しろくま
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北原こどもクリニック  



しろくま 不定期日記


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2006年:<1月><2月><3月><4月><5月><6月/7月><8月><9月><10月><11月><12月>
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●「不定期日記」●

 将棋には燃えるお父さんであった          2008/02/22 

■我が家ではいま第二次「将棋ブーム」が進行中である。くもんのスタディ将棋盤は前からあったのだが、やっぱり五角形の木製の駒が欲しいと言うんで、「赤えんぴつ」に行ったら2000円の高価な駒しか置いてなくて、アピタへ廻ったら1000円のが入手できた。「彫り」か「平面印刷」かの違いが1000円なのだな。実は、小学5年生の長男が将棋に目覚めてしまったのだ。冬のこの時期、グラウンドはぬかるんでいるからサッカーとかもできず室内遊戯が許されていて、休み時間に長男のクラスでは将棋が流行っているのだとのこと。

「おとうさん、将棋しよう!」仕事が終わったぼくを捕まえて、長男がそう言う。父親だからと言って決して手加減はしない。何故なら、実力はほぼ同じなので、ちょいと手を抜くと負けてしまうのだ。父親とは言え、負けると悔しい。そんなのは嫌だ。40年以上前に、裏の中嶋達朗くんから将棋の手ほどきを受けて、それ以降まったく進歩のないぼくと、日々クラスメイトと対戦しながら実力を付けてきた長男とでは、勝ち目は自ずと明らかというものだ。

てなワケで、最初はずっと勝っていたのに、このところは負け続き。日ごろ集中力に欠けるところが多々あるので、思わぬところで「ポカ」をしでかしてしまうのだな。父親として情けない。

 日テレ『斉藤さん』 が面白い!          2008/02/20 

■水曜日よる10時は、日テレ『バンビーノ』の時間帯だったが、現在放送されているのが、観月ありさ主演の『斉藤さん』だ。原作はやはり漫画。毎週フォローしているワケではないが、時間が空けばできるだけ見るようにしている。何故それほど一生懸命見ているかと言うと、渋谷区初台にある「かんてんぱぱ Caffe」が登場したからだ。

先だって、若手実力派の二つ目落語家、三遊亭金翔さんが再び伊那へ来た際に、「Jazz cafe BASE」でちょっとだけいっしょに飲んだのだが、その時の金翔さんのはなし。「去年の7月に初めて伊那へ来た時に、『かんてんぱぱ・詰め合わせセット』をお土産に頂いたんです。東京へ帰って『かんてんスープ』を飲んでみたら、すっごく美味しい。ビックリしました。で、是非また手に入れたいと思ってネットで検索してみたら、なんと! すぐ近くの初台に、かんてんぱぱのアンテナショップがあったんですよ」って、その時には言えなかったけれど、その「かんてんぱぱのお土産」は、北原こどもクリニックでお渡ししたものなのですよ >金翔さん。


 2月16日(土)上野鈴本演芸場 夜の部         2008/02/18 

■せっかく上京するんでね、やっぱり夜は寄席にいかなくちゃてなワケで、ネットで調べたら鈴本演芸場の出演者が一番充実していたんで、宿泊はワシントンホテル系列の「R&B上野広小路」を楽天トラベルで予約した。日本医師会館を夕方5時過ぎに出て、5時半前に鈴本到着。「割引券」をプリントして持っていったので600円引で入場。これは得した気分だ。ところが、この日は代演だらけでお目当ての林家正楽さんも、ロケット団も、林家正蔵さんも柳家権太楼師も、それから一番聴いてみたかった桃月亭白酒さんも休演だった。残念。

でも、寄席というものは本来、ホール落語と違って「この人を聴くんだ!」と意気込んで行くもんじゃなくって、暇つぶしぐらいな気分でゆったりした時間を「あはは!」と笑って同席したお客さんたちといっしょにくつろいで楽しむのが筋なんだろうなぁ。そう言う意味では、前回の新宿末広亭のある種「異常な程の充実」とはぜんぜん違って、のんびりと寄席そのものを満喫できたような気がする。

前座さん  「桃太郎」
柳家さん弥 「壺算」 柳家さん喬門下はみな滑舌がいいねぇ。
ぺぺ桜井  「ギター漫談」 この人はいい! ずっとずっと大切にしたい芸人さんだ。
柳家さん生 「替り目」スキンヘッドでスロー・スターターの不思議な噺家さん。
柳家はん治 「背なで老いてる唐獅子牡丹」桂三枝・作の新作だが、独特の謡い調子が
      「昭和残侠伝」の頃の高倉健の雰囲気をいい感じで醸し出していたな。
笑 組   「漫才」 この冬に豪雪地、長野県飯山市へ営業に行った時の話をしていた。
林家いっ平 「花筏」 インフルエンザに倒れた兄、正蔵の代演。下手だけど、思いのほか真面目で
       一生懸命な高座に好感を持ったよ。
柳家喜多八 「小言念仏」 師匠小三治さんのはまだ聴いたことないんだが、すっごくよかった。

翁家和楽社中「太神楽曲芸」
古今亭菊志ん「湯屋番」 古今亭独特のテンポの良さ、気持がいいねぇ。若い頃の小朝さんに似てるな。
柳家小菊  「粋曲」 こう言うのを「粋だねぇ」ってんだな。

柳亭市馬  「寝床」 柳亭市馬さんをナマで初めて聞いた。しかも大好きな「寝床」をたっぷりと。満足でした。


■翌朝、9時からの講演に間に合うよう8時半にチェックアウトして、ホテル前の横断歩道を信号が赤になりかけているのに慌てて渡ったら、何と信号待ちしていた車の後続車にミニパトが!。「そこのあなた! 信号はちゃんと守ってくださいね!」と、拡声器で婦人警官に言われてしまった。近くを歩いていた人たちが一斉に振り返って、ぼくの顔を見た。恥ずかしかったなあ(^^;;

       

 『明日の広告』佐藤尚之(アスキー新書)         2008/02/17 

■昨日の朝、新宿行きの「あずさ」の中で読み始めて、今日の夜、帰りの「あずさ」が立川付近を通過中に読了した。さとなおさんの本は大方読んできているが、これはまた特別凄いな。奇を衒わない直球ど真ん中のストレート。じつにいい本だと思った。何よりも、ぼくのような素人にもすっごく分かりやすく丁寧に書かれている。それに、この「コミュニケーション・デザイン」の考え方は、広告だけでなく、いろんな分野に直ちに当てはめることができるぞ。

と言うのも、昨日・今日と本駒込の日本医師会館で開催された「平成19年度日本医師会医療情報システム協議会」の基調講演で、MIT客員教授・秋山昌範先生が「医療連携に必要なソシアルネットワーク 〜国民との対話を図るための手段として〜」と題して講演されたのだが、言っていることは、さとなおさんとほとんど同じだったのでビックリしたのだ。「消費者」を「患者(国民)」に、「広告プランナー&クライアント」を「日本医師会&医療従事者」に置き換えれば、構図はまったく同じなのである。

「ユーザー」との長期的な信頼関係を築くためには、まず何よりも「消費者本位」なのだな。それから、ちゃんとアフターケア(フォローアップ)して行くことが重要。秋山先生は、ユーザー(消費者)の心を掴むために大切なことを2つ挙げた。「レラバンシー」(自分にとって何か意味がある? その逆は「そんなの関係ねぇ」だ)と「インサイト」(ピンとくること。そーだそーだと思わせること)だ。さとなおさんの本も、秋山先生の講演も、すごく示唆に富んでいて、明日への元気をもらった気になった。わざわざ土曜日を休診にして東京へ行ってきた甲斐があったな。

 時間がない                 2008/02/14 

■われわれ「伊那のパパズ」の活動の歩み<こちら>にまとめてあります。いつ・誰が・どんな絵本を読んだかが記録されているので、2回目3回目の訪問の際など、ぼくらにとって何よりも便利なアーカイヴになってます(^^;)

■2月11日の祝日の夜は、伊那中央病院救急部の当番日。前回1月25日(金)の出動時には、その日の午前中に水痘と診断され、夕方から反復する腹痛を訴えて受診した4歳女児を診察していてトラブルが発生してしまった。当直の男性看護師さんが気をきかせて、膀胱炎を疑って事前に検尿のオーダーを出してくれてあったのだが、その日午後の診療が長引いて、10分遅刻で伊那中央病院救急部入りしたぼくは、ちょっと気持的にゆとりがなかったのかもしれない。水痘ぐらいで救急外来を受診して……、と思ってしまったのだな。だから女児の母親への対応が冷たくなってしまったようだ。「女の子は会陰部に水疱が多発するから、それが痛いのでしょう。じゃないとすると、便秘かもしれないから浣腸してみますか?」軽くあしらうような態度でそう言った。さらに、検尿の結果を診察室のデスクトップPCで検索する方法が判らずもたもたしていたから、突然、おかあさんがブチ切れた。「あんた! なんなんですか。ぜんぜんわかんないじゃないですか! 娘がお腹をすごく痛がっているから来たのに…… 膀胱炎じゃないんですか? もういいです、帰ります!!」救急室中に響き渡るような大声だった。

ふだん、自分の医院の診察室では絶対に見られない母親の態度だったので、ぼくはたまげてしまった。「娘さんの診断をするのは、おかあさんでも看護師さんでもありません。このぼくです!」ぼくはさすがに怒ってそう大見得を切った。でも、そこで3回深呼吸をしてから気持を鎮めて「おかあさん、すみませんでした。慣れないもので、検査結果の見方が判らないのですよ。いま、看護師さんに訊いてみますから、もう少しお待ち下さい」 じつはこの時、ぼくのはらわたは煮えくり返っていたのだが、当直看護師さんを呼んで検尿の結果をモニター画面に出してもらった。そしたら、尿沈差で白血球が多数出ている。あっちゃぁ、確かに膀胱炎の所見ではないか!

小児科医の面目丸つぶれだったな。怒り心頭の母親に平身低頭謝って、抗生物質を処方した。救急外来なので、処方は1日分しか出せません。すみませんが明日もう一度来院していただいて、よく診てもらってください。本当にどうもすみませんでした。医者として屈辱的だったが、悪いのは自分だから仕方がなかった。

帰宅後も興奮冷めやらぬ状況であったが、よーく考えてみたら、水痘で受診した際に処方された亜鉛華軟膏を母親が娘の会陰部に塗りたくったがために、その刺激で尿道炎を起こしてしまったのではないかと思う。でも、さらによく考えてみたら、翌日は土曜日で、伊那中央病院は「お休み」ではないか! あっちゃぁ、おかあさん、本当にスミマセンでした。

そんなワケで、今回からは診察の前に必ず「本日、小児救急の当番で来ました、北原こどもクリニックの北原文徳と申します。よろしくお願いいたします。さて、今日はどうされましたか?」と、自己紹介することにした。お互い信頼のもとに気持ちよく診療したいですからね。

■2月13日(水)、の午後は、箕輪南小学校で5、6年生を対象に「薬物乱用防止」の授業を一時間(2時〜3時)させてもらった。以前、伊那東小学校の養護教諭だった塩沢先生が、現在は箕輪南小学校に勤務されていて、去年に続いて講義の依頼があったのだ。うれしかったな。5年生にはちょっと難しかったかもしれないが、バージャー病患者のスライドとか、シンナー実験(脳や骨や歯が溶ける)とか、強く印象に残ってくれたらいいな。

■同日よるは、上伊那医師会講堂で、上伊那の小学校・中学校の養護教諭と学校医との懇談会。年に一度しか開催されない会だが、すごく勉強になる。いま学校の現場では何が問題となっているのか、養護の先生は生徒たちのどんな症状に困っているのか、生々しく伝わってくる。


■今週末は、日本医師会医療情報システム協議会に出席するため再び上京しなければならない。締め切りを過ぎた原稿を3本抱えたままである。PowerBookG4 を携帯して、東京で原稿を仕上げなければならないかな。大変だ。

 天神さま                 2008/02/09 

■今日は境区の小学生の「天神さま」の行事の日だった。子供たちは朝から集まって、天神さまの「お札」を配って廻り、境の公民館で獅子舞を見て、勉強がよくできるようになるよう、お獅子に頭を噛んでもらった。お昼に炊き込み御飯と豚汁をご馳走になって解散。「天神さま」の時にはどの地区でも「炊き込みごはん」を子供たちは食べるらしい。何故なんだろう?

■それにしても、今日は午後から大変な雪になった。明日の明け方には、積雪30cmぐらいにはなるか。

アマゾンでまた、落語のDVDを買ってしまった。『大師匠』DVD5枚組。26%引きなんでね。その1巻目が、柳家さん喬「初天神〜真田小僧」&川柳川柳「ガーコン」。もの凄い組み合わせだねえ(^^;; このDVDの終いに、さん喬師と川柳師の対談が収録されていて、これが面白かった。なかなか聞けない話だからね。さん喬さんが喬太郎さんのことを言う場面があるんだけど、なるほどねぇ、師匠として一番弟子に、それなりにいろいろと気を使っていたんだね。「この芽だけは摘むのをよそう。そう思ったんですよ。」って。いい話だねえ。

去年のGWに、上野鈴本演芸場で柳家さん喬さんの「初天神」が聴けた。うれしかったなあ。先の対談でもさん喬師は言っているけど、いま落語協会で「初天神」をかける落語家はいっぱいいるが、その出のおお元の7〜8割はさん喬師匠から教わったものなのだそうだ。そう言えば、「らくご絵本」で聴いた古今亭菊之丞さんの「初天神」も、去年の7月に伊那の「串正羅針盤」2階で聴いた、三遊亭金翔さんの「初天神」も、柳家さん喬師の匂いがした。親子で手をつないで「よいよい、よいやさっ」とか、飴をほおばる仕草とか、凧の糸を手繰る仕草とか。柳家小三治師の「初天神」とは違うんだね。

■柳家喬太郎さんが、師匠柳家さん喬の「初天神」の話を書いているサイトがたしかあったな。そうそう、「ポプラビーチ」。これまた、いい話だねえ(^^)。

最近、ビックリするような「初天神」を聴いた。こいつは驚いた! すげーや。いえね、「ラジオデイズ」からダウンロードした、三遊亭遊雀さんの「初天神」。ここに登場する金坊はもの凄いよ! たまげたね。以前にも書いたことがあるが、「初天神」という落語は仕草で見せるので「聴いただけ」ではその面白さの半分も伝わらない。それが、三遊亭遊雀さんの落語だと、聴いただけで「もの凄い破壊力」に満ちているもんだから、ぜひ一度、生の高座で拝見してみたいものだよ。

 最近読んでいる本             2008/02/08 

■最近読んだ本、いま読んでいる本、これから読む予定の本。

1)『噺家カミさん繁盛記』郡山和世(講談社文庫)
   伊那のブックオフで、イザベラ・バード『日本奥地紀行』とともに、105円で購入。
   まぁ、読まなくてもよかった本か。小三治さんの弟子たちの実態(半数近くが辞めてしまってる)
   が(前座名と付き合わすのが大変だった)がよーく分かって面白かったが……。

2)『屋上のとんがり帽子』折原恵・写真(福音館書店)
   これは面白かったな。ぜんぜん知らなかった。 まさか、ニューヨーク・マンハッタンのビルの屋上に、
   落語「らくだ」に登場する漬け物樽のオバケのような、特大風呂桶のような「木の樽」が乱立していようとは!
   ふしぎな景色だねぇ。ほんと、「オズの魔法使い」のブリキ男の「あたま」みたいだ。
   風が吹いたら桶屋が儲かるという諺もあるが、NYシティーでは今も桶屋は儲かってるんだな(^^;)

3)『遊動亭円木』辻原登(文春文庫)
   先だって、銀座「教文館」の落語棚で見つけて買ってきた本。これは当たり!だ。じつに面白い。
   あと、70ページで読み終わる。飄々とした盲目の二つ目落語家「円木」のイメージは、渡瀬恒彦か小林薫か。
   それにしても、文庫解説の堀江敏幸氏は酷いな。ぜんぶネタバレじゃん。読まなきゃよかった。
   ついさっき見に行ったら、書評家岡武さんも今この本を読んでいるという。面白いね、このシンクロ。

4)『青に候』志水辰夫(新潮社)
   ずいぶん前から読んでいるのだが、ちっとも読み進まない。
   今年の読書は、どうも江戸と時代小説が中心となる予感。
   おいらもいよいよ、藤沢周平か(^^;;

5)『発達障害の子どもたち』杉山登志郎(講談社現代新書 1922)
   ゆっくり、じっくり読んでいます。勉強になります。

6)『寿下無のささやき』立川談四郎(暮らしの手帖社)

7)『錏峨哢た(アガルタ)』花村萬月(集英社) 早く読み始めたいぞ!

8)『新世界より・上』貴志祐介(講談社) 信頼する書評家、吉野仁さんが褒めていた。これは読まねば。

9)『ザ・テラー 上・下』ダン・シモンズ(ハヤカワ文庫) 大好きな極地もの。
   ジェイムス・テイラーの曲The Frozen Man(生きている頃の)も登場するか?

 最近食べた「おいしいもの」          2008/02/06 

■Aソ連型インフルエンザ流行のピークは先週だったようだ。連日、昼休みもほとんど取れずに午前午後ほぼ連続で診療した1週間だったが、週末に降った雪の影響か、今週に入ってその勢いは弱まってきた。詳しくは、しばらく更新をサボっていた「感染症情報」をご参照ください。

■ 先日、高遠の兄から半分お裾分けしてもらったのが「クラブハリエのバームクーヘン」。1年ちょっと前に放送された「とんねるず みなさんのおかげでしたスペシャル」芸能人御用達お土産ベスト20(2006)の第3位に入った知る人ぞ知る逸品で、テレビを見て早速ネット通販で購入しようとしたのだが「ただいま注文が殺到しており、お取り扱いできません」とのことで諦めた。それ以来すっかり忘れていたのだが、思わぬところでご対面と相成った次第。薄く切って食してみると、これがまぁ、何とも上品な甘さと香り、ソフトな舌触りで、噂に違わぬ美味しさに舌を巻いたのだった。

■雪降る日曜日の夜に「いなっせ」脇の「美華」へ行った。親子共々「辛いもの好き」なので、身も心も心底凍えてしまいそうなこんな日には、美華の「ワタリガニのチリソース炒め」と「麻婆豆腐」が食べたくなってしまうのだな。この日は、妻が「海鮮スープそば」、長男はラーメン、次男は「五目あんかけおこげ」を注文した。ぼくは「麻婆飯」にせずに一品料理で「麻婆豆腐」を頼んだので、ライスだけ追加で注文した。

ここの「麻婆豆腐」は絶品だ。「麻」は麻酔の「麻」。舌が痺れる花山椒の辛さなのだ。さらに、本場のトーチ(豆鼓)、豆板醤、甜麺醤(ティエンメンジャン)が味の深みを増す。あつあつの御飯にかけてハフハフ食うと、これがまぁ最高に旨くて辛いのだ。土鍋に入ってくる「ワタリガニのチリソース炒め」も、我が家では来れば毎回必ず注文する定番の逸品。一度食べたら癖になること請け合いの美味しさだ。それにしても、「美華」をネットで検索すると桜ん坊さんのサイトぐらいしかヒットしないのだが、これほど美味しい中華は近隣では決して食べられないと思っているのは、わが家だけなのだろうか? じつに不思議だ。

 演者とライブ感覚について(その2)          2008/02/03 

■2月1日(金)の夜、伊那市医師会の例会が「マリエール伊那」で開かれた。医師だけでなく、各医院のスタッフ(看護師・事務職員)も参加する年に一度の懇親会だ。毎年、宴会の前に講師を招いて講演会がある。例年、斡旋エージェントから紹介される手練れの講師のお話を聴くのだが、ここ数年は厚生係のT先生が頑張って、毎回異色の講師が招かれている。今年は「タモリのジャポニカロゴス」に出演している、町田健名古屋大学教授が日本語の特性について話をしてくれた。面白かったなあ。

町田先生はマシンガンの如く高速連射で言葉を捲し立てるのだが、当初は空振りが目立った。いつも若い学生相手に講義をして受けまくるのとは勝手がぜんぜん違っていたようだ。聴衆が違うしね、それに会場も結婚式場だから中途半端に広くて聴き手の気が散ってしまうのだ。しかしさすがプロだね。決して挫けず投げ出さず、終盤にはがっちりと聴衆の心を掴んでいたな。変に「芸人ズレ」していない素人っぽさが、かえってよかったのかもしれない。

■会場の広さと天井の高さは、講演の前に事前にチェックしておく必要がある。ぼくら「伊那のパパズ・絵本ライヴ」でも、天井が高い小学校の体育館やランチルームなんてのは案外やりにくいものだ。演者の声が上に拡散してしまって、言葉が聴衆に真っ直ぐ届かないのだ。天井が低く、ちょいと狭いくらいの部屋で、子供たちが肩寄せ合って体育座りしているくらいの空間が「絵本の読み聞かせ」にはちょうどよい。

先日、「爆笑問題のニッポンの教養」を見ていたら、ウナギと芭蕉と「そぞろ神」の話をしていて、鮎の稚魚が水槽の中で群れて泳いでいるのを見た太田さんがこのような意味の話(不正確な再現です)をした。「僕らの漫才でもね、会場の密度は重要なんです。聴衆と俺と田中との距離でできる三角形が大切なのね。つまり、聴衆との距離が近くて、しかも聴衆同士が肩触れ合うくらいに密に接していると、最初からガンガン飛ばしてもどっかんどっかん受けるのね。でも、○○ホールとか聴衆との距離があって、椅子席で客同士にも距離がある時には、二人の間の間隔も離して、ゆっくりと場を盛り上げるように変えているんです」なるほどねぇ、プロはそこまで考えに入れてしゃべっているのだなぁ。勉強になるねぇ(^^;)

■噺家と聴衆との「ライヴ感覚」に関しては、以下にちょうどいいテキストを見つけてきましたので、どうぞご参照ください。

「演芸、その現場から 第8回 落語は人間関係である」 大友浩(2008年1月25日)

「立川志の輔インタビュー」(365°/NTT)

 「受ける」という言葉の語源          2008/02/01 

■『ジッポウ4』(2007/冬/ダイヤモンド社)を買ってきてパラパラとめくっていたら、小沢昭一さんのインタビューが載っていた。浄土真宗には、節談説教という聴衆の情感に訴える独自の布教方法が伝承されてきていて、これが日本の「話芸」のルーツとされているのだそうだ。かつて、日本の放浪芸をデンスケを肩に全国各地を旅しながら人知れぬ芸能者を訪ね歩いて録音して廻った小沢昭一さんは、自らも稽古にはげみ、今では「節談説教」を実演して歩いているのだという。
 先日、親鸞聖人750回大遠忌の関連で、神戸の別院さんで節談説教を5日間演じさせていただきました。節談を初めて聞く人は、びっくりされますね。ただもうあっけにとられたように聞いているだけだから、途中で「受け念仏というものがあるんだ」といったんです。「今日のお客さんは静かすぎるから、ひとつ、ここぞ有難いというとこらは、ナンマイダブナンマイダブといってください」とお願いしたけれども、なかなかやらない。しょうがないから「ここは、一番ナンマイダブのあるところですよ」というと、ようやく小さい声で「ナンマイダブナンマイダブ」と。そんな冗談も一種のお笑いとして、間に入れながらやったんですけれどね。

 芝居でもいいところで、「音羽屋!」「橘屋!」と声をかける。あれでやるほうも乗ってくるわけです。「社長の話はどうもウケないね」とか、芸人も「きょうはウケたよ」と楽屋に帰ってきていいますが、あの「ウケる」という言葉も、ナンマイダブの受け念仏から来ているんですよ。

『ジッポウ4』(2007/冬/ダイヤモンド社) 29ページ より
「節談説教と受け念仏」というものを聞いたことがなかったので、具体的なイメージがぜんぜん湧かない。そこでネットで検索してみると、ちゃんと音声があるんですね。それが、<これ>です。

■ぼくは以前から「講演」というのは、落語や講談、浪曲、それに絵本の読み聞かせなどと同じ「芸能」であると感じてきた。演者は一人きり。向かい合う聴衆は大勢。同じ時間その場(同じ空間)にいるという「ライヴ感覚」を、演者と聴衆とが共有することが共通しているのだが、だとすれば、同じくライヴを信条とする「演劇」や「音楽(クラシック・ロック・ジャズなど)コンサート」とどこが違うのか?

それは、客席の照明が消されてまっ暗になるか、点灯したまま観客の顔が演者からよく見えるかの違いなのである。実は、ここんところがもの凄く重要なのだ。(つづく)

 『ちりとてちん』第100回         2008/01/30 

■今日の『ちりとてちん』は よかった。先週末から、暗雲立ちこめる展開を予見させるような内容で、何だか一気に気分が滅入ってしまったから(もちろん、ファン感謝祭応募ハガキが家族4人全員落選してしまったショックも大きいのだが)今日の四草入門の経緯は「そー来たか! 脚本家さん参りました!」というくらい、涙でぐしょぐしょの大満足の回であったな。九官鳥が吐いて動じる四草の仕草がじつに可笑しい。その後で、草若師匠が四草の頭を「クシャクシャ」ってするシーンが良かったねぇ(^^)

そしたら、小5の長男がHDレコーダーを操作して過去に取り貯めた『ちりとてちん』を次々と再生ながら「あれ?これじゃないなぁ……」などと言いながらリストをチェックしている。「おいおい、なにしてるんだい?」と訊くと、「あった、あった! これこれ」息子はそう言って、ある回の録画分を途中から再生し始めたのだ。見ると、別れ別れになっていた徒然亭一門が再結集する週のはなしで、この日は四草の回だ。中華料理屋の二階に下宿する四草を喜代美と草々、草原が訪ねる場面。

鳥篭の九官鳥が「セヲー、ハヤミッ!」と鳴くシーン。泣けたね。その後に続く回想シーンで、なんと! 草若師匠が四草の頭を「クシャクシャ」ってしているのだ。あっ! 今日は2回目だったのだね。分からなかったなぁ。気がついた息子は偉いぞ(^^;)

 入船亭扇橋『噺家渡世』(うなぎ書房) 2008/01/26 

■2月3日(日)の『ちりとてちん』ファン感謝デーには、家族全員すっかり参加するつもりになっていて、大阪日帰りはちょいとキツイけれども、岐阜羽島まで車で行って新幹線こだまで往復すれば何てこたぁないわなと思って覚悟は決めていた。妻が往復葉書を4枚買ってきて、家族4人がそれぞれに如何に自分が「元祖ちりとてファン」であるかを綿々と文章にしたためてNHK大阪へ送ったという訳だ。長男は小草若の似顔絵を、次男は草々のアフロヘアーを、ぼくは太めの草原の絵を描いた。妻は今朝「おめでとうございます! NHKホールへおいで下さい!!」と書かれた返信ハガキを受け取った「夢」を見たという。あはは!

今日、あちこちのブログを見ると、残念ながら応募ハズレましたというコメントが散見される。あれれ? 都会ではもう返信ハガキが送られてきているみたいだ。てぇことは、信州伊那へは月曜日に配達されるのかな? ああ楽しみだねぇ(^^)  小5の長男は「ねぇおとうさん! もしもハガキ3枚当たったら、1枚で2人行けるんでしょ? だったら1枚あまるから、その1枚、ちりとてファンの僕の担任の先生にあげてもいいかな?」そう言った。「いいともさぁ、もちろんだとも!」ぼくはそう答えたね(^^;)

ところが、「スタッフ日記」を読むと、なんと応募総数1万件以上だって! 抽選で当選するのは15分の1の確率だと! 長野県から一家4人で応募するような好き者なんていないだろうとタカをくくっていたら、北は北海道から南は沖縄まで応募ハガキがきたんだって。こりゃ、先生に当選ハガキをまわすどころじゃないよねぇ(^^;


■先だって上京した際に、新宿末広亭で入船亭扇橋師匠の「つる」を聴けたのが嬉しかったのだが、よいよいのおじいちゃん、なんてね、ちょいとバカにしてたんだ、今までは。ごめんなさい。翌日の日曜日、銀座に出ていつものルートで最初は「山野楽器本店」。1F奥へ行って、三遊亭白鳥の新しいCD「任侠流山動物園」と、柳家喬太郎「純情日記横浜編・澁谷編」(じつは持ってなかった)を購入。続いてジャズフロアにエスカレーターで上がって、オスカー・ピーターソン・トリオの白黒DVDと、橋本徹編集のコンピ「APRES-MIDI VOICES〜SWEDISH BEAUTY FOR SPICE OF LIFE」を見つけて購入。アマゾンでは「品切れ」になっていたのだ。このCDの話はいずれまた。

山野楽器を出ると、次は教文館。1Fから狭い階段を上がると、正面に伝統芸能コーナーがあるのです。銀座だから歌舞伎座。だから、歌舞伎役者の本がたくさん並び、その横に落語関連の本が続く。この棚を作っている書店員さんは、相当の落語通と見た。で、平積みされていたのが『噺家渡世』入船亭扇橋(うなぎ書房)。「直筆サイン入り」と書かれていたんでね、ちょいと高かったけれども思い切って買った。芸能生活50周年記念なんだって。読んでみると意外な発見が数々あって、なかなかに面白かったな(つづく)。

 谷川俊太郎・作詞、小室等・作曲のプロテスト・ソング『おしっこ』のこと 2008/01/22 

■1月20日(日)は、諏訪から帰ったあと夕方から雪になった。この日は、伊那中央病院救急部へ小児一次救急当番で出動する日。月に2回行っているのだが、前回は12月16日で1カ月以上も空いてしまった。つまりは、年末年始の一番忙しい時に出動せずに、全部伊那中央病院小児科の先生にお願いしてしまったということだ。ごめんなさい。雪なのに、救急車が次々とやって来て、救急室は慌ただしい。ぼくは第二診察室で子供を4人診てお役ご免。すみません。

■ところで、諏訪市立高島小学校で披露した新曲『おしっこ』は、谷川俊太郎・作詞、小室等・作曲のプロテスト・ソングだ。

伊那のパパズには似合わないキャラの深刻な内容の曲(曲調は軽快)ではあったのだが、ぼくが「是非やりたい」と無理にお願いしてプログラムに入れてもらった。「まるで六文銭のように」のCD『はじまりはじまる』の7曲目に収録された「この曲」を、ぼくはえらく気に入ってしまったのだ。楽譜はないので、CDを聴きながらギターを弾いてコードを確かめた。幸い、簡単なコードだった。

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G A7 C  G
G A7 C  G
G Am D7  Em
C A7 C♯dim G D7
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でも、最後のフレーズのギター・コードは自信がない。
たまたま昨日ググってみたら、この曲の楽譜が存在することを知った。

載っているのは『話の特集2005(話の特集 創刊40周年記念)』矢崎泰久・責任編集・WAVE出版(2005)だ。

あっ! この雑誌、たしか発売時に買って持っていたよな。そう思って探したのだが、どこにもない。そう言えば、先だって書庫の本をたくさん処分した際に「高遠本の家」へいっしょに引き取ってもらったことを想い出した。しまった! 取っておけばよかった。残念無念。

 パパズ伊那 絵本ライヴ(その40)諏訪市立高島小学校親子文庫   2008/01/20 

■寒い朝だった。でも、諏訪はもっと寒いんだね。今日は上諏訪の市街地からちょいと高台に登った所にある「高島小学校」で、午前10時から「絵本ライヴ」。妻子同伴で早々9時過ぎに小学校に着くと、すでに駐車場係のお父さんが待機していて誘導してくれた。ありがとうございます。案内された控室はなんと!「校長室」。築5年のまだ新しい建物だから実にキレイな学校だ。日曜日の朝なのに、校長先生が直々にお出迎えして下さって恐縮デス。教頭先生もいらして下さいましたよ。ありがたいなぁ。

PTA会長さんをはじめ、お父さんもたくさん来てくれた。ありがたいねぇ。大人子供合わせると、100人近く集まってくれただろうか。われわれパパズにとって諏訪は初見参の地。茅野とか諏訪とかは、絵本の読み聞かせ活動が盛んな土地柄だ。僕らのような適当でいい加減な「読み聞かせグループ」が「本場」でアバウトに絵本を読んでもいいんだろうか? 緊張するなぁ(^^;;

■本日の出し物■

『はじめまして』
『かあちゃんのせんたくキック』平田昌広・文、井上洋介・絵(文化出版局) →伊東
『ムニャムニャゆきのバス』長新太(偕成社)   → 北原

『かごからとびだした』
『パンツのはきかた』

『かえるをのんだととさま』作: 日野 十成 絵: 斉藤 隆夫(福音館書店)→ 坂本
『おしっこ』谷川俊太郎・作詞、小室等・作曲(絵本はなくて歌)→ 全員

『いいからいいから2』長谷川義史(絵本館)  → 宮脇
『しんた、ちょうたのすっとび!かごどうちゅう』飯野和好( 学研) → 倉科

『うちのかぞく』
『ふうせん』
『世界中のこどもたちが103』

■諏訪市立高島小学校の校長先生、教頭先生、PTA会長さん。それから、高島小学校親子文庫運営委員長の小口さん、本当にどうもありがとうございました。パパズ5人それぞれに「大社せんべい」のおみやげまで頂戴してしまい恐縮です。ありがとうございました。

 ジャズも〜落語も〜絵本の読み聞かせも〜やっぱり「生ライヴ」にかぎるねぇ(2)2008/01/19 

■昨年秋の保育園での内科健診は11月に実施したのだが、ちょうどインフルエンザの予防接種真っ最中で、高遠第一保育園でも、美篶中央保育園でも、竜東保育園でも、結局一回も絵本を読む機会はなかった。園児たちは楽しみにしてくれていたみたいだったが、如何せん時間がない。聴診器をそそくさとカバンにしまうと「じゃぁまたね」で今日はお終い。そんな毎日の連続だった。

■伊那市竜東保育園は、市内で一番収容園児の多い保育園だ。たぶん200人以上はいるね。ここの健診は、毎回水曜日の午後に時間的ゆとりを持って行っているのだが、11月の水曜日の午後はみな、インフルエンザ集中予防接種月間のためふさがっている。しかたがないので、年少・年長・年中の3回に分けて健診をすることとなった。で、最後の年中組を年末に終える予定だったのだが、菊組でインフルエンザが流行してしまい、健診は年越しとなった。その延期となった健診が、先日の16日(水)の午後に行われたのだが、今度は年中組のもう1クラス「すみれ組」でフルが流行してしまい、10人強が欠席。でも仕方ないのでそのまま実施とあいなった。

何となく欲求不満だったのは僕だけではなかったようだ。園長さんから「今日はぜひ、健診後に絵本を読んでくださいね!」そう言われた。うれしかった(^^)

たぶん、いつも通り年長さんのクラスで読むのかなぁと思って、ちょいと難しい絵本をそろえて臨んだのだが、園長先生は「今日は、せっかくですので健診を済ませた年中さんに絵本を読んで下さい」そうおっしゃった。はて、困ったぞ。しょうがないので、当初の予定通り年長さん向けの絵本を読んだ。

1)『なんでしょなんでしょ』畠畑純(アリス館)
  クイズ形式の絵本だが、年中組の園児たちは予想に反して次々と正解してゆく。これには驚いたね。

2)『てじな』土屋富士夫・作(福音館書店)
  この絵本は、世間で言われているほどには子供たちに受けないんじゃないのか? 園児は「お情けの拍手」をしてくれたが。

3)『かたあしのひよこ』水谷章三・文、いとうひろし・絵(ほるぷ出版)
  『ランパンパン』と同じ話だが、くっきりハッキリした絵がいいのかな。子供たちは食い入るように集中してくれたよ。
   でも、片足になったひよこの「おっぽ」が、まるで反対側の足に見えてしまうのが難点か。

4)『どうぶつにふくをきせてはいけません』ジュディ・バレット・文、ロン・バレット・画(朔北社)
   保育園児には分かりにくい絵本だったみたい。

5)『はつてんじん』川端誠(クレヨンハウス)
  いつものように、古今亭志ん朝ばりの早口で読んだのだが、何回も噛んでしまい、練習不足が露呈してしまった。これではいけないな。反省。でも、年中組も、あと2カ月もすれば年長組になるんだね。その成長が垣間見られたとでもいいましょうか、しっかりついてくるのだよ、ぼくの話に。これには正直おどろいた。年中の子供たちを甘く見てはいけませんよね(^^;)

 ジャズも〜落語も〜絵本の読み聞かせも〜やっぱり「生ライヴ」にかぎるねぇ! 2008/01/17 

『落語家論』柳家小三治(ちくま文庫)を読み終わった。いや、これは傑作ですよ! 面白い。じつに面白い。柳家小三治という人が、類い希なる文章の書き手であることが再認識できる名著でありますよ。もう、絶賛しちゃうね。あんまり面白かったんで、昔に読んだ『まくら』『もひとつ・まくら』を本棚から取りだして再度読み始めたところだ。

■小三治さんと言えば、先週の土曜日の夜、僕は新宿末広亭右側の桟敷席に座りながら、この日の夜の主任(トリ)柳家小三治師の出番を待っていた。と言うのも、翌日の日曜日、新高輪プリンス大宴会場「パミール」で、AD/HD(注意欠陥多動障害)の子供用に保険適応されたばかりの新薬、コンサータ錠(メチルフェニデート徐放剤)を処方するための認定資格講習会があったので久々に一人で上京する必要が生じたのだ。ただ、勉強してくるだけでは勿体ない。てなワケで、講習会の前日の夕方に東京入りして寄席にでも行って落語三昧に浸ろうという寸法(^^;

土曜日の午後1時過ぎまで診療して、それから中央道を飛ばして茅野駅に車を停め、14:25分発の「スーパーあずさ」に乗ると、八王子向こうで起きた人身事故のために電車は遅れて結局、午後5時前に新宿駅着。これから上野・浅草方面へ向かうのは時間的にちと苦しいてなワケで、地下道を新宿末広亭へ向かう。伊那を出た時には雨だったが、茅野ではみぞれに変わり、新宿では再び冷たい雨となった。

新年を迎えて既に2週間が過ぎ、世の中すっかりお正月ムードもなくなっちゃったのだが、寄席では1月20日までが正月特別公演なんだね。門松やお供え餅もそのままに、正月二之席よるの部が開幕だ。印刷された出演者とずいぶん違って代演が目立つが、誰も文句を言わない。むしろ、得した気分だったな。だって、当日はこんな面子が揃ったんだよ。

■夜の部■

前 座 柳家緑君
落 語 柳亭こみち

落 語 柳亭燕路  『ざるや』
落 語 三遊亭白鳥 『おばさん自衛隊』
奇 術 花島世津子 「おめでたいマジック」
落 語 入船亭扇橋  『つる』
落 語 古今亭志ん五 『長短』
太神楽 柳貴家小雪
落 語 柳家はん治  『ぼやき居酒屋』
落 語 三遊亭金馬 『禁酒番屋』
漫 才 昭和のいる・こいる
落 語 川柳川柳  『ガーコン』
落 語 金原亭伯楽 『家見舞い』

- お 仲 入 り -

寿獅子 鏡味仙三郎&翁家和楽社中 『獅子舞』
落 語 春風亭一朝  『宗論』
落 語 柳家さん喬  『ねずみ』
落 語 古今亭志ん駒 『海上自衛隊の漫談』
紙切り 林家正楽
主 任 柳家小三治  『粗忽長屋』

この日のもうけものは、三遊亭円丈の代演、三遊亭白鳥。この人は面白い! 写真から想像したよりも、声がハイトーンなんだね。入船亭扇橋さんは、そのお姿を拝見できただけで、満足してしまいますね。飄々とした肩の力を抜き切った佇まいは、絶品でありますねぇ。いやぁ、よかった。そうして、恥ずかしながら『生ガーコン』であります。小生、初体験であります。CDは持っているし、NHK『日本の話芸』でやった時のビデオも見ました。もちろん、御著書は2年前に買って2回読みました。でも、川柳師が言うほどのスキャンダラスな本じゃぁないし、それほどの暴露ネタ満載の本じゃないねぇ。

2ちゃんねるで、さん喬師が「ねずみ」を5分で演じると話題になっていたが、本当だったんだね。いや、おどろいた。「まくら」をたっぷりと語って、それから観光の話。無理にダイジェストしても、『ねずみ』という落語の本質は損なわれないのだなぁ。

で、トリは小三治さん。まくらもそこそこに、あっさりと『粗忽長屋』。土曜日だから、深夜寄席がある。だから、あっさりと。終演は、よる8時50分。

 まるで六文銭のように          2008/01/11 

■2007/12/29 記載の、今年よく聴いたCD「ベスト10+α」は、不思議なことに「第1位」〜「第4位」までがすべて一発録り録音のCDなのだった。JTと森山さんのCDはライヴ録音だから当然なのだが、3位のきたはらいくも、4位のまるで六文銭のようにも、スタジオ録音なんだけれども、重ね録りせずに一発勝負のスタジオ内ライヴ録音なのだ。もちろん「打ち込み」なしの緊張感あふれる「ナマ音」だ。そこがいいんだと思う。

『はじまりはじまる』まるで六文銭のように (FORLIFE)は、じつに不思議なアルバムだ。何がって、これほどCDのリスナーを限定してしまったアルバムも珍しいからだ。その想定したリスナーの年齢とは、60歳±10歳。ぼくは今49歳だが、辛うじて引っかかったリスナーかな。ぼくより若い世代の人は、たぶん買わないんじゃないか。いまの若者たちは、吉田拓郎は知ってても、六文銭なんて知らないし興味もないだろうから。

ただ、誤解してはいけないのだが、このCDをノスタルジーに浸るために購入するとしっぺ返しを食らうことになる。確かに「街と飛行船」や「夏二人で」「雨が空から降れば」は素晴らしい。でもその素晴らしさは、懐かしさの中にあるんじゃなくて、「いま、ここ」で聴いているからこそ素晴らしいのだ。そういう意味で言えば、このCDの中で最も聴き応えのある曲は「ただあたたかくカラッポに」と「おしっこ」「引き潮」それに巻頭の「はじまりはじまる」などの新曲にこそあると思う。

『六文銭メモリアル』も『キングサーモンのいる島』も『いま生きていること』も、LPで現在も所有している。飯山に住んでいた時に、飯山線わきのお寺の本堂でライヴをした小室等さんに3枚ともサインしてもらった。今もぼくの大切な「たからもの」だ。あのころ、『いま生きていること』のラストに収録されていた「無題」という歌を、ぼくはよくギターで弾いてみていた。しみじみと心に沁み入る名曲だ。 今回発売されたCDには、この「無題」も収録されている。で、驚いたのだが、この曲は「いま・ここ」この時代に聴いてこそズッシリと胸に深く響いてくるのだ。ぼくは、心してこのCDを繰り返し聴き続けていきたいと思うぞ。

追記 「無題」という曲が収録されていたのは、『いま生きていること』ではなくて『六文銭メモリアル』のほうでした。すみません。訂正いたします。

 『日本橋バビロン』小林信彦(文藝春秋)      2008/01/07 

■ただただ淡々と書き進められて行くのだが、著者のさまざまな思いが交錯して深い陰影をなし、ずっしりと重い読後感を残した。

『星新一 1001話をつくった人』最相葉月(新潮社)を読んだ時に、『ヒッチコックマガジン』編集長・中原弓彦(小林信彦)氏が、デビュー間もない星新一をずいぶんと支援していたことを初めて知った。かたや「星製薬」を潰した二代目御曹司、かたや江戸時代の両国で享保八年に創業した老舗和菓子店「立花屋本店」の十代目店主・小林安右衛門になっていたかもしれなかった編集長。小林信彦氏はきっと何か思うところがあったに違いない。

『東京人 9月号/2007 No.244』の、三遊亭圓朝特集の中で、三遊亭圓楽さんはこんなことを語っている。
 そんな圓朝師匠も最初のうちはもっぱら品川や浅草の二流どころばかり出てたようです。
 いまと違いまして。江戸から明治にかけて、一流の寄席というと両国だったんです。なにしろ、金に物を言わせた奇抜な振る舞いが評判を呼んで「十八大通」と言われた蔵前の札差たちがバックについていましたからね。(29ページ)
その昔は、銀座よりも浅草よりも、両国橋西側の広小路が一番の繁華街だったのだ。いや、知らなかった。隅田川「川開き」の花火も両国で上がったのだ。落語「たがや」は両国橋の上が舞台だ。しかも、いまの両国は「向両国」とか「東両国」とか呼ばれて場末だったのだな。その街が、関東大震災と東京大空襲によって壊滅してしまう。哀しい。

ぼくが興味深かったのは、小林信彦氏が経験した幼児期の2つの不思議な出来事の記憶だ。120ページに載っている。この記憶が、現在の小林氏にどんな影響を及ぼしていたのだろうか? 小林信彦氏の父、そして祖父。著者はしっかりと歴代の血を受け継いでいるのだなあ。そう思った。それから、なぜタイトルが「バビロン」なのか疑問に感じながら読み進んだのだが、ラストでなるほど! と理解できました。凄い本だな。

 柳家小三治 と 三笑亭可楽          2008/01/05 

■今日の『日本の話芸』は良かった。ほんとうに良かった。柳家小三治の「初天神」のことだよ。ぼくは小三治さんの落語を聴いて(見て)いて、何とも言えない「しあわせな気持」になった。落語の醍醐味って、コレに尽きるんじゃないだろうか。

会場の雰囲気もよく、小三治さん、いつになく「ふわっ」と肩の力を抜いて登場したかと思ったら、じつにいい間合いで「ずずっ」とお茶すすってから「まくら」に入った。ビックリしたのは、往年の名人たちの声色や仕草のものまねを次々に披露してくれたことだ。春風亭柳橋、三遊亭金馬(先代)、三笑亭可楽(八代目)、三遊亭圓生(六代目)、古今亭志ん生。これがまた、みなよく似ているのだ。これは貴重な映像だね。

magokoro.jpg
写真は、2007年2月7日の日記に載せたもの
テレビの白黒画面に映っているショボくれた噺家が三笑亭可楽だ。


■なかでも、三笑亭可楽はそっくりだった。例の「柳家小三治DVD全集」付属本のロング・インタビューにも載っているが、小三治さんは三笑亭可楽が大好きだと公言している。「小さん」の名は継ぐつもりは全くないが、三笑亭可楽の名なら継いでもいいと思っている、とまで言っている。それほどまで好きなのだな。今日はTVを見ながらよーく分かったよ。

三笑亭可楽のファンは、何故かみなジャズ・ファンなのだという。あの木島則夫モーニングショーでクラリネットのジャズ演奏をしていた北村英治さんが可楽の熱烈なファンであることはつとに有名だ。フランク永井もそうだった。ちなみに僕も好きだ(^^;; 以前から所有していたCD、テープに加えて、最近ではネットからも(文化放送所有音源の「落語の蔵」)何本か落とした。昨年末に松本に出向いた際には、「ほんやらどう」で可楽の中古CDを3枚見つけて購入したので、ずいぶんとコレクションが増えた。

『談志絶倒昭和落語家伝』立川談志(大和書房)を読むと、家元は可楽に対してなかなかに手厳しい発言をしている。でも以下のような文章を発見してうれしくなってしまったよ。
 クラリネット奏者の北村英治さんは可楽を愛する。ついでにいうと、ジャズメンには、落語家の中で可楽を一番に挙げる人が多い。で、北村さん。
「北村さん、可楽のどこがいいんんですか」
「すごいフレーズだ」
音楽家らしい言い方だ。
「すごいフレーズがあるよ。『子別れ』でねェ、
”先(せん)の女房はお前さんには過ぎ者(もん)だったね”
”大家さん、亭主に過ぎる女房なんていませんよ”
 このフレーズですよ、談志さん」
 ハハァー、そうかと思ったネ。
 そういう取り方をした北村さんも深いし、そういう部分に気がつかなかった私は迂闊だった。つまり、”可楽からはフレーズを取り上げればよかったのか”という反省をしたもんだ。(100ページ)

 新年を迎えて       2008/01/03 

あけましておめでとうございます。

本年も、目先も中味も何も変わらぬ旧式以前のサイトではございますが、よろしくお付き合いのほどお願い申し上げます。


■北原こどもクリニックの仕事始めは明日の1月4日からだけど、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』も、明日から放送が再開される。いや楽しみだ。このドラマの特徴は、話の展開がまったく読めないことと、いろんな伏線が随所にちりばめられていて、ぼーっと見ていると重要な場面を見落としてしまうことが多いので、日に2度3度と再放送を見て、3度目に初めて脚本家の意図に気付くことが多々あるということ。こういう希有なドラマは、コアなファンにはたまらないが、視聴率は取れないのだね。

笑っちゃったのは、この「スタッフ日記」だ。みんな視聴率のことを心配しているんだ(^^;;

■昨日の深夜にNHK総合で放送された「文珍・南光のわがまま演芸会」7月の再放送には、徒然亭草原役の桂吉弥さんが登場して、歌舞伎の仕草や言い回しが鳴り物入りでふんだんに登場する「七段目」という落語を披露してくれた。桂吉弥さんの落語を是非一度聴いてみたいものだと、かねてから思っていたから、ちょうどよい機会だったが、いや、この人は上手いわ。驚いた。それに、よく勉強している。感心した。


■今週土曜日(1月5日)午後1時45分からNHK教育TVで放送される「日本の話芸」は、柳家小三治師の「初天神」だという。これはいったい何時録画されたものだろう? この時間だとまだ診療は終わらないから、忘れずに予約録画しておかないと。



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