しろくま
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北原こどもクリニック  



しろくま 不定期日記


2002年:<10/11月>  <12/1月>
2003年:<2/3月>  <4/5月> <6/7月> <8/9/10月><11/12月>
2004年:<1/2/3+4月><4 / 5/6月>< 7/ 8/ 9月> < 10/ 11月>
2005年:< 12月/ 1月>< 2月/ 3月><4月><5月/ 6月><7月><8月><9月><10月><11月/12月>
2006年:<1月><2月>

●「不定期日記」●

 伊那のパパ's 絵本ライヴ vol.19 in 北杜市(パート3)        2006/03/30

●「ながさか図書館」の輿水さんが、当日の絵本ライヴに参加してくださった方々の感想をまとめて送ってくれた。こういう「生の声」はなかなか聞けないから、ありがたいねぇ。全部ご紹介しましょう!

【 こどもたちからの感想】

@おとうさんが本を読むのをはじめて見ました。楽しかったです。
A楽しいことを、いろいろしてくれてたのしかったです。
Bとてもたのしかった。

C大きな声で読んでくれてすごく楽しかった。いつも女の人に読んでもらってたので、男の人だと盛り上がる。
Dふうせんのおはなしがたのしかったです。またいろいろなものおしえてね。


【大人の方達からの感想】

@ 男の人の読み聞かせは初めてだったので、新鮮でした。ギターも弾いてくれたりととっても楽しかったです。また、機会があれば来て頂きたいです。

A 男性ならではの選本
男性ならではのしっかりした本の持ち方
男性ならではのゆったりした包容力
に感じ入り、楽しめました。プログラムの組み方も大変面白く良い一時でした。今後の益々のつみ重ねをお祈りいたします。企画・実行ごくろうさまでした。

B 音楽が一緒だと、ぐんと世界が広がって、楽しかったです。お父さんが読んでくれる、その事だけで何か心がホッとします。私も毎日絵本を読んでいますが、お父さんにもぜひ週1回でも読んで欲しいと思います。たまに水を向けるのですが、読むの苦手〜と言われ、ちょっと悩んでいます、何かいい方法ないかなー。

C 親として、今日のようなパフォーマンスは出来ないけど、ゲームやおもちゃのかわりに、親子のコミュニケーションの道具として楽しいですね。最近は大人にもいい絵本もたくさんあるし。

D 音楽にのって歌を読んでくれたことで知っていた本も別の言葉に聞こえました。「あいうえお」は勉強になりました。大人もたいせつですね。ふうせんのやりとりであきていた子どももまた引きつけられていました。またいらしてください。

E 子ども二人で来ました。夜寝る前などよく読み聞かせはするのですが、いつもとちがった感じの本を紹介されていて、参考になりました。歌有り手遊びありで、子どもと一緒に楽しめました。ありがとうございました。

F 楽しかったです。自由に読めばいいのだなということが解りました。

G 小学校の図書館ボランティアを昨年から始めました。小さい頃に私自身は読んでもらって育ったわけではなかったので、今は子どもたちに読んであげたい本を探している所です。今日のお話しは楽しくて、歌は知っていても絵本を見たのははじめてでした。また、パパたちに読んでもっらって、ピッタリというお話しで、お母さんから聞く良さ、お父さんから聞く良さ、いっぱいあると思いました。

H お父さんが絵本を読むと迫力があって、楽しいなーと思います。笑いあり歌ありとても楽しかったです。

I 子どもがとても喜んでみさせていただきました。また、次回も!!と思います。ありがとうございまいした。

J 大きな声を久しぶりに出して楽しかった。

K 初めて、父親参加の本企画を知りました。とても楽しかったです。積極的に読み聞かせをしたいと思いました。次回企画も楽しみにしています。

L 手遊びもギターを使ってくれたり、風船も本当にふくらませてくれたり、子供も飽きずに楽しんでいました。今まで女性(特に母親が)読んであげるのが多かったのですが、こうして男性のパパが読んであげるのは楽しく感じます。子供達はパパも絵本も大好きになると思います。

M お父さんの選ぶ絵本はどんなものか興味がありました。やっぱりおもしろいものが多いですね。子供と似ています。「くものすおやぶんとりものちょう」は毎晩のように子供に頼まれて読みましたし、「まめうしくん」シリーズは、真ん中の子が大好きです。うんち・おしっこ・おならは大好き。あと、絵本に音楽がつくのが良いですね。時々、絵本の中に、歌のように読むところがあったときは、どう歌おうかいつも困ります。音楽も楽しめる人が読むのはいいですね。次に、今日読んでもらった本をまた図書館で借りたいと思います。最後にお父さんの話を聞いて、私も子供の読み聞かせから絵本を好きになりパパの絵本よみも大切だなということをうなずきながら聞きました。山梨でもパパ's絵本プロジェクトが出来たらいいなと思います。ありがとうございました。平日でもOKなら幼稚園にも来て欲しいです。

N 音入りの読み聞かせは、子供達をひきつけてとてもよかった。絵本の選び方も様々で、物によっては恐ろしがったり、ぐ〜っと吸い寄せられたり、子供の表情・反応がおもしろかった。

O お父さんならではの読み聞かせで、楽しませて頂きました。本の選び方がとてもよかったです。ありがとうございました。(4名)

P 我が家のパパにも是非、絵本を読んでもらいたいと思います。



【アンケート集計】

子供 5枚
@ せいべつ おとこ おんな4名 無記入1名
A ねんれい 6歳3名 8歳3名
B じゅうしょ ながさか1名 おおいずみ1名
       こぶちさわ2名 あけの1名
C どこで、このよみきかせライブをしりましたか?
  図書館2名 学校1名 保育所1名     おうちの人1名 

一般 22枚 @ 性別 男性4名 女性18名
A 年齢 20代1名 30代13名 40代4名
    50代2名 60代2名
B 住所 長坂6名 明野1名 須玉1名
     高根3名 大泉4名 小淵沢6名
C どこで、この読み聞かせライブを知りましたか? 
チラシ8名 広報2名 図書館9名 学校2名
保育所2名 新聞1名 知人1名 友人1名 


 伊那のパパ's 絵本ライヴ vol.19 in 北杜市(パート2)        2006/03/28

●今日も日曜日の続きのはなし。

「ながさか図書館」の輿水さんには、ほんとうにお世話になりました。お土産まで頂いちゃって申し訳ありませんでした。ありがとうございました。

今回は、飯山市立図書館以来の遠征だったので、坂本さん以外はみな家族同伴で山梨県までやって来た。子供らは春休み中で、ヒマを持てあましていたから、家族サービスができて父親としては大いに助かったのだが、家族同伴だと一つ辛いことがある。絵本ライヴの終了後、お父さんのライヴでの立ち振る舞いに関して、妻子から細かいチェックが入るのだ。やれ、絵本の持ち方が悪いだの、姿勢が悪いだの、声が通らないだの、流れが途切れただの。わが家の評論家連は歯に衣を着せない厳しさで父親を責め立てるのだ。

今回の場合のチェックポイントは、ぼくの「よいしょっと」という意味のない掛け声だった。自分ではぜんぜん意識していないのだが、講演会でもぼくはやたらと不必要な場面で「よいしょっと」と言うんだそうで、それがものすごく気になるのだそうだ。そのことを、今回も妻子ともども開口一番、声をそろえて「よいしょ はダメ!」そう言った。そうかぁ? そんなに気になるかなぁ(^^;;;

でも、心優しいわが家の次男は、ちょっと言い過ぎたかなぁとでも思ったのか「おとうさん、『もけらもけら』よかったよ! ぐがんぐがん だぱたとん ぐがんだぱたとん!」そう言ってくれた。息子よ! そんなに気を使わなくてもいいんだよ(^^;; それに、ふだんお父さん同士だと遠慮して、お互いに批評し合うことはないから、家族に客観的で貴重な意見を言ってもらうことは、ぼく自身のスキルアップのために大変ありがたいことなのだ。

■さて、お昼過ぎの長坂公民館を後に、大泉の「中村農場直売所」へと向かう。知らないうちに食堂が増築されていて、待つことなく皆席につけた。ホンモノの親子丼と、ホンモノの焼き鳥を味わってもらえてよかったな。おなかも一杯になって、すぐ近くの「絵本の樹美術館」に寄る。ここでは「長新太原画展」を開催中。やはり原画は素晴らしい! 色が違うのだ。

大泉から再び長坂日野春まで戻って「ながさか オオムラサキ・センター」へ。ツリーハウスにも登りました。疲れたけれど、じつに充実した1日だったね。

 伊那のパパ's 絵本ライヴ vol.19 in 北杜市(山梨県)         2006/03/26

●今回は、われわれ初の県外進出。ふだん伊那谷の東側に仰ぎ見る南アルプス甲斐駒ヶ岳の「山の向こう側」に位置する、山梨県北杜市長坂町の「ながさか図書館」からお呼びがかかったのだ。ありがたいことです。

  
■結婚式に出席の伊東パパをのぞく4人は、午前10時にJR長坂駅前の「長坂地区公民館」に現地集合した。伊那インターからは中央道で1時間と少しで到着だ。『はじめまして』で自己紹介のあと、今日の1番手はこのぼく。『マジック絵本』佐藤まもる(岩崎書店)に再挑戦。今回はラジカセを持っていって、ポールモーリアの「オリーブの首飾り」をBGMで流した(前回の辰野図書館では、チャ、ラッチャチャチャ、チャ〜ン と自分で歌いながらやったのだ) でも、これだと単なる手品だなぁ。で、もう1冊『もけらもけら』山下洋輔・ぶん、元永定正・え(福音館書店)を続けて読ませてもらった。読む前に、ラジカセで「山下洋輔トリオ/コンサート・ニュージャズ」のCDから「ぐがん」という曲を紹介したのだが、これは必要なかったな。すみません。

          
■坂本パパは『ねぎぼうずのあさたろう』飯野和好(福音館書店)。「はるぅ〜がすみぃ〜ぃィっ」と、浪曲を唸っての読み語りに、向かって会場右側に陣取った年輩の聴衆の皆さんからの大きな笑い声が目立った。おとなの人が絵本を心から楽しそうに聴いている姿を目にするのはじつにいいもんだ。 つづいて、久々に『いっぽんばしにほんばし』中川ひろたか・作、相野谷由起・絵(アリス館)。

     
■宮脇パパは『うんちっち』ステファニー・ブレイク作・絵(PHP)。左手前列に座っていた男の子の反応がよくって、ひとりでケタケタ笑ってくれるので、その笑い声に会場のみんながまた大笑い。じつにいい雰囲気でした。

            
■倉科パパは『くものすおやぶんとりものちょう』秋山あゆ子(こどものとも・福音館)。春にぴったしの時代劇絵本だ。これは面白いねぇ。ハードカーバーになったので、ぼくも買おう。つづいて、『ふうせん』湯浅とんぼ・作、森川百合香・絵(アリス館)、『世界中のこどもたちが』を歌って終了した。


●なんと、アンコールがかかったので、倉科パパが『まめうし あいうえお』あきやまただし(PHP)を読んだ。そうさ、ぼくもこれをもう一度見たかったんだ(^^)

           ■■「伊那のパパ's 絵本ライヴ」レポートへ行く ■■

 ベルシャインに売っている「おいしいもの」シリーズ(その2)      2006/03/25

●「くめ納豆」の最高級品、「丹精」だ。男前豆腐も値段が高いが、この納豆もスーパーで普通に売っているパック納豆の3倍の値段。でも、一度食べたら癖になる美味しさ。なんて言って表現したらいいか、「力強い味」なのだ。一度ご賞味あれ。

 安富祖貴子 『魂 Kon』(M&I JAZZ)MYCJ-30374    2006/03/23

●先週の土曜の夜は、久々に家族で高遠へ行って、最近すっかりご無沙汰だった母といっしょに夕飯を食べることにした。ちょっと時間が遅くなってしまったので、千歳町の「マリーバード」へ行こうと思ったのだが、卒業式の謝恩会二次会のためか、この日は貸し切りでダメ。しかたなく、長谷村まで車を飛ばして「新海」へ。ラッキーにも店は開いていた。例によって、タコの唐揚げに海鮮カルパッチョを注文して、皿うどん4つと、鯛のづけ丼ひとつ。前回来た時には、家族4人で皿うどん2つとケチって食べ足りなかったので、今回は子供も1人前づつたのんだのだが、前回よりもボリュームがあって、子供たちは食べきれなかった。きっと増量してくれたのだね。ありがとうございました(^^;;

火曜日の春分の日は、用事があって朝から松本へ。だから、WBC決勝戦はライヴでは見ることができなかった。10周年を迎えた松本パルコに行くと、凄い人。妻が買い物している間に、子供らを連れて5Fの「WAVE」へ行って、CDを物色する。欲しかったのは『ネーネーズ ゴールデン・ベスト』2枚組。でも残念ながらなかった。しかたなく JAZZ コーナーへ行くと、スピーカーからよく知っている曲が流れてきた。シャーデーの「スムース・オペレーター」だ。アーシーでソウルフルな、ぐっと来る女性ボーカル。バックのミュージシャンも手練れの実力派揃いと見た。

これはいったい誰だ? と「ただ今演奏中」のCD見入ると、安富祖貴子『魂 Kon』(M&I JAZZ / MYCJ-30374)。この3月15日に発売されたばかりのCD。ぜんぜん知らない人だ。沖縄の人みたい。この日は子供たちの手前、CD購入をガマンしたのだが、伊那へ帰ってからいてもたってもいられなくなり、子供たちが寝静まったあとにTSUTYA まで行って、ないしょでこのCDを購入した。

ぼくの大好きな曲がそろっている。ビリー・ホリデイ最晩年の傑作「レディ・イン・サテン」のA面1曲目に収録された名唱、I'm A Fool To Want Youに、ニーナ・シモンの絶唱、Everything Must Change。ビートルズの、Here Comes The Sun、それから、ボブ・ディランの、Just Like A Woman、この2曲は、ニーナ・シモンがカバーしている。R&Bを長年歌ってきた安富祖貴子のボーカルはフィーリング抜群なのだが、いかんせん、綾戸智絵と比べると、ジャズボーカルとしては経験不足、歌い込み不足が露呈してしまう。ニーナ・シモンのカバー曲は「もろ、フレージングまで、そんまんま」で、自分の個性を表現するまでには至っていない。でも、その初々しさ、荒削りの原石の魅力があふれたCDには違いなく、ぼくはすっかり気に入ってしまったぞ! 個人的ベスト・トラックは、やっぱり最もジャズっぽい、Smooth Operatorだな。彼女はオススメです(^^)

 いなっせ7F「ちびっこ広場」での「おはなし会」も、まる2年だなぁ   2006/03/19

●3月17日(金)は、月に一度(第3金曜日)の、いなっせ7F「ちびっこ広場」での「おはなし会」。この日は、10組くらいの親子が聴きにきてくれた。 これくらいの人数が、お互いに一番リラックスできていいような気がする。今回は「保育園入園にあたって」と題して、30分ほど話をさせてもらった。

おしまいに恒例の絵本紹介。『にこにこかぼちゃ』安野光雅(童話屋)、『くっついた』三浦太郎(こぐま社)、『りんご りんご りんご りんご りんご りんご』安西水丸(主婦の友社)の3冊。『くっついた』がいいねえ(^^) 会の終了後、この「おはなし会」もまる2年になるということで、「ちびっこ広場」のスタッフのみなさんから、お花(アレンジメントされた)と記念品を頂戴した。ボランティアということで、ぼくは参加させてもらっているのに、報酬をいただいてはいけません。でも、そのお気持ちはありがたく頂戴いたします。こちらこそ、ほんとうにありがとうございました。

■この2年間の <まとめ> ■

1)「メディアづけ育児の危険性」 (2004/03/12)
2)「こどもの薬に関する疑問」  (2004/04/02)
3)「かぜをひきやすい子」    (2004/05/07)
4)「夏かぜについて」      (2004/06/04)
5)「こどもの事故」       (2004/07/02)
6)「夏に多い肌のトラブル」   (2004/08/06)
7)「アトピーについて(その1)」(2004/09/03)
8)「アトピーについて(その2)」(2004/10/01)
9)「おなかのかぜ」       (2004/11/05)
10) 「インフルエンザについて」  (2004/12/03)
11) 「病気の時のホームケア」   (2005/01/14)
12) 「予防接種について」     (2005/02/04)
13) 「入園にあたって」      (2005/03/25)
14) 「絵本の『絵』を読むたのしみ」(2005/05/20)
15) 「夜更かしの子供が増えています」(2005/06/17)
16) 「こどもの食育を考える」   (2005/07/15)
17) 「おすすめの おもちゃ」   (2005/08/19)
18) 「フリートーク」       (2005/09/16)
19) 「小児ぜんそく について」  (2005/10/21)
★) 「小児科医から見た近頃の子育て事情」(2005/11/13)
20) 「質問にお答えします」    (2005/12/16)
21) 「子供のしつけについて考える」(2006/01/20)
22) 「インフルエンザのはなし」  (2006/02/17)
23) 「保育園入園にあたって」   (2006/03/17)


■月に1度配達されるフリーペーパー『月刊かみいな』に連載されている「健康カレンダー」に、ぼくが書いた分の原稿を今回まとめました。こちらの『月刊かみいな』健康カレンダー をごらんくださいね。

 『脱出記』スラヴォミール・ラウイッツ、海津正彦・訳 (その2)   2006/03/18

●14年ほど前だったか、飯山日赤の小児科医だったころ「十日町〜飯山 60km 歩けあるけアルケ大会」に1回だけ参加したことがあった。7月末の土曜日の夜9時に、新潟県の十日町駅前をスタートし、信濃川〜千曲川に沿って、十日町→津南町→栄村→飯山へと、国道117号線を延々と歩き続けるのだ。夜通し歩き続けて、明け方ようやく飯山市の東端「西大滝ダム」に着いた。ここで全行程の半分強。さすがに疲れて30分ほど大休止したのだが、そしたら、足が固まってしまい立てなくなってしまったのだ。ここでリアイアする人がけっこういたな。休んじゃうと、もう歩くのがイヤになっちゃうんだね。

ぼくもイヤになっちゃってたんだけど、この時いっしょに歩いてくれた病院検査室の○○さんが励ましてくれて、何とかまた立ち上がり再び歩き始めたのだった。この後半がきつかったなあ。炎天下、歩いても歩いても何だかちっとも進まない。ナイト・ウォークと違って、昼間は変に見通しがきくからそう感じるのだ。おしまいのほうは、足だけが自動的に前に出ていただけだったような気がする。日曜日の昼過ぎ、ゴールの飯山一中グラウンドに到着した。もう、死にそうだった。それから1週間、足が痛くて痛くて、病院の階段も上れず這うようにして2階に移動していたように思う。

『脱出記』の凄いところは、最果てのシベリアから、ただひたすら南下して、外モンゴル→ゴビ砂漠→チベット→ヒマラヤ→インドへと、約6500kmもの距離を1年かけて延々と歩き続けた男たちがいたということだ。逃避行の途中、ゴビ砂漠のオアシスや、チベットのラサ近郊で、その場所に留まって援助を待とうという意見も出たが、停滞は、そこで全てがお終いになってしまうことが解っていた著者は、その誘惑を断ち切り、南へ南へと毎日ひたすら30km近く移動を続ける。それは無謀な試みではあったのだが、この強い意志がなければ、この奇跡の脱出行は決して成功しなかっただろう。

■読んでいて一番苦しかったところは、ゴビ砂漠縦断の場面だ。メンバーの一人が、極度の脱水症に加え、ビタミンB1不足からくる「脚気」により(これはぼくの推測だが)右心不全を来たし、下腿がぶよぶよにむくみ(浮腫)だす。それは「死のサイン」だった。ここは辛かったな。泣けたよ。

一行に次から次へと襲いかかる苦難を読んでいて、やっぱり思い出すのは、サー・シャクルトンの『エンデュアランス号漂流』(新潮文庫)だ。両者に共通することは、どんな状況下においても、決してユーモアのセンスを忘れないこと。それから、リーダーやまとめ役のもとでメンバーは仲違いすることなく、意志疎通がきちんととれて、みなで一致団結して目標に向かって突き進むこと。そうして、決して「希望」をすてないこと。

個人的読後感では、『エンデュアランス号漂流』のほうが「全員生還」ということも含めて、やっぱり上かなあ。おもしろいことに、原著は『脱出記』が1956年、『エンデュアランス号漂流』は1959年と同じ頃書かれている。エンデュアランスでは、せっかく全員生還したのに、その後の第一次世界大戦でメンバーの半数近くが戦死してしまっていることが、なんだかとっても悲しい。

 『脱出記』シベリアからインドまで歩いた男たち(ソニー・マガジンズ) 2006/03/16

●それにしても凄まじい話だ。『本の雑誌 2005/11月号』で北上次郎氏が絶賛していて、椎名誠さんも昨年度のベスト1に挙げていた本。ネット上で読める北上次郎氏の書評こちら。朝日新聞に載った書評は、こちら

朝日新聞の書評では、翻訳に苦言が呈されているが、ぼくはぜんぜんそうは思わない。登山家でもある海津正彦さんが翻訳した本『北壁の死闘』ボブ・ラングレー(創元推理文庫)、『空へ』ジョン・クラカワー(文藝春秋)の2冊とも読んでいるが、前者はアイガー北壁を舞台にした山岳冒険小説の傑作、後者は大量遭難を招いたエベレスト観光登山のノンフィクションで、さすが専門家ならではの翻訳は圧倒的な臨場感でもって迫ってきて、『空へ』は読みながら高度8000mの薄い大気の中で酸欠状態に陥ってしまったかのようなリアルな息苦しさを味わったものだ。

その力量は本書においても十分に生かされていたと思う。読み始めていきなし、ソヴィエト・カルコフ監獄で著者が受ける尋問と拷問が凄まじい。今まで読んだ中では『マラソンマン』の「歯医者の拷問」が最も痛そうだったが、これは実話だけにもっと恐ろしいぞ。

人間は、粗末な食事と肉体への攻撃で弱っていきながら、どこまで耐えられるものなのだろう? 私の体験によれば、忍耐の限界点は、拷問に痛めつけられた肉体が、苦痛のあまり救済を求めて絶叫する地点より、まだまだ先にある。私自身、意識があるうちは絶対に、屈服という最も奥まった一画に他人を踏み込ませなかった。私はまだまだ若かったから、生きようという意志をみずから失わないかぎり、いざとなれば意志のばか力を湧き出させることができた。(p23)
これは、常に「自由」を求めて前へ前へ前進してゆく著者が持ち続けた「不撓不屈の精神」の表明だ。人間て、ほんと、すごいな。

この後、形ばかりの裁判で25年の強制労働とシベリア強制収容所送りが決定され、まるでアウシュビッツへ輸送されるユダヤ人たちのように、家畜車両に詰め込まれて延々と1カ月かけてシベリア鉄道を移動し、バイカル湖畔のイルクーツクで下車。そこから北東へさらに 1500km、鎖と手錠につながれたまま、徒歩で「死の行進」が続く。極寒の12月、北極圏に近い東シベリアの最果てに、目指す「第303収容所」はあった。ここまでが前半の1/4。圧倒的リアリティとディテールで読ませる、この傑作ノンフィクションでは、まだまだ序の口にすぎない。(つづく)

 謎の「男前豆腐店」                        2006/03/14

「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」という、まるで五木寛之の短編小説「海を見ていたジョニー」みたいなネーミングの「不思議な豆腐」が存在することを、ぼくは「くまぶろ」で初めて知った。湯豆腐も好きだが、冷や奴にも目がないから「ををっ!!」っと注目した。でも、まさか伊那のスーパーには置いてないだろうと、いつしか忘れ去ってしまっていたのだ。

ところが、一昨日。妻がすぐ近くの「ベルシャイン・ニシザワ」で摩訶不思議な容器に入った豆腐を買ってきた。「生ビールとお前がいればそれでいい! 喧嘩上等やっこ野郎 北海道大豆の豆乳仕込み 男前豆腐店」と、手書きの青い字でカバーに印刷されていた。妻の弁によると、なんでも宮脇さんから「男前豆腐店」の噂は以前に聞いていて、ずっと探していたのだが見つからず、今日初めて目にして即買って帰ったのだ、とのこと。万能ネギと鰹節をたっぷり振りかけて食すと、何ともクリーミーでとっても甘い。なかなか旨いじゃないか! これは癖になる味だぞ!

昨日は、ついにあの「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」が我が家の食卓に上った。これはさらにクリーミーだったな。それにしても、このけったいな格好をした容器は何なんだろうか? サーフボードか? カレー用の大きめのスプーンで軟らかめの豆腐をすくうのには、便利な形かもしれないなぁ(^^;;


■ところで、本日「うちのサイト」のトップページのカウンターが「50,000」を越えた。苦節3年5カ月、長い道のりだった。目指すは「かたおか小児科クリニック」の、25万アクセスだ! いったい、何年後になることやら(^^;;

ちなみに、記念すべき「50000番」を踏んだ方。もし、その証拠をお示しいただければ、記念品として『小児科医が見つけた えほん エホン 絵本 』を1冊、お送りいたします。ぜひ、ご一報ください(^^)

 『夏の洞窟』 荒川じんぺい・著(くもん出版) 【その2】<ネタバレあり>   2006/03/12

●八ヶ岳山麓に広がる、長野県H村に住む仲好し3人組の小学6年生(男の子2人、女の子1人)が主人公だ。3人は、夏休みのある日、村の長老「柾ジイ」から聞いた八ヶ岳の阿弥陀岳中腹にあるという 秘密の洞窟 を目指して、親にも内緒で1泊2日のキャンプに出発する。綿密な計画を立ててでの実行だった。はたして、人知れぬ洞窟を発見した3人だが、過酷な サバイバル な日々がこれから始まろうとは思いもよらなかったに違いない。

この秘密の洞窟が、じつは遙か過去への 「時の門」 だったのだ。その 夜、彼ら3人は縄文時代へとタイムスリップしてしまう。八ヶ岳山麓と言えば、縄文文化のメッカだ。

■異世界への 入り口 (ゲート)は、いつでも僕らが生活する日常の「すぐそこ」にある。ルーシィが見つけた 衣装ダンス がそうだった。でもそれは、ドラえもんの「どこでもドア」とは違って、いつでも開かれているワケではないのだ。必然性がある時にしか、この ゲート は開かない。そこが重要だ。

それから大切なことは、 リアリティ だと思う。「ファンタジー」というジャンルが苦手だったぼくは、何故だったんだろうと、いま考える。SFやミステリー小説は大好きなのに。それは、ファンタジーが「うそっぱちの世界」に思えたということだと思う。でも、 「ナルニア」 を読んでいて解ったのだが、そうじゃないんだな。ナルニア国の世界は、主人公が見て、触って、嗅いで、聴くように、読者もまた見て触って嗅いで聴くことができる 「リアルな世界」 だったのだ。

読者が、いかに物語世界をリアルに感じることができるかは、本の挿画を担当するイラストレーターの力量によるところも大きい。ディズニーが映画化した 『ライオンと魔女』 で、最も特筆すべきことは、原作でポーリン・ダイアナ・ベインズが描いた 「タムナスさん」 を、実写でそっくり再現できたことだと思う(映画は未見だが)。 『夏の洞窟』 でも、塚田やすし氏の挿画が効果的に生かされている。読者のイマジネーションを刺激する絵が、いっぱい登場するのだ。

リアルである、ということは、作者にウソがないということだ。つまりは、作者が誠実だということだと思う。 『夏の洞窟』 に登場する3人の小学生は、さまざまなサバイバルのための スキル を既に身につけていて感心するが、さらにみんなで工夫して、自分で考えて、いろいろと編み出してゆく。そこにぼくは 「リアル」 を感じるのだ。『十五少年漂流記』とか、すぐれた冒険小説は、サバイバルのためのディテイルにリアリティが欠かせない。

■リアリティに訴えるには、人間の根元的な欲望のひとつ、読者の 「食欲」 を刺激することが最も効果的だ。「ナルニア物語」を読んでいて刺激されるのは、ぼくの食欲だ。エドマンドが「白い魔女」にたぶらかされる プリン (原作では、ターキッシュ・ディライト)って、そんなにも美味しいのかな? 食べてみたいな、  読みながらそう思ってしまう。ほかにも、ナルニアの世界では 「食べること」 が重要視されていて、面白いなあと思う。『カスピアン王子のつのぶえ』では、リンゴの夕食に始まって、赤小人族のトランプキンと共に4人の兄妹がアスラン塚目指して深い森の中をさまよう時、カスピアン王子と「朝ごはん」を食べることを何よりも楽しみにして歩き続けて行くのが可笑しかった。

『夏の洞窟』 でも、食べることへの「こだわり」は尋常ではない。タマゴ茸入りのラーメンや雑炊を、たぶん荒川さんは実際に作って食べているに違いない。だからこその リアリティ なのだ。イワナの刺身も、縄文の食べ物も、なんだかじつに旨そうじゃないか!

この小説を読みながら、リアリティを感じた点がもう一つある。縄文時代の世界の描写がじつにしっかりと書き込まれていることだ。縄文人は、確かに「アイヌ」みたいな言語体系を持っていたに違いないし、彼らのコミュニティにとっての死活問題は、如何に 「新しい血」 を導入するとこができるかにかかっていたに違いない。だから、男たちが「塩の道」「血の道」を辿って、遙か遠くの地まで交易に出向いていった必然性が、この小説を読みながらよく理解できた。

本当は、主人公たちの縄文の世界での日々をもっと読みたいと思ったのだが、枚数制限も、表現上の規制も多い児童文学だからね、それは贅沢な要望というものかな。

 『夏の洞窟』 荒川じんぺい・著(くもん出版)         2006/03/11

●ナルニア国ものがたり2 『カスピアン王子のつのぶえ』 (岩波書店)を読み終えた。これは面白かったな。就寝前のベッドで、読み手のぼくも、聞き手の息子も終盤は夢中になってしまい、知らず知らずのうちに10時近くになって「早く寝ないとダメじゃないの!」なんて叱られることが、幾晩もあった。「ナルニア国ものがたり」には、うまく説明のできない不思議な魅力があるのだよ。引き続き、今晩からは 『朝びらき丸 東の海へ』 に突入の予定。

『夏の洞窟』 作・荒川じんぺい/画・塚本やすし(くもん出版)を、1月末に グリーンファーム の2Fにある 「コマ書店」 で見つけて購入し、2月に行った「荒川じんぺいさんの木工教室」までに読了する予定だったのだがかなわず、荒川さんに失礼なことをしてしまった。

2月末に読了していたのだが、映画のこととか取り上げていたから、すっかり本の感想を書くのが遅くなってしまったのだ。これまたなかなかに面白い、よくできた本だったな。いきなし、C・S・ルイスの『ナルニア国ものがたり』と比較して 『夏の洞窟』 の話を始めたら、荒川さんに申し訳ないのだけれど、両者にさまざまな共通点を発見することができて、とても興味深かったのだ。

ナルニアの訳者である 瀬田貞二 さんは、その著書 『幼い子の文学』 (中公新書 563)の中で、 「行きて帰りし物語」 というのが、幼い年下の子供たちが喜ぶ形式の物語なのだ、と述べている。トルーキンの『ホビットの冒険』の原題は、 "The Hobbit or There and Back Again" で「行きて帰りし物語」が副題となっているという。「ナルニア」だってそうだし、 『夏の洞窟』 もそう。すぐれた児童文学はみな、この基本構造を踏襲しているのだ。

重要なことは、主人公(多くはこども)が「行って帰ってくる」のだが、行きと帰ってきてからでは、同じ人なのにどこかちょっと変化していること。すなわち、 A →A' へと、さまざまな体験・冒険を経て、人間として一皮むけて成長した姿を見せるわけ。ガブリエル・バンサンの絵本 『ナビル』 (BL出版)の表紙に描かれた少年の姿が、まさに「それ = A'」だ。(まだまだ つづく)

 おおはた雄一 『ふたつの朝』         2006/03/09

●昨日は、スライド・ギターの名手  おおはた雄一 の新譜 『ふたつの朝』 の発売日で、診療終了後に早速 TSUTAYA へ出向いて購入してきた。さすがに「フル・アルバム」となると、ちょっと飽きるかな。前作 『ラグタイム』 の緩急自在の完成度を味わっているだけに、新作はちょいとワンパターンすぎて、前作の域を超えることなかった。たぶん、期待が大きすぎたのかもしれない。

そうは言っても、相変わらずギターは上手いし、巨大水槽をたゆたう 「じんべえざめ」 のような、彼のヴォーカルは健在だ。今回特筆すべきことは、 「ELT」 の、 持田香織 が3曲で参加していることだ。その 「3曲」 とも、スバラシイ! 特に、細野晴臣が作った 『ハリケーン・ドロシー』 での二人のデュエットが、じつによいんだ、これが(^^) この1曲だけで、許してあげてもいいか(^^;)

■一昨日の火曜日は、高遠町の1歳半健診。健診の前に、高遠町図書館へ寄ると、卒園を控えた高遠第一保育園の年長さんたちが、前回借りていった絵本を返しに図書館へやって来ていた。「あっ! 知ってる人!」ぼくの顔を指さして、なんだか盛り上がっているぞ(^^;; ぼくは恥ずかしいから、「よっ!」と右手を挙げて彼らに挨拶すると、そそくさと保健センターへと退いた。

この日、高遠町図書館で、ここ数ヶ月ずっと探し続けていた本を「2冊」発見して、ぼくはご満悦だった。 『輝く断片』 シオドア・スタージョン、大森望・訳(河出書房新社)と、 『脱出記』 スラヴォミール・ラウイッツ著、海津正彦・訳(ソニー・マガジンズ)だ。もちろん、直ちに借りてきましたよ。読み始めたのは、 『脱出記』 のほう。この本は凄いぞ! 極寒のシベリア、極限の環境だ。でも、主人公は生き延びてみせる。スゴすぎるぞ!

 「伊那のパパ's 絵本ライヴ」vol.18 辰野町図書館         2006/03/08

●先週の土曜日3月4日の午後は、辰野町図書館でわれわれの 「絵本ライヴ」 。辰野西小学校の親子文庫のみなさんが、再び呼んでくださったのだ。ありがたいことです。でも、辰野は「4回目」だ。マンネリにならないかが心配なところ。今回はメンバー5人全員が集合した。最初のごあいさつの歌 『はじめまして』 も、「お久しぶ〜りの、ごあいさつ」に変更しての自己紹介。ぼくはトチって「はじめまして」と歌い出してしまい、やり直し(^^;;;

今回のトップバッターはこの僕だ。 『マジック絵本』 佐藤まもる(岩崎書店)と、 『これ なーんだ?』 のむらさやか・文、ムラタ有子・絵(こどものとも 012 /2006/1月号)福音館書店 を読んだ。保育園の年少さんには受ける本なのだが、小学生にはちょっとなぁ、ダメだったなあ(^^;;

          
伊東パパが読んだのは、 『ぼくのかわいくないいもうと』 浜田桂子(ポプラ社)。これは面白かったねえ。子供たちの反応もすっごくよかった。続いて歌を2曲。「かいじゅうのこんだて」と「お〜いかばくん」。

           
宮脇パパは、 『ラーメンのかわ』 赤川明(講談社)。坂本パパは、 『わらのうし』 内田莉莎子(福音館書店)を読んだよ。


倉科パパは、久々の 『三びきのやぎのがらがらどん』 (なにわバージョン!) これは大受けだったね(^^)



おしまいに、 『ふうせん』 湯浅とんぼ・作、森川百合香・絵、中川ひろたか・曲(アリス館)、 『世界中のこどもたちが』 新沢としひこ・詞、中川ひろたか・曲 を歌って、今回も無事終了した。


■■ 「伊那のパパ's 絵本ライヴ」レポートへ行く ■■


 

 映画 『ALWAYS三丁目の夕日』(その2)         2006/03/04

●この映画は、じつによく出来ていて感心した。いや、決してぼく好みの傑作ではない。でも、2時間以上の長尺を感じさせない構成の妙があったのだ。映画は四季の移ろいを、建設途上の東京タワーが次第に上へ伸びる様子で表現していた。最初は「春」だ。青森から、赤いリンゴを土産に持って集団就職する「金のたまご」 六子 が、上野駅に降り立つシーン。あの蒸気機関車 C62 はホンモノで、博物館に展示されている横に、上野駅のホームのセットを組んで撮影されたのだそうだ。そういう 一見無駄な努力 が、この映画の中では随所に生きていたんだ(^^;)

三丁目 に、夏が来て秋が来て、そうして、 クリスマス がやって来る。一杯飲み屋の女将 小雪 が、裸電球に左手をかざすシーン。泣かされました。もう、ぼろぼろでしたよ(^^;;;

ラストは、大晦日だ。これって、 落語 だよね。「芝浜」+「薮入り」+「子別れ」じゃん!。監督の山崎貴さんは松本市出身で、小学生の頃から落語好きだったのだそうだ。松本では、毎月 「松本落語会」 が今でも続いていて、山崎監督は子供のころから常連だったんだって。だから、あの「ベタな人情噺」をテレもなく真面目に語れたんだな、きっと(^^;)

エンドロールをながめていたら、先代の 三遊亭金馬 の落語が映画の中で使われていたらしい。ぜんぜん気がつかなかったぞ。たぶんラジオからだったと思うが、どこで流れていたんだろう?

■有限会社「鈴木オート」社長の鈴木則文 役の 堤真一 さん。 彼が、堀北真希が売った喧嘩に切れて爆発する場面は、先日亡くなった 久世光彦 がプロデュースした「寺内貫太郎一家」へのオマージュだったんだろうが、ぼくは、往年の大映映画 『大魔神 怒る!』 を思い出してしまったなぁ。

この映画で、重要な狂言回しを演じているのが、小清水一揮くんと須賀健太くんの二人の子供たちだ。この子らは、 小津安二郎 監督へのオマージュなんだろうか? 映画 『お早よう』 それから、 『麦秋』 に登場した兄弟。彼らも家を出て迷子になり、大騒ぎになったっけ。夜遅くに家に帰った彼らを待っていた父親の 笠智衆 は、烈火の如く子供らを叱りつけた。そんなかんなを、いろいろと思い出させてくれた映画だったな。

 映画 『ALWAYS三丁目の夕日』(その1)         2006/03/02

●休診にしている水曜日の午後、昨日は久しぶりに予定が入っていなかった。夕方、子供たちはアンドレア先生の英語教室があるので、ぼくだけすっぽりと時間が空いた。ちょうど3月1日は「映画の日」で入場料が¥1,000 だったから、土砂降りの雨の中ひとりで「伊那旭座」へと向かった。旭座では3月10日まで  『ALWAYS三丁目の夕日』 を上映している。

この映画は、ぜひ映画館の大きなスクリーンで見たい。そう思っていたのだ。映画の冒頭、子供たちの動きを追うカメラは手持ちのハンディカメラのような不安定さで、異様な長回しが続く。見ていて緊張感を強いられるのだ。たぶん、もの凄く上手にデジタル処理がされているので、カット割りが分からないように出来ていたんだろうが、子供(鈴木一平くん)が模型飛行機を飛ばすと、カメラはクレーン撮影みたいな動きで飛行機を捕らえてぐっと視線が高くなる。そうすると、急に視界が開けて、路面電車が走る大通り(第一京浜か?)の左前方に、 「ばん!」 と、建設途中の 東京タワー が現れる。 シネスコ・サイズ のワイドスクリーンにだ。その瞬間の何とも言えない開放感! いや、これでまず参ってしまったぞ。

■東京タワーも、ぼくも、昭和33年生まれだ。ポイントは、 東京オリンピック 前の、首都高建設やら何やらゴタゴタする前の落ち着いた雰囲気の東京なんだろうと思う。ほら、よく小林信彦さんが言っていた。ただ、見る前は単なるノスタルジー映画なんじゃないかなっていう危惧はあった。例えば、この手のテーマではすでに 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』 という傑作があるし、昭和33年から12年後(ぼくは小学6年生だった)の 大阪万博 (1970年)のほうが、ぼくはリアルに懐かしい。

でも、ぼくよりも10歳以上年上の「団塊の世代」の方々には、きっと 『ALWAYS三丁目の夕日』 はリアルに懐かしいんだろうなぁ。(つづく)



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