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北原こどもクリニック  



しろくま 不定期日記


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●「不定期日記」●

  締め切りをとうに過ぎて       2008/08/27 

■昨日、長野県小児科医会会報の編集長、長野の竹内先生より催促の電話があった。5月に松本であった長野県小児科医会総会のテープ起こしの締め切りが7月末だった(今もう一度確認したら、おぉ!6月末の締め切りだった。ゴメンナサイ)のだ。しかし、7月はツール・ド・フランスを見るのに忙しかったし、8月になったらオリンピックが始まってしまった。「今月中には何とかします」と言って電話を切ったが、今週末は名古屋で外来小児科学会がある。今日から准看護学院の講義も始まった。さて、困ったぞ。今日、明日、明後日で仕上げなければならない。

という訳で、このサイトの更新は今週いっぱいお休みです。8月30日(土)は休診になります。すみません。
以下は、上伊那医師会報8月号に書いた文章です。



■2008 ツール・ド・フランス TV観戦記   北原文徳 ■

 さんざん悩んで購入を先送りしてきた薄型大画面テレビだったが、この5月半ばに、ヤマダ電機でプラズマテレビ「日立Wooo/P42-HR02」を買った。録画用 HDD内蔵モデルだ。ところが、リビングに設置してもらったそのテレビが、信号が弱すぎて「地デジ」の画面がモザイクだらけになってしまい、ちゃんと映らない。これはショックだった。せっかくテレビを買い換えたのに、いったい何だったんだ?

 うちの場合、伊那ケーブルテレビの有線放送で見ていたのだが、引き込み線が長すぎることと、医院待合室(今は使っていない)、スタッフ休憩室、自宅リビング、自宅寝室と4ヵ所に分配されているために、信号が弱くなってしまっているらしいのだ。悩んだ末、結局はケーブルテレビを解約して、BSアンテナと地デジ用UHFアンテナを電機屋さんに取り付けてもらった。ブースターも入れて電波を増幅したので、地デジもちゃんと映るようになった。くっきりハッキリ実に美しい画面だ。そして何よりも驚いたことは、BSとCSスカパー(e2 by スカパー)で80チャンネル近くが見られるようになったことだ(最初は16日間無料おためし期間なので)。テレビ東京と伊那ケーブルTVが見られなくなったことは残念だけど、プロ野球も全試合を必ずどこかのチャンネルで放送しているので、中日ドラゴンズ・ファンの息子たちも大喜びだ。映画もいっぱいやっている。BS、CS、地上波を切り替えるリモコン操作も実に簡単で、直ぐに慣れた。でも、それが当たり前になった頃に無料期間は終了した。まったくもって巧く出来ている。

 仕方ないので、e2 by スカパーの「スポーツパック」というのを申し込んだ。J Sportsチャンネルをメインに構成したパックで、プロ野球の全試合をカバーしている訳ではないが、延長戦になっても試合終了まで必ず放送してくれる。そして忘れてならないのは、J Sportsでは5年前から「ツール・ド・フランス」を独占放映していることだ。ツール・ド・フランスと言うのは、文字通りフランスを1周する自転車ロードレースで、100年以上も続く歴史あるプロスポーツだ。日本ではあまり知られていないが、ヨーロッパではサッカーと並ぶ人気を誇る。毎年7月に3週間かけて連日 150km〜230km を走り続け(途中休息日は2日あるが、ピレネーとアルプスの厳しい山越えがある)全行程 3,500km 高低差 2600m を走り切りゴールのパリ凱旋門を目指す、世界で最も過酷な鉄人レースだ。

 第95大会になる今年は、7月5日にブルターニュのブレストの町からスタートし、全21ステージで熱戦が繰り広げられた。『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』ランス・アームストロング(講談社文庫)を読んでいたので、知識としての「ツール」は頭に入ってはいたのだが、今年初めてライヴで毎日フォローしてみて、その面白さがようやく理解できた気がする。マイヨ・ジョーヌというのは、各ステージの走行タイムを合計して一番早い選手だけが着ることができる特別な黄色いジャージのことを言う。今年は、チームCSCのスペイン人、カルロス・サストレが、シャンゼリゼ通りの凱旋門をバックにマイヨ・ジョーヌを着てお立ち台に上がった。その他に山岳賞、ポイント賞、新人賞と3つの特別な色のジャージがあって、それを狙いに行く選手もいる。もちろん、その日のステージ優勝だけに命を賭ける選手も当然いる訳だ。だから、連 日さまざまな楽しみ方があって飽きさせない。

 自転車ロードレースはマラソンやトライアスロンと違って個人一人だけで戦うレースではない。参加選手は必ずチーム(プロ野球の球団みたいなもの)に所属し、各チームそれぞれ9人の選手をエントリーできる。今年は20チーム・180人が参加した。レースは連日全員同時スタートなので、各チームは、総合優勝を狙うスター選手1〜2人と、彼らが勝てるようにアシストする様々なタイプの選手で構成される。ある時は、マイヨ・ジョーヌを狙う仲間の風避けとなって彼の無駄な体力喪失を防ぎ、ある時には集団(プロトン)のスピードを絶妙の駆け引きでコントロールし、またある時には鬼曳き役となって疲労が見えたライバル選手を蹴落とし、さらには、補給された食糧と飲み物をチームメートに配って回る。本当は自分が1番になりたいのだけれど、自ら犠牲(サクリファイス)となってチームのために全てを尽くし、結果としては自 分の個人成績は下位でしかない選手たち。こういうのは、日本人が最も好むパターンではないのか。総合ランキングでは下位に甘んじていても、その日のステージ優勝は狙いに行けるので、チームのために働きつつも、監督から許されればステージ優勝を目指しに行ったりもする。そのあたりの自由度がうれしい。

 TVを見ていると、じつに様々な選手がいる。例えば、チームCSCのカンチェラーラ。平地のスピード、タイムトライアルを得意とする選手だが、今年は苦手なアルプス山岳コースでも自ら鬼曳き役となってライバルを攪乱した。そのために体力を消耗し、第20ステージの個人タイムトライアルでは優勝を期待されていたものの果たせず、チームメート、サストレにコース走行のポイントを伝授することだけを心掛けた。それから、フランス人シャヴァネル。フランスで繰り広げられる大会とはいえ、注目される選手はフランス人ではない。バルベルデ、サストレ(スペイン)、リッコ(イタリア)、シューマッハ(ドイツ)、エヴァンス、マキュアン(オーストラリア)、シュレク兄弟(ルクセンブルグ)その他、アメリカ、南米コロンビアなど世界中から選手は集まっているのだ。だから、自国フランスの選手を、観衆は熱烈に応援する。 シャヴァネルはベテラン選手で、先行逃げ切りを毎回狙う選手だ。ステージ序盤で飛び出してひたすら逃げる。しかし終盤には必ずメイン集団に追いつかれて吸収されてしまい、今まで一度もツールではステージ優勝したことがない。今回のツールでも、毎回シャヴァネルは果敢に仕掛けてきた。しかし毎度お馴染みの展開。ところが、第19ステージではとうとうシャヴァネルが逃げ切りに成功してツール初めての区間優勝を勝ち取った。奇跡的な成功だった。これだから連日5〜6時間に及ぶライヴ放送が見逃させないのだな。

 山登りが得意な選手がいることは理解できるが、山下りだけが得意な選手がいるのも驚きだ。それが「サンチェス下り」の異名を持つサンチェスの走り。もの凄く速い。でも、下りは怖いよ。天候によっては路面が濡れている。今シーズンでは、第16ステージの今ツール最標高地点2802mのボネット・レストフォン峠をトップで通過したオーガスティンが、下りでスピード・コントロールできずにコースアウトして崖下へ転落した。彼は奇跡的に軽症を負っただけで済みレースに復帰した。落車は痛いし怖い。ケガの程度によってはレースを続けられなくなることも多い。第18ステージで優勝したブルグハートは、昨年のツールではコースに迷い込んできた犬にぶつかり落車した。まったく何が起こるかわからない。アームストロングが去った後の一昨年、昨年のツールでは、ドーピングでの失格者が続出した。今年は、前半大活躍していた リカルド・リッコが、エリスロポエチン使用の発覚でレース途中に消えていった。オリンピック選手が必死で高地トレーニングするのを、エポの注射1本で済ますのはやはり狡い。

 今年のツール最大の山場は、アルプス山岳ステージ3日目の第17ステージだった。それにしても、このアルプス越えは過酷だ。スタート地点のアンブランの標高が 911m。ガリビエ峠(2645m)、クロワ・ド・フェール峠(2067m)の2つの超級の峠を登り降りして、ラストは過去に数々の伝説を作ってきたラルプ・デュエズ(1680m)でゴールする、トータル210.5km。ツールが鉄人レースたる所以を思い知らされる。山岳コースが苦手な選手たちも、制限時間内に完走しないと失格してしまうので、ベテラン・スプリンター、ロビー・マキュアンが会長となってグルペットと呼ばれるドンケツ集団を作り、制限時間ぎりぎりでゆっくりとゴールする。この集団はテレビにはほとんど映らないが、高校3年生の時の競歩大会を思い出し苦笑してしまった。

 テレビ中継には時々ヘリコプターからの空撮が挿入される。ハイビジョンで映し出されるフランス各地の景色は本当に美しい。人知れぬ片田舎の古い街並み、山の上の朽ち果てた古城、ピレネーやアルプスの残雪を湛えた急峻な峰々。テレビを見ているだけで、十分にフランス旅行をした気分になれる。しかも、本国フランスでは(サッカーと違って)昼間にレースが行われるので、時差の関係で日本では毎夜ゴールデン・タイムに生中継でテレビ観戦できるという恩恵に与っている。それなのに、日本ではまったく人気がない。本当に不思議だ。CSのJ Sportsと契約して、来年こそツール・ド・フランスの魅力を是非とも体験してみて下さい。

  今日の朝日新聞夕刊に       2008/08/25 

■8月25日(月)「朝日新聞・夕刊」1面の連載記事、「ニッポン 人・脈・記」は、今週から「絵本きらめく」という連載が始まった。記事を書いている由里幸子記者は、6月の「杉山三四郎・絵本ライブ」の時に、伊那市「いなっせ」までカメラマンと共に飯田線に乗って取材に来てくれた。ありがたいことです。その時の取材が記事になった。

わが家では信濃毎日新聞の朝刊・夕刊しか取っていないのだが、ネット上でも記事が読める。ありがたいことです。いましばらくは、リンクが生きていると思います。読んでみて下さい。

  伊那のパパズ「絵本ライヴ」(その44)松本中央図書館       2008/08/23 

■松本中央図書館の午後3時半、3階視聴覚室でぼくら伊那のパパズ「絵本ライヴ」は始まった。松本は初めてだ。緊張するなあ。出演は、伊東・北原・倉科の3人だけ。少ない人数だったけれど、パワーアップして頑張ったよ。松本中央図書館の下条さん、ほか皆さん、見に来て下さったみなさまがた、本当にありがとうございました。

1)『はじめまして』新沢としひこ鈴木出版 (2003/03)

2)『うえきばちです』川端誠 ビーエル出版 (2007/09) → 伊東
3)『ひまわり』和歌山静子(福音館書店) → 北原

4)『パンツのはきかた』岸田今日子・文、佐野洋子・絵(福音館書店)

5)れいぞうこのなつやすみ村上しい子・文、長谷川義史・絵 PHP研究所 (2006/05) → 倉科

6)『かごからとびだした』(アリス館)

7)『やさいのせなか』うちだかつ(福音館書店) → 伊東
8)『おどります』 高畠純(絵本館) → 北原
9)『ふうせん』(アリス館)

10)『世界中のこどもたちが』中川ひろたか・新沢としひこ(講談社)



<9月のイベント>のお知らせ

●さわやかパートナー講座:「父親の子育て」講演会

 日時:9月6日(土)午後3時から。入場無料
 場所:箕輪町文化センター 和室
 講師:田中尚人さん(グランまま社編集長、パパ's 絵本プロジェクト、Fathering Japan 理事)

  「父親だからこその育児, 父親だからこその絵本時間」という演題で田中尚人さんが基調講演。
       その後「絵本の読み聞かせ」とフリートークもあります。
 対象:おとうさん、おかあさん。親子でどうぞ。ぼく(北原文徳)も「おまけ」で出ます。
 主催:箕輪町教育委員会

 問い合わせ先:箕輪町公民館(0265-79-2178)、箕輪町図書館(0265-79-6950)
        北原こどもクリニック(0265-74-2236)



新米パパ・ママのための「絵本講座」

 日時:9月27日(土)午後3時〜4時半
 場所:伊那図書館・視聴覚室 「入場無料」
 講師:中本晶子さん(富士見高校図書館司書、もと安曇野ちひろ美術館学芸員)
 対象:おとうさん、おかあさん(新米でなくて古米パパ・ママでも、もちろんOKです)
    お子さんもごいっしょにどうぞ。
 主催:北原こどもクリニック、こどもネット伊那

 問い合わせ先:北原こどもクリニック(0265-74-2236)



  恐るべき「さぬきうどん」巡礼の旅(その3)         2008/08/22 

■8月15日: 朝8時45分、小豆島土庄港から高速艇で高松へ。30分で高松港に到着。朝からもの凄く暑い。少し歩いて高松駅前のマツダレンタカーで予約してあった車に乗り込む。しかし、ナビの設定がよく分からず、高松駅周辺を1周して店に戻り、進行方向が画面の上へ来るよう設定し直してもらう。この外付けナビは使いづらいぞ。

さて、ようやく出発だ。目指すは「がもう」。ナビに電話番号を入力すると、「蒲生善太郎さんの個人宅」と出る。うーむ、何だか最初から不安な道案内だが、信じて行ってみるしかないだろう。高松市内を西へ向かい、香東川を渡って南下し国道11号へ。坂出市に入りしばらく行って右折したところで、急にナビが「目的地付近です。お疲れさまでした」と言った。
おいおい、こんな郊外の田んぼが広がる田舎道に「うどん屋」なんてあるのかい? そしたら、狭い村道の左方50m ほど先に、この風景に不似合いな異様な行列が続いているのを妻が発見した。「お、あれだ!」行き過ぎたのでUターンし、カーブミラーのあるT字路を脱輪しないよう怖々右折し、10時半前に無事到着。 「がもうの地図」

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■炎天下、店の前を流れる用水路の脇に汗を拭き拭き並ぶこと40分。ようやく店内へ。注文は、冷たい小(130円)+あげ(80円) 。長男はトッピングを温泉たまご(80円)にした。これを「冷たい出汁」でいただく。会計は4人分合わせて840円なり。安い! 安すぎるぞ!(でも、小麦価格高騰前の昨年までは、うどん 100円、あげ 70円だったのだ!) 蒲生善太郎さんは「がもう」のおじいちゃん。店主のおやっさんは蒲生正さんという。この日うどんを茹でていたのは、麺通団では「ガモムス」と呼ばれている、善太郎さんのお孫さんだ。赤いバンダナが、なかなかにオシャレ。

■さて、うどんだ。「麺通団のアンケート」では、堂々の第一位!という圧倒的人気を誇っている。千趣会で食べた「あの時の」冷凍の「がもううどん」ではない。現地「ほんまもん」の「がもううどん」なのだ。否が応でも期待は高まるばかり。ところが、期待に反して「うどん」の力強さがない。うどんを口に含んで奥歯で噛みしめた瞬間、明治製菓のグミを噛んだ時のような独特の反発力でうっちゃられるかと思ったのだが、「がもう」のうどんは予想外に僕の奥歯の侵入を、いとも簡単に許してしまったのだ。あれれ? 讃岐うどんが、蕎麦っ食いで偏屈な信州人の奥歯を無条件で受け入れちゃってもいいのか??「讃岐うどん」というと、「宮武ファミリー」のエッジの効いたねじれのある「ふんばり腰」の「うどん」をイメージしていたのだが、ぜんぜん違う。もちろん旨い。もちっとした食感、なめらかな喉ごし。一言で言い表せば、ワイルドとは対極にある、からだにやさしい「自然体のうどん」だ。

そうして、とにかく出汁が旨い。どんぶりからはみ出す「あげ」が、これまたメチャクチャ旨い! うどんと絶妙のハーモニーを醸し出している。う〜む、困ったぞ。この「うどん」を僕はどう評価したらよいのか……

もう一度訪れて、今度は熱い出汁で食べてみないことには結論は出せないかもしれないな。

  恐るべき「さぬきうどん」巡礼の旅(その2)         2008/08/20 

■小豆島は、岡山県じゃなくて香川県である。でも、「うどん」ではなく「そうめん」とオリーブの島だ。実際、小豆島ふるさと村の食堂で食べた「そうめん」は、粘りと腰があって喉ごしもよく、とても旨かったな。それから、「二十四の瞳」岬の分教場や醤油工場、佃煮工場、ごま油工場(かどや)も有名。なぜ小豆島へ行くことにしたかというと、『八日目の蝉』角田光代(中央公論新社)の印象的な幾つかのシーンが、小豆島の場面だったからだ。

■本当は、3泊4日のツアーを全て「さぬきうどん巡り」に捧げたかったのだが、家族旅行としてはあまりに偏向していると思い、1日は小豆島観光に、半日は東かがわ市の「野遊び屋」でシーカヤックの親子体験にあてることにして、3泊目は、さぬき市津田の民宿を確保した。ところが、お盆でカヌー親子体験ツアーは満杯。結局カヌーはできず、宿泊のためだけに高松の東まで無駄に往復することとなってしまった。

という訳で、先に言ってしまうが、結局食べることができた「さぬきうどん」は4軒のみ。「がもう」「長田 in 香の香」「やまうち」「谷川米穀店」の4つ。「田村」と「宮武うどん店」はお盆休みでダメ、「こんぴらさん」詣りをしたので、超人気店「山越」や伝説の「なかむら」は時間的に諦めざろう得なかったのだ。でも、この4軒だけで僕らは十分満足したよ。

■ところで、ぼくが初めて「さぬきうどん」の不思議な世界を知ったのは、『辺境・近境』村上春樹(新潮社)に収録された「讃岐・超ディープうどん紀行」という文章でだった。中でも印象的だったのが「中村うどん」の項だ。
 うどん屋の建物の裏は畑になっていて、そこには葱が植えてある。お客の証言によると、昔「おっちゃん、葱がないで」と文句を言ったら、「やかましい、裏の畑から勝手に取ってこい」と中村父に叱られたそうである。とにかくワイルドなうどん屋なんやがな(と僕もだんだんなまってくる)。そうこうするうちに中村父が新しいうどんを打ち終える。そしてそれをさっとゆがいて、葱と醤油をかけて食べさせてもらう。これは見事に美味しい。さっき食べたうどんもかなり美味しいと思ったけれど、この打ちたてのうどんの香ばしさと腰の明快さに比べたら、ランクがひとつ違う。まさに痛快アル・デンテである。このうどんは今回の取材旅行で食べた沢山のうどんの中でもまさに珠玉のひと玉であった。「中村うどん」に行って、できたてのうどんに巡り合えた人は幸せ者と言うべきであろう。(124頁)
今やあまりに有名になりすぎた「裏の葱畑」のエピソードだが、本が出た1998年に初めて読んだ時には、正直よく判らなかった。蕎麦なら判るが、たかが「うどん」だろ? 讃岐うどんのいったい何が違うのだ? その少し後だったか、さとなおさんの「さぬきうどんを CHAIN EATING!」という連載をネット上に発見した。単行本になった『うまひゃひゃ さぬきうどん』も、即手に入れて熟読した。なるほど! これはどうも凄そうだぞ。さらには、文庫化された麺通団の『恐るべきさぬきうどん』(新潮 OH! 文庫)も購入し、「いつかは本場のさぬきうどん!」と夢見るようになったのだった。おぉ! 思い起こせばあれから早10年の歳月が過ぎ去っていたのだなぁ。

まさか実現するとは思わなかったぞ。人間、あきらめてはいけないね(^^;) (つづく)

  恐るべき「さぬきうどん」巡礼の旅(その1)         2008/08/18 

■お盆休みが、幸運にも当番医を外れたので、長男も来年は中学生だし、となると、夏休みは部活で潰れるだろうから、夏の家族旅行も今年が最後かと思い、長年ぼくが暖めていた計画を家族会議にかけてみた。それは、四国・香川県に行って、本場の「さぬきうどん」を食べるツアーだ。まず絶対に却下されると思っていたのだが、以外や以外、妻が興味をしめした。今から6年前、千趣会の通販で「冷凍さぬきうどん」を1年間食べたことがあったからだ。詳しくは、2002/10/31、11/02、11/23 の日記をご参照のほど。

第一関門は辛うじて突破したものの、息子たちが却下するだろう、そう思った。ところが、常日ごろから、蕎麦なら「こやぶ」、ラーメンは「美華」か「みしま」、ローメンは「萬里」か「森田」、うどんなら、ベルシャイン伊那の「かときち冷凍さぬきうどん」と、星一徹ばりに鍛えてきた甲斐があったか、夏休み一研究のまとめも半分しか終わっていない長男が「讃岐うどん? 行く行く!」と、思いがけず父ちゃんの釣り針にいとも簡単に食らいついてきたのだった。

■8月13日(水):この日は午後から休診だったので、午前の診察終了後に家族で高遠へ行ってお墓詣り。お花を活け、お線香を上げて、お盆に留守するご無礼をお許しいただく。その後、母に訳を話してから権兵衛トンネルを抜けて木曽福島駅へ。車を駐車場に置いて「特急しなの」へ乗り込む。名古屋から「ひかり」に乗り換えて岡山へ。夜8時半過ぎに到着。駅構内の洒落た居酒屋で夕食を済ませ、駅から3分で行ける、家族4人で1泊 12,600円の「ビジネスホテル新子」へ。岡山は夜になってもめちゃくちゃ暑かったぞ!

翌8月14日(木)の朝は、6時半に起床して岡山駅に戻り、両備バスに乗って新岡山港へ。さらにそこからフェリーに乗り換え、小豆島の土庄港をめざす。午前9時半には小豆島着。飛び込みでレンタカーを借りる。1台だけ空いていた。ラッキー。

次男:「こまめ島」に着いたの?
長男: ちがうよ!「あずき島」だよ。

あはっ(^^;; 笑ってしまったな。(つづく)

  高遠「本の家」で、紙風船を買う         2008/08/11 

■高遠「本の家」では、8月5日から9月15日まで「旅猫雑貨店」「古本 海ねこ」が、東京から出張してきて期間限定で出店している。「旅猫雑貨店」の棚には、いろんな形の楽しい紙風船や、和手拭い、便箋、一筆線などが並べられていた。じつにセンスがいい。手拭いとかも欲しかったが、蛸と河豚の紙風船を買って帰り、診察室と処置室の天井からぶら下げてみた。金鳥の夏、日本の夏! ではないが、「和テイスト」が何とも涼しげで心地よいではないか(^^) これはちょいとオススメです。


  おめでとう! 山本昌200勝         2008/08/07 

■目黒孝二さんの『出星前夜』飯嶋和一・書評。そうか、それは早く読まねば。

■次男の友だちの芳樹くんは、今週月曜日の夜にナゴヤドームにいたのだそうだ。何という羨ましさ。彼のお父さんが息子たちのために四方八方手を尽くして、この記念すべき日の一塁側内野席シートを入手し、父子いっしょに「ナマ」で「山本昌200勝」の瞬間を目撃したのだ。もう一度言うが、何という羨ましさか。

わが家では、CS「J sports」でTV観戦だったが、それでも大感動だったな。9回表、2アウト。バッターは巨人4番ラミレス。42歳の不屈の左腕、山本昌。バックネット裏にはお父さんとお母さん。彼が一球一球投げるたびに、異様な大歓声がスタンドから上がる。そして、ラストの一球をラミレスのバットが捉え高々とライトへ。一瞬焦ったが、中村ががっちり捕球して試合終了。

その瞬間、ベンチから立浪が一番に飛び出してマウンドへ走る。次々に中日の選手が山本昌のもとへ駆け寄り、胴上げだ。いや、よかったねえ。

■ところが、後で知ったのだが、この日地上波でプロ野球中継をしていた東海テレビは、午後8時54分でテレビ中継が終了してしまい、それでも、8時55分からのローカルニュース枠でさらに中継を続行する熱意を見せたのだが、ラミレスが打った瞬間でテレビ中継が終了してしまったのだそうだ。名古屋の中日ファンは、よくまぁ、暴動を起こさなかったな。6月に伊那へ来てもらった、岐阜市「おおきな木」の杉山三四郎さんも、熱烈なドラゴンズ・ファンで、わが家の息子たちと妙に盛り上がっていたのだが、杉山さんは、ちゃんと「山本昌の胴上げシーン」を見ることができたのだろうか? 心配だ。

■ミステリ愛好家で文章が抜群に面白いことと、自らサイクリストで自転車ロードレース・ファン、筋金入りのドラゴンズ・ファンであることでも有名な、大矢博子さんの日記で、そのことを知ったのだが、大矢さんもこの日、ナゴヤドームにいたのだそうだ。うらやましいぞ!

YouTube に、「その日の東海テレビのローカルニュース」が投稿された。いやはや、笑っちゃったね(^^;;

  最近の買い物              2008/08/05 

■未読本がたまる一方なのに、相変わらず本を買い続ける日々。妻よ、ゴメンナサイ!■

1)『出星前夜』飯嶋和一(小学館)
   4年前に出た『黄金旅風』の続編。前作は読んだはずなのに、すっかり内容を忘れてしまっている。

2)『柳家権太楼 子別れ・通し』(DVD・本格本寸法ビクター落語会)

3)『コハラ・ライブ』『コハラ・ベスト』。ハワイの「ゴンチチ」。
  この「ゆるい感じ」が心地よくって、たまりません。「ライブ」の方には、サザン『真夏の果実』入り。

4)『ぼくはレース場の持主だ!』パトリシア・ライトソン(評論社)
5)『ハナシにならん!』田中啓文(集英社文庫)
6)『ハローサマー、グッドバイ』マイクル・コーニイ(河出文庫)
7)『凍える海』ヴァレリアン・アルバーノフ(ヴィレッジ・ブックス)
8)『寄席芸人伝(三)』古谷三敏(中公文庫)
9)『落語の国からのぞいてみれば』堀井憲一郎(講談社現代新書)
10) 『子どもが育つ条件』柏木惠子(岩波新書)
11) 『この落語家を聴け!』広瀬和生(アスペクト)
12) 『銀河のワールドカップ』川端裕人(集英社文庫)
13) 『血と暴力の国』コーマック・マッカーシー(扶桑社文庫)


  先週の出来事              2008/08/03 

■先週は何だか忙しかったなあ。

7月28日(月)伊那東小学校・学校保健委員会で「夜尿症と便秘のはなし」を講演。
        夜は、上伊那医師会理事会。医師会として、登校・登園許可証が必要な疾患を
        統一すべきと提案したら、他の地区ではどうしているか調べ、他の小児科医と
        相談の上、次回理事会に原案を提出せよ、とのこと。また仕事が増えてしまった。

7月29日(火)北原こどもクリニック暑気払い。歩いて行ける「櫓」にて。おなか一杯になりました。
7月30日(水)上伊那医師会学術講演会「プライマリーケアにおける鬱病」
        厚生連富士見高原病院心療科医長:戸田真先生
7月31日(木)18:30〜 伊那市医師会幹事と、伊那市長、副市長、健康推進課職員との懇談会
8月 1日(金)昼休みは3歳児健診。よる7時からは、医師会館で健診判定作業

8月 2日(土)伊那まつりは見に行かずに、自宅の庭にタープを張ってBBQ。
        深夜CSで、ブラジル映画『フランシスコの2人の息子』を見る。これは拾いものだったな。
        とっても面白かった。ブラジル映画は『セントラルステーション』以来。なかなかレベル高いぞ。
        ブラジル音楽というと、サンバとボサノバ、それに MPBだと思っていたが、現地で人気の音楽
       (セルタネージョって言うんだそうだ)はぜんぜん違うんだね。驚いた。

8月 3日(日)午前中は家族でテニス。暑い。お昼はテニスコート近くのモスバーガー。
        午後2時からは、いなっせ5階で「山本譲司さんの講演会」。さすが話が面白い。
        2時間半しゃべり続けて聴衆をまったく厭きさせない。「福祉施設と化したいまの刑務所の実態」
        ただただビックリした。異物を排除する社会がどんどん進行するいま、「彼ら」は刑務所の中にしか
        安住の地を見いだせない。
       「『塀の外』は怖ろしい所だ。ここには自由はないかもしれないが不自由はしないよ、山本さん。」

        いろいろと考えさせられたなあ。さて、どうすればいいんだろう。

     

  佐々木正美先生の講演会(その2)           2008/07/30 

■人間はどういうプロセスをたどって「わたくし」になってゆくのかを研究したのが、ワロンです。

・赤ちゃんは生後1〜2カ月で、おかあさんの笑顔に笑顔で応えます。何という不思議なことでしょう。ワロンは、このことを「微笑の交換」と呼びました。人間は他者に共鳴できる感情を生まれながらに持っているのです。
・生後2〜3カ月の赤ちゃんは、できるだけおかあさんに自分のそばにいて欲しいと望みます。母親が離れると泣きます。
・生後3〜4カ月になると、ただ側にいてもらうだけでは物足りず、自分が望むことを母親に要求するようになります。抱っこがそうですね。
・生後4〜5カ月になると、自分の望むことをやってくれている「おかあさん」にも喜んでほしい!「いっしょに喜びを分かち合いたい」と望むようになります。驚くべきことですよね。

・「喜び」を分かち合う経験をたくさん(十分に)つんだ子供でなければ、絶対に、他者と「悲しみ」を分かち合うことはできないのです。相手の「心の痛み」が感じ取れない(共有できない)のです。
・おかあさん、子供がよろこぶことを喜んでしてあげてください。

・精神科医の斉藤環さんが「いまの青年たちに『根拠のない自信』をあたえたい」と書かれていました。この「根拠のない自信」とは、エリクソンの「基本的信頼」と同じものだと思います。今日、われわれ親は「根拠のある自信」ばかりを育ててきました。「根拠」とは、その子が中学で学年一番の成績を取ったとか、スポーツの記録がその学校で一番だとか、そういう事実のことです。でも、自分がどんなに「それ」ができても、いつかは(例えば、高校へ進学すれば)必ず自分よりもっとできる優秀な人と出会うのです。そうすると、その「根拠のある自信」はたちどころに崩れ去って、劣等感に変わってしまうのです。さらには、それが「できない人」の前では優越感になる。「根拠のある自信」しかないと、人間は大変なことになります。まず「根拠のない自信」が基礎にあって、その上に「根拠のある自信」は築き上げられなければなりません。

・あの秋葉原の事件の加藤容疑者が、携帯の掲示板にこう記載していました。
 「何も根拠がないくせに、自信ありげに振る舞っているヤツを見ると、無性に腹が立つ」と。でも、それでいいのです。
 「根拠のない自信」がある人こそが、人を信じることができる人なのですから。


■以上、当日の講演会を聴いてぼくがメモした中から、佐々木先生の言葉を記載してみました。不正確な部分が多々あることはご容赦ください。

ネットで検索してみると、同じ様な試みをしている方がいるのですね。

「moguの思い ひとりごと」というブログをアップしている、おかあさん「mogu」さんの方が(講演自体は別の会のものを聴いたのだけれど)正確に佐々木先生の講演を再録されているように思いました。

あと、
「こういう講演記録」とか、
「こういう文献」とか、

検索すると、参考になるサイトがけっこう見つかりますねえ(^^;)

  『教科書に載った小説』佐藤雅彦・編(ポプラ社)    2008/07/28 

■この本に収録された12篇の短編小説は、どれもみな、とても面白かった。この本を読まなければ、ぼくは一生涯これらの短編小説とは決して出会うことはなかったであろう。そう思うと、この思いがけないお膳立てをしてくれた佐藤雅彦氏にどんなに感謝しても、感謝しきれないな。

まず感心したことは、短編小説って面白いなって気づかせてくれたこと。たった数頁の小説でも、読んでいる間は、読者の心は主人公と完全に同化し彼の人生を歩んでいる。そのことの不思議。じつに面白い。

例えば、菊池寛の『形』。たった7頁しかないのに、なんと奥深く皮肉に満ちた人生であろう。それから、『竹生島の老僧、水練のこと』。水泳が得意な若僧を見に、わざわざ比叡山からせっかくお見えになったのに、ご覧頂けなくて誠にかたじけないと、琵琶湖を舟で帰る一行を追いかけて来て、新品の錦の袈裟の正装で着飾って(膝までたくし上げてはいたが)詫びた老僧。舟に乗って? いいえ。では泳いで? いいえ。では、どうやって? あはっ! すげーぜ、このジイチャン!

  巻頭の『とんかつ』がいい。予想外の展開に思わずほくそ笑んでしまったよ。次の『出口入口』もいい。ぼくは永井龍男という作家を初めて知った。『絵本』もいいね。結核で若い才能が早死にしていった昭和初期の無情と友情。じつに、しみじみしてしまった。個人的に好きなのは、『少年の夏』と『父の列車』と『雛』の3篇だ。どれも、主人公の「父親」が重要な役割で登場している。『ベンチ』は先が読めてしまった。『蠅』は、あざといと思った。

■最近、CDではアンソロジーが大流行だが、人気の楽曲をただ寄せ集めただけのCDは聴くに耐えない。知られざる名曲を、順当な曲順でCDに収録したアンソロジーにはなかなか出会えない。選曲者のセンスが、まだそのレベルまで到達していないから。佐藤雅彦氏は、ちゃんと「そのレベル」をクリアしていたな。

  佐々木正美先生の講演会「コミュニケーションの希望」  2008/07/26 

■今日は、7月13日(日)に続いて2回目の伊那中央病院「小児一次救急」当番日(都合が悪かった金曜日と代わってもらったのだ)。9時までに5人診て帰宅。入浴後にテレビを付けてツール・第20ステージ観戦。今日の個人タイムトライアルの結果で、今年の個人総合優勝が決まる。今日ばかりは、いつものチームメートのアシストはなく、自分一人の脚力と精神力だけで53kmのコースを時速60km近くで走り切るのだ。

大方の予想では、タイムトライアルに絶対的自信を持つ、サイレンス・ロットのカデル・エヴァンスが優位であったのだが、あの決戦のアルプス「第17ステージ」ラルプ・デュエズの山頂ゴールを見事な逃げ切りでさらった、CSCのサストレが、18,19ステージで体力を温存して臨んだこの「個人タイムトライアル」でも見事な走りを見せ、差し迫るエヴァンスを全く寄せ付けず余裕のゴールで、今年のツール・ド・フランスのマイヨジョーヌを手に入れた。それにしても、このサストレ、淡々としていて実に渋いのだ。明日の最終日の表彰台では、いったいどんな表情を見せるのか? 今から楽しみだな。

■今日の土曜日は、いつもより1時間早く外来受付を終了して、飯田市の鼎文化会館へと急ぐ。午後2時から、飯田市保育協会主催の児童精神科医・佐々木正美先生の講演会があったのだ。午後4時過ぎまで、みっちり2時間お話いただいたが、会場には600人以上の保育士さんその他が集まった。すごい熱気だ。飯田は凄いな。

佐々木正美先生の講演内容に関しては、また次回にでもと思うのだが、少しだけ。

・家族とのコミュニケーションも取れない人が、他人とコミュニケーションを取れるわけがないのです。
・その子供が、いろんな人との「よい人間関係」が持てるように育てるのが親の役目。
・人間関係を失えば失うほど、人間は「人間性」を失ってしまう。
・人はさまざまに自分の意味や価値を探している。でも、それは「人間関係の中」でしか見つけられないのですよ。
・心を病んでいる人は、一人残らず「人間関係」を失ってしまっているのです。

・「いい人間関係」とは、「あたえる者」と「あたえられる者」とが「等しい価値を実感している」時に出来上がるものなのです。
・森岡正博さんが、読売新聞夕刊に載った「私の幸福論」の中でこう言っています。「辛いこと、苦しいことは、誰だって嫌です。できるだけ避けて生きたいと思っている。今の社会はそれが可能な社会になってきている。でも、それで私たちは幸せになりましたか?」
・幸福な人はみな、困難な役割を納得して引き受け努力する。人間は、誰かを幸福にしようと思って努力している人が幸せな人なのです。「育児」はまさにそうですよね。

  ★森岡正博さんの「オリジナルの文章」を見つけました。

・子供は、自分といっしょにいることを「幸せ」に感じてくれる人に育てられたがっている。

(つづく)

  ツール・ド・フランス アルプス山岳ステージ・3日目  2008/07/23 

■今日は、ツール「第17ステージ」。本国フランスでは、水曜日平日午後4時。フランス人は仕事中でもライヴでテレビ観戦しているのだろうか? ここ日本では夜の11時。毎夜ゴールデン・タイムにビール飲んでくつろぎながら、ライヴ(しかもハイビジョン)で「ツール観戦」できるのだから、オーストラリアと並んで世界中で一番恵まれているのではないか? ユーロ・サッカーと違って、自転車ロードレースだと、さすがに夜走ることはできないからね。

それにしても、このアルプス越えは過酷だ。スタート地点のアンブランの標高が 911m。ガリビエ峠(2645m)、クロワ・ド・フェール峠(2067m)の2つの超級の峠を登り降りして、ラストはラルプ・デュエズ(1680m)の山頂ゴールの、トータル210.5km。7月5日から連日(2日間休息日はあったが)走り続けての今日だ。ツールが鉄人レースたる所以を思い知らされる。そのツールで、個人総合優勝を7連覇したランス・アームストロングは怪物だな。

もちろん、どんなに超人とはいえ、個人の力だけでは総合優勝は狙えない。チームのエース選手の風除けとなって引っ張るチームメイトのアシストと、ライバル選手を攪乱する様々な作戦、駆け引きが重要となってくる。そこが自転車ロードレースの面白いところだ。今年のツールでは、シュレック兄弟を擁する「チームCSC」の連携プレイが見応えあるなあ。チーム内にいろんなタイプの選手がいて、自分の役目を着実に果たしてゆく。特に、カンチェラーラがいい働きをしているぞ。

あと、ヘリコプターからの空撮の景色が素晴らしい。フランスという国は、地域によって風景が全く異なるんだね。見応えがある。それから、ひとつ不思議なのだが、コースになった道路にあるはずの「信号」はどうなっているのだろうか? これは、いっしょに観戦していた妻から指摘されて初めて気づいたのだが、見ていて踏み切りでは、電車の方が止まってレースが通過するのを待っていた。でも、赤信号ではどうなるんだ? 

■ずっと注意して見ているのだが、信号なんてないぞ!。交差点はみな「ロータリー」になっている。信号はないのか?

  海の日連休は、尾白川渓谷でキャンプ       2008/07/21 

■この連休は、家族で東京へ行って上野鈴本「昼席」で柳家喬太郎さんの落語を聴く予定を立てていたのだが、梅雨明けの東京はとてつもなく暑いだろうし、寄席も混むだろうしということで、予約してあったホテルをキャンセルして予定変更となった。

涼しい山と川でキャンプ。きれいな川と言ったら、山梨県北杜市白州町を流れる尾白川だ。河原でBBQもやろう。

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しかし、今は勝手に河原でBBQは御法度とのことで、尾白川リゾートオートキャンプ場を電話で予約してデイキャンプ。泊まりじゃないのでテントの設営はなし。キャンプ場のすぐ脇を尾白川が流れていて、子供たちはさっそく水泳パンツに履き替えて川遊び。2006年 8月7日の日記に登場する「尾白川堰堤」の少し下流に位置する場所だ。
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宿泊は、キャンプ場からすぐ近くのペンション・ボーンフリーさん。お世話になりました。夜9時過ぎと、午前4時半に虫取りに出かけたが、残念ながら今回はクワガタもカブトも一匹も取れず。21日朝は9時過ぎにチェックアウトして、念願の「尾白川の滝めぐり」へ。前にここを訪れたのは、たしかまだ長男が生まれる前だったから、13年以上も経っていたのか。当時勤務し住んでいた富士見高原病院の官舎の庭を、宮越由貴奈ちゃんのおばあちゃんとおかあさんの指導で家庭菜園に耕して、ミニトマトとキュウリを作ったのだ。その日(8月のある日曜日だったと思う)朝取りのキュウリと缶ビールをナップサックに入れて、妻と二人で尾白川渓谷を登った。終点の不動滝はかなり水量の多い大きな滝で、滝壺のすぐ近くまで行け、水しぶきを浴びながら食べたキュウリと缶ビールの旨さが忘れられなかったから、今度は息子たちを連れて再びやって来たのだった。

しかし、想像以上に厳しい山行だった。登りがキツくて、お父さんはもうバテバテ。9時半前に出発して、神蛇滝に到着したのはもうお昼近く。ここから不動滝までは、それほどキツくない道ではあるのだが、食料もないしお父さんも次男も疲れ切っていたので、写真を撮ってから帰路についた。

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これが、その神秘的な「神蛇滝」だ!

■滝めぐりを終えて「べるが」でお風呂に入り汗を流してから「シャトレーゼ白州工場」へ。ここは北杜市観光の穴場として知る人ぞ知る場所だ。連休中も稼動している工場見学を終えると、工場で作っているアイスクリームを好きなだけ試食できるのだ。しかも無料で。いまどき、太っ腹ではないか! ぼくらは今回初めて訪れたのだが、工場は似たようなファミリーで満杯。試食と言っても、実際に販売するアイスクリームが何種類も並べられているのだ。

子供たちにとって、ここは天国に違いない。アイスを一度に2個も3個も食べれば、「○○ちゃん! ダメよ!! そんなにアイスを食べたら、おなかこわすわよ!」って、直ちに母親の怒りの鉄槌が飛ぶはずなのに、ここでは子供がアイスを5個でも6個でも食べようが、母親はただニコニコしているだけ。どの母親もぜんぜん怒らない。だって、タダなんだから(^^;;

その後、白州の造り酒屋「七賢」が経営するレストラン「臺眠」で遅い昼飯を食べたあと、通りをはさんで店がある「金精軒」で信玄餅とカステラを買ってからR20号を帰路についた。じつに充実した2日間であったな。

  フランスの「本の町」シャリテ。日本の「本の町」になれるのか? 高遠。       2008/07/19 

■先日、BS hi の再放送で、フランスのパリから2時間ばかりのロワール川沿いに位置する古い歴史ある町「シャリテ」が、20年前からの地域再興事業の中で、見事に「本の町」として復活した模様が放映された。なるほど、これが「本の町」か。いや、じつはなかなか具体的にイメージできなかったのだ。イギリス・ウェールズの「ヘイ・オン・ワイ」は、ちょうど八ヶ岳清里の「萌木の村」のような風景がイメージできるのだが、高遠の場合は、シャリテを目指したほうがいいんじゃないだろうか?

神田神保町の他にも、古本愛好家が全国から巡礼すべき町「高遠」を売り込むためには、シャリテのように、東京から移り住んで来る同業者や出版関係者が高遠のメイン・ストリートを占拠するくらいにならないとダメなのかな。毎年8月になると、日本最大の「古本市」が高遠で開催されるようにでもなれば、ずいぶんと変わってくるのかもしれない。目指せ!「シャリテ」。というのも、長野県内でしか発刊されていないフリー・ペーパー『日和』の巻頭特集が、高遠の2軒の古本屋さん「長藤文庫」と「高遠・本の家」だったから。


■TBSラジオで放送された、豊崎由美さんの『ザ・ロード』評が、ポッド・キャストで聴くことができます。

http://kingdom-by-the-sea.blog.so-net.ne.jp/2008-07-17-2


  『だから?』ウィリアム・ビー 作、たなかなおと・訳(セーラー出版)  2008/07/18 

■田中尚人さんが、自ら訳した絵本を贈ってくださった。

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  『だから?』ウィリアム・ビー 作、たなかなおと・訳(セーラー出版)だ。


■それにしても、この絵本に登場する親子(父親と息子)が、『ザ・ロード』の父子とまったく正反対なんで笑ってしまったよ(^^;; アメリカ人とイギリス人はぜんぜん違うんだね。さすが、「モンティパイソン's フライング・サーカス」を産み出した国の人たちの笑いのセンスは凄いぞ。 アハッ!(^^;;;
黒が映えるシルク・スクリーンの版画のような、スタイリッシュで斬新なイラストレーションも実に渋い。

■ところで、昨日、7月17日(木)の「大竹まこと・紳士交友録」で書評家の大森望さんが、『ザ・ロード』に「85点」という高得点を付けていたぞ。今年上半期のベストだって。うれしいな。

■シングルモルト「余市」のボトルに入っているのは、妻が先日アピタで見つけて買ってきた「生の」沖縄産「島唐辛子」を泡盛で漬け込んだもの。2本分あるんでね、しばらくずっと楽しめるな。これまたうれしい(^^)

  『寿歌(ほぎうた)』北村想・作、加藤健一事務所・公演     2008/07/15 

『ザ・ロード』読了後は、ぜんぜん次の本が読めない。それは仕方のないことか……。毎夜、21:30〜25:00までずっとテレビの前だから。チャンネルは「CS:J sports Plus」。それにしても、「ツール・ド・フランス」は本当に面白い! 初心者にはまだまだ難しくて、本当の楽しみ方が未だに判らないのだが、とにかく奥が深い。特に、昨日(7月14日)は泣けたね。山岳コースのプロフェッショナルで、参加選手中最年長のレオナルド・ピエポリは、チーム・メイトの若手で総合優勝に絡むコーボを引き立て、最後まで「俺についてこい!」と、ピレネー山脈のラスト、オカタム山頂ゴール手前で後輩を待ってやって、ワンツーフィニッシュを決めた。渋いなぁ。ほんと。

でも、昨日一番の見どころは、オーストラリア人のカデル・エヴァンスが、フランク・シュレクと1秒差とは言え、マイヨジョーヌを手にして涙したシーンだ。前日に、観客のビニール袋がギアに絡んで思わぬ転倒をきっし、左腕に深い傷を負い、ヘルメットが割れるほどの頭部打撲も負ったエヴァンス。

カデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)インタビュー

マイヨ・ジョーヌ
信じられない。ボクのツールは昨日の落車で完全に終わったと思っていた。左の肩も脚も全部痛かった。それなのに今日はマイヨジョーヌを獲った。わずか1秒差だけど、オタカムでマイヨ獲りを計画していたから本当に幸せだよ。頭の中で、色々な感情が渦巻いている。どうしても勝ちたいツールのこと、落車のこと、今スポーツを愛しツール勝利を待ち望んでいる母国オーストラリアのことを考える。

ジャージを守るのは至難の業だろうね。まだパリまで先は長いし、我らはプロトン内で最高のチームというわけではないから。でもしっかり仕事が出来るよう全員で協力していくし、ボクも100%で走っていく。フランク・シュレクは1秒差だからもちろん危険視しているけれど、ボクが一番恐れているのはデニス・メンショフだ。

http://www.jsports.co.jp/style/tour2008/report/index.html

■先週金曜日の深夜に、BS2「昭和演劇大全集」で放送されたのが、小演劇芝居の傑作として誉れ高い『寿歌(ほぎうた)』北村想・作、加藤健一事務所・公演(1982年)。

『ザ・ロード』がアメリカの「はなし」ならば、ほぼ同時期に、この日本で繰り広げられているであろう世界が、この『寿歌(ほぎうた)』だ。でも、この芝居の初演は昭和54年。今から30年も前のはなし。信じられないなぁ。ぼくはまだ大学生で、まだバブル前夜の頃だ。当時は誰も「リアル」にはこの芝居を感じなかったはずだ。ただ「予感・空気」はあったのかもしれない。でも、30年後の今日、この芝居はメチャクチャ「リアル」だ。ぜんぜん古臭くない。怖ろしいことだ。大変な時代に入ったものだな。

『ザ・ロード』の父子は、スーパーマーケットの「買い物カート」を押して南へ歩いてゆく。『寿歌(ほぎうた)』の主人公たちは、リヤカーを引いて西へ西へと旅を続ける。日本列島の場合、南を目指すとすぐに海とぶつかってしまうから。

この11月にアメリカで公開予定の映画版「ザ・ロード」では、カートではなくリヤカーが使われているようだ。

  伊那のパパズ「絵本ライヴ」(その43)下伊那郡豊丘村図書館    2008/07/13 

■3月2日の喬木村以来だったので、ずいぶん久しぶりだったな。ボーっとしてて、ビオフェルミン風船を持ってくるのをすっかり忘れてしまった。ごめんなさい。というワケで、今日は『ふうせん』(アリス館)はなしです。この日、豊丘村の小学校でドッジボールの大会があるとかで、今日のお客さんは小さな子が多かった。朝から暑い真夏日だったのに、ご来場ありがとうございました。50人強入ったかな。

 『はじめまして』新沢としひこ(すずき出版)
 『ぷしゅー』風木一人・著、石井聖岳・絵、岩崎書店 (2006/05) → 伊東
 『ドオン!』山下洋輔・文、長新太・絵(福音館書店) → 北原

この『ドオン!』は、「たかだこども医院」の高田修先生が、昨年夏に熊本で開催された外来小児科学会での夜のコンサートで読んだのだ。高田先生が「ドカシャバ ドカシャバ ドカドカドカ」と読むと、それに続いて福島県の佐久間先生が隣で「ぽんぽこぽんぽこ」ボンゴをたたいた。ぼくは客席から見ていて「やられたなぁ」と思った。口惜しかった。そうか、そういう手があったんだ。

というワケで、先だってぼくも、松本パルコの島村楽器「太鼓」を買った。ボンゴじゃくて太鼓(フロアタム)、バチ付き(JK751FT/カタログには載ってないです)。宮城県の高田先生には、先日メールして『ドオン!』をやらせていただく許可ももらった。これで万全だ。はたして子供たちに受けるだろうか? すっごく心配だった。でも、まあまあ良かったんじゃないかな。自画自賛(^^;;

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 『パンツのはきかた』岸田今日子・文、佐野洋子・絵(福音館書店)
 『かごからとびだした』(アリス館)

 『トマトさん』田中清代(福音館書店) → 坂本
 『ぶきゃぶきゃぶー』内田麟太郎・文、竹内通雅・絵(講談社) → 倉科

 『おーいかばくん』中川ひろたか(ひさかたチャイルド)
 『世界中のこどもたちが』

 『まめうしくんとあいうえお』あきやまただし(PHP) → 倉科(アンコール)


  伊那の老舗バー『モスコー』の、美人で自慢の娘のこと     2008/07/12 

■毎週土曜日の「信毎夕刊」1面には、長野県出身で、いま東京で(いや、日本中で)活躍する人々を追う特集「新しなの人」が載る。今日土曜日の信濃毎日新聞夕刊表紙にカラー写真で載っているのは、劇団「円」所属の女優、唐沢潤さんだ。以下「信毎」記事からの抜粋。


NHK総合で放送中の米ドラマ「デスパレートは妻たち2」で、主人公の一人リネット・スカーボの声を担当している。四人の子育てに追われながら、夫との関係や仕事に悪戦苦闘するリネットに「同じ年代として、ひしひしと共感します」。(中略)

 俳優橋爪功さんが代表の演劇集団「円」に所属。女優業のほか、海外映画やドラマ、アニメなどの吹き替えを多くこなしている。
 実家は伊那市旭町。両親が昭和三十年代から営むバーは、地元の文化人らも常連で、小さいころから芸術や音楽を身近に育った。
 伊那弥生ヶ丘高校から東京女子大短大部に進学。将来の夢は舞台美術家だったが、友人に誘われてたまたま受けた円の入団試験に合格。卒業後に入団し、芝居の基礎を学んだ。(中略) 四十七歳。東京生活の方が長くなったが、仕事の合間を縫っては帰郷。「人々のまとっている雰囲気が柔らかい」と、伊那は今も安らぎの場だ。(平成20年7月12日 信濃毎日新聞・夕刊 一面)


  あっ! この女優さん、伊那の老舗バー『モスコー』の、美人で自慢の娘さんだ! すぐに判ったぞ。

■詳しいことは、露都「モスコー」の夜はふけて(その2)2004/02/11の日記をごらんください。とは言ったものの、たいしたことは何も書いてなかったな。


  圧倒的傑作! 『ザ・ロード』 コーマック・マッカーシー(早川書房)読了  2008/07/09 

■先週の土曜日、信大小児科同窓会総会終了後に立ち寄った、松本パルコ地下の本屋「リブロ」で、『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー、黒原敏行・訳(早川書房)を購入した。その時たまたま手に取ったのは、「読んで!」って、本が呼んでいたんだ。たぶん。でも、買って大正解だった。月曜日の夜から読み始めたら一気にのめり込んで途中で止められなくなり、今日の昼休みに読了した。ただただ「もの凄いはなし」だった。いま「この時代」に幼い男の子を育てている父親にとっての、「必読の書」だと思う。圧倒的な傑作だ。母親はともかく、父親ならば読め! 読まねばならぬ。絶対に。

じつは『すべての美しい馬』(早川文庫)をずっと前から持っていて、でもいまだ未読で、映画『ノーカントリー』も『血と暴力の国』も未見のままという有様。しかし、マッカーシーは凄いな。本当に凄い。

この本『ザ・ロード』は、今年75歳(わぉ、後期高齢者ではないか!)になる著者から、9歳になる我が子「ジョン・フランシス・マッカーシー」に捧げられている。ぼくの2番目の息子も、いま9歳だ。この本の設定との類似点がいろいろと取りざたされている「子連れ狼」で「ちゃん!」と叫ぶ息子「大五郎」は、2〜3歳ではなかったか? その年齢では、この設定は無理だと思うな。

    父と子は
   「世界の終り」を
    旅する。
    人類最後の
    火をかかげ、
    絶望の道(ロード)を
    ひたすら
    南へ------
これは、本の帯に書かれた言葉だが、それ以上の情報は一切前もって入れずに読んだほうが、読後の満足感は大きいと思うよ。
いくつか出た書評の中では、前述の朝日新聞・鴻巣友季子(翻訳家)さんの書評の他に、読売新聞や、週刊文春:杉江松恋(7月10日号)、週刊新潮:大森望(7月3日号)などがあるが、日本経済新聞7月6日(日)読書欄に載った、豊崎由美さんの書評が最も鋭どかったな。そうか、そういう意味だったんだ。

■ぼくはいつも言うのだが、すぐれた小説は「ディテール」が「リアル」にできている。この小説における「リアル」とは、すなわち「衣・食・住、それから父と子の会話」のことに他ならない。しかし、南を目指す旅人にとって「住」は野宿でも構わないし「衣」は取りあえずの雨風がしのげれば大丈夫だ(ただし、靴は別だが)。この小説で「最もリアル」なのは「たべもの」のシーンだ。それに尽きると言ってもいい。この本を読み始めて、妙に何度も思い浮かべたのは、吾妻ひでおの『失踪日記』だった。それから、おぞましいゾンビ。

あと、やたらと降りしきる冷たい雨や水たまり、それに灰色の雪のシーンでは、ロシアの映画監督タルコフスキーの映画『ノスタルジア』や『ストーカー』を思い浮かべた。

ぼくは、自分の息子たちに「この本の主人公」がしてきたことを、ちゃんとしてあげる覚悟がはたしてあるのであろうか?

「火を運ぶもの」としての覚悟が……

  ツール・ド・フランス 2008 始まる        2008/07/06 

■前回の話は、日本医師会も長野県医師会も、このままスルーするようだ。マスコミの扇動に煽られることなく、案外冷静に落ち着いている患者さんたちの対応に安心したからだと思う。松村先生と原山先生にも訊いてみたが、やはり糖尿病患者さんが自己血糖測定するための「採血器具」は使っていないとのことだった。想像以上に小児科では使われていなかったんだね。そうか、よかった。ただ、ぼく個人的には、医師会の対応も、県衛生部の対応も、いまだに釈然としないのだが……

■この2週間の覚え書き■

6月23日(月) 午後4時から、伊那市役所3F会議室で、
         「第1回、伊那市就学指導委員会」。今年も始まったな。大変だ。
 
6月25日(水) 駒ヶ根市保育協会での講演(午後4時半〜6時)

6月26日(木) 竜東保育園年少組・未満児組の内科健診。
 読んだ絵本は、 『だるまさんが』かがくいひろし(ブロンズ新社)
         『やかましい!』アン・マクガバン文、シムズ・タバック絵(フレーベル館)
                 年中組の予定で持ってきたので、年少さんにはちょっと
                 難しかったかな? でも「ロバは?」と訊くと、ちゃんと
                 「ヒーホー」と返ってくるんだから凄いね。
         『三びきのやぎのがらがらどん』マーシャ・ブラウン、瀬田貞二(福音館書店)

         夜は、プリエで上伊那医師会学術講演会。高血圧コントロールの話。

6月27日(金) 夜に、上伊那医師会理事会

6月28日(土) 「杉山三四郎絵本ライブ」。打ち上げは「いろり」、2次会は「萬里」。

7月 2日(水) 竜東保育園年中組の内科健診。
 読んだ絵本は、 『だるまさんが』かがくいひろし(ブロンズ新社)
         『どうぶつしりとり絵本』薮内正幸(岩崎書店)
         『こぶたのブルトン なつはプール』中川ひろたか、市居みか(アリス館)
         『わにわにのおふろ』小風さち、山口マオ(福音館書店)
         『なりました』内田麟太郎、山口マオ(すずき出版)
         『三びきのやぎのがらがらどん』マーシャ・ブラウン、瀬田貞二(福音館書店)

          帰宅後、カレーを作る。S&B「ケララカレー」
         「ケララカレー」を作ったのは、2003年10月13日以来か。
          めちゃ辛いが、チャツネを入れたらいい感じになったぞ。
          ナンは「ハウス・ナンミックス」2袋分を焼く。

7月 5日(土) 午後3時から、松本市の「松本館」にて、信州大学小児科同窓会総会。
         「ツール・ド・フランス /2008」始まる!
         e2 by スカパーの「J sports」と視聴契約したので、今年は初めて「ライヴ」で
       ツール・ド・フランスが見られる。これはうれしい。これから3週間、毎日フォローするぞ!

7月 6日(日) 当番医。お昼は好例の「ちむらのちらし寿司」。
         毎回、決してあきることのない新鮮な喜びが味わえる「ちらし」だ。ほんとうに旨いぞ。
         今日は落ち着いた一日で、62人診て終了。スタッフが帰った後、電話が3件。
         申し訳ないが、1人は伊那中央病院の一次救急へ行ってもらい、2人は電話相談のみ。
         やれやれ、疲れたな。夜は、ツール・ド・フランス第2ステージ。

     

 「あんちゃん、その噺だれから教わったんだい?」       2008/07/01 

■ポータブルDVDプレーヤーを手に入れてからというもの、もう連日、昼も夜も「古今亭志ん朝」漬けの日々。いいなぁ、志ん朝さんは。聴けばきくほど、見ればみるほどいい。一昨日は「夢金」と「四段目」、昨日は「二番煎じ」、そして今日は「大工調べ」。偏屈な因業じじいの家主・源六に対して、馬鹿でまぬけながらも大工の腕はいい大切な子分の与太郎の面倒をみる棟梁の政五郎が、平身低頭に詫びを入れ、ただただ頭を下げているというのに、源六は次第に図に乗り、果ては「雪隠大工」呼ばわりするに及んで、耐えに耐え忍びに忍んできた政五郎が、とうとう切れて喧嘩越しに啖呵を切る場面が見どころ聴きどころの噺。志ん朝さんのDVDを見ていると、源六の顔はいかにも因業爺に見えるし、政五郎になると粋で鯔背な江戸職人の面構えに見えるから不思議だ。しかも、背後の風景が見えてくるんだね。「夢金」と「二番煎じ」は寒い冬の噺だが、蒸し暑い梅雨のこの時期に聴いていても、冬の夜風に曝されて背筋がゾクゾクと寒くなってくるような気分にちゃぁんとなるのだ。やっぱり、志ん朝さんは名人だったんだねぇ。

したがって、読む本も「志ん朝関連本」。『榎本版・志ん朝落語』榎本滋民(ぴあ)と、『よって、たかって古今亭志ん朝』(文春文庫)だ。この本を読むと、志ん朝さんは何よりもスジを通すことを大切にしていたことがわかる。古今亭の「お家芸」と呼ばれる噺がある。その代表は、「火焔太鼓」「抜け雀」「鮑のし」「お直し」「井戸の茶碗」「柳田格之進」か。昔は、こうした古今亭志ん生が十八番(おはこ)とした噺は、柳家や三遊亭の噺家は遠慮して寄席には掛けなかったもんだ。ところが、今では柳家の噺家さんも十八番にしている。権太楼さんとか、さん喬さんとか。

<八朝>:師匠は若手が高座から下りてきた時、
「あんちゃん、その噺だれから教わったんだい?」
 って聞いていたけど。僕はあれは当然だと思うの。今、CDなんかで覚えてそのまま高座に掛ける人間が多いものね。それに対して他の師匠も余りうるさく言わない。

<志ん五>:あれはおかしいと思うね。やっぱりきちんと稽古をしてもらって上げてもらってから高座にかけるべきだと思うし、それがスジでしょう。うちの場合、三回噺を教えて、四回目に上げる。で、テープ持ち込みは厳禁っていうのがルールだった。

<八朝>:うちの師匠が若手の噺家にそういうことを言うのは、そうしたスジを大切にしろってことでしょ。その人間の師匠が使うクスグリと違うクスグリを使う、無断でそれをやっちゃいけないわけだから、師匠はそれとなく注意してるわけでしょ。

<志ん五>:小さん師匠もそういう人間を見つけたら、
「盗人みてえな真似するな」
 って叱ってた。

<志ん橋>:うちの師匠はそれぞれの師匠が十八番にしていた噺は大変に尊重してたね。たとえば寄席で小さん師匠と出演が重なった時、たとえそれが昼と夜に分かれてても、小さん師匠の十八番にしている噺は絶対やらなかったもの。やっぱりそれくらいの遠慮がないと。(p239)


<志ん橋>:(志ん朝師匠が)「……お前に言っとくけどなあ、これ、今回限りだよ。で、お前には分かんないかもしれないけど、いいか、これはそんなに難しい噺じゃないんだよ。大した噺じゃないだろう?
 でも、俺が何で駄目かって言うと、この噺は親父から俺に来ている噺で、兄貴も遠慮して演らなかった噺なんだ。
 つまり、俺が売り物にしている噺なんだ。世間でもそう思ってる。たとえお前が俺よりうーんと上手く演っても駄目なんだ。だから、そういう無駄なこたぁやめろ。いいか、演るんなら、俺の目の届かないところで演れ」(p140)

■「古典落語」というのは、万人が共有(シェアー)する財産だ。だから落語界では、後輩の噺家から「噺を教えて欲しい」と頼まれれば、無償で教えてあげるのが古くからの習わしとなっている。素晴らしいことだね。ただし、口伝えで「三回」教えてもらって家へ帰り、とことん練習して教えてもらった師匠の前で演じ「人前でやってもいいよ」というお墨付きをもらって(上げてもらう、と言う)初めて、「その噺」を自分の物とできるのだ。このルールが大切なんだね。「ここ」を参照のこと。

ところがきょうび、落語に限らず「お笑い界」では勝手に「人のネタ・ギャグ」を盗んで笑いを取る輩が横行していることは実に嘆かわしい。


何もそれは「お笑い界」に限ったことではない。

ぼくら「伊那のパパズ」の面々は、お互いメンバーの「十八番」を尊重する。
例えば、宮脇さんの十八番『いいからいいから』『こもりくんとおおもりくん』は他のメンバーは絶対にやらない。倉科さんの十八番『まめうしくん あいうえお』『じごくのそうべえ』も同じ。伊東さんの十八番は『あらまっ!』か。

しかし、それこそ「絵本」は共有財産だから、誰がどう読もうが勝手ではあるのだが、先人の読み手が工夫してオリジナルの「クスグリ」を入れて読む場合は、その「クスグリ」を先人の許可なく勝手に使うのは仁義に反すると思うのだ。僕らは結構「そのこと」を気にしている。ところが、世間の人々は案外無頓着に無許可で「真似」してるんだね。

そういうのって、嫌だな。



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