●amazon に注文してあった、ジェーン・モンハイトのデビューCDが届いた。この人はまぁ、若いのにホントうまいね。感心した。特にバラードがいい。2曲目の「ディトゥア・アヘッド」(ビル・エバンズの『ワルツ・フォー・デビィ』に収録されている)や、6曲目「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」。リー・ワイリーが唄っていた「More Than You Know」もじつに小粋に歌いこなしている。8曲目「I Got It Bad」は、カーリー・サイモン『トーチ』にも入っている、しみじみと聴かせるいい曲だ。気に入りました。
同時に購入したのは、『Irene Kral LIVE』。松本の古本屋「アガタ書房」の小林さんが、このCDの「オススメ記事」を書いていて、前から欲しかったのだ。廉価盤で再発されていたのを見つけて、今回入手できた。これまた、すごくイイ! 変に力が入っていなくて、とてもリラックスして唄っている感じだ。晩年のものにしては、声の艶もよい。5曲目「ジェントル・レイン」から6曲目「Never Let Me Go」と、彼女お得意のバラードが続くあたりが白眉か。こうやって聴いてみると、Never Let Me Go は、アイリーン・クラールが唄っているのがやっぱり一番好きだな。
で、2人が東京で初めて会った時に、村上春樹氏からカズオ・イシグロ氏に、ジャズのCDがプレゼントされたのだという。そのCDの中に収録されていたのが、"Never Let Me Go" だ。『わたしを離さないで』の中では、80ページに、ジュディー・ブリッジウォーターの『夜に聞く歌』というアルバムが収録されたカセットテープとして登場するのだが、ディー・ディー・ブリッジウォーターというジャズ・シンガーはいるけれども、ジュディー・ブリッジウォーターなる女性ジャズヴォーカリストは実際には存在しないのだ。
"Never Let Me Go"は、ジャズのスタンダード・ナンバーで、いろんなミュージシャンがこの曲を録音している。いま思い浮かぶのは、キース・ジャレット・トリオ『スタンダーズ VOL.2』の4曲目と、ビル・エバンズ『アローン』のB面だ。それから、カーメン・マクレエも確か録音していたと思う。すっごく地味なバラードで、「モナ・リザ」などで知られるリビングストン〜エバンズの作品、映画『ザ・スカーレット・アワー』の中のナンバーで、ナット・キング・コールが、1956年に歌ってヒットした曲なのだそうだ。
村上春樹氏がイシグロ氏に贈ったCDは、インストではなくヴォーカルが入った "Never Let Me Go" だったろうから、ぼくの個人的な想像だが、そのCDとは、アイリーン・クラールの 『WHERE IS LOVE ?』ではなかったか? このCDの5曲目に、"Never Let Me Go" が収録されている。しばらく絶版だったが、この秋、久々に日本版が再発された。彼女の歌声は、まさに「スローで、ミッドナイトで、アメリカン」だと思うぞ。はたして、事実はどうだったのか? 村上さんに訊いてみないことには判らない(^^;;