しろくま
 T O P ご案内 おとうさんの絵本  読書&CD  Now & Then リンク

北原こどもクリニック  



しろくま 不定期日記


2002年:<10/11月>  <12/1月>
2003年:<2/3月>  <4/5月> <6/7月> <8/9/10月><11/12月>
2004年:<1/2/3+4月><4 / 5/6月>< 7/ 8/ 9月> < 10/ 11月>
2005年:< 12月/ 1月>< 2月/ 3月><4月><5月/ 6月><7月><8月><9月><10月><11月/12月>
2006年:<1月><2月><3月><4月><5月><6月/7月><8月><9月><10月><11月><12月>
2007年:<1月><2月><3月><4月><5月><6月><7,8月><9月><10月><11,12月>
2008年:<1,2月><3月><4月><5月、6月><7月、8月><9月><10月・11月><12月>

●「不定期日記」●

 『小さな島のちっちゃな学校 野忽那島シーサイド留学物語』 沢田俊子(汐文社)    2009/02/28 

■「センセイはよく風邪ひかないねぇ、マスクもしないで」って、いつも言われる。実際、開業してからの11年弱、自身の体調不良のために臨時休診したことは一度もないし、点滴したこともない。で、ちょっと過信してたんだね。久々に風邪をひいてしまった。昨日の夕方、ゾクゾクっと寒気がしたのだ。胃のあたりがキリキリ痛くなって、吐きそうになった。やばい、やられたな。美篶小学校あたりで流行りだした強力なウイルス性胃腸炎に罹ってしまったようだ。この日は夜7時から上伊那医師会理事会があったのだが、急きょ欠席させてもらって、夕飯も食べずにそのままベッドへ。吐きはしなかったが、夜中まで腹痛と吐気で眠れなかった。

今日の土曜日は、午前中の患者さんが少なかったことも幸いして何とか外来を務め、お昼のお粥を口に入れてから再びベッドへ。点滴は嫌だからやらない。でも、夕方にはずいぶん回復した。やれやれ、週末でホントよかったな。

■先日、外来小児科学会でずっと「絵本のワークショップ」をいっしょにやっている、香川県高松市の住谷朋人先生が、『小さな島のちっちゃな学校 野忽那島シーサイド留学物語』という本を贈ってくれた。さっそく読んでみる。いい本じゃないか。長野県でも、白馬村とか生坂村とかで都会の小学生を受け入れる「山村留学」が行われているのは知ってたが、愛媛県の松山沖の瀬戸内海に、周囲わずか6kmの「野忽那島」っていう小さな島があって、その島にある松山市立野忽那小学校では昭和62年から22年間「シーサイド留学」が行われてきたのだという。全国からのべ121人の子供たちが訪れこの島で楽しく充実した1年間を過ごした。しかし、この3月で留学生ではない島在住の最後の一人の6年生男子が卒業してしまうために、野忽那小学校は4月から休校になってしまうのだ。

■このところ連続でやっている「メディア漬け育児を見直して、ノー・テレビ・デーに挑戦しよう!」という講演は、2月4日(水)高遠小学校、2月13日(金)美篶中央保育園、2月18日(水)高遠北小学校ときて、来週の3月3日(火)伊那市役所5階会議室での講演でひとまず終了する。同じ話を続けていると、話しながら自分で厭きてきてしまって、その感じが聴衆に伝わって白けてしまう。高遠北小学校ではそうだった。それじゃぁいけないね。話し手のプロじゃぁないな。反省。

それはともかく、今回の講演では、まず最初に写真を次々と映した。『もうひとつの学校』宮原洋一著・写真(新評論)からの写真だ。1969年から1973年にかけて東京と川崎で宮原洋一さんが撮った子供たちの写真。ぼくが1970年の大阪万博の年に小学6年生だったから、この写真集に登場する子供たちはいま、40代のお父さん、おかあさんであるはずだ。あの頃には、「さんま」が確かにあった。「空間」「時間」「仲間」。聴衆に、そういうことを思い出していただくために映すのだ。今ではすっかり失われてしまって、ほとんど信じられないような濃厚で充実した「あの」僕らの子供時代を。

ところが、この本『小さな島のちっちゃな学校』の中に思いがけず生き残っていたのだ。子供らの「さんま」と、彼らを暖かく見守る大人たちの姿。そうして、今から30年〜40年前の子供たちには確かにあった、生き生きとした「あの」笑顔が。

 映画『チェンジリング』つづき、その他の話題      2009/02/25 

■アカデミー賞の作品賞、監督賞を取った『スラムドッグ$ミリオネア』って、たしか原作本があったよね。そうそう、『ぼくと1ルピーの神様』ランダムハウス講談社 (2006/9/14) だ。以前一度、図書館から借りてきたことがあったが、結局一行も読まずに返却してしまった。あの時、読んどきゃよかったなぁ。でもこの本、最近ブックオフで105円で売られていたのを見たぞ。買わなかったけど(^^;;

『おくりびと』アカデミー外国語映画賞受賞は快挙だ。素直にそう思う。見てないけど。だって、日本の映画人全員の悲願だったんだから。よかったね、ほんとうに。『納棺夫日記』青木新門(文春文庫)は、11年前に読んでいる。あれは傑作だった。ちょうど富士見高原病院で、正木不如丘と堀辰雄の『風立ちぬ』に関して調べていた時だったので、今でもすごく印象に残っている。でも、見てはいない映画『おくりびと』とは、全く違う雰囲気の本だと思う。『納棺夫日記』には、たしか「みぞれ」が降るシーンがあった。そう、宮澤賢治「永訣の朝」に出てくる、あの「あめゆじゆとてちてけんじや」の「あめゆじゆ」だ。

今日の信毎夕刊には、1993年、本木雅弘さんが青木新門さんに「著書の一文を引用させてほしい」と電話をかけてきたという話が載っている。本木さんのインド旅行の本に引用したいとの申し出だった。(以下、信毎夕刊・2月25日より引用)
送られてきた本には、ガンジス川の岸辺で「送り火」を持つ本木さんの写真。そこに「蛆も生命なのだ。そう思うと蛆たちが光って見えた」という青木さんの一文が添えれていた。
「うじの光は『日記』のテーマ」と青木さん。真夏に孤独死して1ヵ月放置されていた老人を納棺したとき、うじを掃き集めると必死で逃げる様子に命を実感、「光って見えた」と話す。
当時二十代の本木さんが、自分の著書の核心に触れたことに感銘を受けた。本木さんが映画化を望んでいることを雑誌で知り、「映画化するならあなたしかできない」と励ましの手紙を送ったという。
■昨日、TSUTAYA で『キネマ旬報/3月上旬号』を買ってきた。クリント・イーストウッドが表紙で、これが「映画」だ!「チェンジリング」特集号、となっていたからだ。読みどころは、クリント・イーストウッドへのロング・インタビューと、小林信彦 × 芝山幹郎対談だ。小林信彦氏は、クリント・イーストウッド信奉者として昔から有名だったからね。彼が「監督、クリント・イーストウッド」の偉大さを「週刊文春」誌上で語り始めたころは、誰も「そんなこと」言ってなかった。日本のあらゆる評論家も、日本のハリウッド映画ファンも。その点が重要だ。

今でこそ、猫も杓子も「クリント・イーストウッド監督」さまさまだが、映画『許されざる者』で、アカデミー賞を取るまでは、小林信彦氏以外にはだれ一人正当にクリント・イーストウッドを評価していなかったのだから。

「キネ旬」を読むと、あの映画の撮影日数は42日だったそうだ。信じられないな。あんな緻密な映像が、たった一月半弱で撮り終わっていたとは。ところで、CGを感じさせない当時のロサンジェルスの街並、ちんたらゆっくり走る赤い路面電車、T型フォードの走りは、いったいどうやって撮ったんだろうか? 

ぼくがこの映画で一番好きなシーンがある。

それは、主人公のアンジェリーナ・ジョリーが土砂降りの雨の中、ロス市警の階段前で記者会見する場面だ。アメリカ西海岸は、いつだって青空のはずだ。だって、「カリフォルニアの青い空」って曲もあるじゃない。でもその日は、土砂降りの雨なんだ。それからもう一つ。この映画には、ほとんどまったく「黒人」が登場しない。そのことも重要だと思う。1928年だからね。そういう時代なんだ。(映画のラスト近くで、一人だけ黒人が広場の画面に登場しているしているけど)

 映画『チェンジリング』 アンジェリーナ・ジョリー、主演女優賞取れず残念 2009/02/23 

■すんげー映画だった。上映時間が2時半近くもある映画なのに、ラストまで一気だったな。寝不足だったので、途中で寝ちゃうかも? と心配したのだが、ぜんぜん眠くならなかった。アンジェリーナ・ジョリー、凄い! クリント・イーストウッド、凄い!!

映画は実に静かに始まる。バックで、アート・ファーマーのフリューゲル・ホーンのような切ないラッパのジャズ・バラードが奏でられる。この曲がめちゃくちゃイイ。もちろん作曲はイーストウッド本人だ。監督2作目『ガントレット』の音楽で、通好みのアルトサックス奏者、アート・ペッパーを器用するほどのジャズ好きだからね。そうして、黒いタイトルバックに、白い小さな字で a true story  とでる。あ、実話なんだ。そう、だから映画を見ながらゾクゾクと寒気がしてきた。怖かったな。

■舞台は1928年の L.A.  この年、サッチモことルイ・アームストロングが不朽の名演「West End Blues」を録音し、アメリカの絵本作家ワンダ・ガアグが『100まんびきのねこ』を出版した。ぼくの好きな絵本『かしこいビル』は、1926年初版。それから、1928年5月21日、アフリカ黄金海岸アクラにて、野口英世が黄熱病で死去している。享年51。金融破綻、世界恐慌が起こる「暗黒の木曜日」が、1年後の1929年。日本では昭和3年で、この年の8月にぼくの母は生まれた。今から80年も前の話だ。

そういう時代とは言え、自由の国であるはずのアメリカで、先日読んだマンガ『光る風』そっくりの、体制が個人を押しつぶす全体主義がまかり通っていたとは! ほんとうに驚きだ。村上春樹氏が、イスラエルでスピーチした「壁と卵」そのものじゃないですか。腐敗しきったL.A.の警察組織内部を暴いた、ジェイムス・エルロイの『ブラックダリア』に始まる「L.A. 4部作」の時代設定は、もう少し後だったかな。でも、映画を見ながら「さもありなん」と思いましたよ。でも、それで終わらないところが、アメリカの底力であり、イーストウッドの監督力なんだなぁ。

主演のアンジェリーナ・ジョリーが、映画の終盤にいくに従って、どんどん美しくなっていく。絶妙のライティングでハッとするような表情を見せるのだ。まるで、『昭和残侠伝』の高倉健みたいに、耐えて耐えて耐えて、最後に感情を爆発させるシーンがある。これが凄い!!

■PG12指定映画だからね、子供には見せられない残虐シーンが確かにある。山形村の「アイシティ・シネマ」へ妻といっしょに見に行ったのだが、妻は息苦しくなるようなシーンの連続だったという。でも、見て損したとは言わなかった。同じ映画館で上映されていた『ベンジャミン・バトン』や『おくりびと』のほうを見ればよかった、とは言わなかったな。よかった。

映画終盤のシーンがちょうど、アカデミー賞授賞式の日で、主演のアンジェリーナ・ジョリーが「今年の作品賞は、ぜったい『ある夜の出来事』よ!」って言うのだが、映画を見ながらぼくは、彼女に主演女優賞をあげたい、そう思った。残念ながら果たせなかったけど。それから、脇を固める助演陣もよかったな。犯人とその従兄弟の少年、その少年を補導する、ジェイムス・テイラー似の刑事。憎っくき青年課主任警部、憎っくき小児科医、憎っくき精神科医。みんな上手かったなぁ、ほんと。

めちゃくちゃヘビーだけれど、しみじみ傑作です。見るべし!

 『青い空、白い雲、しゅーっという落語』堀井憲一郎(双葉社)が、めちゃくちゃ面白い! 2009/02/22 

■今日は当番医。前回1月2日の時の半分の患者さん。昼休みも1時間しっかり取れた。ちむらの「ちらしずし」も今回はゆっくりと味わって食べた。しみじみうまかった。午後はだらだら続いて18時にようやく終了。インフルエンザの新患が21人。まだまだ流行っていたのだね。


■土曜日に塩尻まで行ったので、もったいないから「絵本ライヴ」終了後に松本へ向かった。あ、向かう前に塩尻のブックオフに寄ったのだ。そこで何と! ハリー・ポッター最終巻2冊組が、2,400円で出ているのを見つけた。あわてて一旦店の外にでてから家へ電話。長男が一気に「シリーズ」を読み進んでいて、今日の午後、ベルシャイン伊那の本屋さんで最終巻2冊組を買うと言っていたからだ。でも、遅かった。先ほど購入して帰ってきた後だったのだ。

しかたないんで、そのままR19を松本に向かった。でも道が混んでいてなかなか到着しない。いつも停める駐車場にたどり着いた時には、午後6時を回っていたな。その足で「パルコ」に向かう。塩尻でお茶を何杯も飲み過ぎたので直ちに排尿したかったからだ。パルコ地下1Fのトイレで用を足し、ようやく「ほっ」とした。そのまま「リブロ」へ。さすがに生きのいい本屋さんはいいなぁ。あれもこれも、読みたい本がいっぱい並んでいる!

■で、見つけたのが、少し前からチェックしていた『青い空、白い雲、しゅーっという落語』堀井憲一郎(双葉社)1600円税別だ。

読み始めたら、予想以上に面白い。もう、めちゃくちゃ面白い。本のタイトルからしてワケ分かんないが、べつにたいした意味はないんだそうだ。そーか。でも、この本を読み終わると、これほどピッタシした本のタイトルはないよね。ぼくが頁を繰るごとに声をたてて「あはは!」と笑うので、ハリー・ポッター最終巻の(下巻)に早くも突入した長男が、気になるのかパタンと本を閉じて「おとうさん! なにがそんなに可笑しいの?」って、訊いてきた。「お前には、まだ早い!」それでお終い(^^;;

この本を読みながら思ったことがある。世間にあまた存在する「落語愛好家のブログ」たちよ、せめて「これくらい」の文章のテンポとメロディ、それに小粋で洒落たセンスを会得しろよな。たぶん、一番そう感じているのが堀井憲一郎氏だと思う。堀井氏は、この本の巻頭で 「落語の本ではない。旅の本である。だから、落語好きに向けた本ではない。」と断言しているのだが、いやいや、これは間違いなく「落語の本」である。しかも、今までにまったくなかったタイプの落語本。値段が高いのが唯一の欠点だが。

世の中の落語愛好家のすべてに捧げたい「究極の1冊」であるよなぁ。心して読め! 落語ファンよ! (^^;;


 伊那のパパズ「絵本ライヴ」(その51) 塩尻市立図書館(塩尻総合文化センター講堂)2009/02/21 

■先週末の春陽気が嘘のような寒の戻り。木曜日の未明から降り出した雪は、明け方から雨に変わった。でも、7〜8cmは既に積もった雪がクリニック駐車場を覆っている。朝6時半に起き出して、土砂降りの雨の中、合羽着て家族総出で雪かき。それにしても、水を目一杯吸った雪は本当に重い。腰を悪くする。いやはや弱ったなぁ、と皆で根を上げてたら、神田さんが来てくれて重機で一気に雪を削除してくれた。その間15分弱。早い。早過ぎるぞ! 助かりました、ありがとうございました>神田さん。

でも、暖かければ雪は溶ける。自然と溶ける。なんだかな、あの苦労は。そんなこと言ったら、飯山市や栄村在住の人たちに怒られてしまうね、きっと。ごめんなさい。


■さて、今日の土曜日は仕事を一時間早く終わらせて、中央道を一路塩尻へ。塩尻市立図書館の小宮山さんからのオファーで「伊那のパパズ・絵本ライヴ」が午後3時から始まるのだ。今回もフルメンバーでのライヴ。ただし、5人それぞれに車を出して現地集合となった。塩尻インターを下りると、あれあれ? 雪がない! 伊那の方がずっと降ってるじゃん、なぁんだそうか。

市役所も、健康センターも、体育館も駐車場が満杯で困ったが、なんとか体育館隅に車を停める。他のメンバーは大丈夫かな。2時半過ぎ、メンバー5人が集結。今日の段取りを決める。「このあいだと、いっしょで、いいっスよね?」「了解!」 それでおしまい(^^;;

0902211.jpg   0902212.jpg


1)『はじめまして』
2)『ちゃんとたべなさい』 ケス・グレイ文、ニック・シャラット絵(小峰書房)→ 伊東
3)『うしはどこでも「モ〜!」』エレン・スラスキー作、ケネス・アンダーソン絵、桂かい枝訳(すずき出版)→ 北原
4)『パンツのはきかた』
5)『かごからとびだした』
6)『ねぎぼうずのあさたろう』飯野和好・作絵(福音館書店) → 坂本
7)『えほん寄席』から、『やかんなめ』 → 宮脇
8)『おーいかばくん』
9)『しちどぎつね(上方落語)』田島征彦・絵(くもん出版) → 倉科
10)『ふうせん』
11)『世界中のこどもたちが』


■開演30分前には、20人くらいしか集まっておらず、広い会場で困ったなぁと心配していたのだが、ふたを開けてみたら120〜130人近くのご来場があった。ありがたいことです。感謝感謝でありマス。元気のいい子供たちに、おとうさんおかあさんたち。それに、おじいちゃん、おばあちゃんの姿も散見された。それから、松本の読み聞かせグループの方々も多数いらしていたようだ。いやはや、お恥ずかしい。

満足してもらえたかな?

だといいな。


塩尻市立図書館の小宮山さん、塚原さん、本当にありがとうございました。お土産まで頂戴してしまい、すみませんでした。

 みんな貧乏が悪いんや(岡林信康「チューリップのアップリケ」)  2009/02/19 

■『中央公論/3月号』を買ってきて、内田樹・苅谷剛彦 対談を読む。まぁ、立ち読みでもよかったか。内田センセイはこう言う。

 僕は格差は「イデオロギー耐性の強い」上位階層と、「イデオロギー耐性の弱い」下位階層との間に発生しているんじゃないかと思っています。
少しややこしい話なので、説明させてください。

 今の日本社会には、「年収多寡で人間は格付けできる」というイデオロギーが蔓延しています。60年代までは、人々は「労働」を通じて自己実現を果たしてきましたが、80年代以降、「消費」が自己実現の場となった。(中略)マスコミでは、東大生の親の年収が高くなったという事実を繰り返し取り上げ、「金のある人間だけに学習機会が与えられ、金のない人間には与えられない」という議論を繰り返すようになった。そういう流れの中で、イデオロギー耐性の弱い人たちは、「年収の多寡が人間を格付けする」というイデオロギーに呑み込まれてしまった。その結果、自分の社会的な不成功の理由をもっぱら「金がないこと」で説明する人たちばかりになった。仮に自分が怠惰で、向上心に欠けた人間であったとしても、それは「金がないこと」の結果であって、原因ではない。この「金がすべてを決する」というイデオロギーからは「だからもっと金を分配しろ」という政治的要求以外のものは出てこない。

 そして、このイデオロギーの信奉者を構造的に階層下位に固定化している。今の日本社会で何よりも悲惨なのは、階層化によってもっとも苦しんでいる階層下位の人たちが、階層かを強化させるイデオロギーのもっとも熱心な信奉者であるという逆説なのです。(中略) 階層上位の人間ほど、「金だけ」では何も実現しないことを熟知している。だから、知識や技術の習得や、相互扶助的な人間関係の構築や、文化資本の獲得を金儲けより優先させる。そして、その結果、リスクがヘッジできるし、質の高い情報も入ってくるし、分析力や観察力もすぐれてくるから、階層上位に一層安定する。ところが、階層下位の人間は、「金ですべてが決まる」と信じ込まされているので、金のこと以外にはまったくリソースを投じない。結果的に自分で自分を階層下位に釘付けにしてしまう。(208〜209頁)

■なるほどなぁ、と思う。で、その「世の中、金ですべてが決まる」と言っているような(実際はぜんぜん違ったけど)タイトルの本『この世でいちばん大事な「カネ」の話』西原理恵子(理論社)を買ってきて今晩、読んでみた。すっごく面白かった。予想外に真っ当な事が直球ど真ん中で書かれてあった。ビックリした。西原理恵子さんの生い立ちに関して、彼女のマンガで断片的には知っていたつもりだったが、文章で改めて読まされると、本当に凄まじい。勝間なんとかさんの本より、よっぽどためになるんじゃなかろうか?

■内田センセイの言葉とリンクする部分を以下に引用する。

 貧乏人の子は、貧乏人になる。
 泥棒の子は、泥棒になる。
 こういう言葉を聞いて「なんてひどいこと言うんだろう」と思う人がいるかもしれない。でも、これは現実なのよ。

 お金が稼げないと、そういう負のループを断ち切れない。生まれた境遇からどんなに抜け出したくても、お金が稼げないと、そこから抜け出すことができないで、親の世代とおんなじ境遇に追い込まれてしまう。(中略)

 前にも言った。「貧困」っていうのは、治らない病気なんだ、と。
 気が遠くなるくらい昔から、何百年も前まら、社会の最底辺で生きることを強いられてきた人たちがいる。(中略)それじゃ、いつまで経っても貧乏から抜け出せるわけがない。それで何代も何代も、貧しさがとぎれることなく、ずーっとつづいていく。

 そうなると、人ってね、人生の早い段階で、「考える」ということをやめてしまう。「やめてしまう」というか、人は「貧しさ」によって、何事かを考えようという気力を、よってたかって奪われてしまうんだよ。

 貧困の底で、人は「どうにかしてここを抜け出したい」「今よりもましな生活をしたい」という「希望」を持つことさえもつらくなって、ほとんどの人が、その劣悪な環境を諦めて受け入れてしまう。

 そうして「どうせ希望なんてないんだから。考えたってしょうがない」という諦めが、人生の教えとして、子どもの代へと受け継がれていく。
 考えることを諦めてしまうなんて、人が人であることを諦めてしまうにも、等しい。
 だけど、それが、あまりにも過酷な環境をしのいでいくための唯一の教えになってしまう。
『この世でいちばん大事な「カネ」の話』 213〜215頁)

 『エッジ/ EDGE 上・下』鈴木光司(角川書店)読了      2009/02/17 

■下巻は展開が読めなくて一晩で一気読みだった。でも、そう来たのか! 強引だなぁ >作者。力ずくで物語をねじ伏せた感じか。確かに辻褄が合う決着はついたのだが、それにしてもあまりに、ご都合主義だよなぁ。

いや、でも面白かった。最後まで読んでみて、決して「ぼくの貴重な時間」を損したとは思わなかったな。ま、上下巻・税別各1600円を自腹で払って買った本だったら、もう少し評価は下がるかもしれないが、ごめんなさいね。それに、「高遠」という活字が、上下巻に渡り数十回も登場するエンタテインメント本が今まで1冊もなかったことをオマケすると、星(★★★)というところか。大森望氏は(★★半)だったそうだが。

最初から「ホラー小説」ではないと思って読み始めたのだが、じゃぁ「SF小説」としてどうなんだろうか? ぼくが大好きな光瀬龍とか堀晃とかの長編を読むと、永劫無限の宇宙の中における一瞬の瞬きのような人間存在の圧倒的な小ささに、ただただ呆然とさせられる虚無感に嘖まれたものだが、鈴木光司氏の「この小説」には、残念ながらその深い余韻はなかった。


 悪者は誰か?      2009/02/14 

■やはり諸悪の根元は、小泉純一郎、竹中平蔵、宮内義彦(オリックス会長)、御手洗冨士夫(キャノン社長)にあるのだろうなあ。

藤原新也さんのブログの記事が、とってもわかりやすい。なるほどね。

■あと、「かわうそ亭」さんのブログには「こんな記事」があった。ほんとうに「おぬしもワルよのお」の世界だね。いやはや。


 伊那のパパズ「絵本ライヴ」(その50) 山梨県笛吹市・石和英和幼稚園     2009/02/11 

■2月11日の祝日は、朝7時45分に家を出て中央道を一路山梨県へ。石和温泉にある石和英和幼稚園で「絵本ライヴ」があるのだ。この日はフルメンバー5人が集結した。びっくりするくらい元気のいいこどもたち。反応がよかったね。お父さんもいっぱい来てくれた。うれしかったな。

0902111.jpg   0902112.jpg


1)『はじめまして』
2)『コッケモーモー』 → 伊東
3)『これがほんとの大きさ!』スティーブ・ジェンキンス作、佐藤見果夢・訳(評論社)→ 北原
4)『パンツのはきかた』
5)『かごからとびだした』
6)『かえるをのんだととさん』(福音館書店) → 坂本
7)『さかさのこもりくんとおおもりくん』 → 宮脇
8)『おーいかばくん』
9)『おでんおんせんにいく』中川ひろたか・文、長谷川義史・絵(佼成出版社) → 倉科
10)『ふうせん』
11)『世界中のこどもたちが』


無事終わって、お昼のお弁当を御馳走になったあと、幼稚園の近くにある「三角屋」へみんなで歩いて行って、昔ながらの中華そばを食べる。細めの縮れ麺がやや硬めに茹でてあって、もろ僕の好み。醤油味のスープはちょっとしょっぱかったかな。そのあと、せっかく石和温泉まで来たんだからと、「みさかの湯」へ寄ってゆったりくつろぎ、それから帰路についたのだった。

 PowerPoint 対応・レーザーポインタ     2009/02/10 

■先週の水曜日の夜、高遠小学校で行った「子供におよぼすメディアの害」に関する講演で、困った事態が生じた。演台でパソコンを操作するには、プロジェクターと結ぶ接続ケーブルが短すぎたのだ。ぼくは困った。持ち込んだノートPC「MacBook だけど」のわきにしゃがんで操作するのは格好悪いじゃないか。

そこへ、高遠小学校教頭の福与先生が現れて、彼の「PowerPoint対応・無線レーザーポインタ」を貸してくれたのだ。それは「これ」です。ほんとスグレもので驚いた。ぼくも欲しい! でも、値段が高いね。もうちょっと安い品物はないかな? と探したら、あった。

それは「これ」です。Amazon で注文したら、きのう青森県弘前市の電機屋さんから宅配便で届いた。箱を開けてみると、ビックリするくらい小さくて手に馴染む。操作はいたって簡単。収納ケース付き。こりゃいいわ。末永く使えそうだな。うれしい。

 『光る風』 完全復刻版 / 山上たつひこ著(小学館クリエイティブ)その2      2009/02/08 

■今日の日曜日は、天気が良かったのでスキーに行った。子供らはあまり乗り気ではなく、一番近い木曽福島スキー場がいいと言った。でも僕は行ったことのない所にチャレンジしたかったのだ。候補は、野麦峠スキー場かブランシュたかやまスキー場だ。ただ、スキーヤー専用スキー場となると後者。そこで僕は中央道を岡谷インターへ車を走らせた。しかし、出発前からケチがついていたのだ。板と靴を車に乗せるのは僕の役目なのだが、次男のスキーブーツを積み忘れてきてしまったのだ。もちろん、気が付いたのは駐車場に着いた後だが。

つまりは、予想外の出費が嵩んだ一日になってしまったのだ。まずは、新和田トンネル通行料・往復1200円。ブランシュたかやまスキー場駐車場料金500円。今どき、スキー場の駐車場が有料とは! ただし、昼食代300円のキャッシュバック付きではあったが。さらには、次男の靴のレンタル代が1500円。そして1日リフト券代が大人一人4000円。幸い、子供らにはキッズ・スキー王国の無料一日券があったから助かった。昼飯代も家族で5000円以上かかったから、やっぱりスキーってお金がかかるレジャーだな。

そうは言いながらも、驚いたのはブランシュたかやまスキー場が、多くの家族連れで予想外に賑わっていたことだ。決して交通アクセスが良いとは言えない「このスキー場」が、どうしてこんなに人気があるんだ? 結局よくわからなかった。 子供らにも覇気がイマイチなく、11時過ぎから滑り始めて午後2時半には「おとうさん、帰ろうよ」となり、早々帰路についた。帰宅後午後4時から午睡して、夕食後に伊那中央病院へ。今日は午後7時から小児一次救急の当番なのだ。幸い今晩はすっごくヒマで、10歳のインフルエンザの少女を一人診ただけで午後9時過ぎに終わった。


■そんなんで『警官の血』後編の始まりは見ることができなかったのだが、後半もじつに面白かった。そうか、そう決着をつけるのか。

■さて、『光る風』の続き。漫画の舞台は日本の近未来。どんどん右傾化・親米化が進む中で厳しい思想統制が行われてゆく。1970年に描かれたこの漫画は、40年近く過ぎ去った「いま」こそ読まれるべき漫画かもしれない。『蟹工船』以上にね。それは、この漫画の冒頭に掲げられた以下の文章に象徴されている。

過去、現在、未来 ………
この言葉はおもしろい
どのように並べかえても
その意味合いは
少しもかわることがないのだ

政治の時代に描かれた、ポリティカル・フィクション漫画の傑作と言われる作品ではあるが、ぼくがこのマンガの中で一番怖ろしいのは、一般大衆の「時代への諦め」と「無知からくる無自覚な迎合」だ。それを具体的に言葉にしているのが、主人公と脱獄を果たした男が発する一言だ。彼は言う(393頁)

世の中のもめごとなんてのは
いってみりゃ
周期的な祭りみたいなもんでな

いくとこまでいきゃァいい
…そうすりゃ
しぜんにおさまるってもんよ

この『光る風』は、新書版、文庫版と違って大きい本なので、迫力が違う。おどろおどろしい扉画も見物だ。高い本だが、たぶん菊池は買ったに違いない。

 『光る風』 完全復刻版 / 山上たつひこ著(小学館クリエイティブ)      2009/02/07 

■テレビ朝日開局50周年記念ドラマ『警官の血』(第一夜)を見る。面白い! 佐々木譲の原作は読んでないのだ、まだ。明日の晩も見なきゃね。吉岡秀隆がいい。当時大学で、そういうことが本当にあったのかな? だとしたら、怖ろしいな。

■高遠の兄が、『エッジ』鈴木光司・著(角川書店・上下巻)を買ってきて読み終わったというので、貸してもらって読み始めた。おぉ、確かに高遠町が登場したぞ。あれ?伊那中央病院・救急部のシーンが、上巻152ページに載っている! まだここまでしか読んでないが、う〜む、地元民としては一生懸命応援したいと思うのだが、今後の展開についていけるかどうか、ちょっと自信なかったりするのだった(^^;;


■いま、テレビ朝日では香取クンの「スマステ!!」が終わったところだが、今日のゲストは高橋克典(『警官の血』には出ていたな)じゃなくって、高橋克実。『トリビアの泉』の司会で有名になった人だが、かつては、劇団・離風霊船(りぶれせん)の看板役者だった。ぼくは、岡谷カノラホールで「離風霊船」の代表作『ゴジラ』を観ている。高橋克実<の髪はまだふさふさだったし、伊東由美子も若かった。それにしても、衝撃的なラストだったな。


■何となく、今夜は社会派気取りになってしまう。と言うのも、『光る風』完全復刻版 / 山上たつひこ著(小学館クリエイティブ)を読み終わったからだ。このマンガは傑作だ。改めてそう思った。読んだのは、たぶん今回で3回目だ。最初に読んだのは、「少年マガジン」連載中の時だったと思う。このマンガが連載されていたのは、1970年4月26日号〜11月15日号だが、当時ぼくは小学6年生だった。

この年、大阪で万国博覧会が開催され、ぼくは駒ヶ根の祖母に連れられて、千里中央駅側に住む叔母に家に泊めてもらい「万博」を見に行った。三菱未来館も、住友館も、松下館も、それにもちろん、アメリカ館も、ソ連館も、ものすごい人の行列で入ることさえできなかった。しかたなくぼくは、並ばずに入れる「ウガンダ館」とか「コスタリカ館」とかに入って見て廻ったものだ。今でもよく憶えていることがあって、パビリオン近くの食堂に入って「中華そば」を注文したら、「ラーメン」が出てきたんで、すっごく頭にきた。当時のぼくの感覚では、「中華そば」は「湯麺(タンメン)」だったのだ。勘違いしてたんだな。その夜、叔母ちゃんに僕は訴えた。「中華そばを注文したのに、ラーメンがでてきたんだよ! 酷いじゃないか」ってね。でも、それが正しかったことに気が付いたのは、それから10年後のことだ。あの時、叔母ちゃんはただにっこり笑いながら「そう、それはイケナイよね」って言ってくれたのだ。ありがたかったな。

いま叔母は8?歳になるが、今でも元気に北千里に住んでいる。


今回読んでみて、230頁で初めて登場した「堀田」の画は、当時の連載中の「少年マガジン」で見た記憶が確かにある。主人公の六高寺弦の兄が帰ってきた場面も、よーく憶えている。だから、『ミノタウロス』佐藤亜紀(講談社)を読んだ時、この兄弟の設定、どこかで読んだことあるよなって、思ったんだ。そうか、『光る風』だったんだ。映画『ジョニーは戦場へ行った』だって、この漫画の後に製作されている。

2度目に読んだのは、大学生の時だ。名簿順で一人前の菊池寛昭クンが大好きだった漫画がこの『光る風』だ。菊池クンには本当に世話になった。ぼくは午前中の授業をよくサボっていたので、「菊池のノート」が試験前の「すべて」だったのだ。ぼくが菊池のアパートへノートを借りに行くと、彼は嫌な顔ひとつせず「いいよ」ってノートを貸してくれた。きれいな読みやすい字で書かれたそのノートは、すっごくよくまとまっていて、ぼくがたまに出て半分眠ってしまい、ミミズのはったような字で書いたノートでは何だかぜんぜん判らないノートとは、月とスッポンだったのだ。

菊池はたしか、『光る風』を「週刊少年マガジン」からそのまま雑誌を破って何冊もの「ファイル」に貯めていたのを見せてくれたように記憶している。ぼくは石森昭太郎の『リュウの道』をファイルにしていたが、『光る風』は当時よくわからなかった。僕らが大学生になったあの頃(いや、高校生の頃からすでに)山上たつひこは「少年チャンピオン」に連載していた『がきデカ』で、一世を風靡していたなぁ。そういう時代さ。(つづく)

 

 今日はよござんした。今日は、よござんしたよ!          2009/02/04 

■俳人で落語評論家であった、江國滋氏(あの、江國香織さんの父親ですね)は、ある日の落語会の楽屋で、たったいま高座を終えたばかりの先代・桂文楽がちょっと興奮ぎみで弟子に「そう」言ったのを聞いたことがあるのだそうだ。

よく、桂文楽の落語はクラシックで、古今亭志ん生の落語はジャズだ、という人がいるけど、それは間違いなんじゃないかと僕はずっと思ってきた。桂文楽こそが JAZZなのにねって。そして、「今日はよござんした。今日は、よござんしたよ!」という桂文楽の言葉を聞くに及んで、その思いは確信に至ったのだった。彼は、毎回「一語一句」違えず語っていたかもしれないが、でも、毎回「まったく違う噺」をしていたのだ。

そのことは、たぶん舞台に立ったことのある役者さんなら判ってもらえると思う。毎回「同じセリフ」を喋って舞台の上に立っていても、「今日はうまくいった」「今日はぜんぜんダメだった」そういう日々の連続だからだ。同じ話をしていても、その日の天候、会場の雰囲気、聴衆の数や構成、そしてもちろん演者の体調の良さ。そういう諸々の因子が複雑に絡み合って、「その日」の講演が成功するか失敗に終わるかが決まるのだ。そこいらへんの塩梅が実に微妙だったりする。

そういうことを、八代目・桂文楽はよーく理解していたのだな。だからこそ、あの発言となったに違いない。

■ぼくもよく講演を頼まれるが、自分で満足の行く講演ができた例しがない。毎回、あそこはこうすればよかった、時間オーバーばかりでいけないな、などと反省ばかりしている。ただ、もともと人前で話をするのは嫌いではないので、依頼があれば断らずに請けるようにしているのだが、でも、ほとんどの場合、これで謝礼を受け取ってもいいのだろうか? と個人的には納得のいかない内容で終わってしまう。本当に申し訳ないな、と思ってしまうことばかりだ。

でも、数年に一度だけ「今日はよござんした。今日は、よござんしたよ!」っていう講演がある。今日がまさに「それ」だった。会場も聴衆も、今日はよかった。高遠小学校の校長先生と、教頭の福与先生のサポートもよかった。そうした様々な要素がすべてプラスに作用してくれたのだ。ありがたかったな、ほんと。今日は78点くらいだったんじゃないかな。会場に来てくださったお父さん、おかあさん方に、けっこう伝わるものがあったはずだ。

こういう貴重な機会を与えてくれた、伊那市健康推進課の保健師、酒井さん。ほんとうにありがとうございました。今日はよかったと思う。個人的にも満足してます。


 真冬の三峰川堤防を息子と走る。猛烈な風が吹き寄せる。さぶい!       2009/02/02 

■昨日の日曜日は、朝から1月のレセプトチェック。それが終わって、今週水曜日の夜に高遠小学校で行う「メディア漬けの子育てを見直そう」という講演の、パワーポイント資料の作成。今回、8割方スライドを作り直すことにしたのだ。ずっと悩んでいたのだが、何となくストーリーが出来上がってきた。うん、これなら上手くいくぞ。

お昼は「蒼空(あおぞら)」で浜塩ラーメン。うん??何かが足りない。よくはわからないが。ごめんね「二八」の塩ラーメンのほうが好きかもしれない。

■長男が母親に言った。「おとうさんに伝えておいて欲しいんだけど、好きな落語家さんの中に三遊亭金翔さんを入れるのを、すっかり忘れてしまったんだ。このことは、金翔さんにはないしょにしておいてね」と。そーかそーか。とうさんも配慮が足りなかったね、反省反省。

■穏やかな日曜日の午後だったので、家の中で体力を持て余している次男を誘って、午後3時過ぎに三峰川河川敷公園へ向かった。堤防沿いのサイクリング・ロードをいっしょにジョギングするのだ。3km地点まで行って帰ってくるコースで往復6km。でも、久しぶりのジョグで、ぼくの足はぜんぜん進まない。息子はどんどん先に行ってしまうが、時々心配そうに振り返っては歩調をゆるめる。そうすると僕は「いいから、どんどん先行け!」と大声で叫んで手を振った。苦しいが、頑張って途中歩かずに走り切った。吹き荒ぶ強風に凍えそうだったが、待っていてくれた息子といっしょにゴールした時には汗をかいていた。気持ちよかった。やっぱり、体を動かすのは健康的でいいね。

「またいっしょに、おとうさんと走ってくれるかい?」って次男に訊いたら、「いいよ!」と息子は微笑みながら応えてくれた。

 美篶中央保育園で『しちどぎつね』を読む       2009/01/29 

■このところ、長男は遅ればせながら「ハリー・ポッター」シリーズにはまっていて、現在『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』上巻を読んでいる。朝起きてから寝る前まで読んでいる。兄貴が相手をしてくれないから、弟は手持ちぶさただ。でも、自分では本は読まない。そこで、お父さんが久々に登場して寝る前の一時に読み聴かせを再開した。『雪の写真家ベントレー』をまずは読んでみた。いい話じゃないか。少し前には『岩波世界児童文学集・第15巻 わらしべ長者/木下順二』から、「びんぼうがみ」を読んだ。長谷川義史さんの『いいからいいから3』を、ぼくも息子も思い出した。

「おとうさん、昔話また読んで!」とリクエストがあって、『岩波世界児童文学集・第15巻 わらしべ長者/木下順二』から、おととい読んだのは「山のせいくらべ」という話。ぼくはてっきり、富士山と八ヶ岳が背比べする話かと思って読み始めたら、ぜんぜん違っていて驚いた。文章に不思議な気品と気高さがある。虐げられた男と女が山頂で出逢う愛の話だ。ちょうど、荒井良二さんの『はっぴいさん』を思い浮かべていただけばよろしいか。ぼくは読みながら一人で感動していた。なんてイイ話なんだ! ちょっと長い話だが、上手な人が朗読したなら、子供たちの心に沁み入る忘れられない話になるに違いない、そう思った。なぁ、息子よ!と見たら、次男はすでに高いびきだった。やれやれ(^^;;

■今日の昼休みは、美篶中央保育園の冬の内科健診。インフルエンザも流行っていず、アトピーの子もいず、みんな元気だ。健診終了後、春日園長先生が再び子供たちを遊戯室に集めてくださり、ぼくの「絵本タイム」の始まりだ。

1)『だるまさんが』かがくいひろし(ブロンズ新社)
2)『だるまさんの』かがくいひろし(ブロンズ新社)
3)『だるまさんと』かがくいひろし(ブロンズ新社)

4)『うしはどこでも「モ〜!」』エレン・スラスキー作、桂かい枝訳(すずき出版)
5)『これがほんとの大きさ!』スティーブ・ジェンキンス作、佐藤見果夢・訳(評論社)
   これは、田中尚人さんに教えてもらった絵本。頁をめくる度に、子供たちは「うお〜!」と歓声をあげる。とっても盛り上がった。

6)『しちどぎつね』田島征彦・絵(くもん出版)
  ちょっと難しいかな?って思ったけれど、ここの保育園の子供たちは普段からいっぱい読み聞かせをしてもらっているので、しっかり落ち着いて物語の中へ入ってきてくれた。凄いな。けっこう受けた。もう少し読む練習が必要だが、ちょっとだけ自信をもったぞ!(^^;;

 まさか、伊那に居ながらにいして「きょん師」のナマ落語が聴けるとは!ありがたやありがたや 2009/01/27 

■現世の落語家の中では、一番に好きなんです。柳家喬太郎。その喬太郎師を、まさか伊那で、聴けるとは思ってもみなかったな。昨年は、「喬駒会」の駒ヶ根安楽寺での例会へは行けなかった。ぜんぜん知らなかったのだ。口惜しかったなぁ。だって、「文七元結」やったんだよぉ! 聴きたかったな。本当に残念だ。でも、神は見捨てなかった。伊那市商工会青年部が、1月25日(日)に塩尻レザンホールへ落語会でやって来た喬太郎師を長野県内に留めてくれたのだ。もしかすると、一旦東京へ戻って、再び伊那までやって来て下さったのかもしれないな。だとしたら、いい人すぎるゼ! 喬太郎師よ!

で、今宵の「いなっせ」6階ホールは200人以上の観客で埋まった。よく集まったね。僕は最後の患者さんの診察が午後6時半過ぎに終わってから、あわててジャンパーを着込み、ママチャリにまたがって一人「いなっせ」を目指した。身を切るような夜風で凍えそうだった。本当は、好きな落語家ベスト3に柳家喬太郎師を入れる(あとの2人は、立川志の輔師と、先代の三遊亭金馬師)長男・次男と供に家族全員で見に行きたかったのだが、何故だか小学生は入場をご遠慮下さいとのお達し。え〜ぇ、なんでぇ? うちの息子たちは喬太郎師の「寿司屋水滸伝」や「諜報員メアリー」や「一日署長」や「すみれ荘201号」や「白日の約束」が大好きなのに……

「ねぇ、おとうさん。ほてとるって何?とか、イメクラって何? なんて質問を受けながらも、適当にごまかして小学生の息子たちに喬太郎師のCDを聴かせ続けてきたというのに。本当に残念だ。

090127.jpg

でも、今日の喬太郎師はよかった。ほんとうによかった。一席目は「金明竹」。これは以前に駒ヶ根の安楽寺で聴いた。ますます上手いねぇ。松公に再び大笑いだ。二席目は、「うどん屋」かなぁ、それとも「子別れ・下」それとも、案外バレンタインデイを前にして「白日の約束」か?と、ドキドキしていたら、なんと!「按摩の炬燵」ではないか! いやぁ、よかったなぁ。凄かったなぁ。恥ずかしながら、ぼくは初めて聴いた。けっこう危ない、盲人に対する差別ギリギリの噺なので、聴く機会が今までなかった(小学館の「桂文楽落語全集」は持っているが、何故かこの演目だけが除外されているのだ)。そうか、こういう噺だったんだね。按摩さんが一人語りで幼なじみの番頭さんのことを語る下りで、ぼくは図らずも涙がジワジワと浮かんできてしまい、ずいぶん往生した。恥ずかしかった。なんて噺なんだ。泣いて笑ってまた泣いて。それからサゲで再び笑わされて。

落語っていいな。本当にいいな。心からそう思ったのは、喬太郎師の師匠、柳家さん喬師の「妾馬」を聴いて以来のことか。いま、油がのりきっている(メタボという意味でもね(^^;;)喬太郎師を、ぜひ「ナマ」で聴いてみて下さい。見逃したら損だと思いますよ!


■(追記)こちらの「SWA!のブログ」を見ると、この日の打ち上げはどうも「うしお」だったみたいだ。近いからかもしれないが、それにしても思いっきりローカルだねぇ(^^;;

 「テレビ会議システム」って、案外使えるじゃん            2009/01/24 

■先週の土曜日からずっと、なんだか忙しい毎日が続いている。水曜日は半日で flu の患者さんが10人、木曜日は25人、金曜日は17人、そして今日土曜日が10人。これで今週はトータル109人だ。昨日の金曜日も大変だった。午前の診療が午後1時20分に終わってガマンしていたトイレに駆け込みスッキリし、おにぎり1個ほおばりながら車に乗って伊那市保健センターで3歳児健診。この日は19人と少なめで助かった。午後2時50分に終了し、急いで戻って3時から予防接種。3時半から午後の診療が始まって、だらだらとちっとも終わらない。ぼくは次第に焦ってきた。この日は伊那中央病院救急部の小児科一次救急の当番で、午後7時には行かなければならないのだ。

結局、最後の患者さんを診終わったのが午後7時3分。伊那中央病院救急部へは20分遅れることを電話を入れてある。妻がサンドイッチを買ってきてくれて、それと聴診器とを持って、あわてて車に乗り込み伊那中央病院へ。夜7時15分過ぎに到着。救急部のみなさんに遅刻したことを詫びながら第二診察室へ。「ほっ」やれやれ。でも、思いの外閑散としていて、「ワンツーBOOK」で買って持っていった新書『誰でもいいから殺したかった! 追い詰められた青少年の心理』碓井真史(ベスト新書)を読み進む。

ところが、8時半を廻ってから急に込みだして、4人の子供を診察。フルは2人。午後9時20分に診終わって、この日大人の一次救急の当番で出向いていた林篤先生にご挨拶してから帰宅。9時50分着。「おとうさん、おかえり!」子供らはまだ起きていた。「おい、はやく寝ろよ!」「はぁ〜い」 それからようやく一人だけの夕飯。妻が暖め直したみそ汁をすする。時計は10時を過ぎていた。あぁ、なんだか疲れたな。でも、ふと思う。自営業のぼくには、こんな日は年に何度とない「特別な日」だが、ふつーの会社勤めのおとうさんにとっては、それこそが日々繰り返されている「日常」なのだろうなって、気が付いたのだ。

ごめんなさいね、よのなかの働くおとうさんたちよ。

こんな毎日が続いたら、いったい何時、子供と接触することができるんだろう。


■今日土曜日の午後3時から、信州大学小児科で「第3回信州小児医療カンファランス」が開催された。忙しい土曜日の午後に松本まで行くことは無理だから、参加できませんと返事しようとしたら、なんと、ネットを使って伊那中央病院会議室にいながら、信大「テレビ会議システム」でネット中継してくれたのだ(他のサテライト局は、北信総合病院、長野市民病院、佐久総合病院、飯田市立病院)。個人的には「テレビ会議」初体験だったのだが、これなら十分使えるじゃん! というのが個人的な感想だ。一度だけ回線が落ちて断線したが、SE の安江さんが頑張って維持してくれた。

以前「長野県医師会報」にぼくが書いて、ほとんどまったく無視された「長野県医師会理事会・委員会のテレビ会議システム」に関する提案だが、これなら十分実用に耐えるんじゃないか?。長野県下の各理事が地元の医師会に出向いて「テレビ会議」に参加すれば、無駄な交通費も宿泊費も時間も使わずに、会議と意見交換が可能なのだ。アフター・アワーズの会がなくなってしまうのがイヤなんだろうな、きっと。確かに「それ」こそが意見交換の場として重要なのはわかるのだけれど。

 辛い時には、いつでもそこに「音楽」があった            2009/01/22 

■火曜日の夜、近所の新古書店「ワンツーBOOK」で見切り中古CDのカゴの中から「OVERTIME/ Lee Ritenour」「surrender/ jonathan butler」「DUKE/ George Duke」の3枚を購入。1枚150円!だった。いま、懐かしのリー・リトナー&ジェントルソウツ(2005/リユニオン・ライブCD)「OVERTIME/ Lee Ritenour」を聴いているのだが、なかなかにいいじゃないか。アニー・ワッツ(ts)とか、デイブ・グルーシン(p)とかも現役で頑張っているんだね。

初めて聴いたのは1977年、大学1年の時か。あの頃流行っていたんだ、「キャプテン・カリブ」って曲。でも、佐久間くんの部屋でよく聴いた印象があるから、もう2年くらい後だったのかもしれない。いま聴くと、なんかしみじみしてしまうねぇ。リー・リトナーも、知らないうちにオッサンになっていたんだ。それからさらに、2005年にあの「杏里」と婚約して、昨年破局してたんだって。ぜんぜん知らなかったなあ。

■とことんへこんだ時、こてんぱんにやられて口惜しくてまんじりとも出来ない夜、そんな事はまぁめったにないのだが、つい先日あった。そういう時には音楽を聴く。この時は、ハンバートハンバートの『まっくらやみのにらめっこ』を大音量で流して、ぼくは大声で歌いながら中央道を帰った。伊那へ帰り着いたときには、ずいぶん気持が楽になっていた。音楽っていいな、そう思った。

先日はたまたまハンバートハンバートだったが、こういう時のぼくの定番は、ファラオ・サンダースのLP『ジャーニー・トゥー・ザ・ワン』3面1曲目の「 You've Got To Have Freedom 」だ。やっぱり、このオリジナル・ヴァージョンが一番いいのだが、この曲の「ライヴ盤」もたまらなくいい。先月、その『ファラオ・サンダース ライヴ!』の国内盤CDが初めて発売された。ぼくが27年前からLP盤で愛聴し続けている個人的超名盤だ! どんなに落ち込んだ時でも、きっと君を最大限に元気づけてくれるに違いない特効薬。ぼくの保証付きデス(^^;; ジャズも聴く人は買うべし!

          


 インフルエンザがブレイクした                2009/01/20 

■昨日の月曜日だけで、インフルエンザの患者さんが31人でた。先週は5日間で26人だったのに。一気にブレイクした感じだ。今日火曜日は14人。伊那北小学校3年生以外では、今のところ大きな流行には至っていない。でも、いろんな保育園、小学校で広範囲に出ている。まだ患者さんが出ていないのは、高遠と西春近くらいか。

今シーズンのインフルエンザは、比較的症状が軽い印象がある。特に予防接種をしてある子供はそう。元気はいいし、熱も午前中は平熱に下がっちゃったり、高熱は出ない子もいる。そういった子供には、タミフルやリレンザは投与しない。親御さんが投与を強く希望すればその限りではないが。タミフルを飲む子も飲まない子も、とにかく5〜6日しっかり自宅で休んでもらう。それが一番大切。1週間すれば、インフルエンザはなおるのだ。

タミフルは、以前に比べて確かに切れ味が鈍ってきた印象はある。でも、投与した全員がそうという訳ではなくて、効く子のほうが多い。しかし、前はあまり気にならなかった「5日目の再発熱」が今シーズンは目立つような気がするのだ。シンメトレルを使った時のように。今日も一人、6日経っても熱が下がらない3歳男児がいて「タミフルが全く効いていないんだね、おかあさん」なんて話ながら、念のために血液検査をしてみたら、白血球増多、CRP↑で細菌感染を合併していたことが分かった。こういうケースもあるから要注意だな。

 男は大変だぁ                2009/01/18 

■今日のお昼は、境区東一常会7組の新年会。今年はぼくが7組の組長なので、新年会が初仕事となる。会場は「うおの花」。当初「高烏谷鉱泉」を考えていたのだが(一昨年の忘年会で、お料理がとっても美味しかったからね)この日は先客が入っていてダメだった。残念。でも組の皆さんが多数参加して下さって、とってもありがたかった。夜は境区の組長会。先ほど帰ってきたところ。降り続く雪が気になる。明日の朝は早起きして雪かきだな。べちょべちょ雪だから大変だ。今日は早く寝よう。

■NHKスペシャル「女と男(その3)」。しまった前半を見逃してしまった。男と女じゃなくて、「女と男」というタイトルにしたのが巧妙だね。福岡センセイも書いているけれど、Y染色体は滅びつつあるのだそうだ。さらに男性の精子の質の劣化、数の減少は年々進行しているという。生物学的にも少子化がますます進むようにできているのだな。

■昨日の土曜日はたいへんだった。いろいろあって書きたいことはいっぱいあるのだが、愚痴になりそうなのでやめておこう。

 「ちくわぶ」 のこと             2009/01/14 

■「おでん」のタネの中ではもちろんだいこんが一番好きだが、2番目に好きなタネはちくわぶだ。この「穴の空いたメリケン粉の固まり」は、わが家の子供たちには不人気で見向きもされず、ありがたいことにおとうさんが独占できるのだった。ことに、一晩置いてしっかり「つゆ」が芯まで(いや芯はないのだが)染み込んだちくわぶの美味さといったらないよ。ほんと。

ところで、ぼくはつい最近まで「ちくわぶ」というおでんタネの存在を知らなかった。6年ほど前だっただろうか、長野県内の小児科医をむすぶメーリング・リストで、上田市在住の杉山先生がこう発言した。「ちくわぶをおでんに入れたいのですが、スーパーにもどこにも売ってないのです。長野県ではちくわぶをおでんには入れないのですか?」と。これを読んだ僕は、まったくのちんぷんかんぷんだった。ちくわぶって何?

さっそく妻にたのんで、次回の「おでん」にはその「ちくわぶ」を入れてもらうことにしたのだ。ところが、ベルシャイン伊那には「ちくわぶ」は売っていなかった、その当時は。でも、牛スジは売っていた。この「牛スジ」を入れるようになって、わが家の「おでん」は格段と飛躍的に美味くなったな。「おでん」に関しては関西圏に属するらしいわが長野県伊那市では、関東圏でしか売っていない「ちくわぶ」を取り扱っていなかったのだが、3年半前くらいからだったろうか、ベルシャイン伊那の「紀文おでん」コーナーにちくわぶが知らぬうちに並ぶようになったのだ。

それ以来、わが家の「おでん」には「牛スジ」と「ちくわぶ」がなくてはならないタネとなった。関西と関東の見事な結合! なワケか。「おでん」で大切なことは、煮込みすぎないことに尽きる。ある程度煮込んだら、あとは火を落として余熱だけで大根に出汁を浸み込ますのだ。

 亀工房のCD『JOURNEY』『ヤポニカ』             2009/01/11 

亀工房のCD『JOURNEY』と『ヤポニカ』を買って、毎日ヘビー・ローテーションで聴いている。すっごくいい。『ヤポニカ』は処置室のラジカセに入れてあるので、朝から晩まで診療中ずっとかけている。先月までは、ハンバートハンバートの『11のみじかい話』がラジカセにのっていたのだが、好みの音楽性としては連続してるんだね。意識はしてなかったが。

亀工房の凄いところは、超絶テクニックとハイレベルな音楽性を、それと感じさせることなく「さらり」と自然体で演奏しているところだ。ぼくがCD評価のポイントに置いていることの一つは「何度聴いても飽きが来ない」ことだが、このCDではさらに聴く度に新たな発見がある。一番大きな発見は、処置室で子供が点滴したり吸入したりしている時に、おかあさんがみな、このCDの曲に合わせて歌うのだ。それもごく自然と。「か〜ら〜すー、なぜなくのー」とか「かえるのうたが、きこえてくるよ」とか、子供に向かって歌い出すのだ。それは何とも心和む光景だった。懐かしさと新鮮さとを同時に味わった感じだった。

ただ、このグループの魅力はやはりアップテンポの曲にあるように思う。『ヤポニカ』の中では「じんじん」という曲がキャッチーで一番好きだったりする。『JOURNEY』の方はまだ聴き込んでいないが、こちらにはアップテンポの曲がたくさん収録されているので楽しみだ。


■『サクリファイス』近藤史恵(新潮社)読了。おぉ、そういう意味だったのか! やられたなあ。面白かった。ただ、自転車ロードレースの持つ高揚感とスポーツ観戦の醍醐味みたいなものは、いまひとつ伝わって来なかった。斉藤純の『銀輪の覇者』(ハヤカワ文庫)の方が、自転車ロードレースの魅力は味わえるように思う。でも、日本ではマイナーな「自転車ロードレース」を広く知らしめた「この小説」の功績は、とてつもなく大きい。

 2008年の「ベスト本」+α(その2)             2009/01/07 

■(その2)<ノンフィクション部門>

1位:『エレクトラ 中上健次の生涯』高山文彦(文藝春秋)
2位:『落語家論』柳家小三治(ちくま文庫)
3位:『凍える海』ヴァレリアン・アルバーノフ著、海津正彦・訳(ヴィレッジブックス)
4位:『なみのひとなみのいとなみ』宮田珠己(朝日新聞出版)
5位:『明日の広告』佐藤尚之(アスキー新書)
6位:『赤めだか』立川談春(扶桑社)
7位:『ぼくは散歩と雑学が好きだった。小西康陽のコラム 1993-2008』(朝日新聞社)
8位:『パパの色鉛筆 精神科医ヤマトのつぶやき、その他』山登敬之(日本評論社)
9位:『発達障害の子どもたち』杉山登志郎(講談社現代新書)
10位:『完璧志向が子どもをつぶす』原田正文(ちくま新書)
11位:『雑談王』岡崎武志(晶文社)
12位:『落語の国からのぞいてみれば』堀井憲一郎(講談社現代新書)
13位:『十五少年漂流記への旅』椎名誠(新潮選書)
14位:『思考の整理学』外山滋比古(ちくま文庫)
15位:『亭主力』天野周一(角川SSC新書)


■昨年の収穫は、なんと言っても「宮田珠己」を発見したことだ。幻冬舎文庫から出ている2冊『わたしの旅に何をする』『ときどき意味もなくずんずん歩く』、白水社の『ウはウミウシのウ』も即入手した。『東南アジア四次元日記』(文藝春秋)は入手不能だったので、伊那図書館から借りてきて読んでいる。この人、面白すぎるぞ!

8位〜10位は、図らずも児童精神科医の著書が並んだ。山登クンにも、杉山センセイにも「登」という字が入っていることを、いま発見した。落語本はずいぶん買ったが、感心したのが堀井憲一郎氏の新書だ。江戸の世界を自ら体感しようとする、その着眼点と実行力には敬服する。それから、巻末の「登場落語の解説」がものすごく充実していることに驚いた。立川志らく『全身落語家論』以来の参考書になるのではないかと思う。あと、落語関連本で注目したのは『寄席芸人伝(1)(2)(3)』古谷三敏(中公文庫コミック版)のリニューアル出版だろうか。いまの落語評論は、いまのジャズ評論と同じで、いろんな人たちが好き勝手言っていて何だかぜんぜん分からない。幾つか落語愛好家のブログを見てみても、どれもこれも「ドーダ主義」が横行するばかりで、オリジナリティのある「これは!」と思う評論がひとつもないではないか。そんな中で、堀井憲一郎氏には好感を持っているのだ。

 中断したままの「感染症情報」再開しました            2009/01/06 

■更新が面倒くさくなって、ずっと中断したままだった「感染症情報」ですが、インフルエンザも流行り始めたことだし再開することにしました。どうぞご参照ください。


■あのホラー小説の傑作『リング』を、まだハードカバー本しか出ていなかった頃に読んだのが密かな自慢なのだが、じつは続編は読んでいないのだ。なぁんだ、だったら自慢するなよなってか。その著者、鈴木光司氏が長らく封印していた「ホラー小説」を書き上げた。『エッジ 上・下』だ。TSUTAYA に平積みされているのを目撃した時には、さして興味はなかったのだ、実は。ところが週刊現代を立ち読みしていたら、この小説が長野県伊那市高遠町で起こった一家失踪事件から始まるということが書かれていた。おぉ! わが故郷「高遠町」が登場するなら、そりゃ一刻も早く読みたい。ところが、12月半ばにはあれだけ積み上げられていた「その本」が、本屋さんに一冊もないのだ。売れてしまったんだね。そうなると、ますます読みたくなるのが人情だ。どうしよう?

と言うのも、ずっと読みたくて読めなかった『サクリファイス』近藤史恵(新潮社)をようやく入手し、昨日から読み始めたばかりだったからだ。しかも、新潮社の文芸誌『yomyom』(最新号)には、昨年の春「別冊・小説新潮」に載った『プロトンの中の孤独(サクリファイス外伝)』に続いて、新たな外伝『スピードの果て』が、今度はあの「伊庭和実」を主人公に発表されている。本篇を読んだあと、こっちも早く読みたい。

それから情報によると、あの『ジョーカー・ゲーム』の新シリーズが、『野生時代 12月号』誌上で再開されたらしいのだ。う〜む、こちらも読みたい! D機関と魔王の運命や如何に! 期待させるなぁ(^^;) 本屋さんにはもう並んでいない雑誌だし、伊那図書館では取ってないから、Amazon でバックナンバーを注文するしかないかな。

 伊那ケーブルTV「新春伊那谷寄席」            2009/01/04 

■「伊那ケーブルTVで落語の収録があるから、それまでに風邪を治さないと」 受診した隼人くんのおかあさんはそう言った。「え? 君が落語、話すの? もしかして、伊那小で有名な落語少年って君のことか! いや噂には聞いていたんだ。」ぼくは驚いた。そうか君だったのか、落語少年。

12月31日に、隼人くんのおかあさんから FAXが届いた。彼が出演した、伊那ケーブルTV「新春伊那谷寄席」の放映日時が書かれてあった。ところが、伊那ケーブルテレビは契約打ち切りになったので、わが家では見られないのだ。「楽しみにしてますね!」なんて返事を出したはいいが、さて、どうしたものか。何回か再放送があるから、妻の実家に頼んで録画してもらおう、そう思っていながら頼むのをすっかり忘れていた。そしたら、以心伝心。今日の夕方、義母が来て「伊那小5年生の男の子が落語やったのをビデオに録ったから見てみて」と、テープを持ってきてくれたのだ。いやはや有り難い助かった。

さっそく見る。前半は、辰野町「伊藤外科医院」院長で、長野県医師会常務理事の伊藤隆一先生が「時そば」を一席。伊藤先生の玄人はだしな落語の腕前は以前から有名だが、ぼくは初めて聴いた。いや、本当に上手いねぇ。驚いた。医者にしとくのが惜しいくらいだ(^^;; 今度はぜひナマでお聴きしたい。

さて、伊藤先生を「ヒザ前」に(収録場所、日時は違うようだが、伊藤先生を「前座」呼ばわりしては失礼なので「ヒザ前」ね)トリで登場したのが隼人くん。演目は「松竹梅」。いや驚いた。本当に驚いた。口調がいいじゃないか。所作もさまに入ってる。間もテンポもいいぞ。凄いね、たまげたね。二席目は「動物園」。関西弁も不自然でないよ。オリジナルの「くすぐり」も入っていたよ。三席目は「転失気」。これは、「えほん寄席」でやった柳家三之助さんの口調だ。そうか、「えほん寄席」で落語の噺を憶えたんだね。でも、仕草は? 上下(かみしも)もきちんとしていたよ。今度は、ナマで聴いてみたいな。ね、隼人くん。

 2008年の「ベスト本」+α            2009/01/02 

■今日は当番医だった。朝8時45分から始めて、ほとんど休みなく(トイレには5回行った)診療を続けて、最後の患者さんを診終わったのが夜の8時45分だった。昼飯の「ちむらのちらし寿司」を5分で半分だけ食ったのが、午後の2時45分。まるまる12時間、働きっぱなし。ほんとうに大変だった。158人診た。半分が新患。その8割が大人。今日は内科の当番医がないからね、おじいちゃんも仕方なしに小児科を受診するしかないのだ。
何とか無事終了してホッとした。総出で頑張ってくれた医院スタッフに感謝感謝。

■例年、大晦日に書いている話題だが、今年は年頭になってしまいました。2008年の「ベスト本」+α

<フィクション部門>

1位:『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー著、黒原敏行・訳(早川書房)
2位:『北東の大地、逃亡の西』スコット・ウォルヴン著、七からげ理美子・訳(ハヤカワミステリ)
3位:『遊動亭円木』辻原登(文春文庫)
4位:『限りなき夏』クリストファー・プリースト、古沢嘉通・編訳(国書刊行会)
5位:『チャイルド44 上・下』トム・ロブ・スミス(新潮文庫)
6位:『八日目の蝉』角田光代( 中央公論新社)
7位:『教科書に載った小説』佐藤雅彦・編(ポプラ社)
8位:『ジョーカー・ゲーム』柳広司(角川書店)
9位:『氷石』久保田香里(くもん出版)
10位:『ねこと友だち』いとうひろし(徳間書店)
11位:『しちどぎつね』たじまゆきひこ・絵(くもん出版)
12位:『ハナシにならん!笑酔亭梅寿謎解噺2』田中啓文(集英社文庫)


■長編の『新世界より上・下』『テンペスト上・下』『出星前夜』は結局読めず、年越しとなってしまった。その代わり、短編集・連作集で面白い本がいっぱいあった。『北東の大地、逃亡の西』はよかったな。それから『遊動亭円木』『限りなき夏』がどことなく似たテイストであることに気が付いた。こういう幻想的な話が好きなんだね。短編集では、あと『20世紀の幽霊たち』ジョー・ヒル(小学館文庫)が未読のまま積んであるので、これも読まなきゃ。第一位はダントツで『ザ・ロード』。これは読了直後から決まっていたこと。ノンフィクション部門はまた明日。


 

<先月の日記>へ




 T O P  ご案内  おとうさんの絵本    読書&CD    Now & Then   リンク 

北原こどもクリニック