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北原こどもクリニック  



しろくま 不定期日記


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●「不定期日記」●

 「助け合って子育て お父さんを楽しもう!」   2007/09/30 

■今日は雨の中、下伊那郡下條村まで行って来た。信毎主催の講演会「助け合って子育て お父さんを楽しもう!」が、午後1時から下條村コスモホールで開催されるのだ。下條村と言えば、峰竜太だ。会場入りする前に、道の駅・そばの城へ寄って天ぷら蕎麦を食べたのだが、「竜太の蕎麦」とか「みどりの焼き餅」だとか、郷土の大スター峰竜太の名前が入った不思議なメニューが目を引く。おみやげコーナーでも、いま、スーパーなんかでやたら目にする東国原宮崎県知事の似顔絵と同じような、峰竜太の似顔絵であふれている。すごいね。

■安藤哲也さん、田中尚人さんの「パパ's 絵本プロジェクト」による「絵本のおはなし会」は楽しかったな。3年半前に、伊那市立図書館で聴いて以来だったが、さすがだ。大いに感心した。アマチュアイズムは残しつつも進化している。すでに100回以上の講演で場数を踏んでいるので、子供たちのあつかいがホント上手い。小さな子たちがどんどん引き込まれてゆく。安藤さん、田中さんと子供たちとの丁々発止のやり取りが何とも可笑しくて、後ろで見ている大人たちの笑いを誘う。悔しいけれど、ぼくにはとても敵わないな。

■ぼくらの「本家」であるところの「パパ's 絵本プロジェクト」って言うと、田中さんはいつもとても嫌がるのだが、そうは言っても、彼らの活動があって初めて「伊那のパパズ」がある訳だし、名前も「のれん分け」してもらっている訳だしね。彼らがこうして週末日本全国を飛び回りながら、地道に種を蒔いてきた成果が、4年の歳月を経て、全国各地のあちらこちらで芽をだして来ていることを考えると、なんとも感慨深いものがあるなあ。

それから、会場で「あっちパパズキッズ」の唐澤さんとお会いできたことも今日の大きな収穫だった。唐澤さんは、去年の1月末に、ぼくら「伊那のパパズ」が下伊那郡阿智村で「絵本ライヴ」をやったのを見に来て「よし!」と奮起し、同じ阿智村のお父さんたち5人とともに「あっちパパズキッズ」を立ち上げ、歌あり絵本ありの楽しい「お父さんの絵本読み聞かせ」活動を始めたのだ。なんだか「友だちの輪」っていうヤツですかね。不思議なご縁だ。ぜひ今度、ジョイント・ライヴをやりましょう!

■彼らが読んだ絵本は以下のとおり。噂の「がらがらどん」を初めて聴いたが、なるほど調子がよくってこれはいいね!

1)『なにをたべたかわかる?』長新太(絵本館) → 田中パパ
2)『きょだいなきょだいな』長谷川摂子・文、降矢なな・絵(福音館書店)→ 安藤パパ
3)『てじな』土屋富士夫(福音館書店) → 田中パパ
4)『うんちっち』ステファニー・ブレイク作(PHP)→ 田中パパ
5)『わゴムはどのくらいのびるかしら?』マイク・サーラー 作(ほるぷ出版)→ 安藤パパ
6)『三びきのやぎのがらがらどん』マーシャ・ブラウン作(福音館書店)→安藤&田中(歌・演奏)


■帰りは、松川インターで途中下車して、妻が宮脇さんから教えてもらったケーキ屋さん「佳芳 みつ蜂」に寄る。モンブランと自家焙煎炭火焼コーヒーをいただく。うん。なるほど美味しい。

 『落語研究会 柳家小三治全集』は、予想を遙かに越えて凄いぞ!  2007/09/29 

■土曜の午後はゆっくりだ。1時半過ぎには診察も終わった。よしよし、これなら「日本の話芸」を最初から見られるぞと、テレビを付けると、なんだ今日は講談か。残念。すると、小5の長男がこう言った。「おとうさん、小三治さん聴かせてよ。この間、買ってきたんでしょ。その『千両みかん』がいいな。」

『千両みかん』なんて、息子に聴かせたことあったっけ? 立川志の輔じゃぁないし、ましてや、柳家喬太郎であるワケない(^^;; 我が家にある音源は、古今亭志ん生の「千両みかん」だけのはず。 よく分からないけれど、小三治さんの『千両みかん』を息子と観る。いや、これは傑作だねぇ。小心者の番頭がじつにリアルだ。それに尽きる。大笑い。

巻頭の『花見の仇討ち』もいい。先代三遊亭金馬のが分かりやすくて一番だが、桜の木に登って解説する野次馬が何ともいいのは、やっぱり小三治か。

■で、いまDVDで流しているのが、小三治版の『芝浜』だ。言っちゃぁなんだが、『芝浜』にはウルサイ。所有する音源は、三木助、志ん生、志ん朝、立川談志、柳家さん喬。これだけ持っている。大晦日になれば必ず「芝浜」を聴きたくなる。それだけ好きな噺だ。

でも、小三治さんの『芝浜』が、一番身にしみるなぁ。何故ならば、小三治さんが演じる「熊公」の女房が、ぼくの奥さんとそっくりだったからだ(^^;; とても他人事とは思えない。語り口は、柳家さん喬版に近い。柳家一門だからね。今までは、立川談志版『芝浜』がダントツだと思ってきたが、小三治版はそれに肩を並べるデキのよさだと思うよ。サラッとしてるのがいいんだねえ、きっと。

■それから、付属の分厚いブックレットが、これまた大変に読み応えがある。小三治さんへのロングインタビューがとにかく面白い。特に、「師匠と弟子」の関係のくだり。その話は、いずれまた。

 NIKKA WHISKY シングルモルト余市(石炭直火蒸溜) 2007/09/28 

■今日は午後2時から4時まで、伊那市役所3階会議室で「就学指導委員会」。月に2回金曜日に開催されるこの委員会は、日程的に正直キツイ。ものすごく勉強になるんだけどね。ただ、午後の予防接種ができない。午後の診療開始も1時間余遅れる。委員会独特のテンポにも、いまだ馴染めないでいる。しかも、大抵は会議が午後5時まで続くので、毎回途中退席で失礼していて、結局その子の委員会決定事項を何も知らないままに終わっている。そんなんで、ぼくがその場にいることに、はたしてどれほどの意味があるんだろうか? 悩むところだ。

■夜は7時から今月2回目の伊那中央病院救急部・小児夜間一次救急の当番。今夜は異様に静かで、このまま1人も診ずに終わるのかと思ったが、夜8時半に喘息発作の5歳男子、9時前に左手薬指が腫れた1歳男児の2人が来た。9時半前に終了し帰路につく。ほっとする。毎回それなりに、すごく緊張しているのだな。

帰宅後、この間「酒のスーパーたかぎ」で買ってきた、シングルモルト余市を取りだして、小さなワイングラスに少量注ぐ。大きなコップにチェイサーも用意。氷は入れない。ストレートできゅーっと一口。喉に沁みる。旨い酒だなあ。日本のウイスキーも、なかなかにレベル高いではないか。しかも安い! これは掘り出しものだね。

 連日更新も今日でお終いか?        2007/09/27 

■今週は、ちょいと無理をして毎日更新に挑戦している。でも苦しいね。ネタがないや(^^;; 2日か3日に1度の更新が、おいらのリズムに合っているんだな、きっと。

■今日の午後2時前に、福澤桂くんから電話があって、例の10月の講演の件の打ち合わせだったのだが、どうも「弟子と師匠のはなし」などご所望ではないみたいだ。困ったな。しかも、内田センセイの『先生はえらい』を再読し終わったのだが、まるで落語の「蒟蒻問答」みたいで、相手が勝手に誤解して納得して感服するという、たった「それだけ」の話だったんで、これじゃぁネタにはならない。ほんと、困ったぞ。あと1カ月しかない。どうすりゃいいんだ?

こうなると、やっぱり高塚人志先生の「コミュニケーション授業」のはなしに、持って行くしかないかな…… ただ、高塚先生は、小児科医には受けるのだけれど、教育現場の先生方からの評価は今ひとつよく分からない。そこのところはどうなんだろうか?

■昨日、上伊那医師会付属准看護学院の小児科講義が終わって、やれやれと車で帰る時、FMラジオから、ちょいとおしゃれな楽曲が流れてきた「おっ!?」と、耳をそば立てる。DJのアナウンスによると、キリンジの新曲「今日も誰かの誕生日」という曲だった。今日一日「この楽曲」が気になって仕方なかったので、iTunes Store でチェックすると、¥200 でダウンロードできるではないか! ふーん、CDを買わなくても、今は「その曲」だけ200円で買えるんだね。便利になったものだ。

ちょいと調子に乗って、落語も2本ダウンロードしてみた。古今亭志ん生の「らくだ」と、第1回「朝日いつかは名人会」だ。二つ目の噺家さんの評価は難しいな。上手いんだけどね。特に、三遊亭歌彦さん。演目は「片棒」だ。聴いた瞬間、三遊亭歌彦さんが「この噺」を誰から教わったか、直ちに解ってしまった。柳家さん喬師匠に違いない。だって、柳家さん喬の「片棒」そのまんまなんだもの。落語はそれじゃぁダメなんだな。難しいね。歌彦さんは、山形の「花笠音頭」を挿入したりとか、それなりにオリジナルの工夫はしているのだが、それでも、さん喬師が見えてしまう。その点、古今亭菊朗の「湯屋番」の方が、元が分からないぶん、オリジナルの感じがしてよかったな。いやぁ、落語って難しいなぁ。

 『落語研究会 柳家小三治全集』(小学館・DVD10枚組)     2007/09/26 

■アマゾンに予約注文してあった『落語研究会 柳家小三治全集』が本日届いた。定価税込み¥39,800 だが、予約注文だと¥29,800 なのだ。1万円も安い。これは買うしかありますまい。25席、DVD10枚組。もう、我が家の家宝ですね。素晴らしい。代々大切にしよう(^^)。そしたら、今日の昼休み。TVをつけたら「笑っていいとも」をやっていて、この日のテレフォン・ショッキングに登場した、柄本明の息子さん(父さん似のようで母さん似でもある、何とも不思議なキャラクターだったな)が、これから新宿紀伊国屋書店に行って、今日発売の『柳家小三治全集』を買いに行くと言ってたんで驚いた。ほう、若いのに落語が、しかも、小三治が好きなのか!! 面白いねぇ。

■午後の1時を過ぎ、NHKにチャンネルを変えて「スタジオパーク」を見てみると、林家木久蔵改め、林家木久扇師匠が出ていた。もう何度も聞いている「林家彦六伝」の話だが、何度聞いても大笑いだ。やっぱり、世の中いま「落語ブーム」なんだろうか?

■昨日、『寄席放浪記』色川武大(河出文庫)をパラパラめくっていたら、「ショボショボの小柳枝」という項目が目にとまった。小柳枝って、あの、瀧川鯉昇の師匠の、8代目春風亭小柳枝のことか? 瀧川鯉昇さんの苦労話は以前から大変有名で、彼の師匠、春風亭小柳枝に入門したその初日に、師匠と伴にダンボールにくるまって野宿を強いられ、翌日からずっと朝食は雑草だったと言うから驚きだ。何も、公園が住処だった芸人は、麒麟の田村裕だけではないのだね。そのあたりのことは、『師匠噺』浜美雪(河出書房新社)p206〜229 に詳しく書いてある。

瀧川鯉昇さんは、師匠が訳あって廃業してしまったので、春風亭柳昇門下に入る。その後も、前の師匠と食った雑草の旨さ(?)が忘れられなかったのか、皇居の土手で深夜にタンポポ採取をしていたところ、交番のお巡りさんに捕まって、職務質問を受けたという話も有名で、伝説になっている。だからこそ、瀧川鯉昇さんが「時そば」とかで食べる場面は、本当に美味そうな仕草を見せてくれるそうだ。

ところで、色川武大氏が言うところの春風亭小柳枝は、「7代目」のことみたいで、8代目も大変な人だったみたいだけれど、『寄席放浪記』を読むと、7代目はもっと、とてつもなく粗忽者で不器用な、とんでもない人だったようだ。歌うように落語を語る技があって(「野ざらし」の春風亭柳好みたいに)音源は残っていて、立川談志がLP化したことがあるそうだ。ぜひ聴いてみたいものだ。

ところで、いま現在の春風亭小柳枝は「9代目」で、予想に反してごくごく真っ当な常識人だ。桂文治亡きあと、落語芸術協会の重鎮として正統派古典落語を継承する実力派である。ちょうど、「ちむら寿司」の親方をちょいと細面にした、角刈りのキリッとした江戸っ子風情の面構えで、江戸の粋をありありと語ってくれるのだった。

  師匠と弟子の、なんともいい関係        2007/09/25 

■つい先ほど放送された、NHK教育テレビ『私のこだわり人物伝 植木等』最終回、小松政夫のインタビューには泣かされたな。九州博多出身の小松政夫さんは、公募で1/600の倍率を突破して、植木等の運転手となる。最初は弟子でも付き人でもなく、単なる運転手だったのだ。小松政夫さんが、師匠植木等のことを淡々と語るその表情が、何とも言えずよかった。弟子が師匠を語る。そういうことか。中でも泣けるエピソードが、植木等の代表的ギャグである「およびでない」誕生秘話だ。いい話だなぁ。

■じつは、来月10月27日(土)の午後、伊那北高校の同級生だった福沢桂くん(長野県立阿南高校教諭)に無理やり頼まれて、飯田下伊那地区の高等学校の校長、教頭、教務主任が集まる会で「近頃気になる子供たちの問題点〜軽度発達障害も含めて」というタイトルで話をすることになってしまった。何度も無理だからと断ったのだが、押し切られてしまった。桂くんの話を聞くと、とにかく、いま高校に入学してくる子供たちはみな、なんだかよく分からなくて、現場の教師はみな困っているとのこと。特に進学校ではない高校には、コミュニケーション不全としか言いようのない子供たちが集まってきているのだそうだ。どうしてそうなってしまったのか? 小児科医としての意見を訊きたいとのことなのだ。

そんなこと訊かれてもねぇ。ぼくには分からないよ。仕方ないんで、内田樹先生のご意見でも訊いてみよう。

<9月21日のブログ>が参考になるかもしれない。それから、『先生はえらい』内田樹著(ちくまプリマー新書)だ。「師匠と弟子のはなし」に持ち込めば、何とか形になるかもしれない。よし、その線でストーリーを展開してみるか(^^;;

 『年をとったワニの話』レオポルド・ショヴォー(福音館書店)     2007/09/24 

■今日は午前中に、家族みんなでテニスをする予定だったのだが、雨が降り出してきたので結局中止。子供らが「ブーブー」言うので、午後2時半になって「テルメ」のプールへ行くことに。「おいおい、自分の水着とタオルは自分でちゃんと用意しろよ! いいか、ゴーグルとか忘れ物はないな?」と言って、子供らを車に乗せて出発。「テルメ」1階駐車場の1カ所だけ空いた狭い区画に、6回切り返して何とか車を停める。やれやれ。さてと思ったら、ぼくの海水パンツを入れたスポーツバッグがない。これだから父親はいつまでたっても息子から尊敬されないのだな(^^;;

せっかく苦労して停めた車を再び出して自宅へ戻り、玄関に置き忘れたスポーツバッグを手に再び「テルメ」へ向かう。後部座席で子供らが白けている雰囲気が濃厚だったので、あわててHDに録音してある、桂三枝の創作落語「外人スチュワーデスが大阪弁を勉強するはなし」を流す。「ボトボトでんなぁ」が受けた。

さんざん泳いで、午後5時過ぎに「テルメ」を後にした。帰りに近くの「ブックオフ」に寄って、たまった月刊誌「MOE」のバックナンバーを売りに行く。29冊あって、予想では「1冊10円」での買い取りだったのだが、まさにその通りで、29冊で290円だった。「お客さま、ダンボール箱はこちらで処分してもよろしいですか?」と、パートのおばちゃんに訊かれた。そうか、必ずそう確認するマニュアルになっているのだね。もちろん僕は「持って帰ります」と答えたよ(^^;)

■先日買ってきた『川の光』を、子供らが寝る前に読んで行こうと思って、読み始めたのだが、けっこう難しい言い回しや高尚な文学的表現が多い、切れ目のない長い文章が続いて苦渋した。これ、小学生に理解できるのだろうか? 案の定、小学3年生の次男は、途中早々に寝てしまった。ところが、小学5年生の長男はこう言った。「おとうさんに読んでもらうよりも、自分で読んでみたいんだ。この本、貸してくれる?」

という訳で、長男の手に渡った『川の光』は、一昨日に読了されたらしい。すごく面白かったそうだ。続編が書かれるかもしれない、長男はそう言っていた。じゃぁ僕も、読んでみるか。そう言えば、過去に数回『冒険者たち』斉藤惇夫(岩波書店)を寝る前に読み聞かせしようとしたことがあったのだが、最初の章で厭きられてしまって、結局まだ読んではいない。そんでもって、『川の光』の方を先に読んでしまってもいいんだろうか? 悩むところだ。

■寝かせ付ける前に読む本が無くなってしまったので、本棚から『年をとったワニの話』レオポルド・ショヴォー(福音館書店)を取りだした。ずいぶん前にブックオフで500円で買った、オリジナル横長ハードカバー本、ケース入りだ。ベッドに仰向けで横になり、本を上に広げて読み聞かせするには、この「フランスオリジナル版型本」はちょいと重すぎる。一つの話を一晩で読み終わるのも、30分以上時間がかかって無理だし。

などと、文句をつけつつ昨夜全部読み終わったが、この本は面白かった。中でも「年をとったワニの話」が何と言っても傑作だが、「ノコギリザメとトンカチザメの話」も変だし、個人的には「メンドリとアヒルの話」が、めちゃくちゃ不条理で大好きだ。子供らも、その顛末にあっけに取られつつ、大笑いした。そこには、教訓も暗喩も行間の意味も、なにもない。そこが、素晴らしい。こういうの、ぼくは大好きだ。

今夜は『名医ポポタムの話』を読み始めたのだが、その「序文」がふるっている。著者であるレオポルド・ショヴォー氏の息子(これらの物語を毎夜父親から聞かせてもらった)ルノー君が書いている(たぶん、本当はショヴォー氏が考えて書いたのだろうが)
 ぼくのパパは、とってもいい人です。たくさん、お話をしてくれます。
 パパのお話は、まるでばかみたいです。でも、いいんだ、ぼくにはすっごくおもしろいんだから。
子供に聞かせる物語って、本質的には「それ」でいいんじゃないかな。

  琉球泡盛「八重山請福」30度           2007/09/23 

■酒は弱いのだが、このところ、アイラ島のシングルモルト・ウイスキー(と言っても手頃な値段で入手し易いヤツ、例えば、LAPHROAIG Quarter Caskとか)を好んでちびりちびり飲んできた。美味しさが癖になること、そして何よりも、他のブレンディッド・ウイスキーと比べて、二日酔いしにくいこと。それが一番の理由か。同じ蒸留酒でも、焼酎だとどうしてもついつい飲み過ぎてしまうからダメなのだ。

ところが最近、泡盛が意外と美味しいことを知ってしまった。芋焼酎よりもよっぽど飲みやすいから、さらに注意は必要だ。でも、芋焼酎よりは翌日残らない印象がある。かと言って、飲み過ぎればいっしょだが(^^;; 最近気に入っているのが、久米仙の3年古酒(クース)「び」。マイルドで、すっごく飲みやすい。ニシザワ・ショッパーズに行くと、1000円ちょっとで売っている。

■ぼくは、つい数ヶ月前まで「琉球泡盛」がタイから輸入されたインディカ米で作られていることを知らなかった。いや、米から作られることは知っていたんだけどね。さとなおさんの『沖縄上手な旅ごはん』を読んで、初めて知ったというワケさ。この本はとっても面白い。ただ、沖縄本島の食べ物情報は20%で、あとの80%は離島の八重山諸島の食情報ルポなので、石垣島まで行かないと、この本に書かれている「おいしいもの」の恩恵にはありつけないのが難点。

中でも印象的なのが、石垣島の泡盛「南雪」のはなしだ。ほんと、実にいい話じゃぁないか! いま、気づいたけど、この本は、ここの<美ら島物語>がベースになっていたのだね。

なんか、これを読むと「南雪」が飲んでみたくなるのですね。でも、現在は作っていない(古酒はあるらしい)。本日たまたま、ベルシャイン・ニシザワへ「泡盛」を仕入れに行ったら、焼酎・リキュール類棚の前に「琉球泡盛」の特設コーナーが出来ているのを発見した。ずいぶんとマイナーな酒造の泡盛も含め10数種類の品揃え。これは期待できるぞ! すると、あった! 例の「南雪」を造った、石垣島請福酒造「八重山請福」が。

「南雪」は、「岩手34号(かけはし)」という、岩手県産の日本米から造られているが、「八重山請福」は、岩手県から送られた「ひとめぼれ」の種籾を石垣島の田んぼで育てて収穫した、原料も水も100%石垣島産の泡盛なのだ。まさか、信州伊那にいながら、飲めるとは思いもよらなかった。さっそく、氷をたっぷり入れた水割りでいただく。甘い。喉ごしが滑らか。なかなかに、おいしいではないか。でも、飲み過ぎには要注意!

■この請福酒造のサイトを読んでみると、さらに不思議な物語が載っている。「請福ファンシー」という泡盛が、「スギ花粉症」に効くという噂が広まって、毎年2月になると異常に売れるというのだ。なんでも、クレラップで有名な呉羽化学が「泡盛の抗アレルギー有効成分としての利用」に関して治験を進めているという、嘘のような本当のはなし。面白いねぇ。

  最近買ったCD、ほん             2007/09/20 

■アマゾンで、前から欲しかったCDをまとめ買いした。今回は一括発送でも早かった。

『それは、すばらしい音楽なのです』きたはらいく
『耳をすませば』きたはらいく
『木曽』宮沢昭カルテット
『ぞろぞろ』春風亭昇太
『志の輔らくご BOX』

きたはらいくという名前の女性シンガー・ソングライターの名前を発見したのは、吉野仁さんのサイトでだった。北原なんて名字のミュージシャンは珍しいな。「懺悔の値打ちもない」の北原ミレイ以来じゃないか。実際に聴いてみると、ちょっとイメージしていた歌い方とは違っていたが、うん。すっごくいい。しばらくじっくり聞き込んでみよう。確かにピアノの弾き語りは矢野顕子風だけれども、違うな。キャロル・キングかな? いい声してる。中でも、カバー曲の「Wings On My Heels」が、じんわりと心に沁み入る名曲で、歌詞がじつにいいんだ。「ミー・アンド・ボギーマギー」とか「ミスター・ボージャングル」みたいで。おっと、訳詩は中川五郎さんではないか!

宮沢昭カルテットは、もうめちゃくちゃカッコイイ。有名な『いわな』よりも、こっちの『木曽』のほうが断然好きだ。森山威男がドラムスだからね。37年前の録音とは信じられないくらい、いま聴いて新しい。ファラオ・サンダース好きのぼくには、ちょっとたまらないCDだ。大切にしよう。

■図書館から借りてきて未読のまま積み上げてある本もいっぱいあるというのに(例えば『ミノタウロス』佐藤亜紀とか)次々と本を買ってしまう。いったい何時読むんだ?

『千年の祈り』イーユン・リー(新潮社クレストブックス)
『川の光』松浦寿輝(中央公論新社)
『いつまでもデブと思うなよ』岡田斗司夫(新潮新書)
『新・批評の事情』永江朗(原書房)
『自閉症「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育』そらパパって、東大なんだ。
『求めない』加島祥造(小学館)


  小児夜間一次救急のはなし(つづき)            2007/09/18 

■9月16日版「長野日報」2面に、先週の金曜日の昼に「いなっせ」で僕が話したことが記事になっているのだが、記事の見出しが「子に異変 迷わず医者に」となっていて困ってしまった。これでは、僕が一番言いたかった趣旨とは正反対ではないか!

記者さんに伝わらなかったということは、おかあさんたちにも伝わらなかったのだろうか? 悲しい。

1)急な発熱でもあわてない。そこそこ元気があって食欲も普段の半分近くあれば、翌朝まで様子を見て大丈夫。解熱剤を冷蔵庫に常備しておけば、夜間不安なら使ってよい。おかあさんが子供の様子をみて、大丈夫と感じたならば、まず大丈夫。ただし、3カ月以下の赤ちゃんの発熱は、夜間でも受診を! ●こどもの発熱に関しては「こちら」もチェックしてみてね!

2)夜間、伊那中央病院を受診する場合は、できるだけ夜7時〜9時までの間に受診して下さい。この時間帯ならば、伊那中央病院小児科の4人の小児科医か、僕か、中村先生か、上伊那医師会所属の内科医(子供をよく診ている)、耳鼻科医が救急センターに待機しているので、スムーズに診てもらえます。

3)子供の夜間の急な嘔吐、腹痛、激しい咳、頭部打撲、その他の症状で対応の判断に悩む時、まずは、以下のサイトをチェックしてみて下さい。

  「こどもの救急ホームページ」   「東京都こども医療ガイド」


4)それでも判断に迷った時には、まずは「かかりつけ医」に電話して指示を仰いでください。遅い時間帯で医者が電話に出ない場合には、夜7時〜夜11時までの間であれば、「局番なしの #8000」番へ電話してみて下さい。IP Phone(ひかり電話)の場合は、0263-72-2000 。そうすれば、ベテランの助産師さんが電話でアドバイスしてくれます。

5)深夜帯にどうしても困ったら、伊那中央病院へ電話してみて下さい。救急部の当直看護師が電話で対応指示してくれます。当直看護師が、緊急の受診が必要と判断した場合には、至急「伊那中央病院救急センター」に来ていただいて、救急部のドクターに診てもらってください。

6)殺虫剤など、家庭用品の誤飲とか、おばあちゃんの血圧の薬を子供が飲んだとか、赤ちゃんが漂白剤をなめたとか、「誤飲・中毒」の時の処置方の判断を仰ぐ場合は、

  「大阪中毒110番」 365日24時間対応。相談無料。 072-727-2499
  「つくば中毒110番」365日、午前9時〜午後9時まで対応。相談無料、 029-852-9999
  「タバコ専用」 テープで指示が流れる。無料。 072-726-9922

■先週土曜日は、伊那東小学校の運動会。それにしても暑かったね。翌16日(日曜日)は夜7時から小児夜間一次救急当番で、夜9時まで伊那中央病院救急部に。この日は下平さんはいなかった(^^;; 子供を5人診た。翌日の9月17日(敬老の日)は一日当番医。午後6時前に最後の患者さん(115人目)を診終わって、やれやれとリビングに戻る。

そしたら、夜7時ちょい前に電話が鳴って「ちょっとぉ、お訊きしたいんですがぁ、今日は当番医ですよね。子供が具合悪そうなんだけどぉ、これから診てもらえませんか?」という内容。最近かかってくる時間外の電話は、相手のほとんどが、まず絶対に自分の名前を名乗らない。子供と言われても、0歳児の赤ちゃんなのか小学生なのか? 最近受診している子供なのか、初めてなのか? まったくわからない。こちらは「はい、北原こどもクリニックの北原です」と名乗っているにも関わらずだ。それほど匿名性にこだわる意味はあるのか? 電話の着信履歴を見れば相手の電話番号をチェックできる(非通知の電話には出ないことにしている)というのに。

ぼくは「今日の夜7時から9時までは、伊那中央病院の救急部に小児科の萩元先生が待機していらっしゃるから、申し訳ありませんが、そちらを受診してください」と言った。あえて、相手の名前を問わなかった。相手は「診てもらえないんですかぁ?」と不満気な声を残してガシャンと電話を切った。やれやれ、さらにどっと疲れが出たよ。
 

  #8000 番                2007/09/15 

■昨日の金曜日の昼休みは「いなっせ」7Fの「ちびっこ広場」で2カ月に一度の「おはなし会」。今回は「小児の夜間一次救急」のはなし。強調したことは「おかあさん! もっと自信を持っていいよ!」っていうこと。おかあさん方は、赤ちゃんが何度か熱を出すうちに、だんだん経験を積んで学習して行きます。たとえ子供の熱が39℃でも、機嫌がそれほど悪くなくて、食欲も普段の半分近くはあったから、一晩様子を見ても大丈夫よね! そういう感覚が自然と備わってゆくのです。

ところが、おとうさんやおばあちゃん(お姑さん・実家の祖母)はダメです。普段の子供の様子をつぶさに観察している訳ではなくて、一瞬のポイントでしか子供を観察していないので、息子(孫)が「39℃」発熱していれば、それだけで「あたふた」してしまうのですね。残業を終えて、よる8時過ぎに自宅へ帰ったおとうさんは、先週満1歳の誕生日を迎えたばかりの息子が、39℃の発熱で「ふうふう」言っている場面に遭遇します。

これは我が家の一大事! 妻(嫁)はいったい何をしていたんだ! と、慌ててかかりつけの「北原こどもクリニック」の診察券を見て、けっこう焦って感じで父親が電話してきます。連れて来ていただいて様子を伺うと、熱冷ましの坐薬があれば、安心して 一晩見られる病状です。つまりは、おとうさんやおばあちゃんが、今夜は大丈夫と折角思ったおかあさんの牙城を切り崩そうとする訳です。

■長野県には、夜7時から夜11時まで、ベテランの助産師さんが電話相談で対応してくれる「 #8000 番」というシステムがあります。ところが、昨日いなっせで訊いてみたところ、20組以上いた親子連れの全員が知らなかったのです。えぇっ! そうなの? 知らないんだ! ぼくは驚きました。

ぼくは取りあえずのアドバイスとして、横浜市の星川小児クリニックのサイトを示して、院長の山本淳先生が書かれた文章を朗読した。ね! おかあさん、大丈夫。自信を持ってください。旦那さんの一言や、お姑さんの心配は「へへん」と聞き流していただいてかまいません。ただし、おかあさんが自分で診て、この子どうしてもおかしい、いつもの様子とぜんぜん違う、一刻も早く診てもらわないことには不安でしかたない、と思った時には、時間外でも医院・病院を受診してくださいね。母親の「第6感」はよく当たるのです。


■それからもう一点、最近気になることとして「母親の2極化」が進んでいるように感じることを話しました。子供の様子がちょっとでも変だと不安で心配で、直ちに小児科医に診てもらわないと気が済まないタイプの人がいる一方で、子供が3日も4日も熱が続いているのに「カゼだから大丈夫よ!」と、まったく無頓着で医者にも診てもらわずに、そのままほったらかしにする母親。

たしかに、普通のカゼなら3日でたいていは熱が下がります。咳がひどいとか、嘔吐や下痢を伴うとかなければ、お家で様子を見ていただいても構わないのですが、4日も5日も熱が続く時は「普通のカゼ」ではありません。変な病気が隠れていないかどうか、医者にしっかり診てもらう必要があります。

■夜は、病院へ連れて行かずに「おかあさん大丈夫。自分で様子を見なさい」と言っておきながら、「でも、昼間に医者に連れて行って診てもらってね」と言うのは、なんだかずいぶん自分勝手な言いぐさのように聞こえるかもしれないけれど、怖い病気を見逃さないようにするのが、われわれ小児科医の役目でもあるので、そのあたりのところはご理解願いたいものです。

  『生霊わたり クロニクル千古の闇2』(評論社) 読了     2007/09/12 

■今日、水曜日の午後は、上伊那医師会付属准看護学院1年生への小児科の講義。今回が3回目。新生児仮死、アプガー・スコアの解説から、核黄疸、RDS、TTN、MASの話。そして糖尿病母体から出生した児に生じる問題点まで話して時間切れ。新生児の話は今日でおしまい。なかなか大変だ。前回、学生さんから「今日は絵本を読まないんですか?」と、まるで毎日このサイトをチェックしているかのようなコメントがあったので、ちょっと怖くなって、先週は授業の始めに絵本を読まなかったのだが、今日は思い切って最初に絵本を読んでみた。ぼくの大好きな『ぜつぼうの濁点』原田宗典・作、柚木沙弥郎・絵(教育画劇)だ。

ずいぶんと読み込んでいるはずの絵本なのに、今日も途中で数回噛んで、つっかえてしまった。最近老眼がすすんで、小さな字でいっぱい書いてあると、ぼやけて読みにくいのだ。まだまだ修業が足りないな。反省。さて来週は何を読もうか。

■つい先ほど『生霊わたり クロニクル千古の闇2』(評論社)を読了した。いやぁ、凄かった。後半は一気に読まされた。そうか、そうきたのか! ある程度予測はしていたのだが、そう来るとは思わなかった。作者の1本勝ちだな、感服です。一刻も早く、第3巻『魂食らい』を読み始めたい。それだけの求心力が「この物語」にはある。わが息子は、読了後どんな感想を持ったのか? ぜひ訊いてみたいものだ。明日の朝、登校する前に話してみよう! 楽しみだな。 主人公の苦悩は、読者の苦悩でもあるのだよ。辛いよなぁ、トラク! 頑張れ!!


■ぼくが熊本に学会で行っている週末、子供たちは母親と共に「岡谷スカラ座」で『レミーのおいしいレストラン』を観たらしい。ものすごく面白かったそうだ。長男が興奮してストーリーを話してくれた。それ以来、レストランの厨房が舞台の映画が気になってしかたなかったのだ。そしたら昨夜、NHKBS2で夜10時からドイツ映画『マーサの幸せレシピ』の放映があった。何となくピンとくるものがあったので、妻子が寝静まったあと、リビングに下りてきてテレビの電源を入れた。

ドイツ映画は、『白バラの祈り』を観ていたから、期待していたのだ。で、期待に違わぬ、心がほっこりするいい映画だった。この女性監督は、テレビ出身で、この映画が劇場公開用映画の初監督だったらしい。すごいよね。使われている音楽がこれまたいいのだ。キース・ジャレット『マイソング』(ECM)収録の名曲「カントリー」ではないか。さらに驚いたことに、映画の最重要シーンのBGMとして使われる音源が、『スタンダーズ Vol.2 』B面に収録された、「Never let me go」なのだ。そう、あのカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』(早川書房)の「Never let me go」。エンドロールで流れるBGMも、キース・ジャレット・トリオなのだが、聴いたことのない曲だ。

どのCDに収録されている曲だろう? と思って検索してみると、「ちゃんとこういうサイト」があるんだねえ。「Uダンス」って曲なんだ。このCDは知らなかったなあ。また探してみよう。そういえば『かもめ食堂』を見終わったあともお腹がすいて困ったが、今回は、美味しいスパゲティが食べたくなってしまった。

  伊那のパパズ・絵本ライヴ(その34)「中川村図書館」     2007/09/09 

■中川村図書館は、2004年12月のクリスマス会以来の2度目の訪問だ。3歳以下の小さな子供たちがたくさん集まってくれたよ。おとうさんの姿も4〜5人あったかな。ありがとね。

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『やさいのおなか』 きうちかつ・作(福音館書店) → 伊東
『たぬきのじどうしゃ』 長新太・さく(偕成社)  → 北原
『わにわにのおふろ』 山口マオ・作(福音館書店) → 坂本

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『かごからとびだした』 → 全員
『パンツのはきかた』 岸田今日子・作、佐野洋子・絵(福音館書店) → 全員

『おかあさんのパンツ』『おかあさんのパンツ2』(絵本館) → 宮脇
『まめうし あいうえお』あきやまただし(PHP研究所) → 倉科

『うちのかぞく』(世界文化社) → 全員
『世界中のこどもたちが』 →全員

■ぼくが「ビオフェルミンふうせん」を持ってくるのを忘れてしまったので、この日は『ふうせん』湯浅とんぼ・中川ひろたかは、なし。いつも最後に盛り上がる出し物だったのに、中川村の子供たち、ごめんなさいね(^^;;

  『オオカミ族の少年(クロニクル千古の闇 1)』ミシェル・ペイヴァー    2007/09/06 

『オオカミ族の少年』を読み終わった。面白かったが、ちょっと食い足りない不満感も残った。物語の主人公トラクが、「ナヌアク」と呼ばれる3つの「隠れアイテム」を探しながら、「天地万物の精霊の山」を目指して北へ旅をするという設定が、何だか「安手のRPG」みたいじゃないかと思ったのだ。そうまでしないと、現代の子供たちをこの物語世界へ引きずり込めないのだろうか? いきなりクライマックスで始まる驚きと、次から次へと主人公に襲いかかる危機。まるでインディー・ジョーンズの映画を見ているかのようだ。そのあたりにも、作者の「あざとさ」を感じてしまうのだな。

そうは言いながらも、ぼくはこの物語世界がすごく気に入った。何よりも、今から6000年前の人類の暮らしが、リアルに詳細に記載されていることに驚いたからだ。イメージが映像としてリアルに目に浮かぶ。当時の人々のサバイバル術が具体的に描かれている。これは作者の力量だな。じつによく調べてある。それから、読者として引きつけられたのは、もう一人(一匹)の主人公「ウルフ」の存在だ。そうだよ、遙か昔には「動物」と「人間」はもっとずっと距離が近かったはずなのだ。現代の愛玩動物と人間の関係とはぜんぜん別の意味でね。

先だっての「NHKスペシャル」で、フィンランドで熊狩りをする1人の猟師の映像を見た。彼は1年に1匹のクマしか猟しない。それが、遙か昔からの取り決めなのだ。この猟師の不思議な儀式・行動と、物語の主人公トラクの行動がそのまま一緒だったので驚いた。たぶん、この本の著者は、この猟師に取材しているに違いない。それから、ワタリガラス族の人々がキーパーソンとして登場する。ワタリガラズと言えば、アラスカのイヌイットの神様であり、星野道夫の世界観とも密接に重なってくる。そのあたりの今後の展開も期待したいところだ。

■本を読み終わったことと、正直な読後感を息子に伝えると、彼はこう言った。「うん、ぼくもね、1巻目はそれほど好きじゃないんだ。でもね、お父さん! 2巻目の『生霊わたり』は違うよ、凄いんだ。深いんだなぁ。ぜひ読んでみて!」

そうまで言われれば、読まないわけにはいくまい。という訳で、2巻目も148ページまできた。まだ物語は序盤で、大きく動き出してはいない。「トコロス」とは何か? 「魂食らい」どもは、いったい何を企んでいるのか? ウルフとトラクは再会を果たすのか? いやぁ、面白いじゃあないか。今後の展開から目が離せないのだった。



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