■このところ、すっごく気に入っているCDは、ノルウェー在住のおばさんジャズ歌手、インゲル・マリエ・グンナシェン『 Make this moment』(ボンバ・レコード)と、彼女の最新作『バイ・マイセルフ』インガー・マリエ(コロンビア)だ。英語読みだと、インゲルでなくてインガーなのね。2年ほど前に、HMVのジャズコーナーで女性ジャズボーカルの売り上げ1位の人気盤となったCD。ぜんぜん知らなかったが、最近 TSUTAYA で見つけて購入した。これは、たしかにいいや。今日も、レセプトチェックの仕事をしながら、くり返しくり返し聴いている。デビュー盤は、オランダの歌姫アン・バートンの『ブルー・バートン』を今風にした感じで、選曲がこれまた渋くて、ジャズ・ヴォーカルとしては決して上手くはないが、雰囲気でしみじみ聴かせる。
2枚目は、もう少しポップな感じで、2曲目の「I don't want to talk about it」が特によい。ぼくは、Everything But The Girl のヴァージョンでこの曲をよく聴いていたが、インガー・マリエはじつに淡々と唄う。それからこのCDでは、ビリー・ホリデイの愛唱曲が何曲も取り上げられている。 "By Myself Alone" "Don't Explain" "You don't know what love is" "The Man I Love" などで、決して「脱ジャズ化」を計っているわけではないんだ。長くなったので、この辺で。
頭を洗いながら、目にシャンプーが浸みたふりをして、息子の話題をうやむやにした後、ぼくはふと『冬の犬』アリステア・マクラウド著(新潮社)の巻頭を飾る短編、「すべてのものに季節がある To Every Thing There Is Season (1977)」のことを思い出していた。この小説のことは、確か1年前のこの季節にも話題にしたように思う。この小説の主人公の少年の年齢が11歳だった。既に家を出て独立して働く19歳の兄の他に、15歳、13歳の姉がいて、11歳の主人公の男の子に、6歳の双子の弟が2人と、まだ2歳半の末弟がさらに1人、それに父と母とがカナダ東端の辺境の島でいっしょに暮らしている大家族だ。