しろくま
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北原こどもクリニック  



しろくま 不定期日記


2002年:<10/11月>  <12/1月>
2003年:<2/3月>  <4/5月> <6/7月> <8/9/10月><11/12月>
2004年:<1/2/3+4月><4 / 5/6月>< 7/ 8/ 9月> < 10/ 11月>
2005年:< 12月/ 1月>< 2月/ 3月><4月><5月/ 6月><7月><8月><9月><10月>

●「不定期日記」●

 大晦日に         2005/12/31

●今日は、朝いちで伊那市郵便局(本局)へ行って、すっかり遅くなってしまった年賀状とエクスパックを出してきた。何だかぎりぎりまでえらく忙しかったねぇ(^^;) その後は、窓ふきやら掃除やらは妻と子供たちにお任せして、先ほどまでずっとレセプト(診療報酬明細書)のチェック。じつはまだ終わらない。コルトレーンを大音量でガンガン鳴らして(と言ってもラジカセでだが)気合いを入れて仕事をした。コルトレーンはやっぱりいいなあ。

いまは一息入れて、パット・メセニー・グループの「THE ROAD TO YOU -- Recorded Live In Europe」の1曲目。うーん、これもいいなぁ(^^;;

■さて、今年読んだ本のまとめ

・まず何よりも、ぼくらの本『小児科医が見つけた えほんエホン絵本』を出版できたことが本当にうれしい。またまた、何度も読み返してしまったよ。

<小説部門>では
1位:アリステア・マクラウドの3冊がダントツだったな
   『灰色の輝ける贈り物』『冬の犬』『彼方なる歌に耳を澄ませよ』まだ読み終わってないのもあるけど(^^;)

2位:『ポーの話』いしいしんじ(新潮社)
3位:『おわりの雪』ユベール・マンガレリ(白水社)
4位:『リンさんの小さな子』フィリップ・クローデル(みすず書房)
5位:『あなたの人生の物語』テッド・チャン(ハヤカワ文庫SF)


<小説以外>では

1位:『幼児期』岡本夏木(岩波新書)
2位:『対称生人類学』中沢新一(講談社メチエ)
3位:『小沢昭一がめぐる寄席の世界』小沢昭一(朝日新聞社)
4位:『健全な肉体に狂気は宿る』内田樹・春日武彦(角川 ONE テーマ21)
5位:『落語と私』桂米朝(文春文庫 →ポプラ社から再刊)

<児童書部門>は

1位:『おばけ桃の冒険』ロアルド・ダール、田村隆一・訳(評論社)
2位以下は、また次回(^^;)

●それではみなさま、よいお年を!

 『天使のクリスマス』 ピーター・コリントン 作(つづき)   2005/12/28

●クリスマス・イヴの晩。一人の少女がベッドの足下に大きな靴下と欲しいプレゼントのリストを書いたサンタさんへの手紙を置きます。パパとママにおやすみのキスをして眠りにつくと、カーテンの袖から彼女の小さな守護天使が現れます。天使はプレゼントのリストをチェックすると小さく折り畳んで胸元にしまい、階下へ下りていってクリスマスツリーのキャンドルに火を付けます。お皿の上に置かれた「鍵」で玄関のドアを開けると、既に近隣に住む仲間の守護天使たちが集まってきていました。

それぞれの天使がキャンドルを手に再び外に出ると、雪降る道路の両脇に並んで、ちょうど飛行場の誘導灯の役目をしながら上空を見つめサンタクロースの橇が降り立つのを見守ります。このシーンは本当に美しい。彼女の守護天使は、サンタさんにプレゼントのリストを読み上げ、彼女の家の玄関へサンタクロースを案内します。さらに階段を上がって彼女の部屋へ。大きな袋からプレゼントを取り出そうとしたサンタさんは、誤ってプレゼントを床に落としてしまいます。「ゴトッ!」 ハッと目を開ける少女、焦るサンタクロース。このサンタさん、ギョロ目でちょっとこわい(^^;) さて、それから……

 守護天使と 『天使のクリスマス』 ピーター・コリントン 作(ほるぷ出版) 2005/12/27

●「守護天使」Guardian Fairy の存在を、誰もが感じることがあるのではないか? 守護天使というのは、江國香織さんの言葉を借りれば「みんなにあまねく愛を与える一般的天使と違い、特定の誰かをマンツーマンで護る、いわば個人的な天使です」(『天使のクリスマス』 ピーター・コリントン作・ほるぷ出版、あとがき より)ということになる。『いつも だれかが…』ユッタ・バウアー(徳間書店)は、まさにそのことを主題とした絵本だった。

日本では、守護天使というより「ご先祖さまがお守りしてくれている」とか「守護霊」がついている、とか言うことが多いかもしれないが、今日はとにかく守護天使の話。

『天使のクリスマス』ピーター・コリントン 作(ほるぷ出版)は、以前こちらでも紹介した『聖なる夜に』(BL出版)と同じ作者による「字のない絵本」だ。現在品切れで入手困難だが、図書館にはあると思う。ぼくは、12月初めに高遠町図書館で「この絵本」を見つけて借りてきた。「コロコロコミック」が大好きな子供たちは、まるでマンガでも読むかのように「この絵本」に見入っていた。

わが家には煙突がない。子供らの疑問は「煙突がない家に、サンタクロースはどうやって入ることができるのか?」ということと、「ぼくがお願いしたプレゼントを、外国人のサンタさんは何故かちゃんとわかっていて、たしかにそれがクリスマスの朝に置いてあること」に集約される。9歳の長男は、学校で友達からいろいろと情報を仕入れていて、半分以上はサンタクロースの存在を疑問視しているのだが「去年は、サンタさんが英語でお手紙を置いていってくれたから、やっぱりいると思う」そう、神妙な顔をして言っていたのが可笑しかった(^^;)

そうは言っても、去年までのうちの子供らは、サンタさんは空からやって来てわが家の屋根に降り立ち、何らかの方法で窓をこじ開けて入ってくると思っていたらしい。ところが、今年のクリスマス・イヴの晩は違った。「おとうさん、ここ見て! って、英語で何て言うの?」とか「スイッチ入れて下さい って、英語で書いて」とか、長男は妙なことを言う。いつもより30分も早くおとなしくベッドに入った子供たちが寝入ったのを確認して、2階から下りてくると、暗い玄関に何やらごたごたと置かれているものがある。

明かりを付けてみたら、玄関のあがりかまちに大きな懐中電灯が置いてある。その横に「please !」という紙切れと、「LOOK !」という紙切れと、「Turn ON」と書かれた紙切れに並んで、兄が「サンタさんへ」書いた希望するプレゼントのリストが載った手紙と、弟が絵入りで書いた「サンタさんへの手紙」が丁寧に置いてあった。

彼らはどうも、サンタクロースは玄関から入ってくると理解しているようだ。これは、『天使のクリスマス』の影響に違いない(^^;)

翌朝、子供部屋の目覚まし時計が5時半にけたたましい音をたてて鳴った。子供らはとび起きると、だだだだだっと階段を駆け下りていって、リビングのクリスマスツリーの下に置かれたプレゼントに飛びつく。袋には、子供の名前がローマ字で書かれている。「うわぁーっ! やったぁ! ぼくこれが欲しかったんだ、サンタさんありがとう!」次男の大きな声が下から聞こえる。兄も負けずと歓声をあげる。すっかり目が覚めてしまったぼくと妻は、何ともいえない幸せな気分にひたることができる。サンタさん、喜んでもらえて本当によかったね(^^;)

 『天使のクリスマス』 ピーター・コリントン 作(ほるぷ出版) 2005/12/25

●今年のクリスマス・イヴは土曜日だったのだが、忙しくて料理の準備ができそうにない(実際、午後4時過ぎまで外来は終わらなかった)ことが分かっていたから、息子に「今年のイヴには、鶏の丸焼きをぜひ作ってね! おとうさん」以前からそう約束させられていた手前、イヴイヴの金曜日に、ダッチオーブンでロースト・チキンに挑戦した。

        

久しぶりのチャレンジで、腕を振るったワケだが、今回は「レモン汁に鶏肉をしっかり漬けて、臭みを取る」ことと「岩塩とクレイジーソルトを、これでもかというくらいたっぷりと、鶏肉の内部と外部にすり込む」ことを心がけた。60分間、キッチンのガスレンジを弱火にして下からのみ加熱。後半の60分は、蓋の上に豆炭を15個のせて、上からも加熱する予定だった。これを屋内のキッチンでやると一酸化炭素中毒になってしまうので、庭に出てアウトドア用のツーバーナーを使おうと思っていたのだが、この日は風がものすごく強くて、屋外で火を炊くのは無理だった。しかたなく、下からだけもう60分加熱して、最後に15分間、240度に加熱したオーブンに鶏肉を入れて表面をパリパリにさせた。

やや肉の水分を飛ばしすぎたきらいがあったが、それでもみんな「おいしい、おいしい!」と言って食べてくれた。
よかったよかった(^^)
『天使のクリスマス』 ピーター・コリントンの話は、またあした。

 サンタクロースの部屋          2005/12/22

●昨日の「伊那毎日新聞」に、写真入りで大きく取り上げられたよ。ぼくのコメントもちゃんと載ってうれしかったな(^^)

■やはり昨日の信濃毎日新聞夕刊「今日の視角」というコラムで、水曜日担当の落合恵子さんは「サンタクロースの部屋」のことを取り上げていた。ちなみに、松岡享子さんの「このエッセイ」は、うちのサイト内の「ここ」の(その3)で読むことができます。

いや、じつは今日、ぼくも「サンタクロースの部屋」のはなしを書こうかと思っていたところだったので、ちょっとビックリしたのだ。

■先日、伊那市立図書館から電話があって、リクエストしてあった『冬の犬』アリステア・マクラウド(新潮社)が入荷したという連絡だった。マクラウドの長編『彼方なる歌に耳を澄ませよ』は、ちょうど半分まで読み進んだところだったのだが、「あの馬」のはなしだとか、鉱山での作業のはなしだとか、短編集『灰色の輝ける贈り物』の登場人物たちとぴったし重なって情感も2倍、感動も2倍になることを経験してしまったので、長編は一休みにして、この『冬の犬』を先に読むことにしたのだ。

冒頭の短編は、わずか10ページ。「すべてのものに季節がある」というタイトルだ。

これはまた、シビれてしまったぞ! いいじゃぁないか。
「クリスマスのおはなし」だ。

サンタクロースを信じられなくなること = 大人になること

その喪失感を、これほど見事に、無駄なく静かに、凛とした表現で書き表すことのできるこの作家は、やはりただ者ののではないぞ!

 伊那のパパ's 絵本ライヴ in 南箕輪     2005/12/19

●雪が心配された日曜日だったが、青空も広がり、会場となった「南箕輪村村民センター2F」には予想を上回るたくさんの親子連れがつめかけてくれた。子供+大人で100人以上にもなっただろうか。特記すべきは、10数名の父親の参加があったことだ。これは今までの最高記録ではないかな。本当にありがとうございました。

        
倉科パパが、廉価なサンタの衣装を見つけてきてくれたよ。倉科パパは「赤鼻のトナカイ」の衣装。ちゃんと鼻が赤く点滅するのだ(^^;)

 
宮脇パパは『ねえねえ』内田麟太郎・長谷川義史(すずき出版)、坂本パパは『ちいさな ろば』
 
倉科パパが『まめうし あいうえお』あきやまただし(PHP)を読んで、会場の子供たちは一気にヒートアップ!
  
『かごからとびだした』の手遊び  伊東パパは『とのさまサンタ』  北原パパは『もけらもけら』
 
『クリスマスの12にち』(福音館)と、『ふうせん』(アリス館)を歌ったよ。
       
最後はみんなで「赤鼻のトナカイ」を鈴やカスタネットを鳴らしながらいっしょに歌いました。楽しかったね。    


「伊那のパパ's 絵本ライヴ」レポートへ行く

 『小児科医が見つけた えほんエホン絵本』いよいよ発売!! 2005/12/16

●一部のみなさまにご心配をおかけしていましたが、この1年半、心血を注ぎ、手塩にかけてきた、大切な「ぼくらの本」『小児科医が見つけた えほんエホン絵本』が、ようやっと日の目を見る日がやって来ました!!  うれしいな。ほんとうに、うれしいな(^^)



 SBCラジオ「こんにちはドクター」の収録          2005/12/13

●今度の日曜日は、午前10時から南箕輪村図書館に隣接する「南箕輪村民センター2階」『おはなしむらスペシャル』伊那のパパ's絵本ライブIN南箕輪を行います。入場無料。クリスマス特別バージョンを企画しておりますので(と言いながら、まだ何も練習していないけど、ねぇ大丈夫?)みなさまぜひ、見に来てください。よろしくお願いしますね(^^)

■同じ日(12月18日)の朝、7:40 〜 7:55 に、TBSラジオで放送される「メイコのいきいきモーニング」という、中村メイコさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組で、われわれ「伊那のパパ's」の活動が紹介される。あのぉ、山梨県伊那市ではなくて、長野県伊那市なんですけど……

10月に駒ヶ根の長野県看護大学で行われた、ぼくらのライブを取材したものが、いよいよ放送されるのだ。どんな感じで編集されているのかな。ちょっと心配だが、長野県にある唯一の AMラジオ局「SBCラジオ」はネットしていないので、当日は聴くことができないのだった(^^;)

▼さて、今日の午後1時半に、その「SBCラジオ」が伊那の当院まで取材にやって来た。やはり、毎週日曜日の朝に放送している「こんにちはドクター」という番組の収録のためだ。来年の1月8日(日)の朝、7:25 〜 7:40 に放送予定の「子どもと絵本」というタイトルで、ぼくがしゃべるのだ。やって来たのは、SBC諏訪局所属のアナウンサー(名刺をくれなかったので、お名前を失念しましたゴメンナサイ)一人。簡単な打ち合わせの後、そのアナウンサー女史の質問に答えるかたちで収録が始まった。

ぼくは緊張して声がうわずるは震えるはで、散々だったな。もう、へろへろ(^^;;  収録が始まってすぐに電話が鳴って、伊那消防署の救急隊からで「昨日、貴院を受診した○○ちゃんが、発熱・嘔吐のあと、けいれんしています。これから救急車でそちらへ向かいますが、よろしいでしょうか?」という内容。ぼくは焦った。SBCラジオの収録は、午後の診察が始まる午後3時前には完了させなければならない。救急車の到着を待って、患者さんを診察し必要があれば伊那中央病院か昭和伊南総合病院へ紹介するための電話や紹介状を書いたりしていると、それだけで午後3時を過ぎてしまいそうだった。消防隊の人の雰囲気では、入院が必要な感じだ。困ったぼくは、正直にこう言った。「いま、SBCラジオの取材を受けているところなんです。申し訳ないけれども対応できないので、昭和伊南病院の先生に診てもらってください」と。

夕方、その患者さんのお宅に電話したら留守電だったのだが、折り返しおかあさんから電話があって、2度目の「熱性けいれん」の診断で、入院にはならずに自宅へ帰ってきたとのことだった。インフルエンザの迅速診断は陰性だったそうだ。ぼくは、自分の都合でかかりつけの患者さんが具合が悪いのに診なかったことを、ものすごく後悔した。昼休みは、一応「休診」あつかいの時間帯ではある。でも、それは正当な言い訳であっただろうか?

 子供はどんどん大きくなってゆくなぁ          2005/12/11

●今日は日曜日、久々に松本へ行った。長男が先シーズンに履いていたスキー靴が、もう詰まくて履けなくなってしまったので、本格的なシーズンを前に「アルペン」にスキー靴を見に行こうというワケだ。ところが、南松本の「コジマ電機」の上にあったはずの「アルペン」が影も形も無くなっていたのだ! あれ? つぶれちゃったの?

今日の松本は、特別また寒かった。昼飯はハンバーグが食べたいというので、「井上」近くの「盛よし」へ。ここはいつ行っても満席。外で待つんじゃ嫌だなと思ったが、ラッキーにもじきに席につけた。「盛よし」は、ごはんもおかずも大盛りだ。だから今までは2〜3人前を家族4人で分けて食べてでちょうどよかった。ところが、次男も小1になって、最近ラーメン屋では1人前しっかり食べるようになった。それに、幼児用の小さなお椀に取り分けると「大きいドンブリ」のまま食べる! と怒るのだ。

そんなこともあって、今日はハンバーグ定食2つ、蟹クリームコロッケ&エビフライ定食2つを思い切って注文した。子供らはハンバーグを美味しそうにばくばく食べる。9歳の長男は、ごはんも残さず全て食べ尽くした。次男もごはん以外は完食。いやぁ見事な食べっぷり。これには驚いた。2人が中学生になったら、いったいどれくらい食べるのだろう? ふとそう考えたら、ちょっと怖くなった。

■8カ月ぶりで、「今月 の この一曲 」を更新しました。よかったら、読んでみて。

 『リンさんの小さな子』 フィリップ・クローデル(みすず書房) 2005/12/09

●今週水曜日の夕方、北原アンドレア先生の英語教室に行く子供たちを高遠町福祉センターに送り届けたあと、高遠町図書館へ向かう。新着図書の棚に目を通すと、気になる本が3冊。『リンさんの小さな子』フィリップ・クローデル、高橋啓・訳(みすず書房)、『生きるなんて』丸山健二(朝日新聞社)、『子どものサインが読めますか 子育て考現学』汐見稔幸(女子パウロ会)。3冊とも、さっそく借りてきたぞ。

『子どものサインが読めますか 子育て考現学』という本が高遠町図書館に入ったという情報は、じつは妻の高校の同級生だった「えんちゃ」さんが、妻にメールで「高遠町図書館で借りてきたこの本に、パパ's 絵本プロジェクトのこと、伊那のパパ's のことが載ってたよ!」と教えてくれていたのだ。

子供らの帰りを待つ間に、実家の母の家で本を取りだしてみる。目次で、p120 に「父親と育児 ---- その新しい動き」というタイトルを見つけ、さっそく読んでみてビックリ! なんと、122〜123ページにぼくが書いた文章が4行も引用されて載っていたからだ。おぉ、ぜんぜん知らんかったぞ(^^;; 『親子ストレス』汐見稔幸(平凡社新書)を読んで以来ずっと尊敬し、その著書の多くをフォローしている汐見先生が、ぼくのサイトを見に来てくれたことがあったのだ! うれしいじゃぁないか(^^)

●さて、昨夜は子供を寝かせつけるうちにいっしょに寝てしまい、午前2時前に目が覚めてリビングに下りてきた。で、取りだしたのが『リンさんの小さな子』フィリップ・クローデル(みすず書房)。なにげに読みだしたら、あれよあれよと読み進んで、午前4時前には読み終わってしまった。いやぁ、やられたなぁ(^^;) ラストで泣いてしまったよ。読み終わった直後は「えぇっ!?」という感じだったのだが、5分ぐらいして、こうジワジワと涙腺がゆるんで来たのだ。今日あらためて最初から読み直してみているのだが、いやぁ、驚いた! そのとおりじゃん!!

この小説に関しては、他の人が読んだ感想や情報は一切読まないほうがいい。特に、アマゾンに載った感想は完全にネタバレだから要注意。前掲した、川上弘美さんの書評に「この小説の良さ」の全てが書かれている。これだけは読んでもいい。フランス人の著者自らが描いた表紙のイラストが、これまたいいのだ。この本の表紙が、もし気になったなら、まぁだまされたと思って最後までこの小説を読んでみて下さい。たかだか 160ページ強の中編だけれど、1800円払うだけの価値はあると思うな(ぼくは図書館から借りてきて読んだけれども(^^;;)。オススメです。

蛇足で付け加えると、この本のポイントは「ディスコミュニケーションの中のコミュニケーション」ということ。ヴェトナム人の老人「リンさん」と、フランス人?「バルクさん」は言葉がまったく通じない。唯一交わす「ことば」は、お互いの国の「こんにちは」という言葉だ。「タオ・ライ」と「ボン・ジュール」。でも、その「ことば」は、この二人の友人の間では本来の意味ではなくて、ぜんぜん別の次元で通じる言葉となるのだった。そのことに、ぼくはとっても感動した。

 高遠のそば屋「壱刻」 再開           2005/12/07

●12月4日(日)は、午後から雪になった。高遠では本格的に積もりそうな雰囲気だった。そんな中をみんなで「壱刻」へ向かう。前の店主が体調不良のため店を閉めてしまっていたのだが、出資者である町の商店街の若旦那たちは、新たな「そば職人」を見つけてきて、2週間前に店を再開したのだ。

兄貴のおごりだったので(^^;;、ちょっと豪華にぼくと妻は天ざる、子供たちは天ぷらそば(あったかい蕎麦)を注文した。確か以前はなかったメニューだ。それにしても、なかなか丁寧できちんとした仕事をする職人さんだぞ。蕎麦も天ぷらも旨かった。何よりも、蕎麦がたっぷりと盛られているのがうれしかったな。個人的には、十割そばよりも「二八そば」のほうが甘みがあって好みかな。十割そばも丁寧に細くきれいに切り揃えられていて、喉ごしがよかった。

接客は奥さん一人でこなしていて、まだ幼い4〜5カ月の赤ちゃん(女の子)を背中におんぶしながらなので大変そうだったが、ゆったりとした、素朴な話し方(下伊那の人か?)が心に和むのだった。春までは集客はきびしいだろうが、頑張って欲しいものだ。また来よう!

■同日の午前中は、高遠町公民館・図書館共催「心を育てる絵本講座」の講師として、高遠町図書館2F視聴覚室で「お父さんにも伝えたい絵本の魅力」と題して、絵本のはなしと読み聞かせをさせてもらった。前半は「パパ's」の紹介ビデオを映したあと、1〜2歳の幼い子供たちは耳がとっても良くて、オノマトペと呼ばれる絵本の中の「擬音語」「擬態語」のくり返しを、すごく喜ぶという話。

元ネタは、この本『絵本から擬音語擬態語ぷちぷちぽーん』後路好章・著(アリス館)。後半は「絵本の絵を読む楽しみ」という、いつものはなし。

当初 iTunes を駆使して「いろんな音源」(ジャズとか落語とか)を聞かせつつ絵本を紹介していこうと考えていたのだが、アンプが使えずプロジェクターの小さなスピーカーでは音が割れてしまってうまくいかなかった。それに、会場には、小学生から1〜2歳の小さな子まで子供がけっこう多かったので、予定を変更して絵本をいっぱい読むことにした。

  『バナナです』『いちごです』川端誠(文化出版局)
  『バルンくん』こもりまこと(福音館書店)
  『もけらもけら』山下洋輔、元永定正(福音館書店)
  『でんしゃはうたう』ちいさなかがくのとも(2004/3月号)三宮麻由子・文、みねおみつ・絵(福音館書店)
  『うんちっち』ステファニー・ブレイク作・絵(PHP)

  『だじゃれしょくぶつえん』中川ひろたか・文、高畠純・絵(絵本館)
  『落語絵本 はつてんじん』川端誠(クレヨンハウス)
  『とん ことり』筒井頼子・作、林明子・絵(福音館書店)
  『クリスマスのほし』ジョセフ・スレイト文、フェリシア・ボンド絵(聖文舎)
 (『やまあらしぼうやのクリスマス』のタイトルで、グランまま社から再出版された)

『だじゃれしょくぶつえん』より後は、プロジェクターを使ってスクリーンに映して読んだのだが、いずれにしても、一度にこんなに読んだのは初めて(^^;;

伊那毎日新聞12月6日(火)では、写真入りでけっこう大きく取り上げてくれた。うれしかったな。

 久しぶりのテルメ                2005/12/06

●秋からずっと忙しかったので(単なる言い訳)、夜テルメへ行って体を鍛えることをすっかり忘れてしまっていた。気が付けば、体重は1年前に戻りつつあるし、ズボンもきつくなってきた。これではイケナイ! と、今日は久しぶりの「テルメ」。ほぼ3カ月ぶりか(^^;;

よる9時半過ぎに行くと、更衣室で林整形外科の林篤先生にお会いした。すでに一汗かいた後のご様子。それにしてもぜんぜんお腹が出ていないねえ。立派だ。3Fのジムで、パット・メセニーの「One Quiet Night」を iPod で聞きながら『彼方なる歌に耳を澄ませよ』を読みつつ、ステア・マスターを45分間踏んで、トレッド・ミルを1.6km 11時まで走ったあと、風呂に行くと「ちむら」の大将と会った。みなさん、ちゃんと真面目に通っているのだねぇ(^^;)

ぼくも、テルメ通いを復活させなければな!

 講演のテクニック                2005/12/03

●A型インフルエンザの患者さんは、その後も4人見つかった。富県地区で小流行が見られているようだ。

■今週の水曜日の午後は、竜東保育所で秋の内科健診。当院からは自転車で3分の距離だ。伊那市内ではかなり大きな保育所で、未満児さん 25人を含めて 200人近くの園児が通っている。午後1時に行くと、待ちかまえていた所長先生も園児たちも、健診よりもぼくの絵本の読み聞かせを楽しみにしていたようで、子供たちは口々に「あっ、絵本のせんせいだ!」と言っていたし、下島先生も「あれ? 先生、今日は大事なものを忘れてきちゃったんですか? 一番大事なもの、え・ほ・ん!」と仰った。いえいえ、ちゃんと持ってきましたよ(^^;)

というわけで、年長さんのクラスで読ませてもらった絵本は、

1)『なにたべたかわかる』長新太(絵本館)
2)『もけらもけら』山下洋輔・文、元永定正・絵(福音館書店)
3)『へんしんマラソン』あきやまただし(金の星社)
4)『でんしゃはうたう』ちいさなかがくのとも(2004/3月号)三宮麻由子・文(福音館書店)
5)『ぶたのたね』佐々木マキ・文、絵


2)と4)は、こんどの日曜日の高遠町図書館での絵本の講演会で読む予定の絵本なので、ちょっと予行演習。なかなかいい手応えだったぞ(^^)

■このガー・レイノルズという人は、もとアップル本社のワールドワイド・ユーザーグループ・ リレーションズのマネージャーで「アメリカや日本のマックユーザーグルー プを対象にプレゼンテーションを行ったり、新しいソフトウェアのデモンストレーショ ンをしたり、基調講演を行ったりして、あちこちを飛び回っていた」のだそうだが、ここに載っている「プレゼンテーション・TIPS」は、今後も講演活動を続ける上で、なかなか参考になるなぁ、と思うのだった。

 当院でも、今シーズン初のインフルエンザ発生   2005/11/29

長野県感染症情報によると、11月14日〜20日の「第46週」で、インフルエンザは佐久地方で集団発生して、51例の報告がある。あとは長野市と松本で1例ずつの報告があるのみだった。お隣の群馬県や山梨県でも flu の集団発生が既に報告されていたから、この冬は発生が早い予感はあった。そうは言っても、12月中旬過ぎだろうと高をくくっていたのだ。平成10年4月開業の当院は、8回目の冬を迎える訳だが、今までで一番早くインフルエンザの発生を確認したのは12月4日(4〜5年前)だ。先シーズンにいたっては、本格的な流行が始まる2月初めまで、ほとんど flu の患者さんはいなかった。

ところが、今シーズンはまだ11月だというのに、29日の今日の午後、発熱で当院を受診した3歳(女児)1歳(男児)の姉弟が、迅速診断の結果 A型のインフルエンザであることが判明した。27日(日)に先に発熱した姉弟の母親が、当番医を受診してインフルエンザと診断されたと、子供たちを連れてきた父親に聞いて「まさかなぁ?」と思いながら子供たちを検査したら、2人ともバッチリ(+)が出たのだった。もうビックリ。

ただ、毎年そうなのだが、シーズン最初の患者さんが発生して直ちに本格的な流行が始まることはない。最低2〜3週間のタイムラグがあるのだ。それに、この地区の集団的視野に立っての抗体保有率の問題もある(伊那地区は、ここ数年 A型もB型も大きな流行がみられた)ので、新型インフルエンザが登場しない限り今シーズンは大きな流行に至らないのではないか、というのが個人的な楽観的予測である。

●来週からは、しばらく中断していた「感染症情報」を復活させますね。スミマセン(^^;)

 『彼方なる歌に耳を澄ませよ』 アリステア・マクラウド   2005/11/26

●『ガラスのエレベーター宇宙に飛び出す』のあとも、断続的にロアルド・ダールの児童書を読んでいる。『とうさんギツネばんざい』『魔法のゆび』『いじわる夫婦が消えちゃった!』まで読み終わったが、『いじわる夫婦が消えちゃった!』は凄まじかったな(^^;; これくらいブラックのほうがぼくは好みなのだが、このラストには、それまでギャハギャハ喜んでいたうちの息子も、さすがに引きまくったぞ(^^;; つぎは『ぼくの作った魔法のくすり』の予定。それから『くまの子ウーフ』神沢利子(ポプラ社)も読了。

「かわうそ亭」さんのブログで教えていただいた、『彼方なる歌に耳を澄ませよ』アリステア・マクラウド(新潮社)を読み始める。『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』長谷川義史(BL出版)という絵本があるが、この本では、主人公の「おじいちゃんのおじいちゃんの、おとうさん」の話から始まる。その「キャラム・ルーア」という名の赤毛の男は、家族7人と犬一匹を引き連れて、住み慣れたスコットランド・ハイランド地方を後に、カナダ東端のケープ・ブレトン島へと移住してきた。1779年のことだ。この小説は、その赤毛一族の子孫の物語。あ、それから犬の子孫もね。

まだ 1/4 ぐらいだが、これはいい。ほんとうにいい。この人(アリステア・マクラウド)は、とにかく文章がいいね。いつも「一人称・一視点」で、ハードボイルド小説のタッチなのだが、無駄のない的確な描写は非常に視覚的で、読みながらその場面がリアルにありありと目に浮かぶ。ぼくは、ローレンス・ブロックの「私立探偵マッド・スカダー」シリーズが大好きで、ローレンス・ブロックはつくづく文章が達者な作家だなぁとよく思うのだが、この人はもっとずっとスゴイぞ。

 『飛ぶ教室 No.3(秋)』 神沢利子の世界   2005/11/23

●光村図書から復刊された季刊誌『飛ぶ教室』の第3号が本屋さんに並んでもうずいぶん経つ。ずっと気にはなっていたのだが、これは立ち読みではなくてやっぱり買わなきゃダメだと気づいて、先日ようやく購入した。

まず最初に読んだのは「対談」神沢利子 × 中沢新一だ。これは面白かった。対談は「私、中沢さんとぜひ一度、どうしてもお話がしたかった。今日は楽しみにして来ましたの(笑)。」という、神沢利子さんの一言で始まる。どうもこの対談は神沢さんのたってのリクエストで実現したみたいなのだ。神沢さんの児童書をちゃんと読んだことのないぼくは、意外な組み合わせだなぁと思いながら読み始めたのだが、ぜんぜん意外じゃなかったんだね。

中沢新一さんはこう言っている「びっくりしました。神沢さんがすごく大きい主題にしていたり、ご自分の想像力の源泉にしている場所というのが、僕などが神話についてとか宗教について考えるための出発点にしようとしているような場所と同じ場所だったということを知ってね。神沢さんの作品が子どものころから身近に転がっていながら、何で僕はちゃんと読まなかったのかということを反省しているんです(笑)。」

さらに話は、以前何度かここでも取り上げた、例の「魔法のことば」へとつながる。いやぁ、ぼくも驚いた。『ちびっこカムのぼうけん』から神沢作品をちゃんと読まなければダメだぞ、そう思ったのだった。

 「飯野和好さん:おっと、痛快絵本の読み語りの旅でぃ! 豊丘宿」   2005/11/20

●昨年の8月に続いての伊那谷訪問となった、絵本作家の飯野和好さんを、われわれ「伊那のパパ's」5人衆が再び「いたや」(伊那市駅前)で迎撃したのは土曜日の夜7時のこと。「いたや」は、ぼくらのホームグラウンドなのよ(^^;) 「いいちこ」の一升瓶もキープしてあるしね。馬刺、おたぐり(馬のモツ煮)、馬ハム、蜂の子と、じつに美味しそうに口に入れる飯野さん。普段着が「きもの」の着流しでホント、粋で鯔背だねぇ。

二次会は、入舟の「万里」へと移動して「ローメン・ツアー」と相成った。ここには得体のしれない酒がいろいろと用意されていて、確か飯野さんは「オットセイの雄の睾丸を漬け込んだ焼酎」を所望され、これまた美味しそうに飲んでいたぞ。ぼくは、久しぶりのローメンが妙に美味しくて、ニンニクをいっぱい追加して、ソースと酢で味を調合して他人の分まで食いまくったものだから、今朝起きてきて、その臭かったことといったら、たいへんだった。口臭はもとより、全身の毛穴からニンニクの臭気が強烈に発生していたのだ。「くっさーい!」「くっさ〜い!」妻も息子たちも鼻をつまんで朝から大変だ。でも、そのまま朝8時からの伊那市一斉「河川清掃」に参加した。同じ組の皆さん、臭くてごめんなさい(^^;)

川掃除からの帰宅後、シャワーを浴びたのだが「ニンニク臭」はとれない。歯を磨いても、とれない。今日が診察日でなくて、ホントよかったな。11時過ぎに自宅を出発して、一路長谷村へ。高遠の「兜庵」で新蕎麦を食べるという企画も捨てがたかったのだが、今日は、クロワッサンで有名な長谷村「南アルプス村」の道路をはさんで対面にある「新海」で、本場「長崎皿うどん」を食べることに決めていたのだ。

     

美和ダム周辺の紅葉はすでに終わり。週末だけお昼も店を開けている(日曜日 11:30〜)「新海」へと入る。入るなり、おじいちゃんがお茶を持ってきて「いつも長谷村の乳児健診ではお世話になってます。えぇ、わたし、退職するまで村役場に勤めていたんですよ」あれあれそうでしたか(^^;) 確か、半年前くらいにオープンした「新海」は旦那さんが長崎県の出身で、平日は仕事勤めで忙しいので、平日の夜と週末だけ店を開いていたとのこと。基本的に、月・火がお休みで、水・木・金・土は夜だけ営業なのだそうだ。

ぼくらは、皿うどん2つ、長崎チャンポン1つ、タコの唐揚げに、海鮮カルパッチョを1つ注文した。みんなとっても美味しかったよ。また来ようね(^^)

      

●その後、伊那里から南へ下って峠道を上り「気」の集まる場所として全国的に有名な分杭峠へ。これより北は高遠領! ずいぶん遠くから来たらしいナンバープレートの車と、狭い道を何台もすれ違った。さらに大鹿村へと下り、小渋ダムの沿岸を通り松川町に出て、豊丘村役場へ。予想外にたっぷり時間がかかってしまったが、午後1時45分には会場に到着した。飯野さんの講演は、5年前に「高遠町図書館」で聞いて、その後「森のおうち」(安曇野市・穂高町)でもう1回聞いて以来だったから、けっこう久しぶりだ。でも、2時間たっぷり、大笑いの連続! いやいや面白かった。

沖縄市の「照りんさん」のお店で購入した「カンカラ三線(さんしん)」の腕もずいぶんと向上して、見事な演奏を披露してくれたよ。

 『ku:nel vol.16 (11/01)』アリステア・マクラウド インタビュー 2005/11/16

●マガジンハウスの雑誌『ku:nel』の最新号に、カナダ人作家:アリステア・マクラウドのインタビューが載っていた。期待したほどの内容はなかったが、ケープ・ブレトン島の風景と、海岸端に積み上げられたロブスター・トラップの籠の写真を見ることができる。取材が夏だったからか、短編集『灰色の輝ける贈り物』を読んでイメージしたケープ・ブレトン島よりも妙に明るいのが何だか残念だった。

----あなたの作品には、灰色という言葉がひんぱんにでてきますねえ。

「白でもなく、黒でもない、物語の多くの状況は灰色だ、ということだ。人間の行動、おかれた環境、それらを黒か白かのどちらかに断定はできない。黒と白の中間にある灰色地帯でわれわれは生きている」
●「船」より
ひょっとしたら、父は肉体的にも精神的にも漁師には向いていないのかもしれないと思った。(中略)そのあと、父に対する愛情がふつふつと湧き起こり、自分本位の夢や好きなことを一生追いつづける人生より、ほんとうはしたくないことをして過ごす人生のほうが、はるかに勇敢だと思った。(p26)
●「夏の終わり」より
それでも、わが家の長女が大学から持ち帰る文学の教科書の序論には、「個人的な経験でも、優れた技術をもって明確に表現されていれば、時代や背景の制約を越えて、普遍的な魅力を伝えられるであろう」と書かれている。私はこの文章を何度も読み返し、自分にとってそれは何を意味するのだろうと考えた。(p220)
■少年の一人称で語られる、わずか20ページの短編「秋に」の鮮烈なイメージがやはり最も印象に残ったが、どの短編も深い余韻を残す逸品ぞろいだ。『冬の犬』も読まなければ。

 子どもネットいな「子育て講演会」なんとか終了    2005/11/13

●この1カ月間ずっと準備してきた、子どもネットいな主催の「子育て講演会」が今日の午後 1:30〜3:30 「いなっせ」5Fの会議室であったのだが、講師として四苦八苦しながらも何とかやり終えることができた。よかったよかった。今回は【こどもの心の発達の道筋】という「まったくの新ネタ」での勝負だったので、ほんと大変だった。終わってほっとするとともに、どどっと疲労感が押し寄せてきた。エネルギーを使い切った感じだ。

そうは言っても、講演会で話をするためには、自分で新たに勉強して理解したことを、さらに分かりやすく整理して、よく噛み砕いて話す必要があるので、ぼくにとってもとてもよい修練の場となるのだ。常に新しいことにチャレンジする機会として、講演会の講師依頼はまたとないチャンスなのであった。ぼくが言いたかったことは、聴きにきて下さったみなさんにちゃんと伝わっただろうか?

●今日のネタ本は、『子どもの精神科』山登敬之・著(筑摩書房)だ。これはホント「いい本」だね! 山登クンは、ぼくの大学の同級生なのです(^^;;

■つぎなる課題の締め切りは11月末日なのだが、とりあえずちょっとゆとりができた。読みたくて読めなかった本がこれで読めるぞ。うれしいな。その本とは、『灰色の輝ける贈り物』アリステア・マクラウド著(新潮社)と、『彼方なる歌に耳を澄ませよ』アリステア・マクラウド著(新潮社)の2冊だ。まだ、短編「船 The Boat(1968)」しか読んでないが、このカナダ在住の超寡作(飯嶋和一を越えてるね)作家は、ちょっとスゴイぞ!(^^)

 『幼児期』岡本夏木(岩波新書)と『対称生人類学』中沢新一(講談社選書メチエ) 2005/11/09

『幼児期』岡本夏木(岩波新書)は5月に読み終わったのだが、今週もう一度読み直してみた。やはりこれは凄い本だ。ヤワでインスタントな本が多い最近の新書の中で、これほど濃厚で内容がみっしり詰まっている新書もめずらしい。読みながら著者の覚悟とでもいうか迫力がビシビシ伝わってくるのだ。ただ、読者にはなかなか手強い難しい本ではあって、ぼくは2度読んでようやく著者の考えが半分ぐらい理解できた感じか。1926年生まれの著者(79歳)が長年研究してきた発達心理学の集大成なのだから、そうそう簡単に解っちゃったのではかえって失礼なのかもしれないな。

それにしても、ネットではこの本の『幼児期』の評判をほとんどまったく見ない。ぜんぜん話題になっていないのだ。不思議だなぁ、なぜなんだろう? と思っていたら、福音館書店の月刊誌『母の友』の今月号(12月号)p80 で「この本」が紹介されていた。浦安市中央図書館司書の伊藤明美さんが連載している「絵本のとびら」だ。「誠実なる他者」として というタイトルで絵本『あくたれラルフ』(童話館)が取り上げられていた。この「誠実なる他者」という言葉は『幼児期』の中で岡本夏木さんが使っている(p201〜p207) ちゃんと注目している人はいるんだね。よかったよかった。

●この本のラスト近くにはこんな記述がある。

 このような現代のおとな社会の一方的な肥大と、それによる幼児世界の空洞化に対抗して、まず幼児期を特徴づける性質がしっかり確立されなくてはなりません。その上に立って子どもたちが成長し、おとな社会の性質を批判的に受け入れ、それを人間的世界の充実に向けて活用してゆく、そのような発達を、親を含めて保育に携わる人びとは、意識的に求め、探ってゆく必要があるでしょう。幼児期の諸性質こそが、人間が生きるための本来的基礎なのであって、その上に立ってこそ、おとな社会の諸性質は、はじめて人間性充実のための力として機能してきます。

 それゆえ私は幼児期を、現代の社会文化に対する一つの「対抗文化」としてとらえる視点を提起したいと思います。(中略)

 つまりおとなは自己の内にかつての幼児期を内在させて生きてゆきます。このことはくり返し強調してきました。自己の中に確固とした対抗文化を抱いて、現在の社会文化に対処しながらその成員として生きてゆくこと、これはいたって困難なことではありますが、現在の社会を人間的に生きるために要請されることとして不可欠なのです。「真の幼児期」は、社会を常に人間的に批判し、自己を人間存在たらしめてゆく視座として、私たちの中で働き続けてくれるはずです。(p224)
驚いたことに、この結論ってそのまま、今年読んで最も刺激的だった「もう1冊の本」『対称生人類学』中沢新一(講談社選書メチエ)の結論といっしょだったんだね。圧倒的な非対称が支配する世界を、人間が本来持っている無意識の流動的な心の思考という「対称性の論理」で切り開いてゆこう! ということ。これは結局は同じことを言っているに違いない。

まったく関連なく読んでいた本が、知らず知らずと密接にリンクしていたことを発見できるのも、ゾクゾクするような読書の喜びであった。まぁ「関連がある」というのも、ぼく自身の思いこみが強いことによるワケだけどね(^^;;

 忙しい日々はつづく              2005/11/06

●11月5日(土)は、午後1時から下伊那郡喬木村で3つある保育園保護者会合同の講演会。以前、中川村図書館で話した時に聞きにきてくれた、喬木村中央保育園の下岡園長先生が「ぜひに」と呼んで下さったのだ。ありがたいことです。この日は申し訳ないけれど臨時休診にして、翌日「境区公民館」で行われる「文化祭」の会場設定作業を午前11時半まで手伝い、そのあと中央道経由で喬木村へ。

喬木村は、児童文学作家、椋鳩十先生の生地だ。この日は保育園の父親参観日で、100人近くの聴衆のうち1/3強がおとうさんだった。ありがたいことです。前半は「メディア漬け育児の危険性」のはなし、後半は「おとうさんにも伝えたい絵本のたのしみ」という感じで、たっぷり2時間話をさせてもらった。会場のおとうさん、絵本に興味をもってくれたかな? だといいな。

■11月6日(日)は、あさ6時前に起き出して伊那市山寺区常円寺の新しい住職の「晋山式」に稚児行列の一員として参加する息子たちを見送る。土曜日とうって変わって寒い一日だった。行列は、坂下神社から出発し郵便局前を曲がり、通り町から小沢川沿いに上ってもう一度橋を渡って常円寺へと向かった。昔にタイムスリップしたかのような不思議な風情の味わいだったが、それにしても「稚児行列」 の両脇をビデオ・カメラを抱えた父母・祖父母たちが取り囲んでいて、稚児行列なんだか「父母行列」なんだか分からなかったな。

その後は、境区公民館の「文化祭」。午後からは冷たい雨になってしまったが、とにかく無事に終了。これで公民館4大行事「運動会」「夏祭り」「敬老会」「文化祭」すべて終わった。いやぁよかったよかった。ほんとうに大変だったが、地域の活動を通じて新たな知り合いも増えたし、充実した1年だったと思うぞ。

 絵本作家あきやまただし さん「絵本ライブ」   2005/11/03

●11月2日(水)の午後は、美篶中央保育所で秋の内科健診。終了後は年長さんのクラスで絵本を読ませてもらった。

 『ぞうのボタン』うえののりこ(冨山房)
 『へんしんトンネル』あきやまただし(金の星社)
 『へんしんマラソン』あきやまただし(金の星社)
 『みみずのオッサン』長新太(童心社)
 『さつまのおいも』中川ひろたか・村上康成(童心社)

●11月3日(木)の午後は、伊那市立図書館であきやまただしさんの「絵本ライブ」。ウワサには聞いていたが、作者自ら歌って踊って変身しての大熱演。そのものすごいエンターテナーぶりにビックリ。いやいや、楽しかったデス。原寸大の「まめうしくん」フィギュア(自作)や「トイレさま」など小道具を次々と繰り出して、絵本を読む合間にオリジナル曲「まめうしくんの歌」「たまごにいちゃんのうた」「うみきりんのうた」などをギターを弾きながら唄ってくれたよ。ギターも上手いね。

■『まめうしのおとうさん』や『へんしんトンネル』は、ふだんよく子供たちに読んでいる絵本なのだが、なるほど、こう読むのかぁ! 



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