>7月29日(火)午前0:15〜 (28日(月)深夜の放送です。)

「第4集 小さな勇士たち 〜小児病棟 ふれあい日記〜」
 ==>7月30日(水)午前0:15〜 (29日(火)深夜の放送です。)

「第5集 裸で育て君らしく 〜大阪・アトム共同保育所〜」
 ==>7月31日(木)午前0:15〜 (30日(水)深夜の放送です。)

「第6集 こころの二人三脚 〜自閉症児と級友たち〜」
 ==>8月1日(金) 午前0:15〜 (31日(木)深夜の放送です。)


 『星野道夫物語』国松俊英(ポプラ社)             2003/07/14

『星野道夫物語』 国松俊英(ポプラ社)読了。

ちょっと絵本をかじった大人はみな、星野道夫が好きです。レイチェル・カーソンも好きに違いありません。そういうもんです。ただ問題は、星野道夫もレイチェル・カーソンも今は亡き人なので、ほとんど神格化されてでしか最近は語られることがない。まるで、新興宗教の教祖みたいに奉りたてられて……

国松俊英さんは、たぶんそんな傾向に「否!」と言いたかったんじゃないかな。
わりと大きめな活字が組まれて、行間も広くて、しかも、191ページしかないこの『星野道夫物語』は、だからと言って、決して手抜きいい加減で作られた本ではありません。

この本の中には、たしかに等身大の星野道夫がいるのです。けっこうおっちょこちょいで、行き当たりばったりで、整理整頓が苦手で、わりと自己中心的でありながら不思議と人なつっこくて友人が多い星野道夫が、余分な記述をそぎ落としたあとに残った「さりげない文章」の中に、じつにリアルに息づいているのです。

淡々と短い文章で、対象と少し距離を置きながら綴られた「本文」の文章と違って、「はじめに」では、国松俊英さんの けっこう個人的な思いが強くにじみ出た文章になっていて、それがまた読ませます。

 星野は、人間にはふたつの大切な自然、「身近な自然」と「遠い自然」があると本に書いている。すぐそばにあるなんでもない川や小さな森などの身近な自然と、訪れることのないはるかな遠い自然のことだ。遠い自然とは、その自然が遠くにあるという意識を持つだけで、想像力で豊かな気持ちになれるものだ。(中略)

 写真の中では。私はロングショットの作品が好きだ。
『グリズリー』の始めのページに、早春の雪山の写真がある。雪どけの頃、冬眠から目覚めて穴から出てきた親クマと子グマの三頭が、一列になって歩いている。大きな風景の中にクマは豆粒のように小さく写っているだけだ。(中略)

 道夫には、北への志向がずっと前からあった。姉の京子は北海道にあこがれていて、高校を出たら北海道の牧場へ行って働こうと考えていた。姉から北海道のことを、何度も聞かされていた。それに少し感化されたのかもしれない。(中略)

 北方への志向が強い人と、南方への意識が強い人がいる。北方志向の人は、北と南とどちらをめざすのかと聞かれたら。迷わず北の地方を選ぶ。そして、空気が冷たくて寒い冬の季節を好む。(p6〜p27)
●この本では、今まで知られることのなかった星野道夫の生い立ちと、写真家になった経緯が、当時を知る関係者の証言や、未発表のままになっていた星野自身の若かりし頃の文章(今回、国松さんによって、初めて発掘されたのです)によって明らかにされてゆきます。なかでも、彼のおとうさん が凄い!! ぼくも、こういう父親になりたいものです。でも無理かな(^^;;

千代田区立今川中学校時代の友人富沢裕二が、妙高山で遭難して帰らぬ人となった話(p84)は、じんときました。星野道夫のエッセイの中で、大切な友人を山で亡くしたという記述を読んだことはありましたが、その詳細を、今回初めて知ることができました。

彼がアラスカに魅せられたきっかけとなった、ナショナル・ジオグラフィックの写真は、『アラスカたんけん記』 たくさんのふしぎ傑作集(福音館)の2ページで、実物を見ることができます。文中に登場する「カリブーの旅」も「グレイシャーベイのカヤックを漕いでの氷河の旅」も、マッキンレーの北側で「オーロラ」を撮影した時の話も、みんなこの絵本に載っています。

 取材チームは湖畔(ロシア・カムチャツカ半島・クリル湖)にあるロッジに宿泊したが、道夫はいつものようにひとりでテントで眠りたいと思った。ロッジの横にテントを張り、そこで宿泊した。
 八月八日の明け方、思いがけないことが起きた。一頭のヒグマがテントを襲い、眠っていた道夫を森へ連れ去ったのだ。

ああ、そうか。星野の亡骸は湖畔のテントの中で発見されたのだとばかり思っていたのですが、そうじゃぁなかったのですね。


 最近借りた本・買った本                    2003/07/11

●昨日、木曜日の午後は、高遠町保健センターで4カ月、10カ月児の乳児健診でした。保健センターは、高遠町図書館と同じ建物内にあるので、乳児健診の前には必ず図書館へ白衣を着たまま立ち寄って、本を借りてきます(^^;)  で、昨日借りてきた本は……

『愛と悔恨のカーニバル』打海文三 (徳間書店) これで3回目の貸出延長。まだ読み始めたばかり(^^;
『プラネタリウムのふたご』いしいしんじ(講談社) 尊敬するメリーゴーランドの増田善昭さんが「絶賛」 しているので、時間がなくて読めずに一度返却したんだけれど、もう一回借りてきました。
『星野道夫物語』国松俊英(ポプラ社) この本、このあいだからずっと探していたんです! さっそく読み始めて、今70ページ。この本、すっごくいいよ!

『ハーモニカのめいじんレンティル』ロバート・マックロスキー(国土社) アメリカの巨匠も、ついに亡くなってしまった。享年98。でも、生きていたんだね、知らなかったです(^^;;

●本は借りるばかりではありません。ちゃんと購入もしています。最近買った本は……

『私たちはいま、イラクにいます』シャーロット・アルデブロン(講談社) 売らんかなの態度はイヤだけど、写真が文章と見事に一致していて、あなどれない本です。
『とんぼ&ピーマンのあそびうたクラブ』湯浅とんぼ・中川ひろたか(チャイルド本社) 最近、長谷川義史さんの絵を見ると、反射的に買ってしまうんです、ぼく(^^;;

『絵本は小さな美術館』中川素子(平凡社新書)
『ユックリとジョジョニ』荒井良二(ほるぷ出版)
『ダーナ』たむらしげる(ほるぷ出版)

『en-taxi No.02』(扶桑社) これは雑誌だけれど、創刊号が面白かったことと、坪内祐三氏だけは個人的に大好きなので、また買うことにしました。


 夏かぜにご用心                          2003/07/08

●日曜日の午後は、久々に晴れ間も見えてずいぶん蒸し暑くなったので、子どもたちを連れて高遠町営プールへ行ってきました。ここでは、おかあさんも子どもたちも、よく知った人たちと必ず会うので恥ずかしいのですが、大人200円、小人(3歳以上)100円の魅力は捨てがたいものがあります(^^;)

営業はしていたのですが屋外プールは人影もまばらで、プールの水温もまだかなり低くて、水の中は冷たく、ぼくは翌日の午後には寒気がしてきて、すっかり風邪をひいてしまいました(^^;;

●体調が悪いので、ずいぶん以前に書いた院内報の焼き直し原稿ですが「月刊かみいな」8月号の「健康カレンダー」用(今日が締め切り)として、先ほど送信したところです。

          <夏かぜにご用心>


 大人の感覚だとカゼは冬の寒い季節にかかるものなので、暑い夏にカゼなんかひくの?と疑問に思う人も多いんじゃないでしょうか。確かに、SARSやインフルエンザウイルスのように低温と乾燥した空気が大好きで冬に猛威を振るうウイルスが多いのも事実ですが、ジメジメした夏の高温環境が得意の夏かぜウイルスもいるのです。

 この夏かぜウイルスにはアデノウイルスやエンテロウイルスなど100種類以上もの原因ウイルスがいます。違うウイルスでも症状は同じ手足口病やヘルパンギーナだったり、同じウイルスでも年齢によって症状が変わったりと、なかなか複雑です。手足口病に何度も感染する子どもがいるのはそんな訳です。また無菌性髄膜炎や発疹症など冬のカゼにはみられない合併症があることも特徴の一つです。

 夏かぜウイルスは感染するとのどや腸管の粘膜細胞の中で増殖します。飛沫感染の他に便からも2週間以上ウイルスが排出されるので、患児の手や皮膚についたウイルスが接触感染で他の子の手から口の中へ侵入する場合も多いです。またプール熱や「はやり目」では目からもウイルスが侵入します。夏かぜ予防で大切なことは、よく手を洗うことです。

 夏かぜの原因としてよく「寝冷え」がいけないと言われていますが、本当でしょうか?のどや気管支の粘膜には「繊毛」があって口から侵入したウイルスが体内へ入り込まないよう守ってくれています。ところが、暑い夏の夜に窓を開けたまま眠ると、明け方には冷え込んで体温が下がり、この繊毛の動きがにぶって夏かぜウイルスが細胞内へ侵入するのを簡単に許してしまうのです。これが寝冷えです。子どもは寝相が悪いしタオルケットもすぐはだけてしまうので困りますが、体が冷えすぎないよう気遣ってあげて下さい。

 こどもクリニック と ソバの花                  2003/07/06

●当院の診察室の窓からの景色は、すごく見晴らしがよいのです。周りは田んぼや畑なので、中央アルプスも正面に「でん」と見えます。うちの西どなりの中村さん家の畑は、今ソバの白い花が満開です。



 映画『さよなら、クロ』 みてきました               2003/07/04

●『ブラックジャックによろしく』『ウォーターボーイズ』の妻夫木聡クン主演、『バタアシ金魚』の松岡錠司監督作品、『さよなら、クロ』 は、明日7月5日(土)から東京ほかで公開されます。

ところがこの映画、長野県下では先週の土曜日から先行ロードショウ上映されているのです。しかも何と わが「伊那旭座」でも、東京初日の1週間も前から上映が始まっているのでした。ふだん、世の中で話題になっている映画が伊那旭座にかかるには、あと3〜4カ月待たされることが当たり前であった、この田舎の映画館で、何と!! 東京在住の映画ファンが見たくともまだ見れない映画を、しかも試写会ではなく封切りで見ることができるなんて事は今まではなかったし、これからも、まず絶対にないでしょう。ほとんど奇跡のような話です(^^;)

ぼくの長兄は9歳年上なんですが、松本深志高校のOBでして、兄が在籍していた頃、まさに「クロ」が深志高校にいたのだそうです。ただ、後日大騒ぎされるほど特別扱いされていたワケではなくて、学校校内に迷い込んだ単なる野良犬というのが、当時の皆の認識だったようです。

ぼくは休診にしている今週の水曜日の午後、見に行ってきたのですが、この映画は、そのあたりのことをよくわきまえていて、犬が主役なのは間違いないのだけれど、ムツゴロウさんが監督した犬の映画や、『マリリンに会いたい』などに代表される無理やり犬を擬人化してしゃべらせたり、CG合成で作ったりといったシーンは皆無なのでした。犬はあくまでさり気なく、カメラに収まっているだけなのです。

この映画は、いわば犬を狂言廻しにしてどの時代でも誰でも思い当たる、ありふれた普遍的な青春の一コマを、見事にフイルムに定着させた青春映画なんですね。とにかく若い役者がみなイイ! 優柔不断で奥手な妻夫木クン。その親友で、やな性格の優等生役をごく自然に演じる新井浩文が、これまたじつにイイ。『俺たちに明日はない』を上映している真冬の映画館の前で、ヒロインの伊藤歩に彼が愛を告白するシーンは、1カットで延々と長廻しで撮られているのですが、このシーンの緊張感はすばらしい!

ちょっとネタバレになりますが、妻夫木聡クンが伊藤歩に告白するシーンもすばらしい。松岡錠司監督は、けっして奇をてらうことなく、あくまでオーソドックスな映画文法に則って、使い古された古典的なシチュエーション(駅のホームでの男と女の別れ)を、あえて取り入れて「どうだ!」と言っているんですね。これには正直まいりましたデス(^^;)

映画は冬の信州でロケされたので、画面に派手さはありません。緑が少ない風景は妙に灰色っぽくて、くすんで沈んでしまうのですが、赤い鈴と、ヒロインが10年後に着てくる赤いコートが絶妙のアクセントとなって、映像を引き締めてくれました。

妻夫木聡、伊藤歩、新井浩文の三角関係は、やはり映画好きには古典的な設定ですよね。ロベール・アンリコ監督作品『冒険者たち』の、アラン・ドロンと、リノ・バンチュラ、そしてジョアンナ・シムカス。もしくは、トリュフォー『突然炎のごとく』のジャンヌ・モロー。青春とは誰でも、何処でも、何時でも、いっしょなのです。

ところで、この映画のラストシーンは、なんとわが町・伊那市で撮影されました。財津和夫の『青春の影』は、この場面で絶妙のタイミングで流されるのですが、ぼくはスクリーンを見ながら、涙が止めどなくボロボロ流れてきて、ほんと恥ずかしかったです(^^;;;  場内には、おばあちゃん、おばちゃん中心に十数名しか来ていませんでしたが。

それにしても、久々にいい映画を見たな。  オススメです。


 五味太郎って、やっぱスゴイな                   2003/07/01

●またまた日曜日の夜のテレビの話。TBS系列で夜の11時から放送している『情熱大陸』 という番組があります。今週は、絵本作家五味太郎の特集。見ていて「はっ」とさせられたシーンがありました。大手出版社の若手女性編集者が打ち合わせに彼の仕事場へ来て、こんなことを言ったんです。

「最近のある調査によると、小学生の数十%の子どもが、まったく本を読まない子どもたちなんです。この子らに、本を読むことの面白さを何とか伝えたいんです、先生のお力をお借りして……」

彼女の話を、ずっとガマンして聞いていた五味さんは、こう言ったんですね、たしか。

「あなたね、それって大きな誤りだよ。何様のつもりか知らないけど、子どもをそんなふうに見下しちゃいけない。子どもって、大人と較べて足りないのは、経験と、お金と、背丈だけで、あとはみんな持ってるんだよ。だから、子どもをバカにしちゃいけない。そんなの失礼だよ。みんなそれぞれ個性があるんだから、本を読まない子がいたって、べつにいいじゃない?」

たしかに、斎藤孝先生や、百マス計算の陰山先生の本を読んだり、朝の読書運動の成果とかを見ると、「子どもは本を読まなきゃいけない」みたいな気がしてきちゃいますが、ほんとにそうなんだろうか?

絵本学会の学会誌『BOOK END』 の中で、ちひろ美術館の主任研究員である、竹迫祐子さんは 47ページで最後にこんなことを書いています。

そして何よりも大切なのは、絵本が one of them だということ。絵本だけでいい子どもが育つわけでもなく、社会の問題が解決するわけでもありません。そのあたりのクールな目が、私たち絵本に関わる人間には、今こそ、求められていると思います。
ほんと、そうだよね。それから、クレヨンハウスの落合恵子さんは、『絵本だいすき!』(PHP) の「はじめに」で、こう言い切っています。
本がなくとも子は育つ、と思っています。子どもの本の専門店を二十五年間やっていながら、この考えから抜けることができません。
われわれ小児科の医者も含めて、子どもと関わることを「生業」としている大人たちは、これらの言葉を肝に銘じなければならない、改めてそう思いました。

 NHKスペシャル・沢木耕太郎 アマゾン思索紀行               2003/06/28

●今週の日曜日に放送されたNHKスペシャル・沢木耕太郎 アマゾン思索紀行 隔絶された人々 イゾラド  は面白かったです。でも、テレビを見ながら、何とも言えない「居心地の悪さ」を感じてしまったのは何故なのか? これって、2001年9月22日に、ブラジルで沢木耕太郎氏を乗せたセスナ機が墜落した『イルカと墜落』 の、あの時の取材旅行の話ですよね。取材が済んで2年近くも経って、どうして今頃放送されることになったのでしょう? ハイビジョンでは既に放送された番組の、地上波での再放送だったのでしょうか? よくわかりません。

それにしても、アマゾン奥地には21世紀を迎えた現在でも、いまだに文明社会とは一度も接触したことのない「イゾラド」と呼ばれる人々が裸で生活している、という事実には驚きました。しかも、妙に順応性がよい馴れ馴れしいコルボ族の人たちと、文明社会が援助の手を差し伸べても、頑なにそれを拒否し続ける、イゾラドの兄弟(もしくは幼なじみ?)二人の男性との対比が鮮烈でした。

特にこの二人のイゾラドの男性は、たぶん幼い頃に所属する部族が戦争か災害か人災かのために消滅してしまい、以降2人だけでジャングルの森の中を生き延びてきたのでしょう。彼らは日がな一日、弓矢の「矢」だけを作り続けます。弓の作り方は知らないので、どんなにたくさん「矢」を作っても、その使い道はないのです。でも彼らは、幼い頃に親から伝承された「矢作り」だけを、すでに誰も継承者がいないのに、もくもくと作り続けているのです。

この場面は見ていて辛かった。そうして、しばらく前に読んだSF小説『キリンヤガ』 を、なぜか思い出してしまいました。


 辰野に「ほたる」を見に行ってきました                   2003/06/26

●なんと、中川ひろたかさんのホームページから、リンク(6月24日の日記の中で)していただけることになりました。じつに光栄です。ほんとに、ありがたいことです。旬報社の佐川さん、ありがとうございました。これで、内田麟太郎さんのHPに続いて、メジャーなサイトからリンクしてもらえることになって、少しはチェックしてくれる人が増えるかな(^^) なにせ、半年前に登録したのに、未だにグーグルは当院HPを無視し続けているのですよ、ぷんぷん。昨日、もう一度「ヤフー」の方に登録しなおしてみました(^^;;

ところで、なぜ、中川ひろたかさんのサイトからリンクを張ってもらえることになったか? といいますと、
『中川ひろたかグラフィティ』の読後感想文を、ぼくが書いたからです。でも、お世辞抜きで、この本、ホント面白いでっせ(^^;; 必読の1冊です!

●水曜日は、午後を休診にしているので、時間的に余裕があるから、伊那市図書館へ行って、それから高遠町図書館を廻って帰ってきても、まだ夕方の5時。「じゃぁ、ほたるでも見に行くか!」ということになりました(^^) でも、夏至を過ぎたばかりで、なかなか日は暮れません。しかたないので、辰野町役場前の「小佐加」うな丼を食ってから出撃しよう、ということになりました。

前回「小佐加」うなぎを食べたのは、たしか結婚する前だったから、もう12年になりますか。久しぶりだなぁ。あの頃は、ぼくも女房も若かった(^^;;

どんぶりの蓋を取ると、鰻の香ばしい香りが鼻をくすぐって、生唾ゴックン状態突入であります。肝吸い がこれまた旨いんだな(^^)      そう言えば、思い出したことがあります。子どもの頃、大切なお客さんが夕食時にやって来ると、きまって出前を取ることになっていました。お寿司もしくはうな重の、どちらかでしたね。

お寿司の時は、よっぽどお客さんが酔っぱらってでもいないと、残してくれませんでしたが、うな重の時は、鰻は食べてしまっても、タレ(お弁当に付ける「ソース入れ」の大きいヤツに入ってきた)は残るのですよ、必ず。このタレを、翌朝、ごはんにかけて、お箸でかき混ぜてから食べたんですが、これがこの世のものとは思われないほど旨かったんですよね。

ところで、辰野のほたるですが、いました(^^) 昨夜は涼しくて風もあったので、乱舞というまでには飛びませんでしたが、十分にきれいでした。自家用車で乗り付けたのだけれど、夜の8時半近くだったので、ほたる公園駐車場に車を停めることができ、ラッキーでした。これ、もしも辰野駅から歩いてこなければならなかったとしたならば、評価は下がるでしょうか。

でも、あの広い空間を人工的な光から一切シャットアウトして、ほたるが乱舞する空間を提供した辰野町には、300円あげても文句は言えないかな。

 今日は「当番医」                             2003/06/22

●今日の日曜日は「当番医」です。この時期なので、患者さんの数はそれほど多くはありませんが、午前中は切れ目なく診察が続いたし、おなかにくる夏カゼで「点滴」になる子どももけっこういました。平日の外来と同じくらい、といったところでしょうか。当番医の日は、ご苦労様の気持ちを込めて、スタッフのお昼は「出前」を取ります。

定番は、評判がいいので「ちむら寿司」西町・日之出町(伊那バスターミナル裏)のちらし寿司。 お刺身が折り重なってびっしり乗っていて、ごはんもたっぷりでボリュームいっぱい(^^) ここの「酢めし」が、これまた美味しくて、ごはんを残す人は誰もいません。満足の逸品であります。

お鮨が食べたくなると、うちで行くのはやっぱり「ちむら寿司」。むかしからそう。子どもには納豆巻きカッパ巻きを食べさせておけば、それで済んでいたのだけれど、最近「マグロ!」とか「かに」とか、「おじさん、ちょっとだけワサビつけてね!」とか「やっぱり、まわるおすしより、おいしいなぁ」なんて生意気なことを言いだしたので、この先すっごく心配です(^^;;

実際、ちむら寿司のマグロは旨いのですよ。それから「あなご」。口に入れると、ふんわりとろけるようで、たまりませんね(^^)  松本の女鳥羽川沿いに「かねこ」という、やはり夫婦だけでやってる有名なお鮨屋さんがあるのですが、あそこの「あなご」に匹敵するのではないかと、密かに思っているのです。

「ちむら寿司」は、今まで頑固なまでに夏でもびんビールのみだったのですが、先日帰り際に見たら、あれ?キリン生ビールの樽と器械が設置されているではありませんか。大将の考えが変わったんだろうか? 夜遅くに「テルメ」へ行くと、ちむらの大将によく会うので、今度そこんところを訊いてみよう(^^;;


 『探偵ナイトスクープ』 今週はつまらんかったぞ!             2003/06/21

●朝日放送系列で、毎週金曜日の夜11時過ぎから放送している『探偵ナイトスクープ』 は、放送開始13年になる長寿番組です。ぼくは長野朝日放送が開局した当初から見ているので、それでも10年以上見続けていることになります。いまだもって理解できないことは、こんな面白い番組が、キー局のテレビ朝日では、木曜日の午前4時12分から放送されていることです。東京の人には「こてこての大阪ギャグ」が理解できないのでしょうか?

いや、そんなことはないはずです。テレビを付ければ、連日、活動の拠点を東京に移した大阪芸人が何人もブラウン管に登場しているではありませんか。なぜ受けないんでしょうかねぇ、東京に人には。

ぼくが、毎週欠かさず見るテレビ番組は『ER VIII』と、この『探偵ナイトスクープ』だけです(^^;) 先週は3本とも傑作で、久々に満足のいく出来映えだったのですが、今週はつまらなかった。寂しいね。いつもの素人大阪人が持つ、底知れぬパワーが画面からは感じられなかったからです。

じつは、密かに「優秀な探偵さん」に依頼したい話題がぼくにもあるのです。蒙古班というのは、アジア人種の赤ちゃんに高頻度で認められる「青あざ」ですが、決してアジア人種に特異的に認められる特徴なのではなくて、頻度は低いのだけれど、白人の欧米人にも、アフリカの黒人にも認められるものなのだそうです。

ですので、中国人やインド人、ロシア人にフランス人、ケニア人にオーストラリア原住民などの赤ちゃんのお尻を調べて、実際に蒙古班があるのかどうか確認してみたいのです。でも、この企画、かなり人種差別ぎりぎりの話題ですので、まず間違いなく「ボツ」でしょうね(^^;;;


 『HOOT  ホー』カール・ハイアセン(理論社)& 中川ひろたか       2003/06/17

●今週は、月曜日から閑散とした外来です。患者さんが途切れたヒマな時間に、紹介状の返書とか、伊那東小の心電図判読作業とか、生活保護患者の医療意見書とか、一刻のゆうよもなく仕上げなきゃならない仕事はくらでもあるのに、気乗りしない仕事は後送りしてしまう、ぼくの悪い癖(^^;;

『HOOT ホー』 カール・ハイアセン・著、千葉茂樹・訳(理論社)を、そんな中で読了いたしました。これ、面白かった(^^)  物語の展開は、最初から読めちゃうんですけどね。でも、著者の特異なキャラクター造形が際だって巧みなので、登場人物のひとりひとりがみな、読みながら ビビッドにリアルに感じられて、軽快で心地よい文章のテンポとともに「絵」が頭の中に浮かんでくるのです。

こういうのを「行間から人物が立ち上がってくる」とでも言うのでしょう。実際、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の監督が映画化したら、ヒットすること間違いなしです。ちゃんと「絵に描いたような悪役」 も登場するし(^^;)

ロイという主人公がいいんだ。まるで、ディック・フランシス「競馬シリーズ」に登場するシッド・ハレーみたいで。暴力には決して屈しず、タフで知恵があって、最後まであきらめない。脇役もみな、いい味だしてる。古風な名前のベアトリス姉ちゃんに、その義理の弟、それから、ドジで間抜けな警察官。そうして自分の息子に絶対的な信頼をよせている、お父さん、おかあさん。

特に、このおとうさんがいいんだ。アメリカの「父と息子」って、たいていこういう雰囲気で、二人ただ黙って、お互いを認めつつ、夕闇の公園を歩くんだよね。カッコイイなぁ(^^;)

作者のカール・ハイアセンの本は、たしか『大魚の一撃』(扶桑社ミステリー)を、むかし買って途中まで読んだはずなんだけど、そのままになっていました(^^;) この人の本、もうちょっと真面目に読んでみないといけないな。

●さて、面白い本を読み終わると、続けざまに面白本を物色して読み始めないといられなくなります。お昼休みに「伊那市図書館」へ、すっかり延滞してしまった本を返却しに行ったら、1階の児童図書館で『中川ひろたかグラフィティ 歌・子ども・絵本の25年』 中川ひろたか(旬報社)を発見しました。

この本がまた面白かった! ほんと一気読み でした。詳細は「おとうさんの絵本」コーナーで(^^;)


 『子どもの宇宙 』河合隼雄・著(岩波新書・386)              2003/06/15

●今日は「長野県小児科医会」の総会が松本であって、朝から出かけてきました。会の終了後、松本のブックオフに寄ったら、以前からずっと探していた「黄色いカバー」の岩波新書『子どもの宇宙』河合隼雄・著(\660) が見つかりました(^^)

先ほどから、さっそく読み始めたのですが、しょっぱなから「いいこと」書いてあるじゃありませんか!>この本

この宇宙のなかに子どもたちがいる。これは誰でも知っている。しかし、ひとりひとりの子どものなかに宇宙があることを、誰もが知っているだろうか。それは無限の広がりと深さをもって存在している。大人たちは、子どもの姿の小ささに惑わされて、ついその広大な宇宙の存在を忘れてしまう。

大人たちは小さい子どもを早く大きくしようと焦るあまり、子どもたちのなかにある広大な宇宙を歪曲してしまったり、回復困難なほどに破壊したりする。このような恐ろしいことは、しばしば大人たちの自称する「教育」や「指導」や「善意」という名のもとになされるので、余計にたまらない感じを与える。

私はふと、大人になるということは、子どもたちのもつこのような素晴らしい宇宙の存在を、少しずつ忘れ去ってゆく過程なのかとさえ思う。それでは、あまりにもつまらないのではないか。(1ページ)

                  (中 略)

     かみさま
                         やましたみちこ
  かみさまはうれしいことも
  かなしいこともみなみています
  このよのなか
  みんないいひとばっかりやったら
  かみさまもあきてくるんとちがうかな
  かみさまが
  かしこいひともあほなひともつくるのは
  たいくつするからです


 これは小学1年生の詩である。やましたみちこさんの宇宙に存在してる神様は、なんと素晴らしい神様だろう。私はこの詩を、現代の世界で、正義のためには戦争も止むなしといきまいている多くのファンダメンタリストたちに見せてやりたい。彼らの神が肩をいからせ、まなじりを決して、正義のための大量殺人をも辞せずと言っているとき、やましたさんの宇宙の神様は、見事な自然体で、世のなかいろいろあっていいじゃないの、とゆったりと構えているのである。(ページ2〜3) 『子どもの宇宙』河合隼雄・著(岩波新書)より。

 『荒野へ  Into The Wild 』                       2003/06/13

『パタゴニア・あるいは風とタンポポの物語り』椎名誠(集英社文庫) 読了。
この「旅行記のふりをした私小説」(北上次郎)は、椎名誠のターニング・ポイントとなった重要な作品とのことで、『かえっていく場所』 の最終章とも密接に関連してくるので、どうしても読んでおきたかったのです。

「パタゴニア」 というところは、いわば南半球のアラスカみたいなところで、猛烈な風が吹きすさび、延々と荒野が続く地の果てです。本を読みながら、自分も、こういう荒涼とした荒地の風景が、つくづく好きなんだということに、改めて気づかされました。

学生のころ、上野発・常磐線まわりの夜行列車に土浦から乗り込んで、青森まで一人でよく旅をしました。それも1月中旬の下北半島・尻屋崎灯台だったり、地吹雪の十三湖だったり。不思議と冬でもなぜか「北」を目指してしまうのですよ(^^;;  暗いヤツだねぇ(^^;;;

『荒野へ』 ジョン・クラカワー著(集英社) という本があります。クラカワーは、自らもその一員として参加した「エベレスト登頂ツアー」の悲劇的な集団遭難事件を扱った『空へ』(文春文庫) が世間では有名ですが、ぼくは、先に読んだ『荒野へ』 の印象のほうが強烈でした。

アラスカの荒野に単身分け入り、4ヵ月後に腐乱死体となって発見された、ひとりの若者について、まるでハードボイルド小説に登場する私立探偵が、失踪者の足跡を追いながら真実に迫るようなタッチで書かれていて、ぐいぐい引き込まれてしまいます。なぜ若者は、すべてを棄てて荒野をめざしたのか? 著者は、その若者にどんどん感情移入して行きます。 そういえば『青年は荒野をめざす』とか『荒野の狼』という小説もありましたねえ(^^;;


『現代詩文庫(171)加島祥造詩集』(思想社) を先日買いました。加島祥造さんは「荒地」という戦後現代詩同人のひとりでした。「荒地」には、鮎川信夫、田村隆一、三好豊一郎、北村太郎、吉本隆明などが参加していました。

そういえば、絵本『やまのむにゃむにゃ』 内田麟太郎・作、伊藤秀男・絵(佼成出版社)にも、「荒地」に毎日ただただ水をやるじいさんが登場しますが、関係はないのだろうか?

 読み聞かせは、なかなかむずかしい                2003/06/12

●先週の水曜日の午後は、伊那市竜東保育所で「春の内科健診」があって、ここは220人以上の園児が通う大きな保育所なんですが、今年から園医を務めさせていただくことになったのです。園長の下島先生は、去年まで発達障害児の通所施設「小鳩園」の園長先生だったので、ぼくもよく存じ上げていて、例によって、無理を言って健診のあと、年長さんのクラスで「絵本の読み聞かせ」 をさせていただきました。

読んだ絵本は2冊。『ふしぎなナイフ』 と、『さるのせんせいとへびのかんごふさん』です。『ふしぎなナイフ』はページをめくるごとに「え〜〜っ!」と大きな歓声をあがって、大ウケでした(^^) 「先生! もっかい読んで!」の声に、再度はじめから読まされました(^^; 「さるのせんせい」のほうは、最近「てれび絵本」(NHK教育テレビ)で放映したので、知っている子がけっこういて、かえってやににくかったです。

ぼくは「絵本の読み聞かせ講習会」とか「読み聞かせ」のボランティア・サークルとかに参加したことが一度もなく、まったくの素人なんですが、こうして職権を乱用して(?)保育園で実践させていただけると、すごく勉強になって助かります(^^;;

●昨日の水曜日は、高遠第一保育園の内科健診で、ここでは去年秋の健診の時に『でんしゃにのって』を読ませてもらったので、先生も心得たもので、健診終了後に年長組の園児を手早く集めて「北原先生、準備は整いましたよ!」と声をかけてくれました(^^;) 読んだ本は『ふしぎなナイフ』と、前から一度挑戦してみたかった『じごくのそうべえ』 です。

ちょっと低めの声で怖そうに読み始めたら、みんな「しーん」としちゃって、糞尿地獄の場面もあまり受けなかったなぁ(^^;) 人呑鬼が登場してきてようやく笑いが得られましたが。やっぱり大阪弁のイントネーションが、ぼくが読むとどうしても不自然になってしまうんですね。それから、字を読むのに一生懸命になっちゃって、子どもたちの顔の表情を確かめる余裕がまったくありませんでした。

気を取り直して、年中さんのクラスでは『ゴムあたまポンたろう』 長新太・作絵、と『あしたもともだち』 内田麟太郎・降矢なな作絵、を読んでみました。

『あしたもともだち』は「しみじみ系絵本」の傑作ですが、年中さんのクラスではちょっと難しいかな、と思ったのですが、みんなお終いまで真剣に聞いてくれましたよ。ただ、ぼくは読む時に、大きな声を出そうと努力してはいるのだけれど、声のとおりが悪い。これはおなかから声を出していないせいですね。もっと役者さんや声楽家のように腹式呼吸の訓練をしないといけないな。

 新沢としひこ & ケロポンズ・コンサート            2003/06/08

『音楽はなぜ人を幸せにするのか』 みつとみ俊郎(新潮選書)という本を、先日「TSUTAYA」で見つけて買ってきました。以前からずっと考えていた疑問に「人間が生きてゆくのに、なんで音楽が必要なんだろう?」というのがあって、未だによく分からないんだけれども、この本にその答えが書いてあるかもしれない(まだ読んでないけど(^^;;)

今日は、辰野町で「日本小児科学会・甲信地方会」があって、半日しっかり勉強してきたあと、夕方からは、伊那文化会館で「おやこ劇場」主催の新沢としひこケロポンズ ・コンサート」に出かけました。妻子は以前から劇場の会員だったのですが、ぼくは今回初めて入会。噂のケロポンズを、どうしても一度見てみたかったからです。

新沢としひこさんも、ケロポンズも、テレビへの露出度が極端に低い人たち(テレビ東京のミニ番組『はじめのいっぽ』くらいか?)なのに、全国各地に熱狂的なファンがいるんですね。昔のフォーク歌手 みたいな、町から町への地道なコンサートが、彼らの活動の中心だからです。

会場には、外来でよく見るお父さんおかあさん、そして子どもたちがいっぱい来ていて、なんだか恥ずかしかったですが、何よりも音楽的にかなりレベルの高いコンサート内容に、ぼくはたまげてしまいました。開幕の曲「チャンス」、終わり近くで歌われた「にじ」 それから「はじめの一歩」という曲。なんて心に沁みるいい歌詞、いいメロディなんでしょう。また、新沢さんがじつにイイ声してるんだ。3人がアカペラで歌う曲も、ばっちりハーモニーが決まっていましたよ。

もちろんケロポンズのエンターテイナーぶりも、十分に堪能できました。いろんな体操も立っていっしょにさせられたし(^^;) 終演後、ケロポンズのビデオを買ってサインをしていただきました。子どもたちに握手してくれたので「あの、おとうさんも握手、いいですか?」と言って、ケロポンズの二人に握手してもらいました(^^;)

音楽って「おとがたのしい」と書くんですが、今日のコンサートはまさにそんな感じでした。ぼく自身は、このところやや不調で、寝る前のアルコールで何とかしのいできたのですが、新沢としひこさんとケロポンズが作り出す音楽に、今日はずいぶんと元気を分けてもらったような気がします。

明日からまた、がんばろうっと(^^)

 『かえっていく場所』椎名誠・著(その2)            2003/06/05

『からいはうまい』 椎名誠(小学館)という本を、本屋さんで探したんですが見つからないので、昨日の夕方、伊那市図書館へ行って借りてきました。図書館にはちゃーんと置いてあるんですねぇ(^^) こういう時「図書館はエライ!」しみじみそう思ってしまいます(^^;) 

何故この本を探していたかと言うと、『かえっていく場所』の(その3)「窓のむこうの洗濯物」が、『からいはうまい』「信州編・辛味ダイコン革命前夜を行く」の信州・伊那谷取材旅行の話だったので、その事実関係を確認しておきたかったからです。 で、『からいはうまい』の方を読んでみておどろいたのは、ずいぶんと雰囲気が違うということです。椎名さんの取材に同行した人物の名前も人数も違うし、文章のトーンもぜんぜん違う。『かえっていく場所』のほうが断然イイのです。

「私小説」 って、そういうことだったんですね。

『かえっていく場所』には、「絵本」に関連した記載が「3カ所」でてくるんです。その最初が、51ページ

畑の上の雪なのだろうか。いちめん白く広がる平地に古びたドライブインのような建物があった。木造二階建ての屋根の上に何に使うのかよくわからないアンテナのようなものが沢山突き出ている。アンテナの下にはソーラー発電かなにかの太陽光線吸収板のようなものが並べられていた。(中略)

そういえばこんなふうなちょっと風変わりな砂漠の中の店を舞台にした外国映画があった。そうだ。『バクダッド・カフェ』という映画だった。(中略)

「これ、見てよ」
橋本の指さす箱の中に鏡餅のようなものが転がっていた。しかし鏡餅にしては形が変だった。箱の外に”ダチョウの卵”、とマジックインキの文字があった。「一ヶ五千円」
「本物なんだろうか?」
「そうらしい。さっき売り場の人に聞いたらそう言ってた。外でダチョウを飼っているんだそうだよ」
 なんともあちこち奇妙な店であった。(中略)

「三十人分ぐらいの玉子焼きが出来そうだね」
「うまくはないだろうな」
 そうだ。『グリとグラ』だ……!
 私はさっきそのことを思い、なかなか題名が思い出せなかったのだが、漸くすっきりした気分になった。娘が小さかった頃、毎日のように読むのをせがまれた絵本の題名だった。(p51 〜p53)
●地元、伊那市在住の方なら、もうお気づきのこととは思いますが、この描写は、広域農道沿いの産直市場「グリーンファーム」でのことを言っているのです。ここで椎名取材班は「辛味大根」を発見し、「通りを隔てた柵の向こうで大きなダチョウが二羽、雪の中の囲いに沿って怒ったようにいつまでもワサワサ走り回っている」のを見つけたのでした(^^;)

この日(2001/01/05)、取材班は長谷村の仙流荘に宿をとります。ぼくは小説を読みながら、てっきり高遠の山室鉱泉のことだとばかり思っていたのですが、<この本>(地元の人にはオススメ!)を見ると、山室鉱泉はすでに閉館したとのことでした。
「自分の育った家で家族と一緒に暮らしていた時間というのが思っているよりも短い、ということにこの間気がついたんだ」
 少し前から時折考えていたことを私は言った。(p57)
その夜の宴会での椎名さんが発したフレーズですが、これは「この本」のポイントだと思います。斎藤孝先生なら、ボールペンで赤線 を引くところですね(^^;)

●さて、絵本に関連した記述の残り「2つ」ですが、長くなってしまったので手短に書きます。

あの風景が懐かしく思えたのは、ずっと昔子供たちによく絵本を読んでやっていた頃の一冊の記憶だった。ヨーロッパを旅する男を常に俯瞰でとらえた不思議な画風の絵本であった。子供らが小さい頃、私はよく絵本を読んでやっていたのだ。絵本の世界の中で彼らとよく旅の共有体験をした。それが彼らとのわかりやすいつきあいかたのひとつのように思えた。(p150)
その絵本とは『旅の絵本』 安野光雅・作絵(福音館)のことに相違ありません。それから……

 海の話でぼくがいちばん好きな絵本は、『海のおばけオーリー』です。有名な絵本ですね。子どもにも読んであげたし、ぼく自身も大好きで何度も読んでいる絵本です。マリー・ホール・エッツさんの本ですね。(中略)

「じゃあ、なにがそのアザラシは好きなんですか」「ラッパの音が好きなんです」
 こういうとこが、ぼくは好きなんです。『もりのなか』でも、少年がラッパを吹いていましたが、エッツさんはラッパが好きなんですね。プップーッってラッパを吹くと、オーリーがやってくるというわけです。(中略)

 わりと最近になってスコットランドのアイラ島というところでアザラシにバイオリンを聞かせる女性と会いました。実際にいっしょに海に出て、岩の上でバイオリンを弾いてもらったら、本当に何千頭ものアザラシが集まってきてみんな海面に頭を出してバイオリンの音楽を聞いているのを見ました。びっくりしました。

  『絵本たんけん隊』椎名誠・著 (クレヨンハウス) p264 より。

ここの話は、『かえっていく場所』の中でいうと、p153 あたり に相当します。

 よごれっちまったかなしみに                   2003/06/03

●4歳の次男は、毎朝8時から教育テレビで放送している『にほんごであそぼ』を見てから登園します。お気に入りは「かるた」のコーナーで、6月に入って、再放送でなく新しいプログラムになったので、毎朝真剣に見ています。月曜日は「め」でした。「メロスは激怒した」おお、太宰治の『走れメロス』ではありませんか!。今日、火曜日は「よ」で、「よごれつちまつたかなしみに」中原中也でした。ぼくはずっと「汚れちまった悲しみに」だと思っていたんですが、「よごれっちまった」だったんですねぇ。知りませんでした。うちの次男は、この「よごれっちまった かなしみに」のフレーズが、いたく気に入ったようで、夜おふろに入りながらも、ずーと「よごれっちまった かなしみに……」と繰り返し繰り返し、ぶつぶつ言ってましたよ(^^;)

以前「かぼちゃ」の話を書きましたが、彼の言語聞き取り能力はなかなかにユニークなのです(^^) 昨日も「クレヨンしんちゃん」の顔を画用紙いっぱいに書いたあと、顔の下に「ひらがな」で「くでおん」と大きく書いていました。日曜日のお昼には、「ねえ、おとうさん、洗濯機たべたいなっ!」と言いました。「ヲイヲイ! ちょっと待てよ?」焦って5秒考えたら、判りました(^^) 「あ、ケンタッキー・フライドチキンのことね!」

このあいだは「ねぇねぇ、おとうさん。当たり屋、知ってる? あたりや。ぼく知ってるよ」と、得意げに言いました。そして、戸田デザインの『国旗の絵本』を持ってきて、ほら「あたりや」と、イタリアの国旗を指さしたのです(^^;)

さらに、テレビCMを見ながら大きな声で歌っています。「おむつマーンの、太田屋っ。おててのしわとしわをあわせて、幸せ」あれっ? ちょっと違うんじゃない? (^^;;|

 『かえっていく場所』椎名誠 を読んで、しみじみしてしまった   2003/06/01

●昨日の土曜日の午後「伊那ケーブルTV」が『医師会健康アドバイス』という自作番組の収録のために、当院へやってきました。照明さん・音声さんなど、たくさんのスタッフでやって来るのだと思ったら、司会進行役のおねえさん と、カメラマン兼ディレクターの2人だけで、軽自動車に乗ってやって来ました(^^;)

「子どもの発熱について」というテーマで、15分間の番組内で、おねえさんの質問にぼくが次々と答えてゆく、というスタイルです。とはいえ、質問も回答も、ぼくが全部自分で考えて、前もって原稿にしたものです。先週の1週間は、その原稿書きとパネル作りに追われて大変でした。原稿が何とか出来上がったのは、なんと当日の午前2時。

下読みも十分にできず、いきなし本番でした(^^;) おねえさんのNGは、何度でも撮り直ししてくれるのに、ぼくが途中つっかえたり、とちったりしても「ハイ! いいですよー、大丈夫ですよー」 と、ディレクターはニコニコしながら、どんどんカメラを廻して、結局ぼくのしゃべりはほとんど撮り直しなしのまま、40分くらいで収録は終了してしまいました。

原稿を暗記する時間はまったくなかったので、ぼくは下を向いて原稿棒読み状態。あぁ、いったい「どんな画像」が放送されるのか、ものすごく不安です。ちなみに6月中旬の放映だそうですが、放送日時は秘密です(^^;;


前日の睡眠時間は3時間 だったのですが、土曜日の夜は妙に目が冴えて寝付けず、しかたなく久しぶりに本を読むことにしました。当初、マイアミを舞台に軽妙なミステリを書き続けているカール・ハイアセン初のジュヴナイル、『HOOT』 (訳者はもちろん、ぼくが信頼をよせている、あの、千葉茂樹さん)を読み始める予定だったのですが、ベッドに寝そべったら、ふと、気が変わって、椎名誠の新作、『かえっていく場所』(集英社) を手に取っていました。

読み始めたら、みるみる引き込まれて、止められなくなってしまいました。集英社の月刊文芸誌『すばる』に連載された「私小説」の連作なのですが、これが読ませるんです。内容は「週刊文春」 に椎名誠さんが連載しているエッセイと、さして変わらないはずなんだけれど、微妙に違うんですね。

登場する風景のほとんどが「冬」。しかも、このところ毎年冬になると、椎名誠さんは冬期鬱状態に悩まされているのです。崩壊しそうな自分の精神を、アルコールと忙しい旅で何とか紛らわしながら、危ういバランスの綱渡りをしている作家の日常が、たんたんと綴られているだけの「この本」 は、妙に現在のぼくの精神状態にマッチするのです。

映画でいえば、小津安二郎監督作品『麦秋』ですかね。映画のラストも、たしか5月末でしたが、この小説の最終章『ブンタ・アレーナスの金物屋』も5月が舞台です。5月と言っても、南半球の話だから、晩秋ですね。人生の晩秋にさしかかり、世界中を旅してきた作家が、世界で一番好きな場所「パタゴニア」に「かえっていく」話です。

ぼくは、この最終章を読みながら、不覚にも涙を流してしまいました。映画『麦秋』が、そうであったように、この小説でも家族はバラバラになってゆきます。椎名家の家族4人は、それぞれの「かえっていく場所」を見つけたからです。奥さんの渡辺一枝さんは、前世はチベット人だったに違いないという確信のもと、重いリュックを背負って、カイラス山を目指します。長女の渡辺葉さんは、9.11 をかろうじて生き延びたニューヨークで、役者家業と翻訳作家生活を続けています。そして、椎名誠さんの長男「岳くん」は、サンフランシスコで学生生活を送りながら、この本の最終章で、父親に会いに、わざわざ地の果て「パタゴニア」までやって来るんですね。

考えてみたら、ぼくはけっして椎名誠さんの愛読者ではなかった。実際、彼の代表作『岳物語』でさえ未読なのです。でも、『武装島田倉庫』は、椎名文学の最高傑作に違いない! そう確信しています。『かえっていく場所』に関しては、もうすこし話したいことがあるので、続きは、またあした(^^;)


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